ホテルローヤル (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.24
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本棚登録 : 2802
レビュー : 329
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453256

作品紹介・あらすじ

北国のラブホテルの一室で、心をも裸にして生々しく抱き合う男と女。互いの孤独を重ねる中に見えてくるそれぞれの人生の大切な断片を切り取る。第149回直木賞受賞作の文庫化。(解説/川本三郎)

感想・レビュー・書評

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  • ー 男も女も、体を使って遊ばなきゃいけないときがある…

    道東のとあるラブホテルにまつわる連作短編集。

    廃墟となった後の話から始まり、最後にホテル「ローヤル」と名付けられた経緯が語られ終わる。

    ラブホテルは、単にセックスをするための非日常的な場所。そこ場所をモチーフにした小説だから、読む前はもっとドロドロしたドラマを想像していた。思いの外、普通の人の普通のセックスが描かれていて、日常を感じさせる細かい描写もあって、そこがよかった。

    「星を見ていた」が最も好き。ミコがいとおしい。
    「バブルバス」はほっこりとする話。
    「せんせぇ」は全てが繋がった後に衝撃を感じる。

  • R2.6.26 読了。

     映画化することを知って読んでみた。「バブルバス」「せんせぇ」「星を見ていた」が、庶民的な感じがして良かった。

    ・「人と人はいっときこじれても、いつか必ず解れてゆくものだと、死んだ母に教わった。」
    ・「いいかミコ、なにがあっても働け。一生懸命に体動かしている人間には誰もなにも言わねぇもんだ。聞きたくねえことには耳ふさげ。働いていればよく眠れるし、朝になりゃみんな忘れてる。」

  • 1つのホテルが作る7つのストーリー。

    人が生きていく上で夢と欲望は必要なものなんだと
    思う。
    だけど、欲望が勝りすぎてしまうと、
    きっと幸せは離れていくんだなって思った。

    自分も過去にそれで人を傷つけたな。

  • 現代小説を読んだのはいつぶりか。表紙の陰気なイラストになんとも惹かれるものがあって手にとった。文学賞の話題には疎いので、直木賞受賞作と知ったのは読み終えてからのこと。わたしは女という性に育ったためか、女性作家の書いた小説を特別贔屓目にみてしまう傾向にあるが、そのエゴを引いてみたとしても、『ホテルローヤル』に描かれた物語には妙なリアリティがあって、登場人物たちが重ねる身体の熱とつたる汗が紙面からわたしを捉え、エロスのもつ無欲な欲望に嫌悪感と羨望とをおぼえる。人は抗えない。どんなにとりすましてみても、みな欲望のはけ口を探して生きている。露骨な描写が、読者に潜む野生性を暴く。

    第1話、「シャッターチャンス」。撮影者と被写体は、絶対的な主従関係にある。視線とは暴力である。物語の主人公である美幸が感じた寒気は、サルトル『水いらず』のリリュが感じたそれに似ている。長くなるが、以下に一節を抜きだそう。

    ー男がひたすら写し続けている亀裂の内側に、どうあがいても埋められない空洞がある。美幸はそこに何が潜んでいるのかを確かめたくて、自分の指先を沈めた。すべての音が消えて、男の喉仏が上下する。空洞は、男の欲望のかたちをただ忠実に内側に向かって広げているだけだった。ー

    この1話が、全体を通してもっとも芸術的で美しく恐ろしい。物語の軸となるモルタルでできた安っぽいラブホテルが、男女の偽善を露呈させる。女に穿たれた穴と、まるでその穴をもとは埋めていたような男のそれは、互いに空虚を埋めようと無意味に求め合う。それでも人は、愛などという掴めない幸福を馬鹿正直に信じて、身体でなく心が繋がることを夢みている。

    どこかにこのホテルはあって、登場人物たちもどこかで生きているのではないか。そう思わせる筆致の繊細さが美しい。ページが呼吸する。これは素晴らしいという壮大さはないが、魅力のあるスタイルで、非常に好印象をもった。

  • 直木賞受賞作とゆう事で初読み作家さん。
    重い話でもなく、あまり深くなく。読み進めても
    登場人物への関心が出なかった...

