チーズと塩と豆と (集英社文庫)

  • 集英社
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感想 : 165
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451221

作品紹介・あらすじ

4人の直木賞作家が、それぞれ訪れたヨーロッパの土地を舞台に描く、愛と味覚のアンソロジー。故郷のしがらみ、家族の絆、切ない恋心……温かな食卓に秘められた想いをすくいあげる珠玉の4編。

感想・レビュー・書評

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  • 4人の作家の短編集。
    中でも神様の庭の話は読んでいて突き刺さる。
    彼女の気持ちが、嬉しい事も悲しい事も深く伝わってくる。理解されない寂しさと、理解出来ない苦しさに読んでいて押し潰されそうになる。
    それぞれが思う幸せになる形を理解するのは難しい

  • 食卓を共にする誰かのために作った温かな一皿。
    その温かな一皿を共に分かち合うことで
    人は心を開き、お互いの気持ちを知りあい理解しあっていく...。
    誰かのためにと作った温かな一皿というものは、人と人との心の結びつきに
    おおいに一役買っているとても味わい深いものなのですね。

    食卓を共にすれば自然と会話が生まれ、時に人生を振り返らせもし
    また時に未来の夢も見させてくれる。

    だけど
    まいにち同じ誰かとまいにち同じ一皿ばかりを味わっていると
    あまりにもあたりまえになりすぎて、かえって本当の美味しさ(気持ち)を
    見失ってしまうものなのかもしれません。
    少し距離をおいて遠くから見つめてみることで、その一皿の温かさが
    自分にとってどれだけかけがいのないほど
    必要なものだったかに気づかされたります。

    親元を離れて、故郷の郷土料理やおふくろの味が恋しくなるように...
    その懐かしい一皿の味わいの有難さが身に染みして、それまでの自分を省み
    未来への新しい希望を見つけた時のように。

    ヨーロッパのローカル料理をテーマにした
    4人の直木賞女流作家による4つの短編アンソロジーは
    誰かと分かち合う食卓がささやかな幸せをもたらしてくれる
    優しいストーリーでした。

    心に残った食卓は森絵都さんの
    「ブレノワール」

  • 直木賞作家4人によるアンソロジー。
    食にまつわる4編が収録されている。
    食事を共にするのは、家族や恋人などの親しい間柄だからこそ。
    人は食べ物で繋がっていると言っても過言ではないのかも。
    食の大切さについて、食べる楽しさについて、もっと考えてみたくなった。

  • NHKの旅番組との連動企画。角田光代・井上荒野・森絵都・江国香織、四人の女流作家によるアンソロジー。どの国、どの地方の食べ物も、その土地に暮らす人々の心や人生と切っても切れないものなんだということを改めて実感させられます。命をつなぐ食事が、命だけでなく心も繋ぐ大切なものであることが様々な形で描かれていて、とても素敵でした。角田さんの『神様の庭』、森さんの『ブレノワール』が特に良かったです。

  • 四人の女流作家によるアンソロジー本。スペイン(角田光代)、イタリア(井上荒野)、フランス(森絵都)、ポルトガル(江國香織)とそれぞれヨーロッパを舞台にした短編集。
    田舎町で生まれ育った主人公たちの、生まれた町に対する閉塞感、そして都会に出るけれどやはり生まれ育った町で食べていた料理が染みついていてどこか安心するという、繊細な心理が描かれている。

    食べ物がふんだんに登場する小説は、不思議に色っぽい。それは食は性とつながっている、と言われているせいなのか。
    美味しい料理、葛藤、そして恋愛。私から見ると異国である四カ国での、人々の生活と心模様。

    この四人の共通点は、直木賞作家であること、らしい。
    何しろどの作家さんも好みなので、とても私得だった。笑
    好きな作家だらけのアンソロジーってすごくお得感がある。

    江國香織さんのお話に出てくる「おなじものをたべるというのは意味のあることだ」という言葉が印象に残った。
    親子でも、夫婦でも、友達でも、恋人でも。どんなに頑張っても同じ人間にはなれない者同士が、同じものを食べるということには大きな意味がある。
    「美味しいね」と言い合いながら一緒にごはんを食べる人がいるのは、とても尊いことなのだと思う。

