よだかの片想い (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 512
レビュー : 42
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453614

作品紹介・あらすじ

顔に大きなアザがあるため、世の中に居心地の悪さを感じている大学院生のアイコ。ルポ本の取材がきっかけで映画監督の飛坂に出会い、恋をして……。瑞々しく切ない恋と成長の物語。(解説/瀧井朝世)

感想・レビュー・書評

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  • うわあー、良かった。。。

    顔にアザのある女の子と、若手映画監督の恋。
    話の筋は大体想像できたけれど、アイコのキリッとした空気と、自然な弱さにじーんとくる。
    それから、一人の男性をひたむきに好きになってしまう姿も、とても良かった。

    昔から、島本理生さんとは相性が良い。
    人によっては、テーマの選び方、キャラクターの強弱のつけ方が気に入らないとも思うんだろう。
    でも、アイコという女性が、ちゃんとストーリーを生きていく。私には分かりようのない境遇にいながら、なぜだか分かるのが小説の良さなのかもしれない。

    「あなたに出会ったとき、僕は夏の夜空を思い出した。
    美しくてあまりに果てしない夜空を、その小さな体に抱いていた。」

    キレイすぎる、けれど、頷いてしまう形容。
    読み終わるまで、ドキドキした。
    タイトルと、宮沢賢治の『よだかの星』との重ねかたも、すごくすごく素敵。
    楽しめました。

  • 今まで読んだ本の主人公の女の子は、大抵パッとしなくても透き通るような白い綺麗な肌をしていた。世の中の女の子も大抵綺麗な肌をしている。
    綺麗な、人並みの肌であることは、私にとって恋をする資格のある人のことだった。私は汚いから、色々駄目だと思っていた。そう思う心が、内面が、外見に反映されることにも長く気付けなかった。それなのに自分は一人だ不幸だと嘆いて、勝手に傷付いて自分の弱さに人を巻き込んでいた。未熟で身勝手だった。
    けれどアイコのように、この顔でなければ、体でなければ、気付けない人の弱さが沢山あった。私はこの体でなければもっと傲慢で品のない人間になっていたと思う。この体でよかったとまでは思えないけど、この体だから色んな事が見えた。それは紛れもない事実だった。

    ここで描かれるのは、自分に自信が持てなかった女性が、
    ようやく「自分をないがしろにしない」という決断ができるようになる、その過程なのだ。

    この解説の言葉で私がなぜこんなにこの本に既視感を覚えるのか分かった。私もこの決断をするまで24年もかかった。自分という人間を受け入れる、という決断に、こんなに長い時間をかけた人間が、私以外にも、いた。それだけで、救われた。ありがたかった。アイコが観た十四歳の女の子のように、こんな些細な私の人生の決断を拾い上げてくれた、と思わずにはいられなかった。
    島本さんのお話の女の子は弱くて儚げでか細い人ばかりだったから、アイコみたいな人も書くんだなって少し驚き。こういう人を、また主人公に据えてほしい。
    独白、終わり。

  • 2015年31冊目。
    重くなりたくないけど、重くなってしまう、のはわっかるなぁ~と思った。学生特有の感覚かなあ。
    「私がこんなに会いたくて必死になっている間に、飛坂さんはべつの用事を優先させていた。私たちの関係性は、きっと変わらない。この先も。」
    「出会った頃だったら、私はこの言葉だけで、一生、満足できただろう。でも今は知ってしまった。求められることの幸福を。そうしたら、もっと欲張りになっていた。約束は守ってほしいし、私と会うことを1番楽しみにしてほしい。相手にも、こちらが想うのと同じくらい、好きになってほしい。付き合っているのに片想いみたいな状態じゃなくて。」

    相手にとっては、これは重いなあ。温度が同じひとなら、良いけれど。
    原田くんとは、もう少し軽やかに恋ができるんだろうなあ。
    だけど、飛坂さんに惹かれちゃうの、わかるなあ。

  • 主人公の持っているコンプレックスは、人が誰しも持っているそれをわかりやすく表現したものなんだろう、なんてレビューが出てきそうなお話だなと思った。
    とても読みやすくて読後感もさわやかで、さくっと読めるお話だった。
    アイコの重力を受け止めて立っている感じと、恋に恋している浮遊感と、それを咀嚼し飲み込んで歩いていくところが、彼女のこれからの人生に幸あれと願わずにいられなくなる。願わなくともきっと素敵な未来が待っているのだろうけれど。
    原田君推してたからやった~!と思いました。

