ソウルメイト (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453607

作品紹介・あらすじ

犬とは人間の言葉で話し合うことはできない。でも、人間同士以上に心を交し合うこともできる。思わず涙こぼれる人間と犬を巡る7つの物語。ノワールの旗手が贈る渾身の家族小説。(解説/森 絵都)

感想・レビュー・書評

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  • 私も犬を飼ってます。誕生日を迎え5歳になりました。犬を擬人化せずに犬として接する筆致でしかも感情がこもってる。忘れがちな優しさに触れられる良い機会になりました。

  • 7匹の犬と人間(飼い主やその家族など)との物語を描いた短編集。馳星周著「少年と犬 」を読み、同じ作者による他の犬と人間の物語を読んでみたくなり、「ソウルメイト」シリーズを見つけて読み始めた。
    子供の頃、犬を飼っていたもののその後はペットを飼えない環境に暮らしてきた。今も管理規約でペット禁止のマンションに住んでいるが、内緒で3匹の猫を飼っている。猫を飼うのは初めての経験で最初は犬との違いに戸惑った。しかし、長年共に暮らす中で犬との共通性にも気付いた。今回『犬の十戒』を初めて読み、そのほとんどが猫に置き換え可能だと悟った。
    7つの短編を読み進めるにつれて、犬と人間の心の交流に引き込まれていった。犬好きには(猫好きにも)涙や感動なくして読むことができない物語だ。

    最後に「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」を読み、ただひたすらに寂しかった。私の愛犬は私が進学のため実家を離れている間に亡くなった。したがって愛犬や愛猫の最後に立ち会ったことはまだない。私は愛猫達が亡くなった時、はたして寂しさに耐えらるだろうか…

    『犬の十戒』

    【1】ぼくは10年から15年ぐらいしか生きられないんだよ。 だから、ちょっとでも 家族と離れているのは辛くてしょうがないんだ。 ぼくを飼う前に、そのこと、考えてみてよね。
    【2】父ちゃんがなにをして欲しがってるのか、 ぼくがわかるようになるまでは忍耐が必要だよ。
    【3】ぼくのこと信頼してよ。ぼくが幸せでいるためには、 みんなの信頼が必要なんだから。
    【4】長い時間怒られたり、 罰だっていって閉じ込められたりするのはごめんだよ。みんなには仕事だとか遊びだとか友達がいるでしょ? でも、ぼくには家族しかいないんだよ。
    【5】いっぱい話しかけてよ。人間の言葉はわからないけど、 話しかけられてるんだってことはわかるんだ。
    【6】ぼくにどんなことしたか、ぼくはずっと覚えてるからね。
    【7】ぼくをぶつ前に思い出してよ。 ぼくはみんなの骨を簡単に嚙み砕けるんだよ。 でも、ぼく、絶対にそんなことしないでしょ?
    【8】言うことを聞かないとか、頑固になったとか、 最近怠けてばかりだとか言って叱る前に、 ちょっと考えてよ。 食事が合ってなかったのかも。 暑い中ずっと外にいて体調が悪くなったのかも。 年をとって心臓が弱くなってるのかも。 ぼくの変化にはなにかしら意味があるんだから。
    【9】ぼくが年をとってもちゃんと面倒見てね。 みんなもいつか年をとるんだからさ。
    【10】ぼくの嫌なところに行くときは、 お願いだから一緒にいてよ。 見てるのが辛いとか、 見えないところでやってとか、 そういうことは言わないでよ。 そばにいてくれるだけでいろんなこと、 頑張れるようになるんだ。愛してるよ。 それを忘れないでね。

  • ダメだ……最後の話で涙腺崩壊。
    犬に限らず、ペットを飼っている(飼っていた)人にとって、彼らは家族同然の存在ですよね。
    この小説に登場する7匹の犬たちも、人間の愛情やエゴによって、救われたり傷ついたりします。

    特に、最後のバーニーズマウンテンドッグを看取る話は、昔飼っていたシーズーの最期を思い出してしまって苦しかった……
    私の家族は、とてもじゃないけど、次の犬を飼う気持ちにはなれなかったのですが、新しい家族を迎えることで、前を向けることもありますよね。