  • エロより人情。
    ラブホテル開業する人はきっと前向きな明るい人なんだろな大吉のように。
    ローヤルはローヤルみかんから。

    ミコさんの話が印象的
    夫を拒まない。
    ひたすら働く人にはみんな優しい。
    ヤクザになってた息子が逮捕前に送ってくれた手紙と3万円。

  • 桜木紫乃さんを知るきっかけになった本を、ようやく読んだ。
    言うまでもなく物語の中心には、ホテルローヤルがある。
    北国の湿原を背に建つこのラブホテルの、建てられた時から廃業して廃墟になった時までを、様々な組み合わせの男女を通じて描いている。
    7編の短編の時系列はバラバラで行ったり来たりするし、ホテルローヤルとの関わりは薄い人物も出てくる。だけどやはりその中心にはホテルローヤルがあって、こことここが繋がっている、と気づくのがとても面白い。

    桜木さんの短編集はこれまでもいくつか読んでいて、1人の人間が中心になっている連作短編集は数冊読んだけれど、中心に建物があってそれを取り巻く人々を描く、というのは興味深かった。
    その建物が活用され生きていた頃と、時が過ぎて使われなくなり死んでしまった後と。
    建てられた頃のお話が最後に収録されているから、最後の最後に胸が切なくなる。そこには明るい未来が見えていたはずなのに、って。

    男女の関係はいずれも何だか淋しい。
    愛情の見えない欲望があったり、しかしそれを果たしきれなかったり。
    打算とか妥協とか、本物の愛だと思っていたものがいつしか消えてしまうこととか。
    舞台がどこか後ろ暗い場所だから、淋しさが増すのかもしれない。

    解説に「桜木紫乃の文章は的確で、冗長なところがない」とあるのだけど、それはまさしくそうだと思う。
    無駄や回りくどいところはないのに、人の心理をずばっと突くような描写に溢れている。
    貧しい夫婦がとあることで浮いた5千円をラブホテル代に遣うくだりとか、浮いた理由が理由だけに罪深さもあって凄まじいと思ってしまった。

    今のところ、桜木さんの小説は、外れだと感じたことがない。全部面白いっていうのも、すごいことだと思う。

  • 男と女しかおらんこの空間やからこその、色々な人生とか物語があって、それぞれ違う理由でホテルに足を運びよった。短編やけ続きが気になった。時間が前後するけど最後は繋がる感じがすっきりする。

  • 薄暗い本。人生ってこんなものだよね、と半ば諦めのような気持ちとともに、そんな人生を生きていく人々は図太く美しく虚しく映る。
    こんなにジメジメした本なのに読んでよかったな、と思わせてくれる本。賞を取るのも納得。

  • 装丁は湿原と草原が良かったなあ。

    もっと今時のギドギドしたトリッキーな内容かと勝手に思いこんだら、清貧が静かに横たわっている感じのする話ばかりだった。

    人はそれぞれ愛の形を持っていて、それが愛かも分からず生活をして、ぎりぎり本能で自分になじむ形を選んでる。
    それが他人には理解できないものでも。
    自分で望んでいなくても。

    多分、短編のなか、人それぞれ心をえぐられる話は違うんだろうなあ。どの人の心境にそえるのか、なかなか怖い

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年、同作を収録した『氷平線』で単行本デビュー。13年、『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、『ホテルローヤル』で第149回直木三十五賞を受賞。『ワン・モア』『起終点駅(ターミナル)』『ブルース』『それを愛とは呼ばず』『霧(ウラル)』『裸の華』『氷の轍』『ふたりぐらし』『光まで5分』『緋の河』等、著書多数。

「2020年 『砂上』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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