箱庭図書館 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 5273
感想 : 394
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451313

作品紹介・あらすじ

少年が小説家になった理由。ふたりぼっちの文芸部員のイタい青春。【物語を紡ぐ町】を舞台にひろがる、6つの物語。ミステリー、ホラー、青春、恋愛…乙一の魅力すべてが詰まった傑作短編集!

感想・レビュー・書評

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  • 物語を紡ぐ町、文善寺町が舞台となって、乙一さんが投稿者の作品をリメイクしてパッチワークのように仕上げた6つの連作短編。

    活字中毒の潮音さんが変態すぎる。読書に集中すると我を忘れて読みふける。雪山で読書したら間違いなく凍死してしまいそうだけど本人は死んだことさえ気づかないのかも。

    この作品を読んでいて作者がサービス精神旺盛に読者を楽しませようと焦らして逸らして、アッと驚かせようと予想の斜め向こう側へずらして、もて遊ばれているのが癪にさわってイラッてするんです。
    それを心地よく感じるかってゆうとどうなんだろう。
    子猫なら好奇心旺盛にじゃれついてきそうだけど、スレてくると構ってくるのが面倒に思えたり。
    どうだ凄いだろって、ガキ大将が捕まえた蛇を得意げに見せられるような作品でした。
    最後のホワイト・ステップが秀逸でした。

  • 「オツイチ小説再生工場」から、読者のボツ原稿リメイク連作短編集。
    途中まで、連作になっている事に気付かなかったけれど、特に問題はなしです。
    “青色絶縁体”のイタさに追想し
    “王国の旗”の異空間に幻想し
    “ホワイトステップ”のパラレルワールドに夢想した。
    古典から着想して、面白い小説を書き上げる作家さんは多い。一般の方の、小説をリメイクして自分の作風にしていくというチャレンジは、小説家の卵さん達にもご本人にも、楽しい時間ではないでしょうか。今回は、読者がお若めなのか、青くて痛くて脆い感じが多かったように思います。

    • 1Q84O1さん
      おびのりさん、何だか面白そうな感じですね
      けど今は土瓶師匠からおすすめしてもらった乙一本がいっぱいで乙一渋滞です(^_^;)
      忘れないように...
      おびのりさん、何だか面白そうな感じですね
      けど今は土瓶師匠からおすすめしてもらった乙一本がいっぱいで乙一渋滞です(^_^;)
      忘れないようにちょっとチェックしときます!
      箱庭図書館とφ(..)メモメモ
      2023/02/22
    • おびのりさん
      乙一作品の主流の方が、面白いと思うφ( ̄ー ̄ )
      乙一作品の主流の方が、面白いと思うφ( ̄ー ̄ )
      2023/02/22
    • 1Q84O1さん
      えっ!?
      そ〜なんですか_| ̄|○
      ひとまずメモ消し消し…w
      えっ!?
      そ〜なんですか_| ̄|○
      ひとまずメモ消し消し…w
      2023/02/22
  • 面白かった。
    素人の小説を乙一氏がリメイクする企画から生まれた作品。
    「僕は小説のアイデアが思いつかない人間。アイデアを募ってみよう。そしたら仕事します。書けます」と。(またまた〜笑)

    6つの連作短編の舞台は、図書館のある文善寺町。
    この町のキャッチコピーは、“物語を紡ぐ町”。
    物語は、ミステリー、ホラー、恋愛、青春と現実的であり、はたまたファンタジーの世界にも誘われる不思議な感覚。
    途中で、あ!これはファンタジーの分野なんだなと気付いたり、この先の嫌な予感に違ったりそうだったりして、なんだろう…読者の感情を静かに転がすのがうまいなぁ。
    そして、あれ?この人って?…と読み終えるとまたページを戻り、確認することになる。
    微笑ましくなったり、ゾッとしたり、良い意味で腑に落ちない余韻を残すのが良い。

    そっか…これは素人作者さん×乙一氏が生み出した“箱庭”での物語なんだなぁ。

    (特に良かった話)
    「ホワイト・ステップ」☆
    乙一の傑作“calling you” を彷彿とさせる叙情的な作品、と解説者。確かにっ!あの雰囲気が好きな方にオススメ!

