ワーカーズ・ダイジェスト (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 715
レビュー : 86
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087452006

作品紹介・あらすじ

大阪のデザイン事務所で働く奈加子と東京の建築会社に勤める重信。一度だけ仕事で出会った二人は、お互い32歳で同じ誕生日という事実を心の片隅に、仕事や日々の暮らしに立ち向かう。(鑑賞/益田ミリ)

感想・レビュー・書評

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  • サイン本に惹かれて買ってしまった。
    読み始めから「私だ!」と思うほど共感する事が多く、面白い面白いと思いながらあっという間に読了。毎日毎日理不尽な事に振り回され、もう嫌や~と思っていながらも、ふとした瞬間に些細な幸せや自由さを感じ笑みがこぼれる…特に大きな事件は起こらない日常の一コマだけれど、この本に共感する人、結構多いんじゃないかな。
    最後に益田ミリさんも鑑賞と言う名の解説で印象的に書かれていたけれど、「特に幸せではないけれど、不幸でもない」そんな普通の毎日が一番理想だ。

  • 『ワーカーズ・ダイジェスト』というタイトルに納得。
    なるほど、うまい。

    のっけから共感の嵐だった。
    いや、まだここまで疲弊していない気もするのだけど、でもこの感覚は今の私のすぐお隣さんだろうなと思う。
    毎朝同じ時間に起きて、同じ行動をして、同じ人と笑い合って、同じ時間に寝ることは、惰性というか慣性というかそういう類のものだ。
    そんな毎日を悲惨と感じることなく淡々と働いているサラリーマンのための小説だと思う。(男性、女性問わず「サラリーマン」という単語がしっくりくると感じる人のための)

    私にとってこの本は「面白い!」と広めたくなる本ではないけれど、職場で交わす(なかなか真意が理解出来ない)会話よりもすんなりと頭に入ってきた。
    そして深層心理の深めのところ(いろいろ間違ってるけれど感覚として)で吸収出来た気がする。
    この本を読んだことでこれからの仕事の仕方は間違いなく変わる。
    私にとってこの本はそういう本だ。

    もしかしたら今こそ津村さんの本を読むタイミングなのかもしれない。

  • シンプルに言うと、面白くて一気に読んだ。
    それで、読んだあとに作者の津村記久子さんについて検索してみたら(拙い私の知識では芥川賞作家という記憶しかなかった)津村さんは“お仕事小説”というものを得意としているらしく、この小説もそのうちの一冊。

    デザイン会社に勤める奈加子と、建設会社に勤める重信(ともに独身アラサー)が主人公で、二人の日常が行き来しつつ物語は進み…
    仕事、恋愛、結婚のこと、など、考えることがたくさんの日常。

    私自身は、物心ついた時には両親が自営業者だった影響もあってはじめからそちらに向けて進んだから、就職も就活も経験したことがなくて、組織で働いたのはいくつかのアルバイトでしか経験がない。
    だから組織での仕事の苦悩については身をもって理解できない点も多々あるとは思うけれど、この小説で描かれてる数々の苦悩や苦労はとてもリアルに感じた。きっと実際こういう大変なことってたくさんあるだろうと。
    だからそういう仕事をしている人のほうが深く理解できるし身につまされるものもあるのかもしれない。
    とくに二人のそれぞれの朝の描写が秀逸で、読んでるだけで「仕事行きたくない…」と思ってしまった。朝から働く職業じゃないくせに(笑)

    理解に苦しんだり自分を煩わせる人間が現れるのが現実的で、でもそれらとどうにか折り合いをつけたりたまに避けてみたりしながら進んでいくところもとても現実的。
    主人公たちと似た年代だから解ると思うところも多かった。
    それでも、果てしなく続くような日常の中、何かが始まりそうな予感がする希望的な感じも良かった。

  • 佐藤奈加子32歳。大阪のデザイン事務所で働きながら、ライターの仕事もしている。
    佐藤重信32歳。東京の建築会社に勤めている。
    偶然仕事で、一度だけ接点があった二人の佐藤、32歳の日々の生活を交互に描いていくお仕事小説。

    日々の仕事の中で、小さな出来事に疲弊し、意欲を失くし、その積み重ねが夢さえも奪っていく。働く大人なら誰もが一度は感じたようなことをひとつひとつ掬い取っているような話で、「あるよな・・・」と思い当たることばかり。
    たとえば、少し気の重い月曜日の朝でさえ、グッドモーニング!でなければならないこと。・・・誰が「いい朝」って決めとんねん!とか。
    疲弊して、欲しいものさえ何もなく、常にやりたいことは一つだけ、それは家に帰って寝ること!とか。

    そんな二人の佐藤を並行して描きながら、最後にほんのちょっと、ささやかな希望を見せるところで終わる。
    みんな同じなんだな~。仕方がないから、明日も頑張るか・・・と思うような作品。

