心 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 53
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087452907

作品紹介・あらすじ

親友を失い、生きる意味を失った青年と、ある秘密を抱えた先生の間で交わされるメールを軸に織りなす、喪失と再生の物語。ベストセラー『母 オモニ』に続く長編小説が早くも登場!(解説/佐藤 優)

感想・レビュー・書評

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  • どう生きるか、死とは何か。

    最初、青年がちょっと面倒な若者だなと思ってしまったのですが、先生が丁寧に対応していくうちに、私も少しずつ親しみを覚えた。
    本当に「真面目」なんだと思う。

    最後に「受け入れる」という先生の言葉に、本当にそうだなと感じた。ただ、若い頃はこの「受け入れる」が難しい。
    苦しいけど、すべてを受け入れて生きていくしかない。

    死と生は半々。
    何となくだけど、納得した。

  • 著者の身の回りに起こった題材をもとにした小説。
    終盤はいささか青臭い青年の主張だが、震災が絡んでいるだけに真実味がある。
    生きる悲しみ、死ぬ寂しさに迫る。

  • 「死」とはなんだろう? という問いに対する著者の思いを小説仕立てにしたもの。何に期待するのかによって印象は違うと思うけど、問わずにいれない問があり、それをこうした形にしておきたかったのだろうと思う。東日本大震災も描かれているけど、不愉快な感じはなかった。

  • 先生とxx君の書簡を通した互いの救済。

  • この本の存在を知った時、自分は疲れていたのかも知れない。それでも、死の事を考える程ではなかった。ただ、状態を言葉に変換できず、だからこそ行動にも繋がらず、モヤモヤとした嫌悪感を抱えたまま、救いを求めていた。本を読む事が救いであり、その世界から、また新たに姜尚中の心という本を知った。佐藤優の本だったと思う。佐藤優の紹介から、この著書がその時の自分とシンクロしたような気がしたのだ。

    著書は、生と死を見つめた内容で、一人の青年と姜尚中自身のやりとりを通じ、生きる意味を考えさせられる内容だ。自分のモヤモヤした気持ちを少しシフトさせるに、読んで良かったと思う。そんな風にしか、折り合いがつけないような事ってあるものだ。まさに、姜尚中自身もそうしたトラウマにありながら、独白していく。シンクロの訳は、そこにあったのかも知れない。

  • 著者自身がモデルと思われる大学教授の「わたし」が、西山直広(にしやま・なおひろ)という大学生から手紙を授かります。そこには、友人の恋を踏みにじったのではないかという彼の悩みが綴られていました。「わたし」は彼の真剣な悩みに向き合いながら、現代の日本が直面している問題と、その中で苦しみながらも前を向いて歩んでいく青年の姿に感銘を受けます。

    西山青年は、白血病で死んでいった「与次郎」というあだ名で呼ばれていた親友の長与次郎(ながよ・じろう)から、一通の手紙を託されていました。それは、西山や与次郎と同じ演劇部に所属する黒木萌子(くろき・もえこ)という女性への恋文だったのですが、与次郎と同じく萌子に心を惹かれていた西山は、けっきょくその手紙を萌子に渡すことのないまま、与次郎の死の報せに接することになります。

    与次郎を裏切ったという思いに苛まれる西山ですが、その一方で萌子はしだいに彼に親しげな様子を示すようになり、ますます西山は良心の呵責を覚えるようになります。萌子はゲーテの『親和力』を現代の舞台に翻案した劇を作成し、「わたし」はそこに含まれる「自然」と「反自然」の関係に瞠目します。

    その後、東日本大震災が起こり、海中の遺体を引き上げるヴォランティアに従事することになった西山は、人の死とは何かという大問題に直面することになります。「わたし」はそんな青年の一途さに心を揺さぶられながらも、彼のナイーヴな心が孕んでいる危うさを心配します。やがて『海の棺』と題された彼らの劇が上演されることになり、西山はそのクライマックスで「生」への希望を語ります。その後彼は、萌子の気持ちと向き合うという、もう一つの試練を迎えて、物語は終幕となります。

    最初は、反時代的な煩悶する青年像に戸惑いを覚えましたが、「自然」と「文明」が「国土」という中間項によって平板に接続されてしまうところに、「生」と「死」という垂直軸が切断をもたらすという構図を描けば、本書のテーマが捉えやすいのではないでしょうか。言うまでもなく夏目漱石の『こころ』を踏まえた物語ですが、「解説」で佐藤優が指摘するように、私小説的な構成を取っています。佐藤が述べようとしているのは、状況の中で悩み立ち尽くす青年を「わたし」が導くのではなく、「わたし」も青年の悩みに寄り添う一つの実存として描かれているということでしょうか。それはちょうど、物語の終わりに描かれる西山と萌子の関係とパラレルなものとして理解するべきなのかもしれません。

  • わたしは箱の中にしまってあった青春の遺留品を一つひとつ確認するように、思い出の本をよんでいった まるごと受け入れることです 「生きとし生けるもの、末永く元気で」と最後の言葉を残して、自ら死んでいった息子のを思い、この物語を書いたと思う

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著者プロフィール

姜尚中(かん さんじゅん)
1950年、熊本県熊本市生まれの政治学者。専攻は政治学・政治思想史で、専門はポストコロニアル研究。国際基督教大学準教授、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、聖学院大学教授、同学長を歴任。東京大学名誉教授。
主な著作に『マックス・ウェーバーと近代』、『反ナショナリズム』、『在日』、『母―オモニ』など。特に亡き息子との共作とも語る『悩む力』、そして震災や生死、亡き息子への思いをテーマにする『心』などが代表作。

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