    • 1Q84O1さん
      ほーら、来た!
      そして刺さった!
      自覚しなさい!w
      ほーら、来た!
      そして刺さった!
      自覚しなさい!w
      2023/10/22
    • 土瓶さん
      「小説家と夜の境界」(山白朝子名義)が残り予約番号1番まで来てますが、そっからがなかなか進まない(;´∀`)
      「小説家と夜の境界」(山白朝子名義)が残り予約番号1番まで来てますが、そっからがなかなか進まない(;´∀`)
      2023/10/22
    • なおなおさん
      やだな、やだな……あちこちからバトンが放たれつつある……:(´◦ω◦`):
      やだな、やだな……あちこちからバトンが放たれつつある……:(´◦ω◦`):
      2023/10/22
  • 乙一さんの作品をもっと読みたい!と思って手に取った本書、投稿作を乙一さんがリメイクするという、異色の短編集だった!
    でもとっても楽しめました。

    特に好きだったのは『青春絶縁体』と『ホワイト・ステップ』。
    『青春絶縁体』は、隠キャが自分達の空間だけで楽しくやってて、フレンドリーな雰囲気のクラスでは全く喋れない感じのリアルさが、小中学校の時の自分を思い出してまあ赤面もの。共感性羞恥はすごいけど、主人公たちの悩みが切実に感じられて、ああこれが本当の青春だよなあと思う。
    『ホワイト・ステップ』は、切なくて、愛しくて、すごく好きな短編だった。登場人物たちの幸せを願いたくなるような。特に森見作品に出てくるような腐れ大学生、近藤さんのことが大好きになった。

    乙一さんのリメイク裏話が全話読めたのも面白かった!

  • 舞台は【物語を紡ぐ街】文善寺町。
    連作ではない?けれど各話がつながっている短編集。
    今までこういうふうにつながりがある短編集は読んできたけど、そのどれとも違う感じ。人だけじゃなくて、小道具もつながってる。それもさりげなく。おしゃれだ。
    そしてどの話も面白かった!「コンビニ日和!」「ワンダーランド」「王国の旗」「ホワイト・ステップ」が特に好きかな(ほとんどじゃないか・・・)
    それぞれについてまとめました。


    「コンビニ日和!」
    寂れたコンビニに強盗がやってくるお話。軽快な会話と伏線がサラサラ回収されていく意外な展開。雰囲気は伊坂幸太郎作品に似ているような。
    一見、ちょっとなよっとした男の子が実はけっこう危ないことをしている。こういうの好き〜〜〜


    「ワンダーランド」
    拾った鍵がぴったりはまる鍵穴を探す少年と、ナイフがぴったりはまってパカッと開く肋骨を探す殺人犯の話。
    怖い!!!
    少年が死体を見つける過程がストレートに怖いのと、“めでたしめでたし。・・・あれ?そういえば・・・でも、そんなことあるわけないよね”と言いつつ、みたいな、静かにゾッとする展開。(?)この終わり方すごく好き!!
    そして、ラストシーンまで読んだとき、自分の無意識の思い込みに恥ずかしくなった。。。話し方とか犯罪の中身で犯人は男だと勝手に思い込んでいたんだな、と。
    だから余計に、うわぁ・・・とため息をついてしまった。


    「王国の旗」
    夜になると子どもたちが集まってくる“王国”に連れてこられた高校生の話。

    「家や学校にいるとき、自分は王国の人間なんだってことを自覚しながら暮らしていればいい。自分がいったい何者なのかってことが、わからなくて、不安になったとき、ここに来て、みんなとあそんだり、ボタンをはめる手伝いをしたり、いっしょに歌ったりするだけでいい」

    ミツとハチが好き。こういう、少年と大人の間にいて、ちょっと大人に片足突っ込んでいるような男の子。
    ここにもつながりがさりげなくいくつか。例えば、小野さんが閉じ込められた車庫にあった大量のうまい棒が気になる。これって「コンビニ日和!」に関連してる?こどもの頃、友達とうまい棒を万引きしたと話していた強盗さん。でも時系列が変かな?

    「ワンダーランド」で高田少年が見つけた鍵は、ここでミツが持っていた鍵ですよね。このつながりが一番おしゃれで好きかも。
    (高田少年はこの鍵のせいで事件に巻き込まれていくんだけどね)
    (小野さんにとっては何気なく落としてしまった鍵だったのに、というところがまた恐ろしくも面白い)
    高田少年は大人に対して自分を偽っていたけれど、鍵を開けて扉の向こうに行けた後は、ちょっと変わることができた。一歩進めた。
    だからきっと、“王国”にいる子どもたちもいつか大丈夫になるんだろうな。

    「何年か前だったら、きっと私も、あんたたちの仲間になっていたとおもう。親や先生やクラスメイトを偽って生活していたとおもう。でも、私は王国の仲間にはならないって道をえらんだ。正直にむきあいたい人がいるんだ」


