真夏の異邦人 超常現象研究会のフィールドワーク (集英社文庫)
- 集英社 (2014年9月19日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087452334
作品紹介・あらすじ
オカルト研究サークルに所属する主人公が、フィールドワーク先の村で不思議な少女と出会う。まるで宇宙人のような彼女の正体と、村で起こった凄惨な事件の関係は?(解説/大森望)
感想・レビュー・書評
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満足できない作品であった。
端的な理由としてはミステリにSF要素を加えることでミステリの良さを無くしている点である。
創作物においてSF要素はある意味で「作者のやりたい放題」であるといえるが、
「作者の定義したルール内でやりたい放題」という使われ方が一般的である。
簡単に言うとこの作品はSF要素が「作者のやりたい放題」となっている。
ミステリにおいて犯人当てはもちろんのこと「なぜこのような行動をしたのか?」という点も
謎の一つであり、妥当に説明されなければなたない要素の一つてある。
具体的にはアガサ・クリスティの「ABC殺人事件」では
「犯人はなぜABCの順番で事件を起こしたか」という謎を解明していく点に面白さがある。
それが、この作品では「超自然的な力を使ったから」という理由付けになっているため、
「ミステリとしてのルールが守られていない」と感じた。
やはりミステリ作品は「作者と読者の推理合戦」というような構図になり、
物語が進むにつれて読者は作者の目論見通りに作者によって作成された謎の迷路にはまり、
最終的に作者が謎について解き明かした時点で、
読者は「なるほど!一本取られた!」という快感を得ることが醍醐味である。
”超自然的な力”はミステリにおいて完全に禁じ手であるため、
そのような点で読者を愚弄しているとも感じた。
また、主人公の考え方に全く妥当性が感じられなかった。
妥当性が感じられない主人公の考え方の具体的内容としては
”目の前で超自然的な事象が使われても、
絶対に超自然的なことは存在しないと断定すること”である。
もちろん、主人公が超自然的な事象を認識できなかったり、
その事象によってパニック状態になってしまったなどの理由があれば妥当ではあるが、
当然そのような説明は一切なかった。
果たして“人間が入るサイズの棺が丸められて腕輪に変形する”なんて事象を
「まあ、そんな最先端科学もあるよな」と(無理矢理にでも)納得する人が存在するだろうか?
まあ、実際に存在するかどうかは問題ではないが、
普通の感覚では不自然であると感じられるだろう。
作品ではこの主人公の”無理矢理な納得思考”は恋愛感情も一因であると仄めかしているが、
まあ、それだけでは十分に納得することができなかった。
そして、その”頑なに超自然的な事象を認めない理由”も
”幼少期に自分で作成した超自然的な妄想の物語を無理やり読まされ赤っ恥をかいたから”
であり、到底納得のできる理由付けではなかった。
もちろん、トラウマというのは個人の感情的な部分に起因するため、
論理的に説明することは不可能であるが、それはあくまで現実においての場合である。
創作物の中ではトラウマであっても、概ね妥当であるように説明されなければならない。
総合的に、ミステリとSFの融合の悪い模範例だと言える。
逆にSF作品として見れば評価も変わるのかな?とも思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表紙イラストがとても美しく本作に流れる情緒や雰囲気を良く表している。しかし、肝心の作品自体は表紙イラストほどの雄弁さを持っていない。
宇宙人SF、不思議研究サークル活動、大学生の夏休みの合宿、家畜や人の失踪事件、謎の外国人風少女、ボーイミーツガール、警察の事件捜査などの要素がごちゃ混ぜ。いうなればジュブナイルSFオカルチックサスペンスミステリー。このような贅沢な全部乗せの本作が唯一含んでいないのが主題。そしてそれは致命的である。
ガジェットは形だけ、人物は表象だけ、物語は筋だけ、そこから何も拡がらない。せっかくの設定が設定だけで終わってしまっていては勿体ない。表紙イラストのような盛夏の少女との出会いは、切ない終わりとなるはずなのだが、感情の変遷が全く描かれていないため、ぜんぜん切なくない。
ラノベにありがちな寄せ鍋は、素材がいくら良くても、味付けが無ければただ茹でただけだ。
追記
ナトリウムじゃなくノーベリウムだったなら、また別の懐かしさを感じさせる物語となったのに。 -
きっと化学とかに関することは専門知識がちりばめられてるんだろうけれど、ストーリーがアニメ。オタク感が漂ってくる。
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酷い。
宇宙人だとわかりやすい場面を見ているのに
宇宙人だと認めない主人公より
そんな展開を何度も繰り返すことに
面白みがないと感じない作者に腹がたって
読むのやめた。 -
若手の理系ミステリー作家として多少は将来に期待を寄せていたのに、ここまで安易で薄っぺらいSFに手を染めてしまうとは残念です。
東大薬学部の院卒、製薬会社の研究員という肩書きから期待する内容とは程遠い作品でした。 -
2016/4/23図書館から借りた。
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うーん。中盤までは割とゆっくりめ?な話の流れ。田舎の時間の流れというか、サークル活動で、事件聞きこみやオカルト調査をしているので、1日2-3時間で活動していそう。それが最後にはどっこいアクションばりの展開で話が急展開するので、びっくりしました。
「盗まれた本がある」証言や関連のイベントからある程度、あのメンバーなら推理し結末にたどりつけそうな気がします。それなのに、最後で主人公がひらめくのはどうもいただけない。
著者プロフィール
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