東京ロンダリング (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.53
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本棚登録 : 403
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (197ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451481

作品紹介・あらすじ

変死などの起こった物件に一ヶ月だけ住み、また次に移るという奇妙な仕事をするりさ子。心に傷を持ち身一つで東京を転々とする彼女は、人の温かさに触れて少しずつ変わっていく。(解説/北上次郎)

感想・レビュー・書評

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  • いやぁ~、ひ香さんは毎作ごとに
    変わったテーマを小説の題材にしていて意欲的だし、
    出てくる登場人物たちがみなどこか変な人たちばかりで面白い。
    次は何をやってくれるんだろうと
    いつも気になっている作家です。
    (読書好きの間では今、原田さんと言えば圧倒的にマハさんなんだろうけど、もう少しひ香さんにも注目して欲しいと思う今日この頃笑)

    今作はある意味不気味で怖いテーマを
    うまく人情話と絡めて
    ある女性の再生を描いているんだけど、
    無気力で掴みどころのないヒロインだから余計に続きが気になって気になって(笑)、
    僕にしては珍しく夢中で読み浸ってしまった。



    主人公は
    自らの不貞で離婚をした
    大人しく口数の少ない32歳の女性りさ子。

    家を失った彼女は不動産屋の紹介で
    死者の出た部屋、つまり事故物件に一定期間住み報酬を貰う、
    ロンダリング(浄化)の仕事を引き受けることに…。
    常人では続かない仕事を
    作り笑いを浮かべ、人と関わらず、目立たぬよう敵を作らぬよう、淡々と仕事をこなしていくりさ子。



    この作品を読んで初めて
    ロンダリングの意味や実情を知りました。

    不動産屋の社長、相場(あいば)いわく、

    「あんたたちが入ってロンダリングしてくれれば、俺も助かる、大家も助かる、次に入る人間も助かる。俺たちは法を犯してはいない。東京は狭くて不動産は限られている。しかも、人がやたら死ぬ。変死した人間がいる部屋がどんどん使えなくなったら、だれも住めなくなっちまう。
    あんたたちがやってることは人助けなんだよ。いや、東京助けなんだな」

    には確かに納得させられたな。
    大都会、東京だからこその隙間産業。


    あと、その部屋で何があったのか、
    ちゃんとした事情を知った者が入らなきゃロンダリングにはならないんですね。

    物語の中でも
    変死や孤独死など、その部屋で以前何があったかの
    ロンダリングをしなければならない理由を
    相場がりさ子に話します。
    ロンダリングする人はそれを納得した上で、1ヶ月から1年そこに住み、
    ほとぼりが冷めた頃、次の入居者に引き渡す形になるそう。


    あちこちの物件を渡り歩きロンダリングしながら、
    無気力と惰性でだだ生きているだけのりさ子を
    現世に留め本来の人間に戻すような役割を担う人たちが
    この物語にも登場します。


    70過ぎのおばあちゃんで
    りさ子になんやかんや世話を焼いてくる
    台東区谷中の乙女アパートの大家、真鍋夫人と

    りさ子に好意を寄せる定食屋・富士屋の若大将の藤本亮です。

    この二人が出てきてから
    俄然物語は転がり面白くなっていきます。

    しかし、谷中に住む人たちのお節介や人情があったくて、
    暗くなりがちな物語のテーマだけに
    余計に身に染みるものがあったな~。


    それにしてもひ香さんは食の描写がほんとうまい!
    ご飯が進む富士屋秘伝の豚肉の胡椒焼き。
    まろやかで甘みのあるポテトサラダ。
    後引く旨さのカレー味のスパゲティ。
    たっぷりの大根おろしと食べる秋刀魚の塩焼き。
    オイスターソースを絡めた豚肉とピーマンの炒め物。
    ふわふわとして、
    噛めば出汁の旨味が口の中に溢れ出る厚焼きだし巻き。
    ナンプラーとオイスターソースの旨味が利いた煮玉子。
    外はカリカリ、中はしっとりとやわらかい鶏の唐揚げ。

    などなど、根が食いしん坊体質の僕は
    富士屋の料理シーンが出てくるたびに
    妄想列車が暴走し、激しく胃袋掴まれましたよ(笑)
    (それにしても人が再生する話には必ずと言っていいほど、美味しそうな食事が描かれる。やっば食べることが人間を作ってくれるし、食べることが生きることだからなのだろう。逆に食事シーンが雑に描かれている話には説得力がないし、リアルを感じない)