    併録のオノウエさんの不在もなかなかよい。

  • 表題作は、32歳の男女が主人公のお仕事小説。
    佐藤(男)サイドのちょっと不気味なクレーマー話も、佐藤(女)サイドの面倒くさい人間関係のしがらみも、それぞれに読み応えはあるのだがはやく点と点が線にならないかとウズウズしつつも、変に運命的なやつは止めてくれよ、とおもう。
    恋愛じゃない、友達じゃない、一度仕事の打ち合わせをしただけの男女が、要所要所で思いだす「あのひと」。
    向こうがこちらを覚えているかも怪しい、でもあのひとに話したい…。
    そして津村さんは裏切らない。
    今回も、報われるなあーとおもう。
    終わりかたも、すき。
    スパカツ、食べたくなりました。

    同時収録の「オノウエさんの不在」は、世代交代のお話。
    オノウエさんという絶対的な先輩がいなくなることで、「何かが自分に伝播した」と感じる主人公。
    大きな変化じゃないのだけれど、はじまりとはちがうおわりに至るところが巧み。

    「鑑賞」として解説を書かれた益田ミリさんの漫画もとてもよかった。

  • 生年月日と苗字が一緒の32歳の男と女が主人公の話。
    今まで読んだ津村さんの中では、一番この本が好きかも。主人公の年齢も近いし、舞台も近いので、いろいろ共感できた。

    一緒に収録されてるオノウエさんの不在も印象に残る話だった。3人が尊敬できる元上司のオノウエさんを救おうとする話。

  • 実は3冊目の津村記久子。
    じわじわ良いと感じられるようになったのは、
    私がこの人の書く「普通の大人」に近付いてきたからかな。
    この人のお話は無理がなくてよい。
    だらだらと読んでいても飽きないし苦にならない。
    ひとり酒のアテにちょうどいい、みたいな。
    最後の佐藤さんたちにはほっこりした。
    懐かしいなあ、中央公会堂。仕事でよう行った。
    スパカツ食べたい。

  • 特別なことはなーんにも起こらない。
    30代の毎日のあるある。


    姓と生年月日が同じ男女が、たまたま出会って、再会する、という件に関しては特別かもしれないが、安易な恋愛に展開する結末でもなく、再会したところで締まっていて、とても良かった。
    (いつ再会するのか楽しみに読み進めたのは事実だが)


    文章が読みやすくて好き。
    描写が上手い…なんて上からだけど、表現が面白くて、クスリと笑えるところも多々あった。
    織田作之助賞、すごい納得。
    著者の初めて読んだ作品だが、他も是非読んでみたいと思わせるには充分な作品。

  • デザイン会社で働きながらライターの副業もしている奈加子と、建築会社に勤める重信は、デザイナーとクライアントとして一度だけ打ち合わせのために会うが、名字(佐藤)のみならず年齢や誕生日まで同じだとわかる。普通の恋愛小説なら「これって運命!」とばかりに二人のラブストーリーが繰り広げられるのだろうけど、この本の二人は、ラストで再会するまで二人の間に何も起こらない。それぞれの仕事と人生を生きていく様子が交互に描かれる。

    職場の人間関係などがリアルで身につまされた。弱っているときだと、ちょっと途中で読むのがしんどくなるくらい。奈加子の会社の面倒くさい年上のおばさんが、なぜ急に彼女を無視しだすのか、結局理由はわからないままだし、重信に執拗に絡んでくるクレーマー同級生がなぜそこまで彼に粘着するのかも、結局明かされない。でも現実ってこんな感じ。そして仕事がしんどくても、スパカツが美味しいだけですべてチャラになる、それくらいの単純さも人生には必要なんだよねえ。自分も頑張ろう、と思います。

    ※収録
    ワーカーズ・ダイジェスト/オノウエさんの不在

  • なんやこれ、私の生活見られてた!?って焦るぐらい自分のこととリンクする感じ。そして、自分に馴染みある梅田のとか地下鉄の描写とか大阪弁とか、そういうのもあってか、時々そうそう、ほんまや、と言いながら読み進めてました。

    つながり深めたいなーでもぶつかりたくないな、でもいい感じやねんなー、結婚とか考えたら気重いなーっていう間で堂々巡りになる異性がいるって、楽しいけどしっかりせーよ自分とカツ入れました、この本読んだあと。

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著者プロフィール

津村 記久子(つむら きくこ)
1978年、大阪府大阪市生まれ。大阪府立今宮高等学校、大谷大学文学部国際文化学科卒業。
2005年「マンイーター」(改題『君は永遠にそいつらより若い』)で太宰治賞を受賞し、小説家デビュー。2008年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、2009年『ポトスライムの舟』で芥川龍之介賞、2011年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞、2013年「給水塔と亀」で川端康成賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2017年『浮遊霊ブラジル』で紫式部文学賞、同年『アレグリアとは仕事はできない』で第13回酒飲み書店員大賞受賞をそれぞれ受賞。
近刊に、『ディス・イズ・ザ・デイ』がある。

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