夏のバスプール (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453140

感想・レビュー・書評

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  • 最近何故か青春ものが続く。主人公・涼、夏休み直前の登校中、同じ高校の女子・久野ちゃんにトマトを投げつけられる。久野は野球好きの弟が中学でいじめられたことで仙台から転校してきた。久野が野球部の西澤と付き合っているという噂。涼の元カノの微妙な距離感、親友カップルの関係もおかしい。涼は自分では気づかないうちに西澤や身近な同級生に心に傷を与えていたことを知る。青春時代の繊細な心情、微妙な距離感、疑心暗鬼、このすべて青春なんだ!ラストの涼と久野が対峙する場面はドキドキした。畑野作品の短文だけど鋭い描写を堪能した。④

    仙台の強豪野球部というと2校。仙台育〇と東〇。悪いイメージされちゃうのは困ってしまう。。。

    • bmakiさん
      おはようございます(^^)
      前日、ポプラ並木さんからご紹介頂いた宇宙兄弟の本読み終わりました。

      本のおかげか?少しずつ会社の偏屈なお...
      おはようございます(^^)
      前日、ポプラ並木さんからご紹介頂いた宇宙兄弟の本読み終わりました。

      本のおかげか?少しずつ会社の偏屈なおじさんとかの見方が変わり、この人にはこの人の強みもあるんだよなぁと思うようになりました(^^)

      旦那が正に、日々人のようなタイプ、私は主人公のムッタタイプで、色々な場面で自分に置き換えて読むことが出来ました(^^)
      ありがとうございました。
      2023/07/01
    • ポプラ並木さん
      bmakiさん、おはよう!
      おおー今から感想探しに行くね!
      素晴らしい~ 相手を知ると対応を変えられますよね。
      人によって対応方が違う...
      bmakiさん、おはよう!
      おおー今から感想探しに行くね!
      素晴らしい~ 相手を知ると対応を変えられますよね。
      人によって対応方が違うことを知ると、結構楽になりますよね。
      2023/07/01
  • 表紙が自分の好きな志村貴子さんのイラストだったので即購入。読み終えてからブクログに登録すべく作者さんの名前で検索したら、過去に一冊読んでいたことが判明して「お前かよ!」って声に出してしまった。(クソ失礼)そのレビューも文体が苦手とか生意気なこと抜かしてて以前の自分にトマトを投げつけたい気持ちになった……んですが、今回も読み進めるのに時間が掛かってしまったので相性がよくないのは事実かもしれない。
    ただ、こっちの作品は結構好きでした。青春を題材にした作品で「甘酸っぱい」なんて触れ込みは世にありふれてますが、この小説のように本当の意味できちんと酸っぱさを書いた作品はなかなかないんじゃないだろうか。未熟ゆえの、青さゆえの過ちやすれ違いが随所に散りばめられていることもさることながら、高校生という生き物から目を背けることなく物語を書く上でなかなか切り離すことのできない「いじめ」という問題についても、絶妙なバランスで表現している印象を受けた。
    いじめが作中で取り上げられる作品になると、大抵は被害者か被害者と親しい人物の視点が多いイメージだけど、この小説は「実は加害者だった」と自覚する側の人間の視点をしっかりと描いている。若くて多感で活発で愚かな頃の過ちを、最善へと導けるような大人になれているだろうか。俺は。

  • 夏になると読みたくなって今年もまた読み始めました。
    学生のときの夏休み直前〜夏休みの期間って本当に魔法のような特別な時間で、大人になればなるほど恋しくて。あの時の感情にまた出逢いたくなります。

  • ずっと気になっていた作家、畑野智美さん。
    夏に文庫化されて買ったものの積読。
    夏が終わる前には……と思いつつ、もう秋になってしまった。


    第一文の赤い色が印象的。
    赤と言えば、「久野ちゃんの赤い傘が見つけられない。」も好きだ。
    見つけられなのだから視界に赤はないはずだが、赤い傘がどこかにある映像を想像してしまう。
    読みやすく、イメージの湧きやすい文章だ。

    とはいえ、裏表紙の内容紹介からわかる通り、人間関係はとても複雑な話だ。
    現実でここまでごちゃごちゃすることはそうないと思うが、その複雑さの中で主人公・涼太の姿はどこかリアルに映る。

    どんな人間にだって仲のいい人・悪い人、好きな人・嫌いな人はいる。
    そして、他人から信頼してもらえるような人でも、知らぬ間に誰かを傷つけてしまうこともある。
    さらには、傷つけたことに気づいてもどうしようもないことだってある。
    ましてや涼太は高校生なのだから、大人のようにうまく立ち回ることは難しい。
    青臭く、ぶれることもあるけれど、それでも好きな子のためには一生懸命になってしまう涼太が微笑ましい。


    屋上から動き出すラストシーンは爽やかさ抜群。
    少し頼りない涼太ではあるが、この夏がきっかけで覚悟を決めて、大人になっていくのではないかと思う。
    一週間に満たない話だというのには驚きだが、高校生の頃の一日は濃密だったなぁと思い返した。