  • べつべつの思考がべつべつの肉体に閉じ込められている二人のべつべつな人間が、それでも同じ時に同じ場所にいて、おなじものを見ておなじものを食べるというのは大事なこと。

  • 4人の作家による短編集ですが、どれもなかなかずっしり重みのある物語。
    舞台は外国。食べること、日々の暮らしのこと、家族のことを思い浮かべたり考えてしまいました。
    子どもの頃から嫌だった食の記憶が、大人になり経験を経て「ハッ!」と当時の親の心情に思い至る。
    重苦しい過去の呪縛から解き放たれるのに、後悔もありちょっと切なくなりました。

    お気に入りは、角川光代さん「神さまの庭」
    主人公の生き方に影響を与えた出来事が印象的でした。

  • 外国が舞台だが、読みやすく、読み終えた今ズーンという感覚が残る。

  • 4人の女性作家が料理をテーマに(?)書いた4つの小説が収められた短編集です。
    作家と作品名はそれぞれ、角田光代「神さまの庭」、井上荒野「理由」、森絵都「ブレノワール」、江國香織「アレンテージョ」です。

    以下はそれぞれの話について感想を書いていますが、気に入った・気に入らなかった、がよく出てます…。
    最後に何となく気に入った話ランキングをつけてみました。

    角田光代「神さまの庭」
    料理を食べながら、癌におかされた母の今後を話し合う主人公の家族の気持ちは、自身の経験から理解できます。
    体が疲れたときにも有効ですが、心が疲弊したときにおいしいものを食べると元気になるし、忘れかけていた幸せな気持ちを取り戻すことができる気がします。
    アイノアの仕事を最初は素晴らしいだなんて言っておいて、最終的にそれって嫌味?耐えられない、なんて言う彼氏は理解できません。

    井上荒野「理由」
    起承転結のある話ではないので、感想を書くのは難しい…。
    読み終わって、カルロはこれからどうなるのかなとぼんやり思いました。

    森絵都「ブレノワール」
    実家に彼女を連れていくところ、うわーっと思いながら読みました…。

    江國香織「アレンテージョ」
    読んでいると、夏じゃなくても暑くて乾いている砂漠みたいなところにいる気分になりそうです。
    彼らが夜に見たおばあさんたちが何なのか気になります。

    どういう経緯で作られた本なのかわからないのですが、最初にある程度具体的なテーマが与えられていたのでしょうか?
    田舎、家族仲良し、習慣に縛られた生活‥など、人によっては窮屈に感じる暮らしから抜け出して人生をおくるうちに、料理を通して故郷のことや家族のことに思いを巡らすようになり、結果、捨てたはずの暮らしや場所に戻るー。
    というような話がいくつかあります(いやほとんどです)が、正直ベタすぎるだろうと思いました。

    どの作家がどの話を書いているのか見ないまま読みましたが、やっぱりというべきなのか、4人の中でいちばん多くの小説を読んでいる江國香織の話がいちばん気に入りました。
    登場人物もみんな魅力的(特にビッチとダグ)だし、内容も家族とか故郷とかじゃないし、読みやすいです。
    次が初めて読んだ角田光代。これはベタな話の一つですが、主人公の仕事が登山家に食事を作る、というところ、それに至るまでの経緯が気に入りました。
    森絵都の話はザ・ベタという感じですが、起承転結がある分、読み応えがあります。
    井上荒野は「ベーコン」を読んだときに、合わないと思って以来ですが、やはり苦手です。
    料理の出てくる小説は好きなだけに惜しいのですが、文章も内容も苦手です…。

  • どれもおもしろかった。
    "食"は多くの人の根本だから読みやすいんだと思う。
    角田さんの"神さまの庭"がとりわけ好きでした。

    最後に読んだ江國さんの
    "おなじものを食べるのは意味のあることだ"という
    フレーズがすごくよくわかるなと思った。
    物質的なことって思いのほか説得力あるんだよね。
    その場にいるとか直接体感するって
    だからあなどれないというか。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

角田光代の作品

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