- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087452525
感想・レビュー・書評
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Amazon primeで配信されるため、なにげなく
読んでみた結果、単なるノンフィクションでは
ないことが判り、飾らない筆者の言葉のひとつひとつに圧倒された。
また、物語のキーパーソンの遺体と向き合う姿勢は、プロ意識を超えた、なんとも形容し難い姿勢には深く考えさせられるものが随所に見られた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
国際霊柩送還士という存在を初めて知った。社長の木村理惠氏がずば抜けている。確固たる信念を持ち、隙のないプロフェッショナルな仕事をされている。悪徳業者を少しでも減らすためにも、この職業にライセンスを設けたほうがよいのではないだろうか。エアハースの認知度が上がり、その高いクオリティや技術が世の中に広がることを願うばかりだ。本書を読み、アメリカのエンバーミング技術が、他の国と比較して一番良いということに感心した。なぜ他の国は良いものを真似しないのだろうか。金儲けの道具としてではなく、家族のご遺体を扱うように、一体一体大切に送り届けてほしいと思った。
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日本人が遺体や遺骨に愛着を感じるようになったのは戦後だという話を読んだことがある。太平洋戦争における異郷での大量死と経済的な余裕がそういう変化を齎したのじゃないかと、何と無く私は思う。だから、そうした経験を持たない国や地域で、遺体が日本ほど丁重に扱われないことも当たり前なんだろう。しかも、文化や宗教によって遺体に対する態度は千差万別だ。養老先生やサイバラ作品を読んでいても感じる。つまり、日本はこの点においてもガラパゴス化している可能性が高い。けれども、ここがガラパゴスだろうがニューヨークだろうが、私たちは近親者の死に悲嘆せざるを得ない。最後に何かしてあげたい。
たぶん、日本人は死者を遠くへ追いやってしまうことのできない精神文化の中で生きてきた。いくら仏教が輪廻転生を解いても、お盆には故人が帰ってくると言い張り続けた。遠くへ追いやらず、死んだ後も水をあげ、米をあげ、線香を焚いて「世話をする」。つまり、死者は絶対的に「世話をする」べき相手として日本人の精神文化の中に根を下ろしている。
宮沢賢治が妹・トシの「あめゆじゅとてちてけんぢゃ」を自分への救済と感じたように。死にゆく者、あるいは、相手の死を受け入れなければならない場面において、「何かしてあげられる」と思えることが、遺される者のたった一つの救済だ。そのことを、祖父と祖母を立て続けに亡くしたことで深く感じた。死装束を着せ、死化粧をし、六道銭をもたせてやりながら、「何かしてあげられる」ことに、確かに私は癒されていた。一方、痛ましく損壊した遺体を前に、あるいは帰ってこない遺骨があることに(私の知人の親族はまだ三陸の海から帰ってこない)、きっと、まだしてやれることがあるのではないか、それなのになにもしてやれないのかと自分を責めてしまうのでは無いか。そこに遺された者への救済として、シベリア遺骨収集団があるのであり、遺体修復士がいるのであり、この国際霊柩送還士がいるのだろう。尊い仕事だ。だって、魂の救済策なんだから。
私はまたひとつ、祖父の痛みを知った気がする。祖父は、私財を投じて後半生を遺骨収集と慰霊に捧げた。それが祖父の魂を救えたのか、それでも救われなかったのか、問う事はもうできないし、生きていたとしてもどうたずねればそれを聞き出せるのかがわからない。わかるのは、戦友をシベリアに置いてきた、何もできなかった、という無力感は、戦後の祖父の60年を支配し続けたという事実だ。
そういう心が眠る土地に、私は生きている。 -
海外で亡くなるということは、こんなにも大変なのか…知らない職業をとても読みやすく書かれていて、この方の凄さを感じた。
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国際霊柩送還士は、裏方として人の最も辛い現場に立ち会い、そしてまた裏方として人の目に触れない場所に戻って行く、忘れられるべき人たちである。遺族に生前の姿に近い形の故人を戻すことで、遺族が故人の死に様に心を奪われることなく、一緒に過ごした時間を振り返り、哀しみに専念できるようにしているのだと思う。死は、生き方を考えさせてくれる。
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「BOOK」データベースより転載
運ぶのは遺体だけじゃない。国境を越え、“魂”を家族のもとへ送り届けるプロフェッショナルたち。2012年第10回開高健ノンフィクション賞受賞。 -
海外で起こった事件・事故のニュースを観ると
ご遺族の姿に胸が痛み、早く家に帰してあげて。
そう思ってしまう。
多くの人の尽力により、ご遺体を異国から送り出し
日本へ帰すことができる。
国際霊柩送還士もそうだ。
搬送された遺体を処置する。
亡き人は笑みを浮かべ表情を取り戻す。
それぞれのエピソードに涙。
P259
〈人々に寄り添い、そっと人々の前から消えていく、いつも忘れ去られる人々〉
社会を支えているのは、こういう人たちだと佐々涼子さんは書く。
読まなければ知らなかったこと。
米倉涼子さん主演のドラマを通して、多くの人へ届くことを願っている。 -
国際霊柩送還士なんて存在を知らなかった
海外で亡くなった人を日本に運ぶ仕事があるなんて…
海外で亡くなり遺体となって日本に運ばれると、
国によって遺体の保存処置にバラつきがあり、
ぐちゃぐちゃだったり体液まみれだったり…
それはそれは酷い様相の場合もある
そのご遺体をできる限り生前の姿にして遺族に
お返しする国際霊柩送還士
アメリカに住んでたときや海外いっても死ぬこと
なんて考えたこともないけど、もし死んだら元気な
ときの姿で家に帰りたい
佐々先生は寝たきりの母親と向き合うことから、
遺族の心境を想像する
衝撃だったのは、日本で死ぬのと海外で死んで
日本に帰ってくるご遺体の違い
「亡くなった後の変わり方が違うんだ」
遺体になっても遺族だとしても、それは悲しい
国際霊柩送還士は尊い仕事です -
外国で亡くなった方、日本で亡くなった外国の方はどうやって母国へ帰るのか。
各国に専門家がいて、遺体の空輸の際の状態も把握した上で慎重に送られてくるのだと思っていた自分にパンチ。
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南杏子さん作品から、佐々涼子さんの他作品に辿り着いてのこの作品。
国際霊柩送還士に密着したノンフィクション。
国際的にご遺体を運ぶ仕事ぐらいの認識で読み始めたら、ただ運ぶのではなかった。エンバーミング。色々な事情での死や長い移動距離でご遺体は安らかな状態にないことが多い。
国際霊柩送還士が気にかけることは、残された者にいかに悔いの残らない後をひかない別れをしてもらえるか。