    あとは、犬種によってかなり性格、気性が違うこともよく分かったので、これから犬を飼う人にとっては指南書になるのではないでしょうか。

    • viviさん
      チェリーさん
      はじめまして。私もなかなか次の犬を迎え入れることが出来ずにいますので、よくわかります。
      続編の「陽だまりの天使たち ソウルメイ...
      チェリーさん
      はじめまして。私もなかなか次の犬を迎え入れることが出来ずにいますので、よくわかります。
      続編の「陽だまりの天使たち ソウルメイトⅡ」もとても良かったですよ。
      2022/08/25
  • 馳星周は以前よく読んでいた。「不夜城」から始まる、いわゆるノワール小説、ジェイムズ・エルロイ的なテイストがあり、好きな小説家だった。
    昨年、馳星周が直木賞を受賞したのを知った時も、ノワール小説で受賞したのだと思っていたが、「少年と犬」という小説で受賞したのだと聞き、ノワール小説以外の分野も書くようになったのだな、と知った。
    本書「ソウルメイト」も、犬を題材にした短編小説集。馳星周は犬が好きなのだろう。犬への愛情を強く感じられる小説集だ。
    昨年の秋くらいから、家の近所をよく散歩をするようになった。よく散歩するようになって気がついたのは、犬を飼っている人がとても多いことだ。朝も昼も夜も、散歩に出かけると、犬を散歩させている人たちとすれ違うことが多い。ウィキで調べてみると、2018年の日本の飼育されている犬の頭数は、890万頭ということであった。日本の人口が1.2億人だとすれば、人間約13人に犬が1頭という計算になる。であれば、散歩の際に、これだけ犬に出会うのもうなずける。
    犬はソウルメイトとイギリスでは呼ばれているという記述が本書の中にある。文中では、ソウルメイトは、「魂の伴侶」と訳されている。人類の長い歴史の中で、犬は人間にとってとても良い相棒だったのであろう。それがうなずける飼い主と犬の散歩に出会うこともある。
    短編小説集としては面白かった。続編もあるようで読んでみたいし、「少年と犬」も読んでみたくなった。

  • この作品は、初めに書かれていた
    「犬の十戒」を読んだだけで、
    こみ上げてくるものがありました。

    犬との信頼関係が生まれていく様子は
    読んでいて温かな気持ちになります。
    でも、失う哀しさの話に気持ちが引きずられて
    読み終えた時は、切なさが強かったです。

    ☆3は、長編好きなので、ちょっと辛め。

  • 馳星周といえば、バイオレンスに満ちたノワール(暗黒小説)の書き手として知られているわけだが、本書は普段の彼の作風とはかけ離れた、ハートウォーミングな「犬小説」集である。

    全7編の短編集で、それぞれ、“主人公”となる飼い犬の犬種がタイトルになっている。「チワワ」「ボルゾイ」「柴」「ウェルシュコーギー・ペンブローク」という具合だ。

    犬好きの著者が、犬好きの読者に向けて書いた作品集。

    収録作の大半は、家族の絆が犬によって再確認される「家族小説」でもある。冷め切った夫婦が犬を媒介に愛を取り戻す話、離婚した妻の元に残してきた息子と、犬を介して絆を取り戻す話など……。また、犬がキューピッド役となるラブストーリーもある。

    各編とも趣向が凝らされているし、あざとい「お涙ちょうだい」にはなっておらず、気持ちよく読める。
    犬好きなら、「ああ、わかるわかる」とうなずく場面や文章も、随所にある。たとえば――。

    《レイラがうなずいた。もちろん、ただの思い込みだ。犬がうなずくわけがない。犬を擬人化しすぎるのは危険だが、擬人化しなければ一緒に暮らしていく意味がない》

    7編中、私がいちばん気に入ったのは、「ウェルシュコーギー・ペンブローク」。飼い主に虐待されつづけ、“人間恐怖症”に陥った犬を引き取った夫婦が、犬の凍りついた心を溶かすまでのプロセスを描いた物語だ。

    犬を虐待しつづけた前の飼い主が、経済的に恵まれ、傍目には幸せそのものの仲のよい家族だった、という描写にも、ゾッとするリアリティがある。

    最後の「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」は、癌になった犬の最期を飼い主が看取るまでの物語。これだけが、やや異質な印象を与える。ほかの6編に比べ、際立って感傷的な内容になっているのだ。

