冬姫 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 309
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087452464

作品紹介・あらすじ

織田信長の娘、冬姫。信長の血の継承を巡り、繰り広げられる男たちの熾烈な権力争い、女たちの苛烈な〈女いくさ〉に翻弄されながらも、戦国の世を生きた数奇な半生を辿る歴史長編。(解説/村木嵐)

感想・レビュー・書評

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  • 戦国武将・織田信長の二女冬姫。その器量の美しさ故
    父親からは格別に遇されたという冬姫を中心に、戦国の世の
    女戦の生き様を描いた物語。

    信長は婚姻による外交に長けており、冬姫の姉にあたる五徳
    (徳姫=おごとく:九歳)を、徳川家康の嫡男信康の正室として輿入れさせ
    また、妹のお市の方(冬姫の叔母)は近江の雄、浅井長政の元に嫁がせ
    親せきとすることで美濃、近江の同盟を成功させている。

    そして冬姫は――信長との観音寺城の戦いで敗れた
    六角氏に仕えていた蒲生賢秀(がもうかたひで)が、三男(嫡男)忠三郎を
    信長に人質として差し出すことで蒲生家は、織田家に臣属したのだが
    その忠三郎(ちゅうざぶろう)というのが14歳のりりしい顔立ちの利発な若者で
    以後信長に気いられ、冬姫との婚姻へとあいなるわけである。
    蒲生忠三郎(後の蒲生氏郷:うじさと)14歳、冬姫は12歳だった――

    なんだかとっても難しそうなお話ですが、この時代、とかく女子は
    男の政の道具の一つであるかのような扱いで、敵も味方もなく
    振り回されていました。輿入れといえど恋も愛もあったものではありません。
    けれども一旦添い遂げれば、お互いを深く理解しあって愛を育んでいく...。
    夫のためお家のためにと尽くしていく、女にも女ならではの戦があったのです。

    ここに登場する女性陣の面々は、冬姫、五徳、お市の方のほかに
    信長の正室・帰蝶(濃姫)、側室・鍋の方、家康の正室・築山殿(瀬名姫)
    明智光秀の娘・細川ガラシャ、そしてお市の方の長女・淀殿(茶々姫)と
    女だてらにも何かしら戦国の世を揺るがしたであろう錚々たる顔ぶれが揃います。

    そんな中での冬姫は、少し控えめで目立たない存在のよう...。
    けれどもその器量の美しさの中には利発さも兼ね備え、そして、逆境に対して
    前向きにとらえていく心を持ち、夫を愛し、父親を愛し、お家を愛し、支え尽くす
    冬姫の凛とした姿は清らかです。読んでいてとても清々い気持ちになりました。
    さらに言えば夫・蒲生忠三郎も然り。利発で雄々しく逞しく、そして何より
    妻を愛する気持ちは優しさにあふれています。史実でも生涯側室を
    持たなかったとあるほど...。

    そして作中ではわずかな登場でしかありませんでしたけれど、帰蝶(濃姫)さまの
    凛として揺るぎない佇まいが際立って感じられたところも好きでした。

    少し冷めた心で考えてみれば、女の戦などただのお家騒動。
    痴話げんかではないかとも思えてしまいますが、男にも女にも
    誰にもどこかに愛するものを守りたいという気持ちがありました。
    織田信長は偉大なお人です。それを二分してしまうなんて...あぁ..秀吉!!(笑)

    戦国の女戦の物語でありながら、信長と秀吉のやってきた政についても順を追って
    添えられているため、歴史書物としても充分に読み応えがあり楽しめました。
    読んでよかったです。

  • 史実とフィクションとを織り交ぜながら、女人の観点から織田豊臣時代を描いた歴史スペクタクルといえようか。
    信長の二女で、蒲生氏郷に嫁いだ冬姫が、従者の助けを借りながら、敵対する勢力と、「女いくさ」を仕掛け、自らの運命を切り開いてゆく。
    どこまでが史実で、どこからがフィクションか、それを楽しみながら、時代小説の面白さと、歴史小説の醍醐味を味わえる。

  • 織田信長の二女で蒲生氏郷に嫁いだ、冬姫の生きざまを描いた話。
    嫉妬や逆恨みなどからくる、“女いくさ”に毅然と立ち向かう冬姫の姿が清々しいです。
    伝奇モノっぽい感じを織り交ぜているので、フィクション色が強いですが、冬姫の従者・もずと、又蔵のコンビは好きでした。

