少女は卒業しない (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087452808

作品紹介・あらすじ

取り壊しの決まっている地方の高校、最後の卒業式の一日。少女7人が迎える、それぞれの「別れ」を、瑞々しく繊細に描く。切なくも力強いメッセージが光る全7話。(解説/ロバート・キャンベル)

感想・レビュー・書評

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  • たぶん地方都市、高校卒業式の当日、7人の少女達の物語。甘さより、ほろ苦さが勝る短編集だけど、それぞれ少女達の意思が書かれていて、青春の幕の内弁当。“在校生代表”好きですよ。ありったけの想いが伝わります。
    もっと、学生生活を大切にすれば良かったなって思ってしまう一冊。その時は精一杯だった気もするけどね。
    朝井さんは、女子高生だったことがあるかもしれない。

  • 卒業式に廃校が決まっている高校に通う女子高生たちを主人公にした短編集。
    女子高生のキラキラな感情もあれば、苦しい感情もあり、自分の高校時代を思い出す。が、短編という事もあり、少し薄っぺらい感じも持った。

  • 『少女は卒業しない』読了。
    およそ10年前の短編集。まだスマホではなくケータイ電話の時代。それでも、いつの時代になっても青春は変わらずそこにあるんだなぁ〜って感じで。なんだか読んでいて懐かしくなった。
    Mrs. GREEN APPLE「青と夏」を聴きながら読んだら感慨深いものがありました。なんだか、いいねぇ〜
    実は朝井リョウさんの『何者』を読んで以来、すごく苦手意識があった。その苦手意識が払拭できたので、もっといろんな作品を読んでみたいと思った。

    2022.6.7(1回目)

  • 大きな世界観に登場人物たちをくるんであげるようにして群像劇を編む方法もあると思うのです。それは「閉じた詩的な方法」としてのもので、ファンタジックな方法です。この作品でいえば、東西南北の棟によって成り立っている高校の造りというものがひとつの世界観的なものとして登場人物をくるんではいるのですが、あくまでそれは無機的な舞台装置にすぎません。登場人物たちの考え方や感じ方はそれぞれに別個のものとして存在しています。いわば「開かれた散文的な方法」なんです。そして、散文的なできあがりかたをしていたほうが、現代の現実のあり方として読み手はリアルな肌感覚で受け止めやすいのだと思います。それでもって、散文的な作りの中の登場人物個人のなかに詩的なものが宿っている。

    作者が「露骨なセンチメンタリズムっていうものは無しで」っていう前提から書き始めてみたならば、それでも話の流れでセンチメンタルな描写や内容に行き着くというのがあったとしても、それは必然としてでてきたものなのだから嘘くささを感じにくいというのはあるのではないでしょうか。そのように考えたとき、初っ端の『エンドロールが始まる』はちょっとくすぶっている出来あがりのようにも感じられます。

    というか、小説を読むときにありがちなのですが、たとえばこのような短篇集を読みはじめても最初はなかなか波長が合わなくて苦労するというのが僕にはあります。今回は第二章の『屋上は青』の途中からようやく読めてきた感覚でした。ですから、第一章の『エンドロールが始まる』がもっとドライだったなら、統一感みたいな、「うまくハマった作り」というような感想を持ったかもしれません。ただ断っておきますが、それは僕の好みであって、もしも僕の好みに適う作りだったならもっと単純で割り切れすぎる作品になっていたかもしれないです。

    さらにいえば、作品の出だしではいろいろと読者に情報を与えなくてはいけなかったりします。説明書きにならないように、うまく状況や舞台になる場所などを伝えなくてはならず、さらに連作短編ならば、その作品一つとしての情報のみならず、これから読み手が味わう作品全体への予備知識をも持たせなくていけないので、そういった都合上どうしても出来あがりとして他の作品とは違ってくるというのはあると思うんです。プロローグ的な仕事を背負わされますから。ですので、「露骨なセンチメンタリズムっていうものは無しで」っていう前提で嘘くささを排す効果があるやりかたは、やっぱり第一章は大目に見るべきで、本番は第二章からと考えるほうがいいのかもしれません。

    第二章からはもうずっとおもしろくて、すごいんです。かなりおもしろい。ユーモアに満ちていますし、登場する高校生たちの体温や吐息までもが伝わってくるかのような生きいきとした言葉遣いと心の動きがあります。十代をぽやーんと生きていたらこういうのはまず書けない。作者はしっかり目を見開いて学生生活を十分に生きたのではないかなぁと思いました。

    これがいいんだよなあと思うのは、作者と登場人物との間に上下関係がなさそうなところです。作者がセリフを言わせている、考え方を作っている、という感じがしなかった。たとえば第三章『在校生代表』にて卒業式の送辞をする亜弓という人物がどんどんきわどいことをステージ上から語っていくのですが、作者が操作している感じがまずしませんでした。そういう、作者が操っているんだぞ、っていう感覚を受けないところが作者の美点だと思いました。まあでも、俯瞰してみているんだな、っていう感じはあるんですけども。