    ロンダリングの仕事をする心構えとして相場から言い渡された
    「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように。そうしていれば、絶対に嫌われない」を忠実に実行して今まで生きてきたりさ子。

    目標も欲望もなく感情を捨て、自分を消し去り、
    ただ日々を生きているだけだった彼女が
    「もう、その作り笑いはやめていいわよ」
    と真鍋夫人に言われ、

    厚かましく(笑)何かと構ってくる富士屋の人たちとのあたたかな生活の中で
    りさ子は少しずつ少しずつ
    生きる気力を取り戻し、自分自身を取り戻し、
    人との出会いややりとりの中で
    彼女自身がロンダリングされていきます。
    (おそらく、りさ子にとって谷中という町や富士屋食堂は息の吸い方と吐き方を取り戻せる場所だったのだろう)


    心を殺し、人を避け、作り笑いで毎日をやり過ごす日々も
    長い人生の一時期には確かに必要かもしれない。
    けれど、どんなにうっとうしくて
    どんなに煩わしい人間関係でも
    人に忘れられるよりかはずっといい。

    帰る場所があるということ。
    必要としてくれる人たちがいること。
    待っててくれる誰かがいること。

    それは当たり前ではなく
    なんと有り難いことなのか。

    自分の欲望を知るには、
    人と出会う旅に出なくてはならないし、
    人との出会いの中からしか
    人が成長することはないのだと思う。


    本当にいい本は価値観を押し付けたりしない。ただ静かに沁みてくる。
    自分が頑なにこうだと信じてきた世界を、読後、新たな視線で眺めることができるようになる。

    この物語はそんな小説です。

    • フーミンさん
      円軌道の外さん、こんばんわ〜。めちゃめちゃお久しぶりです!お元気そうでなによりです。コメントありがとうございます!
      こんな私を覚えてくださっ...
      円軌道の外さん、こんばんわ〜。めちゃめちゃお久しぶりです!お元気そうでなによりです。コメントありがとうございます!
      こんな私を覚えてくださっていたなんて(笑)

      実は私もブクログほぼ放置な感じでした^_^;
      皆さんのレビューを覗くくらいで。
      本を読んでも☆付けるだけで、レビューも書かなくなってました。

      だけどちゃんと書いておかないと内容けっこう忘れてますね。これからはボチボチ頑張ります。

      原田ひ香さんはブクログのレビューがキッカケで読むようになったんですが、私もけっこう好きです☆この東京ロンダリングもすごく面白そう!絶対読みます!

      ほんと、美味しい食事が出てくる作品は人間らしさが感じられていいですよね。
      これは井上荒野さんもそうですもんね。

      ではでは、これからもどうぞ宜しくお願いします。
      2018/01/19
    • 円軌道の外さん
      フーミンさん、遅くなりましたが、
      いいねポチとコメントありがとうございます!

      いえいえ、何をおっしゃいますか!
      こっちこそ、覚えて...
      フーミンさん、遅くなりましたが、
      いいねポチとコメントありがとうございます!

      いえいえ、何をおっしゃいますか!
      こっちこそ、覚えててくれて感謝感激です!(泣)(>_<)

      あっ、フーミンさんも
      お休みしてたのですか!
      なんか、古くから仲良くしてもらってるユーザーさんの多くが放置状態だったりして、
      僕も驚いています。

      やっぱ何かを書き続けることって大変ですよね(笑)
      (まぁ、読むことも大変だけど)

      そう考えたら
      一から物語を作って
      締切りまでに仕上げるプロの作家はスゴいな~って思うし、
      心から尊敬します(笑)
      (僕は1つの感想書くだけでも四苦八苦してるのに、角田光代さんなんか、月に連載20本近くですよ!汗)


      あはは(笑)分かります!
      僕も後でいざレビュー書こうと思っても
      肝心の内容がうろ覚えで(汗)
      休んでた期間に読んだ作品のレビューは
      なかなか書けなかったですもん(>_<)

      あっ、僕も同じく、原田ひ香さんと井上荒野さんは
      ブクログのレビュー読んで
      ハマった作家です(笑)
      特にひ香さんはなんと言っても発想がいつも斬新ですよね。
      変な設定がクセになりました(笑)

      あと、フーミンさんの言うように
      食事のシーンをすっ飛ばさずにちゃんと書いてる作家は
      信じられる気がします。
      ここが曖昧だとリアリティーがなくなるし。

