友罪 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453799

作品紹介・あらすじ

あなたは友が犯した過去の罪を許せますか。少年犯罪を償い出所した鈴木。住み込みの職場で仲良くなった益田は、あることをきっかけに彼の過去に気付き……。著者渾身の長編小説。(解説/瀧井朝世)

感想・レビュー・書評

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  • 一言では言い尽くせない感情が、今吹き荒れています。
    ものすごく難しい問題を投げつけられた思いです。
    先日読んだ『ある晴れた夏の朝』は原爆の是非をリベートし合ったけれど、この作品の主題も永遠に答えの出ない論争が繰り広げられる気がします。
    親しくしている人が実は十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた“黒蛇神事件“の犯人だったと分かっても友だちでい続けられるか?
    指名手配班ではなく、少年院で罪を償って社会に出てきた人です。彼は自分の犯してしまった罪に苦しんでいて、毎晩尋常ではないほどうなされています。
    それでもやはり、恐怖が勝り生理的に受け付けない、と感じてしまうのは仕方のないことなのかもしれません。
    でも、だからといってその人の正体をばらし、吊し上げることが正義なのか?吊し上げることに反感を持ったとしても、その人を擁護することなく声をかけてあげることのできない自分は卑怯なのではないか?
    あまりにも苦しい難題です。
    色々頭の中で理想を掲げていても、いざ自分がその立場になった時、人はどんな行動が取れるのか?
    答えのない問いをぶつけられた作品でした。

    • bmakiさん
      こんばんは。。。

      あーーーー
      こっとんさんの感想を読んで、読んだ当時の心のモヤモヤが思い出されました。

      薬丸さんの作品は、いつ...
      こんばんは。。。

      あーーーー
      こっとんさんの感想を読んで、読んだ当時の心のモヤモヤが思い出されました。

      薬丸さんの作品は、いつも何か考えさせられますよね。。。
      自分が思っていた正義って、本当に正義だったのかなぁ?とか。。。

      薬丸ワールド、読み始めると抜け出せなくなります^^;
      2022/09/30
    • こっとんさん
      bmakiさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます♪
      薬丸岳さんは、初めてだったのですが、すっかり引き込まれてしまいました。...
      bmakiさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます♪
      薬丸岳さんは、初めてだったのですが、すっかり引き込まれてしまいました。
      bmakiさんは、たくさん読まれていますよね。
      参考にさせていただきます。
      これから薬丸岳ワールドにはまりそうです‥‥
      2022/10/01
  • 登場人物それぞれは壮絶な過去を持っているので共感が難しかった そしてこの作品全体もむずかしい

    過去に日本中を震撼させた少年犯罪 低学年小学生2人を殺害して目をくり抜く事件 その犯人鈴木が同じ会社に ジャーナリスト志望の主人公 付き合っていた男に騙されてAV出演していた事務職 狭い寮のメンバー 家族を顧みず医療少年院で犯人に尽くした女性
    鈴木は少しずついい変化が、、、

    この大変な状況なんだけどなかなか共感ができなかった

    鈴木が益田をいきなり親友と呼ぶ
    白石の裸の絵?母親役はここまでやるの?白石の息子のいざこざ
    益田がうなされている学 告発の手紙誰が?→母親自分で書いたってどういうこと?
    セリフがドラマみたいでリアリティが
    美代子は辞めてパチンコ屋行ったほうがいいような 達也どうなった?
    最後の文章は益田正社員で働き出した会社に迷惑じゃないか?

