本を読む女 (集英社文庫)

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  • 集英社
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レビュー : 34
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453287

作品紹介・あらすじ

大正生まれの小川万亀は、山梨の裕福なお菓子屋の末娘。優秀な彼女は東京の女学校に進む。現実の壁に幾度もくじけながら、常に前向きに夢を持ちつづけた女性の激動の半生の物語。(解説/中島京子)

感想・レビュー・書評

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  • 大正から昭和にかけての激動の時代に
    常に前向きに生き、夢を持ち続けたひとりの女性──
    山梨の裕福な菓子商の末娘・万亀(まき)は
    児童文芸誌「赤い鳥」を愛読する少女だった..。

    自分の思ったようには生きられず、親が良かれと思って敷いた
    レールの上を歩まねばならないのはこの時代なればこそ。
    どこかで反発してはいがらも、それにもめげずに、与えられた道の先にも
    きっと何かよいものはあるはずと、節目節目で何度も訪れる悪転機に対して
    前向きに生き続けようとする万亀さんに感動しました。ほんと素晴らしいです。

    "本"が大好きで、どんなに辛い時でも傍らには"本"があり
    "本"を心の支えにしていたという主人公・万亀(まき)は、著者
    林真理子さんのお母さまをモデルにされているとか....。
    お母さまの辿った半生の道のりは、それは波乱万丈なものでしたけれど
    私にはとても輝いてみえました。こんなにも素敵なお話を伺う事ができて
    とても嬉しいです。読めてよかった。ありがとうございました。

    心地よく刻まれていく文体が、大正から昭和初期という
    大好きな時代背景の中にさらさらと流れて
    物語の世界に吸い込まれていくように酔いしれながら読みました。

    並行して、北村薫さんのベッキーさんシリーズを読んでいますが
    同じ時代背景のなか、"女学校"や"服部時計店"という名が登場すると
    二つのお話に登場する人たちは、どこかですれ違ったり
    もしかしたら知り合いだったりするのかしら...なんて想像してみたり。^^

  • 時代は昭和。

    主人公は著者の母をモデルにした、本を愛する文学少女。

    小さな商いを営む6人家族の家に生まれた。

    小説における日本では、
    ・女性は1人で生きていけない
    ・女性は結婚するのが当たり前
    ・勉強する女ははしたない
    ・国の命令は絶対
    など、現代とは比較にならないぐらい悲壮で壮絶な世の中。

    主人公は、中学まで順風満帆の日々を送るが、社会に出てからは世間の流れに仕方なく乗り、結婚し、子供を産み、大切な人が何人も死ぬのを目の当たりにした。

    もちろん、主人公は
    「本を読むだけの生活を送りたい」
    「誰とも結婚せず、自立したい」
    などの願望を秘めていた。

    しかし、女に生まれたせいか、家族や周囲の期待を裏切ってまで、自分の信念を貫くほどの何かを持ってはいなかった。

    はっきり言って、ハッピーエンドもバッドエンドなどない、ただ無慈悲な現実を淡々と送るしかない物語だ。

    それほどに、昭和の時代はとても過酷で窮屈な時代だったのだ。

    しかし、そんな時代でも、主人公は懸命に生き、大切な人を失ってもなお、生きるために生きた。

    読んでいくうちに、主人公がかわいそうだと思わない時はなかった。

    女性の底力がいかにその人を強くさせるかを知る小説でもある。

  • 大正〜昭和という激動の時代を生き抜いた文学少女のお話。
    当時の世間体を気にする様や戦争は、生きるにはすごく窮屈で、抗うことができない辛さがひしひしと伝わってきます。
    それでも主人公の万亀が時代に翻弄されながらも、大好きな本とともに懸命に生きる姿がかっこいい。

  • 林真理子は『anego』がドラマ化されたときにミーハー気分で読んだきり、後にも先にも読むことはないだろうと思っていたのだけれど、これは自身のお母さんをモデルにしているそうで、ちょっと毛色が違うのかなとタイトルにも惹かれて読むことに。

    山梨の裕福な商家の1男四女の末っ子に生まれた万亀は、美人で華やかな姉たちに比べて容姿には恵まれず大柄なのがコンプレックスだけど、本を読むのが好きな少女。父が亡くなり、姑とは不仲ながらも、しっかりもので美人の母親が切り盛りする菓子屋は繁盛しており、当時としてはおそらく簡単ではなかったであろう、女学校を出て、東京の女専(今でいう短大くらいの感じ?)にも通わせてもらい、紆余曲折を経て教師になるも・・・

    結婚して苦労している姉たちを見て「結婚なんかしない。一生、本を読んで暮らしたい」という少女時代の万亀の心情は、かつて本好き少女だったことがあれば誰でも共感してしまうはず。ただ、そんな都合の良い夢はむろん叶うはずはなく、時代の波は容赦なく次々と彼女に襲い掛かってくる。

    全体的には、知らない時代を知る面白さもあり、ベースが実話のせいか都合よく進まないことも、淡々と事件が起こるだけで過剰な演出がないのも悪くはなかったし、小説としては十分面白かったのだけれど、私には万亀がちょっと薄情というか、かなり自己中心的な人間に思えて、同情や共感はあまりできなかったのが辛かった。