    笑えて、切なさがあって、十代のキュンとした記憶がくすぐられて、輝きがあって、闇があって、まっすぐな気持ちよさと自己陶酔的な愚かさとがあって、邪魔されない個性があって、邪魔される個性があって、単純で、でもわりきれなくて……。高校生たちのそういった生(LIFE)の物語でした。

    タイトルが『少女は卒業しない』で、これは最初、否定的な意味なのかなと思いました。が、読み終わると「うんうん、卒業しなくていいんじゃないの? 卒業しないほうがその後と地続きでいられるじゃん」なんて思えてきました。まあ、個人的にそう思ったということですが。

  • 文庫ではなく、単行本を読んだ時のレビューです。ご了承ください。<(_ _)>

    冬の終わりとも春の始まりともつかない時期、三月の終わり。
    凛として冷たく、それでいて柔らかさもある風がすうっと肌を撫でていく。
    切ない卒業式のそんな空気感を持った、爽やかで瑞々しい作品集。

    作者である朝井リョウ君の感性と才能はなかなかなものではないかと。
    ふーむ。最近の「都の西北」の学生にも、見所のある若者がいるのだなあと。
    それにしても、某映画配給会社に就職して、今後作家活動などできるのだろうか。
    それが、少し心配ですが。

    ふんわり浮かんだ大きなシャボン玉
    耳を澄ませば聞こえる川のせせらぎの音
    ツンと鼻の奥をくすぐる樹木の緑の香り
    目に飛び込んでくる透き通るような青い空
    日の差し込む窓から見える風景
    角がまるくなった消しゴム
    0.5mmのシャープペン
    カッターの傷跡の残った机
    あの子の座っていた木製椅子
    赤ペンで滲んだ答案用紙

    傘置き場に忘れさられた一本の傘
    蝶番の壊れた下駄箱
    体育館の床に貼られた白いテープ
    自分の背より低くなった演壇
    風になびく体育館の暗幕
    誰もいなくなった教室
    砂煙の舞いあがるグラウンド
    文化祭で使われた古いパイプ椅子
    卒業生の書いた壁画

    たいせつな仲間たち
    そして、それらすべてに決別する卒業式

    いくつになっても、いつになっても、ずっとずっと忘れないだろうたくさんの思い出

    瞼の裏に浮かぶ涙は何ゆえか。
    ああ、やはりあれは間違いなく青春という言葉だったなあと。
    青春というかけがえのない時期だったなあと。
    決して忘れてはいけない真っ直ぐな心だったのだと。

    いかにも生の、今そこにいる高校生の息遣いが聞こえてくるような透明感。
    好きでした、と秘かに憧れていた先生へ、心の中にだけ聞こえるように呟く別れの言葉。
    これからの路は別れ別れになる二人の屋上での切ない会話。
    在校生代表の送辞の中で先輩への思いを敢えて告白する二年生女子。

    別れ、そして旅立ち。
    でも、少女たちは卒業しない。

    七本の絡まりあった短編すべてが、切なく胸に響いてくる作品でした。
    ああ、こんな時代が自分にもあったのだなあ、と遥か昔を思い起こさせてくれるような。

    この年になっても、こういう作品を読むと昔の自分を思い出して胸が熱くなる。
    アルバムを見て呟く。好きだったんだ、君のことが、と。
    私も、まだ卒業できていない。

