東京ロンダリング (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 813
感想 : 97
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451481

作品紹介・あらすじ

変死などの起こった物件に一ヶ月だけ住み、また次に移るという奇妙な仕事をするりさ子。心に傷を持ち身一つで東京を転々とする彼女は、人の温かさに触れて少しずつ変わっていく。(解説/北上次郎)

感想・レビュー・書評

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  • 笑顔を作ってごらん
    そう言われ、りさ子は何度もその表情を作った。
    りさ子のちょっと変わった仕事の心構えとして言い渡されたことだった。自分の意思は必要はない。
    心に傷を負った無気力なりさ子がロンダリングという仕事を通し、自分を取り戻してゆく再生物語。
    その若さで人との関わりを避け、抜け殻のように過ごす。と言えばその仕事は合っているかもしれない。
    そんな頃出会う、亮と真鍋夫人、ふたりはとても温かい。人間関係、時には垣根を越え来てくれる「おせっかい」もありがたいと思えた。
    りさ子が元気を取り戻し綺麗になって生き生きしてゆくところが良かった。
    ロンダリングが自分の力だと気づき自分自身を肯定し始める。りさ子の心の動きがすごく伝わり、共感あり、奇抜な設定ありで面白かった。
    なにもかも満たせているのが幸せではなく、身の丈にあった、ということが大事なんだと。
    個人的には、こしょう焼きと煮玉子がとても美味しそうだった。ぜひレシピを知りたい。
    ロンダリングという仕事があってもいいと思った(私は無理だが)。

  • いやぁ~、ひ香さんは毎作ごとに
    変わったテーマを小説の題材にしていて意欲的だし、
    出てくる登場人物たちがみなどこか変な人たちばかりで面白い。
    次は何をやってくれるんだろうと
    いつも気になっている作家です。
    (読書好きの間では今、原田さんと言えば圧倒的にマハさんなんだろうけど、もう少しひ香さんにも注目して欲しいと思う今日この頃笑)

    今作はある意味不気味で怖いテーマを
    うまく人情話と絡めて
    ある女性の再生を描いているんだけど、
    無気力で掴みどころのないヒロインだから余計に続きが気になって気になって(笑)、
    僕にしては珍しく夢中で読み浸ってしまった。



    主人公は
    自らの不貞で離婚をした
    大人しく口数の少ない32歳の女性りさ子。

    家を失った彼女は不動産屋の紹介で
    死者の出た部屋、つまり事故物件に一定期間住み報酬を貰う、
    ロンダリング(浄化)の仕事を引き受けることに…。
    常人では続かない仕事を
    作り笑いを浮かべ、人と関わらず、目立たぬよう敵を作らぬよう、淡々と仕事をこなしていくりさ子。



    この作品を読んで初めて
    ロンダリングの意味や実情を知りました。

    不動産屋の社長、相場(あいば)いわく、

    「あんたたちが入ってロンダリングしてくれれば、俺も助かる、大家も助かる、次に入る人間も助かる。俺たちは法を犯してはいない。東京は狭くて不動産は限られている。しかも、人がやたら死ぬ。変死した人間がいる部屋がどんどん使えなくなったら、だれも住めなくなっちまう。
    あんたたちがやってることは人助けなんだよ。いや、東京助けなんだな」

    には確かに納得させられたな。
    大都会、東京だからこその隙間産業。


    あと、その部屋で何があったのか、
    ちゃんとした事情を知った者が入らなきゃロンダリングにはならないんですね。

    物語の中でも
    変死や孤独死など、その部屋で以前何があったかの
    ロンダリングをしなければならない理由を
    相場がりさ子に話します。
    ロンダリングする人はそれを納得した上で、1ヶ月から1年そこに住み、
    ほとぼりが冷めた頃、次の入居者に引き渡す形になるそう。


    あちこちの物件を渡り歩きロンダリングしながら、
    無気力と惰性でだだ生きているだけのりさ子を
    現世に留め本来の人間に戻すような役割を担う人たちが
    この物語にも登場します。


