友罪 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 1965
レビュー : 221
  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453799

作品紹介・あらすじ

あなたは友が犯した過去の罪を許せますか。少年犯罪を償い出所した鈴木。住み込みの職場で仲良くなった益田は、あることをきっかけに彼の過去に気付き……。著者渾身の長編小説。(解説/瀧井朝世)

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらず薬丸岳は上手い。特にここ数年の作品には、必ず救いが用意されており、暖かみを感じる。

    この作品で扱っているのは『もし、同僚が連続児童殺傷事件の少年犯だったら…』という非常に難しい、重いテーマである。しかも、登場人物は皆、過去の十字架を背負っているのだ。読み進むほどに重い気持ちになりつつも、この先、物語はどう展開するのだろうかとページを捲る手が止まらない。

    まさかの展開とあらたな過去に暗澹たる気持ちになりつつ、残りページは僅か。もしや、救いの無い結末なのかと不安がよぎる。が…

    最後はまさかの感涙。

    『天使のナイフ』以来、薬丸岳の作品は全て読んでいるが、いつもながら
    本当に外れの無い、高い水準の作品に驚くばかりだ。

    文庫化にあたり、加筆・修正。

  • 映画化するというので、この度読んでみました。タイトル、帯、あらすじ…どれをとっても重い。読み始めてみると、やっぱり重い。続きが気になり、ページを捲る手が止まらない――といえば、確かにそうなのだけど、反面、読み進めるのがキツイ、とも思いました。

    “少年A”である鈴木。彼と同時入社して仲良くなっていく益田。同じ会社(工場)で働き、次第に鈴木に惹かれていく美代子。少年院で、鈴木の母代わりとして尽力した弥生。
    この、益田と美代子と弥生の3人の立場から見た鈴木が、彼らの日常光景が、交互に語られていく。解説でも触れているけれど、鈴木の視点での話は入っていない。だからこそ、鈴木の思考が分からないし、言動で判断するしかない。彼らも、読者も。

    そして益田も美代子も、鈴木ほどではないにしても、それなりに重い過去を背負っている。だからなのか、鈴木の優しさに救われたのもあったからなのか、“鈴木があの事件の犯人だった”と知ったからといって、軽蔑したり、罵ったり、切り捨てたりせずに、苦悩する。読んでいる私としても、“自分だったら”を常に考えながら読み進めていたし、いつの間にか、鈴木を擁護するような思いになっていたから、後半は特に心臓が握り潰されるんじゃないかってぐらい、胸が痛かった。

    そして他の登場人物たち、鈴木と益田を雇った社長夫婦や、益田の先輩ジャーナリスト・須藤、美人アナウンサーの清美、同僚の清水と内海…彼らの一言一言も、良くも悪くも共感してしまうし、むしろきっと、彼らの言動の方が、一般大衆の反応なのかもしれない。
    鈴木のやったことは、確かに罪深いし、決して許されるものでもない。少年期、情緒不安定だった鈴木が大人になって少年院の人たちのお陰でまともになりつつあるのに、その彼を正義感ぶって罵倒したり責めたり、はたまた好奇の目を向けたりと、それもそれで、大の大人としてどうなの? そういった意味で、罵倒するお前たちの方が、精神異常者じゃないか――とも思ってしまう。

    ほんとに難しいテーマだと思う。だからこそ、作者は安易に、その後の鈴木の消息を書かなかったのだろうと勝手に推察した。

  • 積読の中の一冊になっていたものを、時間が出来たので。
    ずっしりと重くのしかかってくるのに、先を読まずにはいられなかった。
    最初は鈴木だけが暗い暗い過去を引きずっているのかと思ったが、益田も美代子も山内もそれぞれに暗い過去を持って日々を過ごしていたなんて。。。

    この本の帯やあらすじにもある、その過去を知っても友達でいられるか?という問いに対して、読みながら自分ならどうするのか?と考えてみたが、答えが出ない。これを書いている今も、どうするのか?という事だけが頭の中をぐるぐると巡っているだけ。

  • 私の考えは、『過去に何をした人でも、例え殺人を犯した人であっても、今現在のその人の生き方を見て、判断する。理解する。』ということです。
    これは、この『友罪』を読む前も読んだ後も変わりません。
    だからこそ、山内さんの『彼のこれからの生き方を見届けたい』という考えには大きな共感と尊敬の念を感じました。私にとって、山内さんがこの小説での自分を重ねる唯一の人物でした。

    だからといって、この作品に出てくる様々な登場人物の気持ち、思い、考えがわからないというわけではありません。というより、須藤や清水、社長の反応が一般大衆の正常なものです。過去に凶悪犯罪を起こした人に対しての感情とは、普通なら拒絶です。仕方のないことです。

