箱庭図書館 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.71
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本棚登録 : 3408
レビュー : 296
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451313

作品紹介・あらすじ

少年が小説家になった理由。ふたりぼっちの文芸部員のイタい青春。【物語を紡ぐ町】を舞台にひろがる、6つの物語。ミステリー、ホラー、青春、恋愛…乙一の魅力すべてが詰まった傑作短編集!

感想・レビュー・書評

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  •  読み進む途中で、本書は複数の投稿作品を乙一氏がリメイクしたものであることを知りました。なるほど。そのように気づかされて読むと、ひとつひとつの物語の風味が異なるようにも感じます。

     オリジナルの投稿作品がどのようなものであったのか知ることはできませんが、文善寺町という町を設定し、全体のキャラクターを再構成して、一つの箱庭に仕上げていった手法は鮮やか。

     「あれ、この登場人物はあそこに出ていた」と、それぞれの物語のつながりを、読み返しながら確認する楽しさがありました。何度も出てくる、読書中毒の潮音さんのキャラクターには微笑んでしまいます。潮音ではないですけど、通勤電車を特快から各駅に変えて座って読んでいました。

     乙一さんの作品は初めてですが、解説を読むとホワイト・ステップに近い作風とあります。雪の中に残された足跡によるパラレルワールド同士の会話。雪に埋もれた白い街の風景、ことばのない会話、すこし切ない親子の思い、良い雰囲気でした。

     現実の世界は、ちょうど2週連続の大雪で、雪に残された足跡を探すどころか、膝まで埋まって大変な雪かきでしたけど。

  • 一般の方から作品を募集して乙一さんがリメイクしたものが6作品入った短編集。それぞれ個々の物語だけど、舞台になる町は同じで、それぞれの物語の中で人物が繋がっている。その繋がりで普通の短編集以上の楽しみ方ができる。

    特に「ホワイト・ステップ」が良かった。雪の足跡だけで繋がるパラレルワールド。主人公が見つけた足跡の持ち主は、主人公の世界では事故で死んでしまっていることが判明する。それぞれの視点が切り替わり、物語は二転三転する。いつか溶けてしまう雪だけで繋がっているのが、儚い。

  • 娘が中学校の図書室から借りてきた。「すっごいおもしろかった!」というので、10年くらい前にハマった乙一さんを読む。ん。乙一ぽくない。けどやっぱウマおもしろい!と読み進む。あとがきを読んで「そういうことか」。子どもっぽいという人もいるかもだけど、ならば子どものままでいいわ、と思うほどに私は乙一の小説が好きです。

  • 読了直後。熱が高まりすぎてまともなレビューが書けるか不安なままに書く。

    乙一さんの本も初めて読んだけれど、物語を作ることが本当に好きな人なのだと思う。細々した表現というよりも、物語を作る力が凄い。

    この本自体は短編集なのだが、「物語を紡ぐ町」に住む人々がさまざまに絡み合いながら、町のコピーのごとく物語を紡いでいく。
    そう、それは「物語」といか言いようのない「物語」。

    特に好きなエピソードは『青春絶縁体』と『ホワイト・ステップ』だ。

    『青春絶縁体』

    まず、タイトルがいいと思った。
    「青春と縁がない」。まるで昔の私みたいだ。劣等感にまみれていて、自信がなくて。

    特に胸を打ったのは、クラスの人気者の女子に話しかけられたとき、主人公が心のなかで独白するこの一節。

    「僕はちがう。
    彼女を見て、そうおもった。
    容姿にもめぐまれて、性格も明るく、だれにでも好かれている。
    だからこそ、ためらいなく人に話しかけられる。
    他人に壁をつくらないのは、攻め込まれ、被害を受けた歴史がないからではないのか。
    僕はちがう。
    人の悪意というものをしっている。
    そのくせ、青春というものにあこがれをもっていた。
    入学当初、友だちをつくって、こんな自分を変えなくてはならないとおもっていた」(p.86)

    この一節を読んだだけで、何かがこみ上げてきて、泣きたくなった。中学生時代の、劣等感まみれの自分を思い出した。

    それからこのエピソードの凄いところは、「小説を書きたい」という気持ちにさせてくれるところだ。読みながらなんども、ルーズリーフを広げて物語を書き始めたくなる気持ちを私は抑えた。


    『ホワイト・ステップ』

    このエピソードは、雪を媒介にして平行世界がクロスする物語なのだが、舞台となる町の風景、母を亡くしたばかりの少女、生きがいのない男子学生が次第に使命感に燃えてくるさま、すべてが美しかった。

    いっそ現実の世界を舞台にするフィクションはすべて、これくらい綺麗でいてほしいと思ったほど。

    それから、母を大事にしたいと思った。

    「口やかましい存在」として捉えがちだけど、この物語に登場するわたなべほのかのように母を失ったとき、私はきっと同じように後悔するんだろうと思った。

    そういえば、私は親孝行らしい親孝行はほとんどできていない。どうすることが親孝行なのかも分からないし、それをする素直さも持ち合わせていないのだけれど。



    ……ながながと書いてしまった。

    とにかく、これだけのことを考えさせ、実際におそらく私の行動を変えさせるこの小説はすごい。と思う。

    最後に、めちゃくちゃ好きでした。読んでる時間が幸せでした。ありがとうございます。

  • 久々乙一。
    読者の作品をリメイクしただけで元から乙一のアイディアじゃないなんて…と思っていたので中々読む気にならなかったけれど、読んでみたら意外に面白かった。