    70過ぎのおばあちゃんで
    りさ子になんやかんや世話を焼いてくる
    台東区谷中の乙女アパートの大家、真鍋夫人と

    りさ子に好意を寄せる定食屋・富士屋の若大将の藤本亮です。

    この二人が出てきてから
    俄然物語は転がり面白くなっていきます。

    しかし、谷中に住む人たちのお節介や人情があったくて、
    暗くなりがちな物語のテーマだけに
    余計に身に染みるものがあったな~。


    それにしてもひ香さんは食の描写がほんとうまい!
    ご飯が進む富士屋秘伝の豚肉の胡椒焼き。
    まろやかで甘みのあるポテトサラダ。
    後引く旨さのカレー味のスパゲティ。
    たっぷりの大根おろしと食べる秋刀魚の塩焼き。
    オイスターソースを絡めた豚肉とピーマンの炒め物。
    ふわふわとして、
    噛めば出汁の旨味が口の中に溢れ出る厚焼きだし巻き。
    ナンプラーとオイスターソースの旨味が利いた煮玉子。
    外はカリカリ、中はしっとりとやわらかい鶏の唐揚げ。

    などなど、根が食いしん坊体質の僕は
    富士屋の料理シーンが出てくるたびに
    妄想列車が暴走し、激しく胃袋掴まれましたよ(笑)
    (それにしても人が再生する話には必ずと言っていいほど、美味しそうな食事が描かれる。やっば食べることが人間を作ってくれるし、食べることが生きることだからなのだろう。逆に食事シーンが雑に描かれている話には説得力がないし、リアルを感じない)


    ロンダリングの仕事をする心構えとして相場から言い渡された
    「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように。そうしていれば、絶対に嫌われない」を忠実に実行して今まで生きてきたりさ子。

    目標も欲望もなく感情を捨て、自分を消し去り、
    ただ日々を生きているだけだった彼女が
    「もう、その作り笑いはやめていいわよ」
    と真鍋夫人に言われ、

    厚かましく(笑)何かと構ってくる富士屋の人たちとのあたたかな生活の中で
    りさ子は少しずつ少しずつ
    生きる気力を取り戻し、自分自身を取り戻し、
    人との出会いややりとりの中で
    彼女自身がロンダリングされていきます。
    (おそらく、りさ子にとって谷中という町や富士屋食堂は息の吸い方と吐き方を取り戻せる場所だったのだろう)


    心を殺し、人を避け、作り笑いで毎日をやり過ごす日々も
    長い人生の一時期には確かに必要かもしれない。
    けれど、どんなにうっとうしくて
    どんなに煩わしい人間関係でも
    人に忘れられるよりかはずっといい。

    帰る場所があるということ。
    必要としてくれる人たちがいること。
    待っててくれる誰かがいること。

    それは当たり前ではなく
    なんと有り難いことなのか。

    自分の欲望を知るには、
    人と出会う旅に出なくてはならないし、
    人との出会いの中からしか
    人が成長することはないのだと思う。


    本当にいい本は価値観を押し付けたりしない。ただ静かに沁みてくる。
    自分が頑なにこうだと信じてきた世界を、読後、新たな視線で眺めることができるようになる。

    この物語はそんな小説です。

    • フーミンさん
      円軌道の外さん、こんばんわ〜。めちゃめちゃお久しぶりです!お元気そうでなによりです。コメントありがとうございます!
      こんな私を覚えてくださっ...
      円軌道の外さん、こんばんわ〜。めちゃめちゃお久しぶりです!お元気そうでなによりです。コメントありがとうございます!
      こんな私を覚えてくださっていたなんて(笑)

      実は私もブクログほぼ放置な感じでした^_^;
      皆さんのレビューを覗くくらいで。
      本を読んでも☆付けるだけで、レビューも書かなくなってました。

      だけどちゃんと書いておかないと内容けっこう忘れてますね。これからはボチボチ頑張ります。

      原田ひ香さんはブクログのレビューがキッカケで読むようになったんですが、私もけっこう好きです☆この東京ロンダリングもすごく面白そう!絶対読みます!