    けれど、だれか一人でも。彼と向き合い、その人生について共に考えてくれる人がいるなら。と、思ってしまいます。なので、最後の益田の手記には、救われました。

    答えが出ない問いに正解なんてないことはわかっていますが、それでも全ての人が上を向いて生きていけるような答えを求めてしまいます。仮に、私の親友が犯罪を犯し、それを本当に悔い改めているとしましょう。私は彼に、被害者遺族についてどう思うか考えさせ、彼がやったことに対して怒りや憎悪をぶつけるでしょう。ですが、被害者遺族に対して、彼は本当に反省している。彼は償いをしたいんだ。と伝えることができるかと言われたら…。何も罪のない被害者遺族に、こんな仕打ちが許されるのか。自分の家族を殺した相手が更生している。社会で生きていっている。このことを伝えるだけでも、被害者遺族からしたら残酷な仕打ちです。この矛盾が、今私の頭の中の一番悩ましい問題です。


    最高の小説でした。日本国民全に読んでほしい程です。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか?埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり―。少年犯罪のその後を描いた、著者渾身の長編小説。

    薬丸岳氏の本は総じて重く、心にずっしりと重い荷物を載せられるような感覚で読まなければなりません。なのにどうしても手に取ってしまう再右翼の作家です。
    少年犯罪、とりわけ殺人に関しては量刑が緩すぎるというのが僕の偽らざる意見です。
    この本に関していえばどうしても神戸連続児童殺傷事件を想起させるため、そこまでモデルにはしていないとの事ではありましたが、読み手は登場人物にそれを投影してしまうのは致し方無い事だと思います。
    この本がでたのが2013年、そして現実の世界では2015年に少年Aの悪名高き「絶歌」が出版されました。まさに反省などしていないのが明らかなこの所業に、世の中の人々が驚き、嫌悪を露わにしました。僕自身も絶対に読まないと心に決め、今も読んでいませんしこれからも読みません。でもこれだけのヒットになるという事は買った人が沢山いたという事、何故なのでしょうか?皆で買わなければいいのに。と強く思いました。
    話が若干それましたが薬丸岳さんもまさか現実でこんな本の出版があるとは夢にも思わなかった事でしょう。
    この友罪の中では犯人の青年はもがき苦しみ、一生逃げられない十字架を抱えて逃げ場のない道を歩き続けています。正直感情移入したし、悔い改めているのであればやり直す機会を与えてあげたいとも思いました。でもこの現実のしょうもなさは物語を超えてきましたね。ホントにびっくり。

    レビューに戻ります。
    どんなに逃げ隠れても追いかけてくる過去の過ち。マスコミに食い物にされることは同情に値しますが、犯罪で有っても犯罪でなくとも、人に後ろ指刺されることをしてしまった時点で、面白おかしく書かれてしまう事は防ぎようがないという事がこれでもかと書かれます。少年Aの正体を知らないまま心惹かれる元AV女優の美代子の苦悩がこの本の中では一番辛い。何しろAV出演は犯罪ではないのに故郷や家族、職まで全てを失ってしまうなんて気の毒過ぎる。しかし人の口に戸を立てる事は出来ませんので軽率だった自分を責めるほか無いのです。
    そして主眼の“友人がもしも少年Aだったとしたら”てっきり彼を受け入れてともに歩んでいく話なのではないかと漠然と思って読んでいましたが、そんな軽い話を書く作家ではありませんでした。
    主人公が言った何気ない一言に少年Aが救われ心の拠り所にし、少年Aから有る一件で救われた主人公も次第に彼を受け入れていくのですが、次第に心に疑念が差し込まれ、その疑念が次第に真実に変わっていくときの葛藤はとても重い。小説としてはなんとか受け止めてやってほしいと願いながらも、自分だったらと思うととても受け入れられない。果たして彼らはどういう結論をだしていくのか・・・・。
    これはこの後に作者が書く「Aではない君と」と併せて読んで頂きたいです。

  • 先に読んだ『Aではない君と』が、現在の犯罪に対する親と子の問題であるのに対し、この作品は、過去に犯罪を犯した者にどう対応するか、どういう態度で接しられるか、を問いかける。
    14歳の時に猟奇的殺人を犯し、少年院を経て社会に復帰した鈴木、中学時に友人の自殺の引き金を引いたと思い悩む益田、そしてAV女優という過去に怯える美代子、彼らがそれぞれに交差し、過去が浮かび上がる。
    彼らが、今の良好な関係でいてほしいという思いで、頁を繰るのをためらいながらも、その先の破たんを予感し結果を知りたいという矛盾した思いのまま、読み進んだ。
    読み手に重い問いかけをする、著者渾身の傑作。