  • 繊細で美しい表現をされるので驚いたなあ朝井リョウさん。あの頃の恋特有の、ゆっくりと過ぎる特別で大切な、愛おしい瞬間を体感させてもらえた。
    ◆エンドロールが始まる
    たった30ページちょっとだけど、本当に美しかった。今まで読んだ恋愛物で一番好きかもしれない。
     「先生の、男のひとにしては細い左手の薬指の上を、春の光がつるりとすべって、とてもきれいだ。」
    この一文で、既婚者であることを知らせるのすごい。明記せず、主人公の行動から少しずつその恋の真剣さと儚さとを伝えていく巧さ。
    ◆屋上は青
    「恋心とか片思いとか、そういう甘い思いじゃない。もっともっと辛くて、苦くて、憧れて、憎くて、焦って、もう二度と味わいたくないような思いを、私は尚輝に対して何度も感じてきた。
    幼馴染の2人の間のそれぞれの「不安」、30ページでよくここまで鮮やかに表現するなあ。
    ◆在校生代表
    ザビエルがいい味出す。順位表の話がとっても好きだった
    。生徒会室というこの恋愛を象徴する場所。あの頃のわたしにとっても特別だった生徒会室と文化祭を思い出したなあ。
    ◆寺田の足の甲はキャベツ
    朝井さん若いだけあって、高校生たちのノリがとんでもなくリアルだから、後藤と寺田のふたりの空気感も等身大で伝わってくる。
    「あたしたちは十八年も生きてしまった。離れたくないと喚くほど子供じゃない。だけど、まだ十八年しか生きていない。離れても愛を誓えるほど大人でもない。」
    大人っていつからなのか分かんないけど、幼いときに描いていた大人像とは全然違くて、離れても愛を誓える人はほんの一握りだし、2人のように綺麗に別れを告げる決断はできないと思う。だからすごいよ十八歳。
    「こっち向かないでいいよ、寺田。」切ないなあ。
    ◆四拍子をもう一度
    氷川さんと神田さんかわいいなあ。森崎くんファン心理をそそるなあ。
    ◆ふたりの背景
    優しい二人が紡ぐ丁寧なことばが沁みる。細かい描写で口数の少ない正道くんのやさしさを伝えるの上手。よく喋る里香との対比が顕著だった。わたしはあすかみたいに芯のあって強い女の子にはなれなくて、真紀子みたいに本心隠して里香みたいな求心力のある人に引き寄せられたまま、あすかみたいな子に憧れて生きてきたから、真紀子の気持ちがわかる。だからあすかが、真紀子が正道くんに「そのままでいいと思う。」と言ったことを知って、彼女のこと知ろうとすればよかったって思ったのが嬉しかった。
    尊い世界だ。
    ◆夜明けの中心
    かなしくてかなしくて言葉に出来なかった。
    大切な人を失う哀しみを知るには高校生は早すぎる。

    • もえぴさん
      わ〜〜めちゃくちゃこの感想好きです!!!!
      私もこの作品を愛してやまないので、同じ温度で好きでいる人がいることが分かったのがすごく嬉しいです...
      わ〜〜めちゃくちゃこの感想好きです!!!!
      私もこの作品を愛してやまないので、同じ温度で好きでいる人がいることが分かったのがすごく嬉しいです☺️
      ちなみに私は、「在校生代表」が一番のお気に入りです。送辞で告白するって、、!
      2023/03/13
  • これまた連作短編集。何話か読んで、このタイトルも秀逸だなと思った。そろそろ長編が読みたい。

  • 読みたい本、欲しい本がたくさんあります。
    でも我が家、財政難(いつものことですが泣)
    そのため、本棚から積読本を。
    2012年に購入していた一冊です。
    しかもハードカバー。
    当時の私、リッチ…!笑

    帯は、
    -------------------------
    「桐島、部活やめるってよ」の感動ふたたび!!
    廃校が決まった地方の高校、
    最後の卒業式。
    少女たちが迎える、
    7つの別れと旅立ちの物語。

    この「さよなら」は、
    きっと世界の扉をひらく。
    -------------------------
    「桐島、部活やめるってよ」を20代そこそこで読んで、
    たぶんその流れで本作も購入したんだろうなあ。

    数年前に「何者」、最近「スター」を読んでいたため、
    本作の青春、優しさ、青臭さみたいなものが新鮮でした。
    そっか、こういう話も書いてたのかあ、と。

    「何者」も「スター」も個人的には、
    刺激的というか、ハッとする部分、刺さる部分があったので。

    同じ学校、同じ制服、同じ一日、そして同じ時間を生きているのに、それぞれに「別れ」や決意があって。

    同じ時間、空間を共有しているはずなのに、
    胸に秘めている想いや葛藤は全然違うんですよね。

    わかっていても、改めて思いました。

    胸がきゅっとなりますね、30代後半の私が読んでも。苦笑
    たぶん、精神年齢はまだ思春期。笑
    (体力と気力は年齢相応。苦笑)

    本作は…変な裏切りがなくて、
    ひとりひとりの葛藤や悩みがあり、
    その後どうなったんだろう、というとこをは見えずに、
    別の同級生の物語に移っていきます。
    それがなんかよかったです。
    具体的な決着はわからなくても、
    違う主人公と同じ空間で笑っている彼女がいるから。

    私の学生時代は友達も少なかったし、
    人見知りだったし、
    感情的すぎたこともあったなあと、
    結構生きにくい時間が多かったから、
    こんなに素敵な青春時間を追体験させてもらえて幸せでした。

    仕事帰りの電車(疲れて勉強はできないので、帰りの電車は小説を読んでます)で、良い時間を過ごせました。

  • 「こういうこと言うよな〜」と1年前まで高校生だった自分にスッと馴染んできて、読みやすかった。
    会話の解像度が高め。

  • 私自身も、もうすぐ卒業だったので
    こういう気持ちに共感できました。
    桜吹雪がふわあと降ってくるようなイメージでした。

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

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