    それもそのはず、これは作者自身が飼っていたバーニーズの最期が投影された作品なのだ(その看取りのプロセスを、馳星周は『走ろうぜ、マージ』というノンフィクションにもしている)。
    本書のカバーを飾る著者撮影の写真も、ありし日のマージだろう。

    《相手がだれであれ、どんな関係であれ、人間同士の愛情の間には打算が生じる。だが、カータはわたしにすべてを捧げてくれた。わたしもカータにならすべてを捧げられた。カータはわたしのすべてだった(「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」)》

    人間の「ソウルメイト」(魂の伴侶)たる犬が飼い主に捧げる、また飼い主が犬に捧げる無償の愛を謳い上げて、犬好きなら感動必至の短編集。

  • 家族の中でなにかしら問題を抱える主人公と、その愛犬たちの物語7話を収めた短編集。タイトルが犬種名になっていて、その中に我が家の愛犬コーギーも名を連ねていたので衝動買いしてしまいました。
    犬の表情や動きの描写がとてもリアルで、姿が目に浮かぶようです。作者の馳星周さんは軽井沢在住とのことですが、この短編集の舞台の多くが長野県で、その自然の描写もとても素晴らしく、引き込まれます。
    個人的には、「ボルゾイ」「ジャーマン・シェパード・ドッグ」「ジャック・ラッセル・テリア」の3話が優しいお話で好きでした。

    愛犬が10歳を過ぎ、これまでこの子と過ごした月日より、これから一緒にいられる時間のほうがずっと短いだろうことをよく考えるようになりました。その時のことや、その時に向かってだんだん弱っていく愛犬の姿を想像して、ときどきいたたまれなくなったりもします。
    でも、人と犬が心を通わせて一緒にいる物語を読んでいると、今この子と一緒にいられる贅沢をもっと楽しまないと!と思えました。
    これからも「大好きだよ~」の気持ちを手のひらから大放出しながら毎日愛犬をなでて過ごそう。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    人間は犬と言葉を交わせない。けれど、人は犬をよく理解し、犬も人をよく理解する。本当の家族以上に心を交わし合うことができるのだ。余命わずかだと知らされ、その最期の時間を大切に過ごす「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」、母の遺した犬を被災地福島まで捜しに行く「柴」など。じんわりと心に響く、犬と人間を巡る七つの物語。愛犬と生きる喜びも、失う哀しさも包み込む著者渾身の家族小説。

    失う悲しみを込みで犬を愛し、共に生きていく事を選択した人々にはどれもこれもキラキラして切なくて胸に突き上げるものがある物語の数々です。犬と共に過ごした人にしか分からない事ですが、無償の愛を注がれているという実感が感じられるのは間違いなく犬だと自信を持って言えます。飼い主の姿を求めて切なく鳴く犬を見ていると、こんなにも誰かを痛切に求める事が自分にあるだろうかと思います。打算の無い愛情が自分に向けられているという充足感には替え難いものがあります。
    さまざまな犬と飼い主の魂の触れ合いは、本当に犬が好きでないと書けない愛に満ち溢れています。
    何しろ最終話の「バーニーズマウンテンドッグ」は絶対に泣くので人がいる所では読まない方がいいです。現在進行形で犬を飼っている人だと涙腺崩壊してしばらく号泣から立ち直れないかもしれません。
    馳さんこんな本書いていたんですね。ノワールしか書かない人だとばかり思っていました。

  • 泣けた。
    最後の「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」読む前に、冒頭の「犬の十戒」読んだら、乾涸びる程泣けた。体中の水分が全部なくなるのでは?と思うほどに。
    犬飼った事ない自分がこれだけなんだから、犬飼ってた方は泣きすぎて死ぬんじゃなかろうかと思った。
    チワワの話は、主人公に感情移入できなかった為イマイチだっだが、ボルゾイとジャックラッセルテリアの話も好みだった。

  • とにかく泣けた。

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著者プロフィール

1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家としてデビュー。翌年に同作品で第18回吉川英治文学新人賞、98年に『鎮魂歌(レクイエム)不夜城2』で第51回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第1回大藪春彦賞を受賞。2020年、『少年と犬』で第163回直木賞受賞した。著者多数。

「2022年 『煉獄の使徒 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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