  • 等身大の高校一年生が、みごとに描かれていて、想像以上に面白かった。
    人を見下したり、いじめに加担してたり意識化に無いところで心無い行動をしてることは確かにあり、この主人公は誰にでもどこかあてはまるんじゃないかな。
    でも、最後は心を偽らない行動を涼太と久野ちゃんがとってくれたので嬉しかった。

  • 青春だ‼
    青春はドキドキやトキメキだけでなく痛いんだ‼

  • 数カ月前に『みんなの秘密』を読んだあと、同作がこの著者にしては珍しく印象の重たい、暗い作品だというようなレビューをどこかで読みました。もちろんAmazonか何かのレビューなのでその妥当性もほどもたしかではないだろうと考えていましたが、ならばいずれ他の作品も読んでみたいと思っていたのでした。

    それというのも何しろ『秘密』は登場人物のどいつもこいつもが揃いもそろってみっともない人間たちで、なるほど「秘密」というか「やましさ」をそれぞれの方法で抱え込んでいる彼らが、親の職業や家庭環境、学級内におけるカテゴライズといった諸条件のなかで、あるいは思惑にしたがって、あるいは必要に迫られてやむなく何がしかの選択をしていく。物語の終盤に至っても登場人物たち同士の緊張関係の構図こそ変化しているものの状況は好転というようなものは感じられません。

    読者によってはそれをナイーブな語感でもって「リアルだ」と評する人もいるのかもしれないのですが、もちろんこれはフィクションなので再構成された「リアル」であり、写実主義的な「リアル」です。ともかくそういう現実性を構成できている人の作品というのは深みがあって面白いものです(「暗い」ものであれ「明るい」ものであれ)。前置きがだいぶ長くなりましたが、上記のような次第で──そのときの感想を思い出して本書を手にとってみました。

    本書はたしかに『秘密』とくらべれば「明るい」作品だったかもしれません。冒頭で、主人公「涼ちゃん」もその周りの登場人物も「暗さ」とは無縁で、のほほんと牧歌的といっても言いような学生生活を過ごしているふうに描かれます。主人公と友人・担任教師の冗談を言い合ったりしているのも読んでいて楽しい。けれども物語の進展とともに不穏な要素が次々と現れてきて、最終的には数年来の根の深い問題がいくつも存在していて、それがこの「夏」に表出してきたことがわかる、そして読者や主人公がそれに気がついた時にはどうしようもなく状況が絡まり合っていて・・・という感じです。

    してみると本作も「重たい」話題──登場人物たちの今更悔やんでもどうにもならない過去の過ちだとか、そのことに今のいままで気がつくことができなかった鈍感さ、それに気がついた今この時も素直に行動できないみっともなさ、それらを直接・間接に規定している社会的要因といったものが、ふんだんに盛り込まれています(具体的にいうとすべてネタばらしになってしまうので控えますが)。そしてもちろん、だからこそ面白いわけです。もう少しこの著者の作品を読み漁ってみようと思います。

  • 一緒にいると辛さが増幅するけど、それ以上に幸せになれる存在を求めて、そして気付く話。
    久野ちゃんは雄基君と一緒にいると壊れてしまうけど、
    それでも雄基君と一緒に生きたいと信じている。
    そのためには自己犠牲のようなものが必要と久野ちゃんは感じているけれど、涼ちゃんと出会ったことでその思いは変化していく。
    その涼ちゃんもずっと信頼していた青野との関係の変化の中でしっかりと向かい合うことで久野ちゃんに対する思いや過去の自分とも向かい合うことが出来たと思う。
    自分勝手に優先できる自分を許してくれる存在に出会える希望を見出せる。

  • 「夏休みまで、あと5日。
     トマトを投げて来たあの子は誰だ!?」

    じりじりと暑くなる予感を秘めた夏の朝、
    僕の右肩にトマトが飛んできた。

    夏。空。プール。制服。白。トマト。赤。目の前の女の子。

    何かが始まる予感と
    何かが壊れる予感。

    泳げない僕と
    泳げるあの子。

    あの子もその子もみんな一直線。一方通行。
    それぞれの道が交差して。
    どう頑張ってもぶつかってしまうなら
    駆け抜けて可能性を捉まえたい。

    感想が抽象的になってしまうけど、
    細かく伏線とかその後とか言わずに
    登場人物の不器用さに触れてほしい一冊です。

  • 突き抜けた爽やか青春小説かと思ったら、全然そんなことなかった。ちょっと思っていたのとは違ったけど、普段読んでるのには近い感じかな。文庫の方の装丁の方がしっくりくる。

著者プロフィール

1979年東京都生まれ。2010年「国道沿いのファミレス」で第23回小説すばる新人賞を受賞。13年に『海の見える街』、14年に『南部芸能事務所』で吉川英治文学新人賞の候補となる。著書にドラマ化された『感情8号線』、『ふたつの星とタイムマシン』『タイムマシンでは、行けない明日』『消えない月』『神さまを待っている』『大人になったら、』『若葉荘の暮らし』などがある。

「2023年 『トワイライライト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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