      ほんと、美味しい食事が出てくる作品は人間らしさが感じられていいですよね。
      これは井上荒野さんもそうですもんね。

      ではでは、これからもどうぞ宜しくお願いします。
      2018/01/19
    • 円軌道の外さん
      フーミンさん、遅くなりましたが、
      いいねポチとコメントありがとうございます!

      いえいえ、何をおっしゃいますか!
      こっちこそ、覚えて...
      フーミンさん、遅くなりましたが、
      いいねポチとコメントありがとうございます!

      いえいえ、何をおっしゃいますか!
      こっちこそ、覚えててくれて感謝感激です!(泣)(>_<)

      あっ、フーミンさんも
      お休みしてたのですか!
      なんか、古くから仲良くしてもらってるユーザーさんの多くが放置状態だったりして、
      僕も驚いています。

      やっぱ何かを書き続けることって大変ですよね(笑)
      (まぁ、読むことも大変だけど)

      そう考えたら
      一から物語を作って
      締切りまでに仕上げるプロの作家はスゴいな~って思うし、
      心から尊敬します(笑)
      (僕は1つの感想書くだけでも四苦八苦してるのに、角田光代さんなんか、月に連載20本近くですよ!汗)


      あはは(笑)分かります!
      僕も後でいざレビュー書こうと思っても
      肝心の内容がうろ覚えで(汗)
      休んでた期間に読んだ作品のレビューは
      なかなか書けなかったですもん(>_<)

      あっ、僕も同じく、原田ひ香さんと井上荒野さんは
      ブクログのレビュー読んで
      ハマった作家です(笑)
      特にひ香さんはなんと言っても発想がいつも斬新ですよね。
      変な設定がクセになりました(笑)

      あと、フーミンさんの言うように
      食事のシーンをすっ飛ばさずにちゃんと書いてる作家は
      信じられる気がします。
      ここが曖昧だとリアリティーがなくなるし。

      東京ロンダリングは自信持ってオススメします。
      続編も出てるようなので
      そちらも近いうちに読んでみるつもりです。

      こちらこそ、あらためて
      よろしくお願いします!
      2018/01/31
  • 今まで積み上げてきたものを一切合財なくしてしまうと
    その衝撃から自分の人生なのに他人事のような
    ただただ時間の中を彷徨っているだけの異空間に
    どっぷりはまってしまうものなのでしょうか。

    離婚し、生きる糧がまったくない状態のりさ子が
    ビックリするような職にありついたことより、
    存在感がなく、生活しているのに気配を感じない
    引っ越してしまえばそんな人間がいたことすら
    すぐに忘れ去られてしまうようなりさ子の日常が
    気になって気になって
    どんどんページをめくってました。

    やっぱり、自分自身を取り戻すためには
    周囲の人との関わり合いが重要なんですね。
    そして不健康な生活には規則正しいリズムも必要。
    ラストが明るくなれる一冊です。

    原田ひ香さん、初めて読みました。
    面白いところからひょいとボールが投げ込まれる
    ような感じがして、ちょっと刺激的でした。
    他の作品も気になります。少しずつ読みたいです。

  • 主人公のりさ子は、夫と離婚し、住むお金がなくロンダリングを始める。

    ロンダリングという存在を知らなかった。

    事故物件に一時的に住み、部屋を浄化する職業とでも言えばよいのだろうか。

    住み移ることを仕事とし、移り住んだ先で人々とのつながりも生まれはじめる。
    そのことが、りさ子自身を浄化させているようにも思えた。

    りさ子の恋愛事情を始め、仕事仲間のその後など、いろいろ気になる。

  • すごく良かった!自己再生の物語ですが、登場人物や展開、物語の世界観はわりと淡々としていて、自分好みの雰囲気でした。
    一見すると社会にあまり溶け込めていないような人でも、ロンダリングや蝉を鳴かせない才能など、その人にしかできない仕事があるって、すごく温かくて素敵だなと。
    東京というきらびやかな大都会の街でも、そこに住む人間には様々な人生があることを強く感じました。