      東京ロンダリングは自信持ってオススメします。
      続編も出てるようなので
      そちらも近いうちに読んでみるつもりです。

      こちらこそ、あらためて
      よろしくお願いします!
      2018/01/31
  • 今まで積み上げてきたものを一切合財なくしてしまうと
    その衝撃から自分の人生なのに他人事のような
    ただただ時間の中を彷徨っているだけの異空間に
    どっぷりはまってしまうものなのでしょうか。

    離婚し、生きる糧がまったくない状態のりさ子が
    ビックリするような職にありついたことより、
    存在感がなく、生活しているのに気配を感じない
    引っ越してしまえばそんな人間がいたことすら
    すぐに忘れ去られてしまうようなりさ子の日常が
    気になって気になって
    どんどんページをめくってました。

    やっぱり、自分自身を取り戻すためには
    周囲の人との関わり合いが重要なんですね。
    そして不健康な生活には規則正しいリズムも必要。
    ラストが明るくなれる一冊です。

    原田ひ香さん、初めて読みました。
    面白いところからひょいとボールが投げ込まれる
    ような感じがして、ちょっと刺激的でした。
    他の作品も気になります。少しずつ読みたいです。

  • 主人公が普通っぽい女性なのがいい♪

  • 面白かった!
    ぱーっと使いました、というのが本当よかった。他のも読んでみよう!

  • 【あらすじ】
    内田りさ子、32歳。訳あって夫と離婚し、戻る家をなくした彼女は、都内の事故物件を一か月ごとに転々とするという、一風変わった仕事を始める。
    人付き合いを煩わしく思い、孤独で無気力な日々を過ごすりさ子だったが、身一つで移り住んだ先々で出会う人人とのやりとりが、次第に彼女の心を溶かしてゆく―。
    東京の賃貸物件をロンダリング“浄化”する女性の、心温まる人生再生の物語。

  • 変死などの起こった物件に一ヶ月だけ住み、また次に移るという奇妙な仕事(ロンダリング)をするりさ子。
    家賃はいらない、食事は格安なお弁当、家具は最低限でテレビなどは見ない、趣味は中古書店で買った本の読書。
    超地味な生活を送っているりさ子が引き受けた仕事先で、仕事を知っているはずの大家さんの口利きである定食屋で働く事に。
    ロンダリング仲間や定食屋さんの主家族との交流を通して変わっていきます。

    かなり淡々とした話なので、つまらない、と感じる人もいると思います。私も、結構読み続けるか悩みながら読みました。

  • まあまあだけど、ぴんとこない

  • 事故物件をロンダリング(浄化)する。かなりセンセーショナルな物語だ。主人公りさ子は、暗い影を漂わせる女性。離婚し、行き場を失った彼女を救ったのがロンダリング。事故物件で住宅が賃貸できないとなると、本書で言うとおり都会では貸せる物件がなくなってしまう。まして高齢社会だ。単身高齢者の孤独死は増える一方だろう。住宅賃貸の仕事をしていた時、幾人かの仏に出会ったり、家賃滞納を経験すると、賃貸経営って大変だし自分にはできないと思った。すみません、本書の主題とは見当外れの感想でした。

  • 賃貸住宅で住人が死亡した部屋に住み、事故物件を通常の物件にする仕事。こういう仕事があるのは知っていましたが、小説などでその仕事を扱っているのは初めて。りさ子の離婚は夫が仕組んだものでは?と思ったけど、やっぱりか。汚い男だな、そのお父さんはいい人なのに。こういう仕事をしているのに菅さんは弱すぎと感じた。定食屋の富士屋の料理美味しそう。亮とこれからどうなるのか?簡単にくっつかず、ロンダリングを続けながら富士屋に通うりさ子の決断がよかった。

  • 事故物件に次に住む人にはその内容をきちんと説明する義務がある
    しかし、1人でもそこに住んでしまえば次の人にはその説明の義務がない
    主人公は事故物件に、転々と数ヶ月住むという仕事をしている。

    この人の書く本を数冊読んだけど、どーしても、胸糞悪い感じがでてくる
    うーーーと言いたいが発散は特になく、でも、納得させられてホーーーーっという感じで読み終わる、
    凄くおもしろいです。

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プロフィール

原田 ひ香(はらだ ひか)
1970年、神奈川県生れ。2006年、NHK 創作ラジオドラマ脚本懸賞公募にて最優秀作受賞。2007年、「はじまらないティータイム」ですばる文学賞を受賞してデビュー。著書に『東京ロンダリング』『三人屋』『母親ウエスタン』『虫たちの家』『ラジオ・ガガガ』『ランチ酒』などがある。
(2018年5月10日現在)

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