食べる。 (集英社文庫(日本))

  • 集英社 (2014年1月17日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784087451559

作品紹介・あらすじ

エチオピア、ネパール、メキシコetc…世界中の国を旅するなかで、著者は様々な食文化に出会う。“食"から見えてくる、土地と人びとのかたち。開高賞作家による珠玉のノンフィクション!(解説/森枝卓士)

みんなの感想まとめ

食を通じて人々や文化に触れる旅の魅力が描かれた作品です。著者は、世界各地の食文化を体験しながら、単なる食事以上の深い意味を探求します。食べることは人との交流を生み出し、時には理解し難い体験や感情を伴う...

感想・レビュー・書評

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  • 食べる、
     食べる、
      食べる。

    普段、日本で暮らす私達は「咀嚼の感覚を深く意識させ、食べるという行為への自覚」(p188)なんて思い至ることがあるだろうか。
    うーむ、私は考えたことがありませんでした。もちろん、若い頃にはそれなりの貧乏も経験したので食べられることのありがたみは身に沁みているつもりはあるし、出てくるもの・出されるものは残さず食べよう飲もう、という気構えは当たり前のことだと教わってきたのですが、本書が説いているのはそういった倫理ともまた違う、‘生きている’ことへの根源に迫った荒く肉々しい部分、もっと言えば‘みんなで生きている’という事を改めておさらいしとこうかな、と思いつつ決してストイックに禁欲的に、ということでもなくて嫌なものは嫌だし不味いものは不味い、酸い甘い併せ呑んだひとりの旅のプロフェッショナルによる吐き出し、ないし問わず語りといった紀行エッセイ集。

    珍しい食べ物を紹介したり味の感想を語ったりする内容とはまた違くて、それを食べながらその土地の人と何を語らったか、どんな時を過ごしたのかを綴った作品。翻すと、その土地の人たちと心を交わすには共に飲み食いをするのが一番。気をつけたいのは、心を交わすにしても常に清く美しいケースばかりではなくて、時に理解し難かったり嫌悪を覚えたりしている事。当たり前だ。そういうこともひっくるめて私の経験血肉になっていくのが‘生きる’こと、即ち人生。

    話によっては、これはどう受け止めたら良いのだろう?というものがあったが、戸惑いもまた人生。

    特に印象深かったのは《第五話 ジャンクフード ボツワナ》の話。凄い、過ごした時そのものがものすごくジャンキーで、刹那的で、空虚。けども、素晴らしい景色や得難い学びばかりに目を向けるのでなく、事実としてこうしたくたびれた人間模様を体験することもまた旅の側面的魅力なのかもしれない。

    ひとり旅したくなるなあ。


    2刷
    2024.8.23

  • 本書の筆者である中村安希を最初に読んだのは、3年ほど前のことであり、それは、開高健ノンフィクション賞を受賞した「インパラの朝」という本だった。「インパラの朝」は旅行記だった。アジア・中東・アフリカ・ヨーロッパの47か国をを684日間まわる、とても過酷な旅の記録だった。私はこの本がとても気に入り、その後も中村安希の本を何冊か読んでいる。
    本書「食べる。」も久しぶりに中村安希の本を読んでみようと思って手にとったものだ。「食べる。」という題名から考えて、当然、何か「食」「食文化」等に関するノンフィクションだと思っていたが、実際には、この本も旅行記だった。「食べる。」ことは、収載されている16話に必ず出てくるが、それがメインのテーマではなく、旅先での出来事の一つとして位置づけられている。「インパラの朝」のような旅行記をまた読んでみたいな、と思っていたので、そういう内容であったことは、嬉しい勘違いでもあった。
    最後の16話目、ルーマニアでの話の中で、彼女は「旅」についての自分自身の考えを書いている。それは、彼女の旅のブログを読んでメールをくれた、ルーマニア人の女性に対しての返信のメールとして書かれている。
    【引用】
    私は、旅を全くしない人生は、意味や特徴が少ないと考えています。旅をする以外の方法で、どうやって世界のことを知ればいいのかが私にはよく分からないし、さらに言うと、この世界のことを何も知らないままでは、自分が何をすればよいのかを正確に知ることはできないと思うからです。だから旅をしています。
    【引用おわり】

