友罪 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453799

感想・レビュー・書評

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  • 職場で仲良くなった彼が、幼い日に残虐な殺人をおかしていた少年Aでした。
    映画が公開されて、気になって原作を読みました。

    中学生のときに子供を殺してしまい
    しかも目までくりぬいてしまい
    そんな彼とだんだん仲良くなる主人公

    最初はよそよそしいAでしたが
    主人公の君が死んだら悲しいみたいな言葉に
    心を奪われ
    どんどん主人公を慕うように

    主人公はジャーナリスト志望なのですが
    Aのことを調べているうちに
    ちょっとした手違いで
    Aを売るつもりはないのにAの記事を書くことになってしまい
    それを読んだAは主人公のもとから居なくなってしまう

    ここに登場するジャーナリストのまあクソなこと
    でも心が痛むからとか言ってたら
    熱愛とか人の秘密とか暴けないもんね
    ただの綺麗事だ

    最後に主人公は雑誌にAに向けた手紙を載せた
    彼らは再会することができるのだろうか

    仲良くなって信用している人が
    元々殺人犯だったら
    どうするかな。。
    色んな葛藤があるなかで
    恐怖があるなかで
    一緒にいるのか避けるのか

  • 黒蛇神事件のモチーフは酒鬼薔薇事件だと思うが、大きく違うのは加害者本人が反省しているかどうか、だろうか。正直なところ、鈴木が過去にそんなにも残酷な事件を起こしたとは思えないし、当時の動機もよくわからなかったのが少々不満ではある。益田の思いも見えにくかった。

  • 本屋で、映画化に際して多く平積みしていたのが目に留まり、思わず購入。
    薬丸岳作品は、以前、テレビドラマで「刑事のまなざし」を観たことがあり、椎名桔平の良さもあったが、ドラマの内容にも惹かれたので、原作者名として知ってはいたが、本としては初めて読んだ。

    人にはそれぞれ「秘密」、「絶対に知られたくない過去」や「家庭の崩壊」があって、それが今も「自らを苦しめる」

    鈴木、益田、美代子、白石、山内には、それぞれそうした人生の暗部・恥部を抱え、それでも、生きてきた。それが、鈴木と益田が埼玉の工場で同時期に出会い、働き始め関係性が生まれてきたことをきっかけに、それぞれが嫌でも深い苦悩と向き合わざるを得なくなっていく。

    「親しくなった人間が、過去に重大凶悪犯罪を犯した人物だと知った時、自分はどうするか」が本作品の主題なのだが、重大犯罪者との向き合いもさることながら、自らも犯罪は犯していないにせよ、安直に短絡的に彼を切り捨てることはできない。自らの過去が呼びさまされ、跳ね返ってくるから苦悩反問するのだ。

    鈴木の存在が、「巨大な渦」となり、そこに巻き込まれていくが、鈴木が逆にそれぞれを救っている・気づかせてくれる存在になっていく。

    大なり小なり、みな十字架を背負っているかもしれないが、「生きる」ということについて、今の自分自身にも置き換えつつ、没入して読んだ。

    一点だけ違和感があったのは、必死ゆえなのはわかるが、白石が益田に接近していく過程だった。

  • 友達って何?

    今の姿を信じるべきと理性ではわかりつつ、
    過去の事実を知った時、信じきれない気持ちもある。

    どこまで深く相手のことを知りたいと思うか、
    どこまで一緒に相手の将来を考えることができるか、
    そこが、友達でいられるかの分岐点。

  • 友が犯した過去の罪を許せるか。自分にそんな権利があるのか疑問。法律的な罪と道徳的な罪。法に裁かれない罪はどのように償い、誰に許してもらえばいいのだろうか。

  • 映画観れなかったので。独特の省略がされた文章だなあと思いつつ結構分厚かったけどすっと読めた。「晒し者にしてやりたいほど憎いとは思わないけど自分の人生には関わって来ないでほしい」ていう感覚は絶妙だと思った。本来当事者ではなかった人たちが急に当事者になったら。

  • この訳の分からない涙は一体何なのだろう・・・

    本を読んでいるとごく稀にだけれど、そう言う涙に遭遇する。この本もまたそんな本だった。

    否応なく自分というものに内向して行き、その中の矛盾と向き合う。

    立ち位置(立場)や、状況によって変化する人間にはなるまい・・と。フラットな視野を持つ人間でありたいと生きてきたつもり。
    つい最近も起こったが、これでもかと頻発する救い様の無い事件に「死刑なんて生温い」「同じ目に合わせて殺せば良い」と叫んでる自分がいる。その一方で、
    益田に、清水や内海に、社長夫婦に、須藤に、腹の底から強烈な怒りを覚え、鈴木の平穏を願う自分。
    後半、とめどなく流れる涙に「何だこりゃ?」と独り言。

    山内の言葉に、感情のサーモスタットが決壊し、ラストの益田の行動に「イヤイヤそんな綺麗事無い無い」とクサしながら救われて・・笑い泣き。


    ジャーナリストを目指しながらも、その体質に失望し放浪する主人公・益田。
    取り敢えずの寝ぐらを求め就職した会社で同時に採用されたのは、過去の連続猟奇殺人事件の犯人・鈴木だった。
    鈴木の行動に違和感を覚えながらも、寮での生活を共にし、彼の持つ優しさや全うさに心を許して行く中、自らが鈴木にとって唯一の存在になって行く事に戸惑いを覚える益田。
    やがて、鈴木があの少年Aである事実にたどり着く。

    異常と正常、悪と正義、勇気と逃避、許す事と許される事・・

  • 「誓約」での雑な印象を一気に覆すほど骨太で思わず一気読み。本編に鈴木視点が無いのが持ち味。最後まで彼が更生したのか分からないが、一緒くたに断罪できるほど悪人にも思えない。賛否両論ありそうな結末もこの作品に相応しいフィナーレだ。

  • 全ての空き時間をこの本に費やした。
    パラパラと中身を見た感じ、行間が詰まってると思ったけど、短時間で読めた。そのくらい夢中にさせられた作品。
    読み終わった後、実際の少年犯罪をネットで調べて暗い気持ちになってしまった。酷い事件が多すぎて怖くなった。
    もし自分が友達の立場だったらと考えさせられたが、答えは出てない。

  • この本で書きたい本質とは異なるのでしょうが、つい考えてしまいます。
    殺人は良くない。
    まぎれもない真実だと思います。
    ですが、戦場ではどうでしょう。
    人を殺すことで性欲が満たされる人が大多数の世の中だったら。
    今とモラルが違っていたら。
    一概に悪と言い切れるのでしょうか。

    世間で害悪とされた人殺し少年Aが自分の親友だった。とてもとても重くて深い題材を含んだ、この本の話です。

    殺人は悪。そうでしょう。
    加害者は償わなければならない。その通りです。
    辛い、苦しい思いをしてきた被害者の関係者の人たちを思えば、少年Aは悪の根源であり許すことなどできない存在です。許してはいけません。

    しかし、もし私の親友があの有名な殺人鬼だったとして。
    彼をすぐに害悪だと言い切れる自信が、私にはどうしてもないのです。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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