ワーカーズ・ダイジェスト (集英社文庫(日本))

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087452006

作品紹介・あらすじ

大阪のデザイン事務所で働く奈加子と東京の建築会社に勤める重信。一度だけ仕事で出会った二人は、お互い32歳で同じ誕生日という事実を心の片隅に、仕事や日々の暮らしに立ち向かう。(鑑賞/益田ミリ)

感想・レビュー・書評

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  • 年相応の疲労度に見えるかどうかって、小綺麗にしているとかよりも気になるポイントかも。
    自分と近い疲労度を感じる人とはやはり仲良くなりやすいしなあ。
    少し違う境遇の同級生の近況を聞いている感じで読めた。

    また、このお話の主人公たちは仕事との距離感が近すぎず遠すぎず、ちょうどいいなと感じた。

  • 勤め人の毎日ってこういうものだよなあと思う。
    世の中には緩急の激しい毎日を送っている人もいるだろうけど、私にとっては、特に目新しいことのない仕事をこなし、たまに嫌な気持ちになるようなこともあり、日常のこまごましたどうでもいいことをつらつら考えたりぼやいたりしながらも悪くはないという、派手な起承転結なんてないのが働く日々だという気がする。
    そんななんてことない話なのだ。
    でも仕事の打ち合わせに現れたニット帽姿の相手について、「自分にとって快適なやり方で防寒をすることは譲らん」とか、誰のものか分からない絵に関して「とりあえずラッセンではない」とか、絶妙に的を射た表現がツボにはまって面白かった。
    解説は益田ミリさんが「鑑賞」として漫画で内容を紹介していて、そうそうそんな話と頷いてしまい、うまいなあと思う。

  • 日常の機微の表現がいちいち好きだー。

  • サイン本に惹かれて買ってしまった。
    読み始めから「私だ!」と思うほど共感する事が多く、面白い面白いと思いながらあっという間に読了。毎日毎日理不尽な事に振り回され、もう嫌や~と思っていながらも、ふとした瞬間に些細な幸せや自由さを感じ笑みがこぼれる…特に大きな事件は起こらない日常の一コマだけれど、この本に共感する人、結構多いんじゃないかな。
    最後に益田ミリさんも鑑賞と言う名の解説で印象的に書かれていたけれど、「特に幸せではないけれど、不幸でもない」そんな普通の毎日が一番理想だ。

  • 『ワーカーズ・ダイジェスト』というタイトルに納得。
    なるほど、うまい。

    のっけから共感の嵐だった。
    いや、まだここまで疲弊していない気もするのだけど、でもこの感覚は今の私のすぐお隣さんだろうなと思う。
    毎朝同じ時間に起きて、同じ行動をして、同じ人と笑い合って、同じ時間に寝ることは、惰性というか慣性というかそういう類のものだ。
    そんな毎日を悲惨と感じることなく淡々と働いているサラリーマンのための小説だと思う。(男性、女性問わず「サラリーマン」という単語がしっくりくると感じる人のための)

    私にとってこの本は「面白い!」と広めたくなる本ではないけれど、職場で交わす(なかなか真意が理解出来ない)会話よりもすんなりと頭に入ってきた。
    そして深層心理の深めのところ(いろいろ間違ってるけれど感覚として)で吸収出来た気がする。
    この本を読んだことでこれからの仕事の仕方は間違いなく変わる。
    私にとってこの本はそういう本だ。

    もしかしたら今こそ津村さんの本を読むタイミングなのかもしれない。

  • なんやこれ、私の生活見られてた!?って焦るぐらい自分のこととリンクする感じ。そして、自分に馴染みある梅田のとか地下鉄の描写とか大阪弁とか、そういうのもあってか、時々そうそう、ほんまや、と言いながら読み進めてました。

    つながり深めたいなーでもぶつかりたくないな、でもいい感じやねんなー、結婚とか考えたら気重いなーっていう間で堂々巡りになる異性がいるって、楽しいけどしっかりせーよ自分とカツ入れました、この本読んだあと。

  • アラサーに読んでほしい。ただただ2人の日常を追っているだけなんだけど、主人公たちと年齢が近いからか共感できる部分が多かった。描写の仕方が好き。読書って、ビジネス書みたいになにかを得るためやミステリーみたいにどきどきわくわくするためだけじゃなくて、穏やかに人の生活の一部を見る楽しみ方もあるよねと思わせてくれる一冊。文庫版の表紙のイラストは中身のイメージと少し違った。