    「ホワイト・ステップ」
    雪面に足跡を見つける。その足跡の主の姿は見えないけれど。
    雪が積もらないと出会えない、平行世界で暮らす2人の話。

    人生は選択の連続ですね。
    朝にごはんを食べるかパンを食べるか、いまこの瞬間にレビューを書くか書かないか、もすべて選択。人は小さな選択を積み重ねて生きている。
    「石鹸水にストローを入れて、息を吹き込み、無数のあぶくをふくらませるみたいに、宇宙が選択肢のたびに枝分かれして、増幅し、ふくれあがっていく」と仮定して、そうやって無数にある世界がある日少しだけ重なって、・・・という面白い設定。
    選択の結果なんて誰にもわからない。あのときああしていれば、とか、あんなことしなきゃよかったとか、生きていくうえで後悔はつきものだと思う。
    特に、今回の渡辺親子のように悔やみきれないような後悔があるとき、“どこかの世界であの人は生きている”と思えたら、少しだけ前を向けるかも。


    解説によると、「オツイチ小説再生工場」という企画で応募された小説を乙一さんがリメイクする形で生まれたという『箱庭図書館』。この企画には賛否両論あったそうですが、すでに書いたようにとても面白かったので私的には良いんじゃないかなと思いました。


    「私たちはそれぞれの世界で生きている。あるいているのだ。私は足を、一歩ずつ、確実に、前へふみだした。」

  • 乙一さんの短編集(文庫本)を購入。
    やっぱり好きだな〜。
    最後の方にある友井 羊さんによる解説も面白かった。

    お気に入りのお話は「ホワイト・ステップ」。
    「失はれる物語」に収録されていた「Calling You」のお話みたいで面白かった。乙一さんによるSFファンタジー的なお話が好み。ちょっぴり切ないところも好き。
    「コンビニ日和!」はコントみたいで面白かった。
    「ワンダーランド」はずっとじとーっとした怖いお話でした。

    【お気に入りの言葉】
    手をやすめて町をながめる。いつもなら様々な色が氾濫している。ポストの赤色、カーブミラーのオレンジ、道路の黒。雪の降り積もった日にはそれらがすべて白色におおわらる。神様がまだ絵筆をふるう前の何も描かれていないキャンバスのようだ。雪という漢字は[雪ぐ]という動詞にもつかわれる。祓い清めるという意味だ。雑多な色をすべて真っ白に隠してしまう様子はまさに世界を祓い清めたかのようだ。(P.232)

  • 6作品の短編集、さすがは乙一先生。見事にまとまりもあるし、色々なパターンのオチが最高でした。

  • どの話もちょっとだけ風変わりで、だれかの心の空白をのぞきみるような感じの独特なさみしさがあった。真冬にバス停留所のベンチで時を忘れて本に没頭する潮音さん、その弟で作家になった山里秀太がちょこちょこ顔を出す。全編読み通した後に第一話の「小説家のつくり方」に戻ると、もしかしてこの作品群は潮音さんが読んだもの?山里氏が書いたもの?って思っちゃう。そうすると「箱庭図書館」というタイトルがすとんときた。

  • 久々の乙一作品でした。

    いやー、乙一さん面白いなぁと
    再認識!

    こういう連作短編集が、
    好きだなぁ。

  • この本は、「オツイチ小説再生工場」から生まれたもので、読者が自分で書いた小説の原稿を送って、それを乙一さんが、リメイクするというものです。6人のアイデアを、それぞれ小説にまとめた乙一さんの手腕が感じられます。読み進めていくと、あっと驚く展開が待っていて、とても面白かったです。

    しかし、最も面白かったのは、潮音さんという1人の登場人物のおかげで、6つの話が1つの話に感じられるところです。

    潮音さんは、第1話「小説家の作り方」で出てくる、小説家のお姉さんです。「本好きの下剋上」の主人公のような、無類の本好きで、この本の表紙にもその姿が表れています。

    それぞれの話に、潮音さんが、チラッチラッと出てくるので、読み進めていくうちに、「今度の話は、潮音さん、どこに出てくるんだろう?」とワクワクしながら読みました。彼女の登場が、いいアクセントになっています。

    この本は、温かい気持ちになったり、不思議な世界に連れて行かれたり、笑ったり、とても楽しく読める一冊です。

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著者プロフィール

1996年、『夏と花火と私の死体』で第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞しデビュー。2002年『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞を受賞。他著に『失はれる物語』など。

「2022年 『さよならに反する現象』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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