    ちょっと連続でたくさん読みすぎて積読消化するために読んでしまったかもしれない イマイチ入り込めなかった 

  • 重〜い…深〜い…
    ノンミステリーやし…
    神戸連続児童殺傷事件(酒鬼薔薇聖斗の)を彷彿させるけど、作者曰く、違うらしい。あっちは、何か反省してない気もするし。
    少年の頃とはいえ、2人も児童を酷い殺し方して、出所して、一般人として暮らす…私なら許せんと思う。
    でも、それが親しくなってから、判明したらどうするかと思うと「…」が正直なところ。
    どんなに、謝罪、反省しても、被害者が生きて戻って来る訳ではないし…一生、重い十字架を背負って生きていくのが良いのか…分からんな…
    でも、死ぬって選択肢は、逆に楽な気もする。
    う〜ん…難しい…
    多分、答えはないやろうし…それぞれが自身で考えてするしかないんやろな。
    こんな重いテーマを良く描けるな。しかも面白い!
    まだまだ薬丸さんのキープしてるんで読みまくろ(^-^)v

  • とても重いテーマ。過去に犯罪を犯した人と友達でいることはできるのか。犯罪を犯した人は、その後の人生をどうやって生きていけば良いのか。
    成人が犯した犯罪ならば、刑務所に入り懲役に服することで自分の犯した犯罪を償うことができる…いや、被害者や遺族にとってみればそれでも償うことはできないのだろうが、それでも自分の人生の貴重な時間を償いに費やすことで、ひとつの代償を払うことができるのだろう。
    少年の犯した犯罪に対しては加害者の更生に重きを置かれ、妄想や考え方の偏りを正すことが優先されるらしい。そこで受けた矯正教育によって、自分が犯したことの重大さに気付き、被害者や遺族に対する謝罪の気持ちや罪悪感を持てるようになっても、彼らには懲役という償いの手段は与えられていない。償う方法は社会の中で自分で見つけていかなければならないのだ。
    それは少年時代の多くを少年院などで過ごし、社会から隔絶された中で成長し社会経験のほとんどない彼らにはとてつもなく難しく、苦しいものであったのではないかと思う。
    新しい名前や作られた経歴を与えられ、全く新しい人生を生きることができたとしても、過去の罪の意識に苛まれ、他の人と自分との違いに悩み、いつ素性がばれてしまうかと怯える日々……
    少年犯罪を犯した加害者はその後の人生の全てをかけてその罪を償っていくしかない、のか。とか考えてしまった。

    それとは別にマスコミの怖さ、インターネットの恐ろしさも感じた。私たちは事件が起こるとマスコミを通じて情報を得る。だから、マスコミの伝え方によって同じ事件でも私たちの捉え方は全く違ってしまう。インターネットも同じ。誰かが悪意を持って発信した情報も、拡散され多くの人が知るようになるとまるでそれが真実であるかのようになってしまう。誰もがカメラマンであり誰もが発信者となり得る現代。情報を見極め、取捨選択していく能力が必要だと感じた。

    長くなっちゃったけど、色々と考えさせられるお話でした。とても読み応えがありました。




  •  人間は直接的な暴力だけでなく、悪意という心を使って人を傷つけることのできる唯一のいきものなのだ。

     過去に脅かされる登場人物たち。一人は、事故を起こし人を死なせてしまった息子を持つ。一人はかつてAVに出演していた。また、一人は、子どもの頃、いじめで自殺してしまった友人を持つ。そして一人は、日本中の誰もが知る悲惨な殺人事件を起こした。
     過去をあばくことは、誰かのためになるのか。そこにあるのは悪意のある好奇心だけだ。
     ネットによって様々なことが座ったままで、クリックひとつで調べられる。また、自分の意見を書き込むことができる。そこには匿名であるが故の底知れぬ悪意が感じられるものもある。
     自分が発する言葉で人を救えることがある、と思い、ジャーナリストを目指したはずの益田が、なぜ鈴木のことを記事にしたのだろう。「決して金や名誉のためではない。自分にしかそれを伝えることはできない。」という言葉があったが、それを記事にして読みたいと思うのは、興味本位の第三者だけではないかと思った。先輩の須藤が、「それを知りえるおまえにもそのことを伝える使命がある」とも言うが、家族等、被害者に近い人たちは、決して加害者の現在を知りたいとは思わないのではないかと思った。
     過去を知っても、それまでと同じように接することができるのか、罪とは、更生するとは、償いとは何か。正直であることが必ずしも良いわけではないのでは。いろいろと考えさせられた。
     最後に益田は自分の名前を出して自分の思いを伝え、罪と向き合い、償いの形を考えていこうとする。答えはないのだろうけれど。

  • あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか?
    埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。
    無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。
    しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり――。


    2月11日から会社が4連休だった為、ブックオフに出かけて何冊か仕入れてきた(*^-^*)
    ブクログの評価で★×4前後の作品を適当に♪

    この作品もブクログの評価が★×4を超えていたので、期待大で読み始めた。
    読み始めたのは昨日の夜。

    結構な厚みの本なのだが、最初から心を本の世界に持っていかれてしまう。
    今朝は子供たちは出勤だった為、子供たちに朝食を食べさせ見送った後、ページを捲ったらそのまま休むことなく一気読み。

    この作家さんは、人物の心の機微を描かせたら本当に凄い。

    登場人物それぞれの気持ちの揺らぎ、苦しみ、悲しみ、葛藤みたいなものがとても心に響いてくる。


    映画は(私は見てない)評価が低いようだが、これはきっと本では読み取れる感情の移りのようなものが、映画では表現しきれなかったからなのかな??と。

    いや、素晴らしい作品だった!!

  • 後ろ暗い、過去を背負う。

    殺人、AV出演、友人の自殺。人間はその年齢の分だけ積み上げた過去の記憶をその人格にこびり付けて生きる。バグが溜まるように。そうした人間たちが織りなすドラマ。感情の連鎖や交錯。起点となる、それぞれの事件。

    テーマが深く、登場人物の感情やストーリーの連鎖と交錯がリアルで臨場感があり、いつの間にか自らの感情もその連鎖に乗り、同期し、トレースしていく。登場人物の感情を分かち、過去に触れ、やるせない気持ちになる。

    唸り、ページを捲る手が止まらない。読めば、この表現が決して、大袈裟では無い事が分かるはず。


  • もし、友人になった人が過去に猟奇的な
    殺人を犯していたら。
    もし、好きになった人が凄惨な殺人犯
    としての過去を背負っていたら。

    自分が出会って実際に感じたその人の印象、
    その人と過ごした時間と育んだ関係は、事実を
    知った後の自分の中で変わってしまうのか。

    変わらず友人でい続けられるのか、
    好きという感情を持ち続けて寄り添えるのか。

    自分の中で揺れ動く直接的な思いと、
    社会的な視点から感じる間接的な思いの
    狭間で苛まれる苦悶と葛藤の物語。

    人の命を殺めるという究極の罪を犯した人の
    その後の生活と、そこに関わる人たちの
    それぞれの思いを描いた深く考えさせられる
    小説でした。



  • 積読の中の一冊になっていたものを、時間が出来たので。
    ずっしりと重くのしかかってくるのに、先を読まずにはいられなかった。
    最初は鈴木だけが暗い暗い過去を引きずっているのかと思ったが、益田も美代子も山内もそれぞれに暗い過去を持って日々を過ごしていたなんて。。。

    この本の帯やあらすじにもある、その過去を知っても友達でいられるか?という問いに対して、読みながら自分ならどうするのか?と考えてみたが、答えが出ない。これを書いている今も、どうするのか?という事だけが頭の中をぐるぐると巡っているだけ。

  • 相変わらず薬丸岳は上手い。特にここ数年の作品には、必ず救いが用意されており、暖かみを感じる。

    この作品で扱っているのは『もし、同僚が連続児童殺傷事件の少年犯だったら…』という非常に難しい、重いテーマである。しかも、登場人物は皆、過去の十字架を背負っているのだ。読み進むほどに重い気持ちになりつつも、この先、物語はどう展開するのだろうかとページを捲る手が止まらない。

    まさかの展開とあらたな過去に暗澹たる気持ちになりつつ、残りページは僅か。もしや、救いの無い結末なのかと不安がよぎる。が…

    最後はまさかの感涙。

    『天使のナイフ』以来、薬丸岳の作品は全て読んでいるが、いつもながら
    本当に外れの無い、高い水準の作品に驚くばかりだ。

    文庫化にあたり、加筆・修正。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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