チーズと塩と豆と (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451221

作品紹介・あらすじ

4人の直木賞作家が、それぞれ訪れたヨーロッパの土地を舞台に描く、愛と味覚のアンソロジー。故郷のしがらみ、家族の絆、切ない恋心……温かな食卓に秘められた想いをすくいあげる珠玉の4編。

感想・レビュー・書評

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  • 4人の作家の短編集。
    中でも神様の庭の話は読んでいて突き刺さる。
    彼女の気持ちが、嬉しい事も悲しい事も深く伝わってくる。理解されない寂しさと、理解出来ない苦しさに読んでいて押し潰されそうになる。
    それぞれが思う幸せになる形を理解するのは難しい

  • NHKの旅番組との連動企画。角田光代・井上荒野・森絵都・江国香織、四人の女流作家によるアンソロジー。どの国、どの地方の食べ物も、その土地に暮らす人々の心や人生と切っても切れないものなんだということを改めて実感させられます。命をつなぐ食事が、命だけでなく心も繋ぐ大切なものであることが様々な形で描かれていて、とても素敵でした。角田さんの『神様の庭』、森さんの『ブレノワール』が特に良かったです。

  • 食卓を共にする誰かのために作った温かな一皿。
    その温かな一皿を共に分かち合うことで
    人は心を開き、お互いの気持ちを知りあい理解しあっていく...。
    誰かのためにと作った温かな一皿というものは、人と人との心の結びつきに
    おおいに一役買っているとても味わい深いものなのですね。

    食卓を共にすれば自然と会話が生まれ、時に人生を振り返らせもし
    また時に未来の夢も見させてくれる。

    だけど
    まいにち同じ誰かとまいにち同じ一皿ばかりを味わっていると
    あまりにもあたりまえになりすぎて、かえって本当の美味しさ(気持ち)を
    見失ってしまうものなのかもしれません。
    少し距離をおいて遠くから見つめてみることで、その一皿の温かさが
    自分にとってどれだけかけがいのないほど
    必要なものだったかに気づかされたります。

    親元を離れて、故郷の郷土料理やおふくろの味が恋しくなるように...
    その懐かしい一皿の味わいの有難さが身に染みして、それまでの自分を省み
    未来への新しい希望を見つけた時のように。

    ヨーロッパのローカル料理をテーマにした
    4人の直木賞女流作家による4つの短編アンソロジーは
    誰かと分かち合う食卓がささやかな幸せをもたらしてくれる
    優しいストーリーでした。

    心に残った食卓は森絵都さんの
    「ブレノワール」

  • 直木賞作家4人によるアンソロジー。
    食にまつわる4編が収録されている。
    食事を共にするのは、家族や恋人などの親しい間柄だからこそ。
    人は食べ物で繋がっていると言っても過言ではないのかも。
    食の大切さについて、食べる楽しさについて、もっと考えてみたくなった。

  • 家族のしがらみと食はなかなか深い繋がりがあるのだなと思いました。
    全体通して洋画のような美しい情景が目に浮かぶのが素敵だなと感じました。舞台がヨーロッパなので人物や物の名称がカタカナなのでかっこよさが何割か増しに感じましたが慣れるのに時間がかかってしまいました。
    1番いいなと思ったのは森絵都さんのブレノワールです。希望が見えるのがいいです。

  • 四人の女流作家によるアンソロジー本。スペイン(角田光代)、イタリア(井上荒野)、フランス(森絵都)、ポルトガル(江國香織)とそれぞれヨーロッパを舞台にした短編集。
    田舎町で生まれ育った主人公たちの、生まれた町に対する閉塞感、そして都会に出るけれどやはり生まれ育った町で食べていた料理が染みついていてどこか安心するという、繊細な心理が描かれている。

    食べ物がふんだんに登場する小説は、不思議に色っぽい。それは食は性とつながっている、と言われているせいなのか。
    美味しい料理、葛藤、そして恋愛。私から見ると異国である四カ国での、人々の生活と心模様。

    この四人の共通点は、直木賞作家であること、らしい。
    何しろどの作家さんも好みなので、とても私得だった。笑
    好きな作家だらけのアンソロジーってすごくお得感がある。

    江國香織さんのお話に出てくる「おなじものをたべるというのは意味のあることだ」という言葉が印象に残った。
    親子でも、夫婦でも、友達でも、恋人でも。どんなに頑張っても同じ人間にはなれない者同士が、同じものを食べるということには大きな意味がある。
    「美味しいね」と言い合いながら一緒にごはんを食べる人がいるのは、とても尊いことなのだと思う。

  • べつべつの思考がべつべつの肉体に閉じ込められている二人のべつべつな人間が、それでも同じ時に同じ場所にいて、おなじものを見ておなじものを食べるというのは大事なこと。

  • 4人の作家による短編集ですが、どれもなかなかずっしり重みのある物語。
    舞台は外国。食べること、日々の暮らしのこと、家族のことを思い浮かべたり考えてしまいました。
    子どもの頃から嫌だった食の記憶が、大人になり経験を経て「ハッ!」と当時の親の心情に思い至る。
    重苦しい過去の呪縛から解き放たれるのに、後悔もありちょっと切なくなりました。

    お気に入りは、角川光代さん「神さまの庭」
    主人公の生き方に影響を与えた出来事が印象的でした。

  • 解決を待つあいだに、不正を暴くあいだに、平和を訴えているあいだに、正義をふりかざしているあいだに、空腹で人は死ぬのだ。一年後、五年後、すべての未来は、今日という日を乗り越えなければやってこないのだ。憂うなら、未来でなく今日、今なのだ。
    (P.43/神様の庭/角田光代)

     僕は思うのだけれど、おなじものを見るというのは大事なことだ。べつべつの思考がべつべつの肉体に閉じ込められている二人べつべつな人間が、それでもおなじ時におなじ場所にいて、おなじものを見るということは。
    (P.165/アレンテージョ/江國香織)

     僕は思うのだけれど、おなじものをたべるというのは意味のあることだ。どんなに身体を重ねても別の人格であることは変えられない二人の人間が、日々、それでもおなじものを身体に収めるということは。
    (P.188/アレンテージョ/江國香織)

  • 外国が舞台だが、読みやすく、読み終えた今ズーンという感覚が残る。

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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