    このような考えを持つ人の旅行記として、「インパラの朝」に続き、本書も楽しく読んだ。

  • 食べる。
    その名の通りにたくさん食べていた。
    けど、食べる以外にも、現地の人との交流とかがめっちゃ面白かった。空気を味わえた。
    食べ物もめっちゃうまそうよなぁ…。
    海外行きてえ…。

  • 題名通り、観光地ではない海外の食(韻)に関する紀行記。

    スーダン人の田舎の子が都会で働いていて、でも、ゆくゆくは村に帰って細々と生きていくよという言葉が、田舎から出て東京で働く日本人と重なった。

  • 海外旅行に行けない今、空想旅行するのに良かった!私も著者みたいな安宿を泊まり歩く旅がしたい。

  • 『インパラの朝』(集英社)で描かれていた、旅をする著者の姿がかっこよかったので本書も読んでみました。
    食べる、というタイトルですが、いわゆる食レポではありません。
    食べ物の周囲には、それを食べる人がいて、彼らの暮らしがある。
    著者が各国で出会った人や出来事を綴る中に、印象的に、ときに象徴的に食べ物が登場する16の文章が収められています。

    著者のきっぱりとした文章からは、彼女の体験したことをリアルに伝えようとする冷静さが感じられます。
    乾杯の口上とともに次々に空になるショットグラス。
    気のおけない仲間と楽しく喋りながら頬張るタコス。
    半ば無理矢理連れてこられた山の村祭りで口にした解体したてのヤギの内蔵。
    ページの向こう側から立ち上る"その場"の気配が、より濃密に感じられました。

  • もの喰う人々、を思い出す。あの本も世界中を巡って食というミクロ且つ文化の凝縮されたものから世界の現在の姿を読み解く試みでした。
    この中村さんの本は、旅で出会った食に絡めた、ただありのままの旅のことをつづるエッセイ集です。違いといえば、前者ほど大仰な試みではなく、思い出話のようなもの。薄味ではあるが、しかしただの旅人の瑞々しい視点が、まるで自分の視点のよう。追体験として読めるということは、やはり自分の延長線上にはこの人がいるのだろう。

  • 日本を出たこともない私には、海外のなんだか分からない食べ物を口にするってことは勇気や覚悟がいる以上の行動に思えるんだけど、旅人はいったいどんな気持ちでその食べ物に対峙するんだろう。
    ということが、すこし分かる。本当は分かるなんて言っちゃいけないんだけど。

    カラカラに干からびたところへ差し出された、現地の水。
    ゲロ雑巾と二つ名がつけられた食べ物。
    隣国のファストフード店が作るものには見向きもしない、その国の人たちの誇りに支えられた料理。
    目の前で解体されたヤギの内臓。

    それを食べる以外の選択肢がないときもあるし、純粋に興味から口にするときもあり、招かれてとる食事もある。
    旅人がかならず持っているものは勇気や覚悟もそうだろうけど、なにより好奇心と会話する意思がないと続かないんだな、と思った。

  • 旅といえば思いつくがまま行きたい場所に行き、宿と交渉したり、現地の人と食べて飲みコミュニケーションを取る、そんなイメージが浮かんでくるが、まさにそのイメージまんまの旅をしている中村さん。

    旅人たちの間でゲロ雑巾と言われるエチオピア料理のインジェラに魅了され、スーダンではカビ臭くて土の味がする水を渇望し、アルメニアでは浴びるように自家製ウォッカを飲まされ...想像絶する世界にいる。

    食べるということは生きるためでもあるが、人とコミュニケーションを取るためのものでもあるんだなと改めて思った。


    旅と食べ物といえば小泉武夫が出てくる。
    彼の著書にもモンゴルの遊牧民のゲルで主人たちと沢山の酒や肉を飲み食いする話があるが、あれは小泉先生が男性だったからこその振る舞いだったんだな