    短編ごとに登場人物や内容が微妙にリンクしているを発見するのが楽しい。

    普通に読んでいるだけでは話が見えてこなくて最後に伏線が繋がって真相が分かるパターンが多くて面白いけれど、ひねくれていて少し疲れる。
    構成が意地悪なのを覗けば文章はあっさりと読みやすかった。
    複雑な構成と短編ごとの繋がりを除けば大した内容がないような気がしないでもないけれど、楽しめたのでそれだけで十分かな。
    最後の短編、雪の日の足跡から平行世界との繋がりが見える「ホワイト・ステップ」はファンタジーチックで面白くも、最後は切なかった。

    乙一作品、最近全然読んでいなかったけれどまた読みたくなった。

    みんなが大好きな本や図書館を利用しているので読者の食い付きは良さそう。
    アルバイトでいいので図書館で働きたい…。

  • 短編集です。
    一話一話は独立しているのだけど、文善寺町という町を舞台にしていて、少しずつ、登場人物や出来事が重なりあった連作短編の趣です。

    面白いのが、すべての作品が、一度ボツになったいろんな作家(の卵?)の作品をリメイクするという企画で作られたということ。元になった作品はwebで読めます。

    元の作品は趣も全然違うのに、リメイクすると、乙一らしい不思議さとか、切なさとか、何とも言えない雰囲気が出てくるのがすごい。

    収録作
    小説家の作り方
    コンビニ日和!
    青春絶縁体
    ワンダーランド
    王国の旗
    ホワイト・ステップ

  • 久々の乙一。ネットで投稿された小説を乙一氏がリメイクした短編集、という建て付けのため、確かにだいぶ毛色が違う印象を受けました。
    とは言え、その毛色が異なる短編を1つの同じ街という舞台に集約して、互いにリンクさせる形で纏め上げた著者の手腕はさすが、と思いました。

    本作で気になったのは、世界の「狭さ」。
    著者の筆力は他の作品で知っているので、つまりは物語を紡いでいく観点で敢えて閉鎖的な世界にしたということか。どことなく鬱屈した基調で物語が進み、キャラクターも敢えてそこまで立たせないようにしたようにも思えてしまいます。
    ※「王国」も結局街を出たとは言い難いし、何より更に閉鎖的な場所なので。
    その中で、最後の短編で「別の観点での外の世界」を出したことや、雪融けのシーンと組み合わせたことで、狭い世界からの脱出を示唆していた…のでしょうか。考えすぎかな。

    リメイクするという試み、それ自体面白いとは思うのですが、それで小説がすごく面白くなったのかと言うとどうなんだろう、となってしまいそう。
    著者の付加価値はしっかり付加されていたと思うのですが、結局元ネタと著者の方向性が合っているのかが大事で、最後の短編は合っていると思ったのですが、それ以外はどうなのか。

    ちなみに、最初の短編の書き出しを踏まえると、著者の「普通漢字で書くところを敢えてひらがなで書く」書き方ってどういう意図なんだろうなぁ、と思いました。

  • タイトルの箱庭の名の通り、一つ一つの短編の細かい演出が絶妙に配されていてアイデアだけの作品ではなくなっている
    特に最後はこの作者らしい細かい進行と設定が生かされている
    個人的には3個目の短編が印象的

  • 箱庭図書館

    190525読了。
    今年51冊目今月13冊目。



    #読了
    #乙一
    #箱庭図書館

    ネットで募ったボツ作を乙一がリメイクした短編集。

    素材をどう料理するのか、乙一の創作力が見える快作。

    随所に乙一らしさが出ていてよい。

    とある人物を軸にした連作でもあるが、最終作ホワイトステップがこの上なく良い。

    全て読んだあと表紙絵を見ると感慨深い。

  • 企画モノ。一般から募集されたボツ原稿のアイデアを乙一さんが再生したという…。最後の「ホワイト・ステップ」が秀逸でした。らしさが出た作品です。企画モノに、この水準を求めるのは酷なのか、全編でみると並もしくは少し及ばずというところ

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著者プロフィール

乙一(おついち)
1978年福岡県生まれ。山白朝子(やましろ あさこ)、中田永一(なかた えいいち)の別名義で執筆する小説や、安達寛高(あだち ひろたか)という本名名義で脚本を記すこともある。
1996年に『夏と花火と私の死体』で、第6回集英社ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞してデビュー。
2003年『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞受賞。2012年、『くちびるに歌を』(中田永一名義)で第61回小学館児童出版文化賞。
代表作として、映画化もされた本屋大賞ノミネート作『くちびるに歌を』のほか、『暗いところで待ち合わせ』『きみにしか聞こえない CALLING YOU』『失はれる物語』などがある。作品の多くが漫画化、映画化された。

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