- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087452587
作品紹介・あらすじ
思い出のとき修理しますは谷瑞恵さんが書かれている小説です。寂れた津雲神社商店街に住んでいる明里と時計職人の秀司の周囲で巻き起こる少し不思議なストーリーです。空からの時報はシリーズ第三弾になります。結婚と家族の問題を抱える人たちが商店街を訪れます。そんな人たちに触れ合いながら二人もゆっくりと成長していく物語です。
感想・レビュー・書評
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"思い出のとき修理します"
3作目は「空からの時報」
明里と秀司の交際も穏やかに進行中...のはずが、いつの間にやら
見知らぬ女性が時計店を手伝っていると聞かされ動揺する明里。
一方秀司には、古い懐中時計を直して欲しいと突然時計店を訪れた
同級生がいた。そしてその時計にも実は、秘めたる過去の思い出をも
修理したいという願いが込められいた......
津雲神社通り商店街の「飯田時計店」のウインドウに掲げられている
"思い出の時 修理します"のプレートに惹かれて訪ねてくる人はみな
人と人との関わりで、なにかを誤解したりされてしまったり、また
そういうことでお互いの気持ちがすれ違ってしまっているということに
気が付いていなかったり。たとえ気が付いていたとしても
自分では修復することができずに長いことずっと引きずっていたりする。
人と人との触れ合いで、誤解を招いてしまうことほど
心に蟠りが巣くってしまって、いつまでも
長く引きずられてしまうことはないですよね。
人間関係ではこれがいちばん悲しくて辛くて、そして怖い。
そんなとき、話を聞いてくれる人が側にいてくれるだけでも心は和らぎます。
心寄り添える誰かがいてくれる...。ただそれだけで
あんなに蟠っていた誤解がするすると解けてしまった...なんてこと
ままあったりしますものね。
津雲神社通り商店街にある時計屋さんは、壊れた時計を直してくれます。
けれども、その壊れた時計に隠された過去の辛い思い出をも
もしかしたら直してくれるの?...と、ふと、秘めた心の内を
打ち明けてみたくなる、そんな店主さんが待っています。
直してくれるのは時計だけ...なんですけれどね。^^
4つのお話のなかでよかったのは
・星をさがす人詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恋をすると誰もが臆病になる。
まして以前の恋が上手くいかずに終わってしまっていたら余計に慎重になるだろう。
嫌われたくない、もう二度と失敗はしたくない。
好きな気持ちが強ければ強いほど、人は臆病になっていく。
真実とはいったい何なのだろう?
知っていることだけがすべてだと思い込んで悩んだり苦しんだり。
本当は知らないだけで真実は他にあるというのに、目の前に見えている事実だけが真実だと思ってしまう。
リアルな生活の中にもそんなことは多いのかもしれない。
明里にどこか棘のあるような態度を取る郁実も心の中に癒えぬ傷を抱えている。
明里自身も、前に進んでいく勇気をいまひとつ持てずにいる。
揺れ動く気持ちは、きっと好きな人のひと言ですっと落ち着くべきところに居場所を見つけるのだろう。
心の痛みを知っている秀司だからこそ、明里に対する態度もいつも優しく迷いがない。
二度と後悔はしたくない。
その思いは秀司にもあるのだから…。
不思議な謎の向こう側にあるのはいつも温かな人の思いだ。
このシリーズの魅力はそんなところにあるのだと思う。 -
この作品、明里の魅力ってなんだろうなぁって思うのですよ。秀司は女の人から見て解りやすい、穏やかで優しくて包容力があって…結婚するなら一番理想的なタイプ。では明里はというと特別個性的でもない、常識あるごく一般的な女性としか映らない(これはわざと作者がそう書いているそうですが)乙女ゲーの主人公=プレイヤーと同じな訳。読者層を考えれば無難ではありますが、もうちょっと独自性があってもいいと思います。
そして男性読者諸氏の目には、明里はどんな魅力があると感じられるのかしらね。 -
星をさがす人が一番好きだった。
郁実さんが苦手だな、と感じたけれど事情がわかったら幸せになってほしいなと感じた。 -
時計とセピア色の商店街の話の3巻目。
今回は明里と秀司の関係者にスポットを当てた話がメイン。
一見するとイヤな人たちであっても実は…という事情が丁寧に書かれていて、なおかつそれが押し付けがましくなくするっと読める。
最終的にはほろ苦いチョコを食べたような気分にさせてくれる、そんな本。
連作短編集なので読みやすいのもいい。 -
なかなか物語の展開に馴染めなかったけれど
3巻目にしてようやく
人物の動向が気になって感情移入できるようになってきたかな。
今回は
解説にもあったように家族絡みの
悲しいけれどほっこりする場面がいっぱい。細かいところまでしっかり読まないとひとつひとつの話の良さが伝わらないような気がして
だから余計に世界観にどっぷりと浸かれたのかも。
いつ何時も
変わらない優しさで包んでくれる時計屋さん。4巻目で新しい展開があるのかな。 -
前作はもっとファンタジーで明里ちゃんの妄想も激しかった気がするけど(よく覚えてないけど)、今作は大分現実的。
恋人との向き合い方、実の父親との向き合い方、一歩一歩前に進んでいってる。