  • この小説は、好きです。間違いなく好きですね。「こういうのが好きなんだよ俺は」というのが、ガッツーン詰まっておりました。良い!有り難い!ということで、津村さんに、抜群に感謝です。

    だが、この文庫本のこの表紙のイラスト。この絵。うーん。何なんだコレ?という表紙で、すげえ謎。うーん。謎です。謎のエロさがあります、この表紙には。でも、、、この作品の登場人物、うーん。謎のエロさを持つ人物、いたか?と思うと、まさに謎。何故にこのイラスト?女主人公側の奈加子の部屋なのか?コレは?このエロさを醸し出している脚の女性が、奈加子なのか?そうなのか?そんなキャラか?とか思うと、うーむ。マジで謎な表紙イラストだぜ。

    で、自分にとってはこの作品は、なんともオシャレな恋愛小説でした。この内容を、俺は、オシャレだと感じるのか?と思うと、それってどうなん?とか思うのですが、自分にとっては、オシャレな短編なのです、コレは。うむ。そう感じたのだから、しゃあない。仕方がない。

    作品の終盤で、奈加子が、タウン誌の出版社から、月に一回、旧作でいいので、肩の凝らないロマンチックコメディーを一本ずつ紹介して欲しい、って依頼を受けるやないですか。あの感じ。まさにあの感じが、この作品に対する、僕のイメージなんですよ。

    この作品、肩の凝らない筈はない内容なんですが、あの依頼のイメージが、まさにこの作品には、あるんだよ何故か。何故かなあ。何故にこの作品を、肩の凝らないロマンチックコメディーと認識してしまうんだ?俺は。という謎の自問自答です。でも、まさにあの依頼の感じが、この作品に対するイメージなんです。どうしても。

    もう、最後の最後の場面。中之島公園で、重信が鍵盤ハーモニカ吹いて、奈加子がそこに辿り着いてしまう場面。恋愛の神様か恋愛の女神様か、ニクいなあ~って、思うんですよね。オシャレ以外の何物でもないぜ、って思うんですよね。めちゃくちゃエエなあ、って思います。

    なんだか、やっぱ、洋画化して欲しいな、って気がするイメージが、あるんですよね。この作品。邦画、ではない、雰囲気を、勝手に感じてしまうんです。単館系のミニシアター系の、すごいちょっとしたオシャレな人間ドラマ的洋画。それがもう、抜群に似合う。津村さんの作品には、何故かそんなイメージを、抱いてしまうんですよねえ、、、

  • シンプルに言うと、面白くて一気に読んだ。
    それで、読んだあとに作者の津村記久子さんについて検索してみたら(拙い私の知識では芥川賞作家という記憶しかなかった)津村さんは“お仕事小説”というものを得意としているらしく、この小説もそのうちの一冊。

    デザイン会社に勤める奈加子と、建設会社に勤める重信(ともに独身アラサー)が主人公で、二人の日常が行き来しつつ物語は進み…
    仕事、恋愛、結婚のこと、など、考えることがたくさんの日常。

    私自身は、物心ついた時には両親が自営業者だった影響もあってはじめからそちらに向けて進んだから、就職も就活も経験したことがなくて、組織で働いたのはいくつかのアルバイトでしか経験がない。
    だから組織での仕事の苦悩については身をもって理解できない点も多々あるとは思うけれど、この小説で描かれてる数々の苦悩や苦労はとてもリアルに感じた。きっと実際こういう大変なことってたくさんあるだろうと。
    だからそういう仕事をしている人のほうが深く理解できるし身につまされるものもあるのかもしれない。
    とくに二人のそれぞれの朝の描写が秀逸で、読んでるだけで「仕事行きたくない…」と思ってしまった。朝から働く職業じゃないくせに。笑

    理解に苦しんだり自分を煩わせる人間が現れるのが現実的で、でもそれらとどうにか折り合いをつけたりたまに避けてみたりしながら進んでいくところもとても現実的。
    主人公たちと似た年代だから解ると思うところも多かった。
    それでも、果てしなく続くような日常の中、何かが始まりそうな予感がする希望的な感じも良かった。

  • 年齢って蓄積された疲労の漂いなのかも、と考えた。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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