    ゲル内の社交場は男尊女卑で筆者を含め女性の旅人はいない者とされていた。
    それを冷静に受け止め観察している著書も凄い。

  • 最初は結構淡々と話すし、そこまで一喜一憂せず、感情をそこまでださないのかなと思って染み込まなかったけど、中盤からノリに乗ってきた。面白い。
    でもちょっと残念だったのが解説。なにかを薦めるときに何かを下げる必要は無いと思う。


    「臭かった。けれど臭みが顔中に広がると、不思議な気持ちよさがあることに気がついた。それは、臭みにはまったついでに、どうせなら、もう一かけ迎え撃ちたいと思わせるような、意欲を掻き立てる味だった。」

    「それは私が愛したグリーンティーで、それ以上でも、またそれ以外でもない。」

  • "この世界のことを何も知らないままでは、自分が何をすればよいかを正確に知ることはできないと思うからです"

  • 食べるというのは生きることそのもの。
    中村さんのようにのびのびと真っ直ぐよく食べてありのままに感じて生きたい。

  • 世界を巡り書いた食事の話。
    美味しそうなものだけでなく明らかに不味そうなものや食べるときに遠慮しながら勧められた人に気遣って無理に食べたものなどもあるのがよい。


    エチオピアのインジェラの ゲロみたいに酸っぱいぼろ雑巾 はどうかんがえても美味しくなさそうなのに興味をそそる。

    ヨルダンで食べたサッポロ一番塩ラーメンの旨さなどの描写もよい。

    自宅のテレビから得られる膨大な知識よりも、旅で得られるわずかな手触りにこそ真実がある。

  • 彼女の行動力に驚愕。
    未知の世界に足を踏み入れていく様は逞しくもあるが、同時に心配しながら読んだ。
    本書には書かれていなかったが、きっと危険な目に幾度となくあっているのだろう。

    世界には色々な環境で色々な食べ物を食べている人々がいることを、本書を通じて改めて知った。
    友人から旅の土産話を聞いているような、それでいて私自身も旅に出たような、日常とは違う世界に連れて行ってくれた。
    食べるという人間の根源である行為を中心に書かれていることが、生きること、生命力を想起させ、より一層印象に残る内容になっているのではないだろうか。

  • 食べるということは生きるということ。
    旅先でえげついモノでも食べる勇気、すごいな。

  • 2017.7.11 41
    旅行に行きたい。世界のいろんなことを肌で感じたい。

  • バックパッカーであり、ライターである著者が世界の僻地辺境へ行って現地で食べたものと、それを食べることになった過程、その周囲にいた人たちの生活、その人たちとのやり取りを淡々とした文章で描く。 バックパッカーものは、ふわふわした印象を持つものが多いんだけど、かなり冷静に客観視しながら書いている感じ。旅もその聡明な感じのする姿勢などにもあこがれる。とてもではないが、口にいれることのないような、日本で言えば衛生的でないもの・・・・。エジプトのあの水の壺から水を飲むだなんて・・・・。でも現地で昔から使われている知恵で、いつも冷たいのだ・・・。グリーンティーとか、雑巾みたいな、なにかとか。おもしろすぎる。

  • ノンフィクションと小説の中間のような文章。ひりひりとした感じは、「深夜特急」を思い起こさせる。もう少し、続きが読みたい。

  • 文章がうまい。須賀敦子を思い出す。

  • 旅という非生活の中の食の感覚が蘇る。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1979年、京都府に生まれ、三重県で育つ。高校を卒業後、渡米。カリフォルニア大学アーバイン校舞台芸術学部を卒業する。アメリカと日本で三年間の社会人生活を送ったのち、取材旅行へ。訪れた国は六十五に及ぶ。2009年、『インパラの朝』(集英社)で第七回開高健ノンフィクション賞を受賞

「2011年 『Beフラット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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