    親には逆らえなかった時代とはいえ、万亀の反抗はいつも中途半端で、夢想のみで実行は伴わず、結果流されて親の言いなりになりながらも、上手くいかなくなると、母のせい、家族のせいで、自分がその犠牲になっているという被害妄想、もしくは責任転嫁ばかりしている。逆に上手くいっていて幸せなときは、救いを求める家族を煩わしく感じて無視、若いうちは多少わかる部分もあるけれど、大人になってもむしろ悪化していくことにちょっと引きました。

    母親と確執があるのはわかるけど、にしても都合のよいときだけ頼り、嫌になったら自分だけ逃げようとする毎度のパターンはどうなのか。いちばん酷いと思ったのは大陸から帰国して子供産んでからの一連のエピソードで、兄嫁に対しても母親に対しても、なぜそこまで自己中心的にふるまえるのか理解できず。いくら戦時中で生きるのに必死とはいえ、他人ではなく、さんざん自分を守ってくれた家族ですよ?

    あげく戦後、自分だけ東京で再就職しようと画策、過去に世話になった末吉に連絡をとるも、軍部に協力した疑いで立場が危ういと聞かされるやいなや、話を最後まで聞かずに電話を切る。彼女が感じているのは、家から逃げたいのに当てがはずれた失望と、警察沙汰に巻き込まれたくないという保身のみ。あれほど世話になった末吉の、その身を案じるという言動が一切ないことに唖然。

    文学少女の激動の半生、自体は興味深く読めたのたけれど、人物の描き方がちょっと残念すぎて、万亀が、というより作者がこれを正当だと思って描いているのだとしたら、もうこの人の他の作品は読むことはないだろうな。

  • とても良かった。表紙が素敵だからという理由で買ったけれど、読み始めたら、ぐいぐい引き込まれて、一気に読んだ。
    辛い経験の多い万亀(主人公)だけれど、持ち前の我慢強さと、本を読むことに救われていく。
    人生の邪魔ばかりするように思えるときもある母も、結局のところ万亀の支えになっていたと思う。
    人生には、色々なことが起きる。
    時代にも翻弄される。
    良い人にも悪い人にも出会う。
    それでも人が生きていく意味というものを感じ取らせてくれる良書だと思う。

  • 状況に流されず強く生きていける人なんか一握りで、多くのひとがどうしたって時代に翻弄される。
    いつだって、ここじゃないどこかに行きたくって理想の自分になりたくて、なれなくてっていう葛藤は自分だけじゃないんだなぁと思った。
    彼女は斜陽で思い切れたわけだけれど、自分にはそんな瞬間はくるのかしら。

  • 昭和の時代が舞台だったため、戦争前後に生きた人々の苦悩や考え方を覗き見ることができ新鮮でした。昭和についての理解が深まりました。

  • リアルな女性の生き様を描いた小説。
    殺人事件や恋愛のドキドキ、ファンタジー系を読むことが多いので新鮮だった。
    時代背景も現代ではなく戦前。
    とっつきにくいはずなのに共感してしまう。
    自身のコンプレックス、家族の重荷、戦争、死、嫁ぎ遅れ、辛いことだらけの人生の中で葛藤し受け入れ乗り越え生きていく。
    勇気をもらった。

  • 大正〜昭和の女性の生きようが淡々と描かれていて、この作品を読むことがここ数日の日課になってしまって、読み終えるのがもったいないような作品でした。戦争に翻弄されながら毎日を強く生きる万亀、そしてその周囲で同じように強く生きる女たちがよく描かれています。まったく男たちは刺身の妻のようでした。
    中島京子さんの「小さいおうち」の表紙とよく似た様子の表紙だななんて思いながら読んでいると、なんと解説はその中島京子さんでした。

  • 実母をモデルに、昭和を生きた女性を描く。
    朝ドラみたいだけど、少し暗め。

    時代に翻弄されるといえば簡単ですが、本人の気持ちの揺れ動き、社会の要請、周囲の視線が複雑に絡み合い、万亀を形作ってい、その過程の描き方が力強いです。

    まあこの時代よりマシとはいえ、現代の女性も色々ありますよね。もっとも、男は男で色々ありますが。。。

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著者プロフィール

林 真理子(はやし まりこ)
1954年、山梨県山梨市生まれ。山梨県立日川高等学校を経て、日本大学藝術学部文芸学科を卒業。コピーライターとして活動後、1982年エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』が、デビュー作ながら話題になる。1986年『最終便に間に合えば』『京都まで』で直木賞を受賞。現在、直木賞、講談社エッセイ賞、吉川英治文学賞、中央公論文芸賞、毎日出版文化賞の選考委員を務めている。2019年4月1日の新元号の決定・公表に先立ち、原案への意見を聴く有識者懇談会のメンバーにも選ばれた。またマーガレット・ミッチェルの名作『風と共に去りぬ』を、主人公のスカーレット・オハラの一人称で描くという大胆に超訳!現在も文芸誌「きらら」にて連載中(小学館文庫より2019年10月より順次刊行の予定)。

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