エンジェルフライト 国際霊柩送還士 (集英社文庫)

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  • 集英社
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レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087452525

作品紹介・あらすじ

国境を越えて遺体や遺骨を故国へ送り届ける「国際霊柩送還」という仕事に迫り、死とは何か、愛する人を亡くすとはどういうことかを描く。第10回開高健ノンフィクション賞受賞作。(解説/石井光太)

感想・レビュー・書評

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  • 外国で亡くなった人はどうやって祖国に戻ってくるのだろうか?
    皆さんはそんな疑問を持ったことがあるだろうか。

    この本では、聴きなれない職業である「国際霊柩送還士」という仕事で活躍している、
    エアハース・インターナショナル(株)という会社の社員が日々闘い続けている現場を取材した
    感動のドキュメントである。

    始めに国際霊柩送還士という仕事について書いてみる。
    外国で旅行とかビジネスで不慮の事故で亡くなった人は、現地の警察等の身元確認後、
    本国に送り返される。
    その時に、遺体が腐敗しない状態に処置するのは、「エンバーミング」。

    そのあと、書類のやり取り、輸送業者との段取りをする一連の仕事が国際霊柩送還士という仕事。
    不思議な仕事であるが、遺族とのお別れの時に、生きていた本人で有ることが
    分かって、さらに表情も穏やかになった状態まで修復する技術は読んでいて圧巻。
    なぜ、そこまでやるんだろうとエアハースの人たちも思う。
    その現場を紹介しよう。

    まず、登場するのは、社長の木村理惠。
    理惠は東京港区の板金工の娘として生まれた。
    父は典型的な職人肌で、親方タイプ。
    理惠はそんな父に影響されて、負けん気の強いリーダータイプ。

    葬儀業界に入った理惠は全体を把握する能力と気配りは上司にも一目置かれる存在だった。
    葬儀会社の現場を仕切ることをすぐ覚えて、エアハースの社長について。
    エアハースに入ってから、みんなに心配される位、動き回って遺族のために心遣いをすることが
    倒れてしまうのではないかと心配されるほどの行動力。

    一方、エアハース設立に関わるもう一人の人物、会長の山科昌美。
    理惠より以前から葬儀業界にいた山科は理論派タイプ。
    まだ、「国際霊柩送還士」という仕事をどこの会社も専業で行っていないときに
    こんなことがあった。

    フランスの柔道家が日本で亡くなった。
    なんとか遺体の形で本国に帰したい。山科に問合せがあったが、
    その手配をするために、色々調べたら専門で行っている業者がいない。
    そこで自分で全て書類等の手配を行った結果、無事フランスに送り届けた。
    そこで、初めて「国際霊柩送還士」という仕事の重要性を感じた。
    と同時に自分がこれを専業としようと決意する。

    他にも理惠も息子利幸の二代目の頑張りだったり、他の社員の活躍が
    本書には見事に表現されている。

    本書で感じる共通点は、遺族は確かに亡くなったことは悲しいが
    遠い国でどうなっているのか不安なまま、まったく本人と分からない状態ではなく、
    生きていた時の表情で帰ってきたときに発する言葉、
    「本当にありがとう、〇〇ちゃんが帰ってきたことが信じられない」という
    言葉の数々を発するのが心に浸みてくる。

    最後に本書から、心の中に刻まれた言葉を引用して終わりにしたい。
    息子の利幸が仕事での心境をこう、語っている。

     「ご遺体に対面した時はまるで合戦場に行った時のような感じです。
    アドレナリンがぶわーっと全身を駆け巡って『絶対になんとかする』という気持ちになる。
    臨戦態勢っていうのかなあ。その時、頭は真っ白ですね。言葉という言葉は吹き飛んで、
    真っ白ろになる。」

    会長の山科の言葉。

     「親を失うと過去を失う。

     配偶者を失うと現在を失う。

     子を失うと未来を失う。」

  • 海外から日本へ、また日本から海外へ遺体を搬送する国際霊柩送還士の話。たいへん興味深く読んだ。ただし、ちょっと感傷的な表現が多いと感じました。

  • 「葬送の仕事師たち」という本を読んだ。
    葬儀にまつわる様々な仕事について書かれてあり、その中に「エンバーミング」というものがあることを知った。
    それはアメリカの南北戦争の頃に生まれた技術で、遺体を修復し防腐処理をほどこし綺麗な状態で家へ帰すというものらしい。そして海外から戻ったり送られたりする遺体にはエンバーミングが施されているという。
    では実際どのように送還されるのか。それを知りたくなって本書を手に取ってみた。