  • 面白かったです。ただ、天正の世、国を創るために何を為したのか。そこが結局よく分からずで蒲生・織田の生き残り史にのようにも感じられる。まあ、女のいくさが怖いものだと言うことは判り申した!怖い怖い

    信長に関わりの深い女たちの物語
    帰蝶、お市、茶々、細川ガラシャ、五徳、お鍋の方…
    信長の娘である冬姫を中心に戦国を生きる女のいくさが描かれます

    昔から戦国武将に纏わる話は好きな方でして…信長関連の創作物は特に惹かれます
    しかし、側室がお鍋の方で、子どもの幼名が酌て...
    流石、第六天魔王。ネーミングセンスも破壊力抜群
    比べると冬姫は良い名ですな
    さぞ、贔屓にされた子だったのかとも思いますが実際はどうだったのでしょうかね?
    まあ、うつけ者の魔王様であれば常人には判りかねますが...

    名が示すように心が澄んでいて厳しさと

    やや不満が残ったのは所々にオカルトというかファンタジーなこじつけがあること
    定番の虫の知らせ、夢枕に立つくらいなら良いが、少し唐突かつ不必要に思えました
    葉室さんの作品らしさ的にも如何なものかと

    星は★★☆(2.5点です)
    葉室さんへの期待が高いために相当辛めだ

  • ちょこちょこ俗っぽさを感じたんだが気の所為だったかもしれない。
    葉室さんの女性は、お姫様でもなんでも、ヒーロー感あってかっこよい。

  • 思っていたよりもファンタジーな話だった。
    こういう切り取り方もあるか、という感じ。

  • 信長の娘、冬の生涯を描く作品。清廉で優しく、しかし自分を曲げない強さを持つ冬が、周囲の人をなんだかんだで味方につけながら「女いくさ」を続けてゆく。娘(身内)から見た信長というのもなんだか新鮮な感じだし、冬をまもるもずと又蔵も魅力的。
    Wikipediaによると、冬は実在の姫であるのだが、冬について書かれた部分は「冬に嫁いだ姫」という意味であり、出家前の名前はわからないそう。それがなおさら、神秘的さ、魅力さを増している。

  • 葉室麟さんと言えば武士…と思っていたけれど、珍しく女性が主人公。織田信長の二女・冬姫の生涯を様々な女性たちとの戦、怪奇、そして夫・蒲生氏郷との交流で綴る物語。
    「武家の女は槍や刀ではなく心の刃を研いでいくさをせねばならないのです」この言葉がなんだか身に染みる。

  • 織田信長の次女「冬姫」の生涯(半生)を描く長編。連作短編の体となっており、冬姫幼少、伴侶となる蒲生氏郷との出会いから徳川政権時代までの数奇な物語を時系列に並べる。

    怪奇小説や剣劇エンターテイメントの要素も見せつつ、葉室解釈による(といってもあくまでノンフィクションとしてである)信長秀吉家康時代の史実小説の要素もあって、俺のように日本史にそれほど通じてなくても楽しく読める工夫が凝らされていて読み心地は良い。司馬遼太郎と山田風太郎のテイストを見せつつ、根底に流れる倫理観はやっぱ葉室燐らしく清楚で凛とさせている。

    女の戦いは心の刃を研いで行うもの…。これが女の戦いなら、やはり戦いなぞというものはせん方が絶対いい。男の戦いもどうでもいい。戦国大名の表面の生き方を中途になぞらえて自己啓発本にしている書物の罪なところは、政治を戦争という最低の方法で成そうとするものを持ち上げているところにある、と思う俺は、葉室燐小説の底に流れる「武士の生き方」に対する畏敬だけでない皮肉が心地よいのだが、この本にも、わずかにそれが感じられてよかった。

    争いは避けえれなくとも、戦争を是とする思想が蔓延すれば滅びを招く。なんやかんや言うてもやっぱり平和が一番。平和ボケでエエやないか。このボケた状態を長く広く広げていくことが、性別を超えた立派な戦いだろうと思うのだが。

  • あまりにもこの方の作品を読め、と言われたためまずはこれをと手に取ったもの。

    残念ながら自分の好みではなかったのですが、こういう作品もあるのだなといい勉強になりました。

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著者プロフィール

葉室 麟(はむろ りん)
1951年1月25日 – 2017年12月23日
福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て小説家に。2005年に短編「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞(のち単行本化)、2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。
上記以外の代表作に、2018年9月に岡田准一主演で映画化される『散り椿』、第22回山本周五郎賞候補及び第141回直木賞候補だった『秋月記』がある。

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