  • 重い!
    贖罪、更生、救済について考えさせられる物語。
    さらに、マスコミ、ジャーナリストについても考えさせられます。

    ストーリとしては、
    ジャーナリストにあこがれて職を求めながらも、うまくいかず結局、埼玉の町工場に就職した益田。
    そして、同日に入社した鈴木。
    二人は町工場の寮でほかの先輩たちと一緒に暮らすことに。
    二人は次第に打ち解けていきますが、ある時、益田は鈴木が14年前の連続児童殺傷事件の犯人ではないかと疑惑を持ち始めます。
    結果、いろいろと鈴木の過去を調査することに。

    その過程で先輩ジャーナリストから情報を得て、鈴木の過去を知る人にインタビューしに行きます。
    そこから、物語は大きな方向へ...
    さらに、益田は自分自身の過去とも向き合うことに..

    贖罪、更生、救済とは?
    ジャーナリズムとは?
    そして、世間の目とは?
    いろいろ考えさせられます。

    本作では、益田を含め、過去に業を背負った人々が多く登場します。もちろん鈴木、美代子、山内、そして弥生。
    それぞれの重さは違えど、彼らの今の生活、そして将来の生活は暗澹たるものです。
    それでも、「生きる」ということがとても重要と感じます。

    そんな中、最後はどうなるっといったところでの、最終章では、熱いものがこみ上げてきました。

    暗く、重いストーリ展開ですが、これはおすすめ!

  • 益田と鈴木。罪の意識を抱える二人の話です。

    クラスメイトを自殺させてしまった過去に向き合えずにいた益田が、
    二人の幼い子供を殺害するという犯罪を犯した鈴木と出会うことで、
    「罪を償う」ことの意味を深く考えるようになります。

    人は、一度でも正しい道を外れてしまったら、もう決して完全には戻ることはできない。
    被害者や遺族、世間の目はそれを許さない。
    だけど、それでも生きていかないといけない。
    そんなとき、寄り添ってくれる人がたった一人でもいたら、どんなに心強いんだろう。。。

    鈴木にとって、益田がそんな人物になってくれれば良いと思います。

  • 映画を見て、どうしてもすっきりせず、小説も買って読みました。
    映画は設定とかちょこちょこ違ってましたが、世界観やメッセージは忠実に再現されているかなと思います。
    映画を見た時もそうでしたが、読んでる間ずっと、わたしが益田の立場だったら、美代子の立場だったら、弥生の立場だったら、どうしただろうと考え、でも結局答えは出なかった。
    とにかく重い。日曜の夜に読むには重すぎた…
    でも、途中でやめられずに読み進めてしまいました。

  • 14歳のときに小学校低学年の子供ふたりを殺した少年。
    名前を変え、素性を隠し、更生のための矯正プログラムに守られながら生きてきた少年。
    けれど、その保護下から逃れ、一人で生きていこうとする。

    「もし、自分が自殺したら悲しいと思うか?」
    鈴木に問われた益田は、過去のトラウマもあり頷くことしかできない。
    深い考えもなく答えた益田の言葉に、鈴木は自分自身が生きていくことの意味を、自分が存在していくことの意味を見出していく。
    起こしてしまったことはなかったことには出来ない。
    過去は過去・・・とは言っても、どれだけ時間が流れようとも過去が消えてなくなるわけではない。
    AV女優だった過去を持つ美代子。
    息子が交通事故で子供3人を死なせてしまった山内。
    人の過去を興味本位で面白がり、からかい、非難し、糾弾する清水たち。
    たとえ事実に反していたとしても、少しでも読者が食いつくような刺激的な記事を書き、世間を煽りたてるマスメディア。
    まるで自分たちにはそうする権利があるとでもいうように。
    許されない過去を持つ人間の定めだ。
    自業自得だ。
    生きていくことさえ許されないのだというように。
    益田の手記に込められた思いは、果たして鈴木に届くのだろうか。
    正解のわからない問題を出されたような物語だった。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年に『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年に『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を、2017年に短編「黄昏」で第70回日本推理作家協会賞〈短編部門〉を受賞。『友罪』『Aではない君と』『悪党』『死命』など作品が次々と映像化され、韓国で『誓約』が20万部を超えるヒットを飛ばす。他の著作に『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』『刑事の怒り』と続く「刑事・夏目信人」シリーズ、『神の子』『ガーディアン』『蒼色の大地』などがある。

「2020年 『告解』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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