    国際霊柩送還士という概念を確立させた、国内外の移送を専門に扱う会社に密着取材して書かれている。
    エンバーミングの技術も遺体の扱いも国によって違うそうで、海外へ指導に行くこともあるそうだ。
    火葬される場合も海外の場合は温度が高く骨が残らないので温度を調節してもらったり。
    日本と海外では遺体や遺骨に対する考え方が違うというのも興味深かった。
    そいういった会社のひとたちの技術力や真摯な姿勢が頼もしく、もし自分が客死したらこの人たちにお願いしたいと思ってしまった。
    だが同時にほぼ家族経営の少人数で対応するには過酷な環境に思えて、この人たちが倒れたらどうなるのか少し不安にもなる。

    個人的に海外旅行の際には、クレジットカード付帯のものとは別に急病で帰国しなければならない時のためのものと、最悪の状態になった場合に送りかえしてもらうための保険に入ることにしている。
    その際は身体があるままだとお金がすごいことになると聞いていたので、現地で火葬してもらうよう家族に言ってある。
    また、親が迎えに来たいというので、その費用が賄われる保険にも入って行く。
    だが実際にどのような状態で帰ってくるのかはわからなかったので、その一端を知ることができた。

    少し感情的というか物語感が強く客観性が乏しいが、著者の素直で真摯な姿勢が伝わってくる。だからこそ、取材を受けてくれたのだろうと思う。ただそのせいか、すこし現実味が薄れてしまっているようにも思う。
    取材先がひとつの会社だけだったので、業界全体のことはわかりにくかったのが残念。
    ノンフィクションというより、いっそのこと小説にしてしまったほうがよかったのかもしれない。

  • 『国際霊柩送還士』このような仕事をしている人たちがいる事を初めて知った。海外で亡くなると『貨物』で帰ってくる事は知っていたけど、遺体を家族に送り届ける仕事が存在することなど考えた事も無かった。『死』『弔い』を考える良いキッカケになりました。

  • 亡くなった後も一個人として、一人の人として最後まで思いやりと信念を持ってご遺体に向き合ってくれる人々の話。
    自分あるいは家族が海外で万が一不幸に見舞われた折りには、この会社の方々にお世話になりたいと思えた‼

  • 海外で亡くなった遺体は、どのようにして運ばれるのだろう。」本書は、そんな疑問を感じた著者が、実際に遺体を扱った仕事をしているエアハース・インターナショナル(株)の社員を取材したノンフィクションである。
     彼らの仕事は国際霊柩送還士と呼ばれており、日本ではまだ浸透していないのが現実だ。遺体が海外から本国へ持ち込まれる時、遺体が腐敗しないように処置をするのがエンバーミングという仕事である。そして、書類の作成や輸送業者とのやり取りに至るまで一連の作業を請け負っている。海外から帰ってきた遺体の損傷は、私たちの想像を絶するものが多いという。しかし、そのような状態でも最後まで諦めずに、少しでも良い状態で遺族のもとへ帰そうとする彼らの熱い情熱に感動した。
     遺体は昼夜を問わずに鉾ばれてくるため、とても大変な仕事である。多くの人にこの仕事を知ってもらうべきだと思う。

  • 海外で亡くなったヒトの遺体を受け家族に帰す、また日本でなくなった外国人の遺体を故郷へ送り返す仕事があるという。
    国際霊柩送還士。
    海外から戻ってきた遺体には様々な事情があり、またその日数も長い場合がある。
    そんな時の遺体の損傷はひどくなる。
    そういった時にも、家族や友人たちに良い状態で再会出来るように処置を施すという。
    また昼も夜もない大変な仕事である。
    国内の葬儀社とは違い、広く知られていないが、もっと知られるべき仕事だと思う。

    2018.5.29

  • 『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』に続き読んだ著者の作品。在外邦人の遺体を日本へ送り返す、在邦外国人の遺体を本国へ送り戻すという、国際化した現代が必要とする職業である国際霊柩送還士を初めて知り、時折涙が溢れそうになりながら読了。24時間体制で到着する遺体を受け入れ、想像を絶するような状態の遺体を処置する彼らには頭の下がる思いだ。自分自身は葬式など不要と考えていたが、死者との離別に区切りをつける意味での葬儀は「泣きぬき、悲しみぬく」ことで再び生きるために必要なのだと思えるようになった。

  • 国境を越えて遺体を運ぶ仕事。ほぼ家族経営。ドキュメンタリーながら、ところどころ露わになる著者自身の感情。ところで運搬料金はどのくらいなのだろう。

  • 欲得ではなく、こういう人々がいて、世の中は成り立っていくのか。確かに、文章はつたない部分があるようにも感じたが、それ以上の作者のねついをかんじる。

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