  • 「東京ロンダリング」ってラ行が入ってはずむ感じもあって何だかおしゃれな響き。でも実は、ワケあり直後の物件に一定期間住むことで次の住人へのワケありの説明をしなくてすむようにすること。そんなことしながら何とか生きてるりさ子さんもワケあり。すべては明かされないけど、読んでいるうち何となく何があったのかはわかる。
    ストーリーはシンプル。ただ住んでいるだけでお金になるロンダリングをしながら先の見えない無気力な日々を過ごしていたりさ子さんが、移り住んだ街でおせっかいな人たちに干渉されているうちに気持ちが変わっていく。おせっかいな人たちだけでなく、ロンダリングの元締めの不動産屋の社長や事務員、同業の菅さんとか、周囲には実はいい人に囲まれている感じ。
    シンプルなストーリーで読み終えれば気持ちがちょっとほっこり。面倒な社会を裏から支えている人たちの世界が垣間見れる感じ。

  •  事故物件。事故の過去を消すために住んで、その部屋を浄化させる。近所の人との交流は不要。

    「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように、そうしていれば、絶対に嫌われない」そうして、また次の事故物件へと引っ越しをする。

     人と関わることが苦手なりさ子が、谷中の乙女荘に住み、定食屋に勤めることになってしまう。そして、りさ子の人生がりさ子の意志を持って動きだす。

     東京の街にはたくさんの人がいて、たくさんの部屋があり、そりゃ人は死ぬ。部屋のロンダリング=浄化。ありそうな仕事。そうか、事故物件となり、経歴に傷がついてもロンダリングすることで【再生】のチャンスが来るんだ。許される、んじゃなくて、リセットでもなく、ロンダリングされる。

     原田ひ香さんの本は美味しいものが不意に出てくる。定食屋の豚のこしょう焼き、朝締めた鶏の唐揚げと漬物しかない店。

     出てくるキャラクターも、味が濃い。ロンダリングの不動産屋の相場、同じくロンダリング同業者の菅さん、乙女荘の真鍋夫人。もっと続きが読みたくなる。

  • いわゆる事故物件に期間限定で済むことで告知義務を回避させる仕事をしている女性が主人公。
    実際にこういう仕事ありそう…。
    物語を進める言葉はとても静かで優しい。

  • 何も特別起こらないが事故や事件があった部屋に
    住んで部屋を浄化(ロンダリング)する女性が
    周りの人たちと関わりながら徐々に心を開いてゆく
    お話かな?ホントにこんなお仕事があるのかと
    調べたが実際にはないみたいです。でも事故
    物件ってその後に誰かが住めば、もう事故物件
    としては扱わないらしいので実際に職業として
    あっても不思議ではないかも?
    怖い思いすることもありそうですけどね。

  • 事故物件芸人、が少し前流行ったのを思い出した。
    でも本来あるべき姿は、次に借りる人が何も無く普通に住めるよう浄化するのが本当だと思った。

    こんな仕事が本当に東京にあるのだろうか?

    でもこういう生き方、子どもが就職したらやってみたいかも。にこやかに愛想良く、は得意なので。

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著者プロフィール

1970年、神奈川県生まれ。2005年「リトルプリンセス2号」で第34回NHK創作ラジオドラマ大賞最優秀作受賞。07年「はじまらないティータイム」で第31回すばる文学賞受賞。著書に「三人屋」シリーズや『三千円の使いかた』『古本食堂』『事故物件、いかがですか?』などがある。本書は、疲れた心を癒す人間ドラマ×絶品グルメ小説「ランチ酒」シリーズ第2弾。

「2022年 『ランチ酒 おかわり日和』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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