  • 読んでみたいと思っていた作家さんのひとり。
    初めて読んだのが、この『よだかの片思い』

    顔に大きなあざのある大学院生のアイコ。
    「顔にあざや怪我をおった人」をテーマにした本の取材を受け、その本の表紙に。
    それをきっかけに、恋愛には心を閉ざしていたアイコが、映画監督の飛坂に恋をする。

    ミステリーが大好き。
    ほっこりした話が大好き。
    そして、ラブストーリーが大好き。
    この本はすっぽりとはまりました。
    一気読み。
    島本さんの他の本も読んでみたい。

  • たぶん自分とまるっきり性格が違うからなんだろうけど、アイコに感情移入するというよりは、友達や家族のように側で見守っているような感覚で読んだ。
    恋をしたらそうだよねって共感したり、傷ついて泣くことになるんじゃないかって心配したり、それでも相手に向き合おうとするアイコを応援する気持ちになったり。
    こうやって客観的に見たら飛坂さんのことはあんまり好きになれないけど、こういう人に惹かれてしまう気持ちはよく分かる。
    飛坂さんには、一緒に幸せになれる相手といつかちゃんと出会ってほしいな。

    個人的には、アイコがミュウ先輩のお見舞いにいく場面がこの作品のハイライトだと思った。痛みを知っているから、人の痛みを感じることができる。人に優しくなれる。泣いている人に寄り添って、幸せを心から願うことができる。
    始めから何もなければそれはそれで幸せだったかもしれないけど、痛みを知らなければ気づけなかったこともたくさんある。それはとても得難い特別なものなんだよね。

    物語の始めと終わりではアイコの印象がまるで変わっていて、柔らかく自然体の彼女はすごく魅力的。
    いい恋をしたね、と抱きしめてあげたくなった。

  • コンプレックスを通して人を見る時

  • ちょっと見でわかるくらい絶対にうまくいかない相手に、本当にまっすぐに落ちていった。
    アイコは痣を通して世界を見ていて、人のいたみを知っている。だからどこまでも優しい。飛坂さんはお父さんという傷を抱えて世界を渡ってきて、アイコの優しさに許された気がしたんじゃないかと思う。恋ではなかったけどあの時の飛坂さんにはアイコが必要だった。
    かっこいいけど、悪い男だなぁと思う。
    普通に見目麗しい男性よりも、飛坂さんのような生々しい魅力に溢れた男性の方がタチが悪い感じがするのはなぜなのか。
    あれはアイコには荷が重い…
    胸が痛かった。懐かしいような新しいような、大昔に経験してもはや忘れ去ってしまった痛みだった。

    • komoroさん
      nanokaさんのいう、大昔に経験してもはや忘れ去ってしまった痛みについてゆっくりと話を聞きたいです。
      nanokaさんのいう、大昔に経験してもはや忘れ去ってしまった痛みについてゆっくりと話を聞きたいです。
      2016/02/21
  • 誰でも大なり小なりコンプレックスがあると思うんだけど、コンプレックスひっくるめて自分を受け入れる、立ち上がる力をくれる作品だと思う。コンプレックスを抱えながら気高く生きる人の美しさ。ラストを読みながら頭の中に広がった満点の星空に涙が出た。
    あと、主人公が恋する映画監督のお父さんが岩手出身だったり、宮沢賢治の「よだかの星」が出てきたりで、親近感。

  •  生まれつき顔にアザがあるアイコの、初恋の物語。男らしくて人に媚びないアイコも、映画監督である相手の飛坂さんも、それぞれの良さがちょっとした場面やセリフで描かれていて、「あー、これは好きになるわ」と納得できる。例えば、飛坂さんが猫を助けるためにアイコの体重を聞く場面で、「ビートルズの人数に喩えると、何倍程度?」と尋ねるのが好き。そのユーモアと気遣いに惚れる!

     アイコが最初は見返りがなくても飛坂さんのそばにいられればいいと思っていたにも関わらず、いつの間にか求められ、自分を一番に優先してほしいと思ってしまう気持ちが痛々しくて、共感できるのに少しイライラもしてしまう。そのセリフは重いよ!言っちゃいかんよ!とついツッコミを入れてしまった。

     あと印象に残っているのは、アイコがレーザー治療を考えた時、アザがなくなって人生が変わったとしても、きっと「この人は私にアザがあったら近づいては来なかったのではないか」と疑ってしまう、と考えて踏みとどまる場面。どうやっても、自分の背負った運命とは向き合っていかなければならないという現実をちゃんと見つめるアイコは、とても真っすぐだと思った。

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著者プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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