赤と白 (集英社文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087453935

作品紹介・あらすじ

雪深い町で暮らす、高校生の小柚子と弥子。明るく振る舞う陰で、二人はそれぞれの事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校した京香が現れ……。第25回小説すばる新人賞受賞作。(解説/斎藤 環)

感想・レビュー・書評

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  • 皆様、お気づきでしょうか。そうです、ふとした思いつきから始めた女性作家メドレー、早いもので5作品目となりました。知らんがなでしょう、そうでしょう。

    前置き

    胸糞悪さに耐性のある私だが、決して人の不幸を見て成長する悲しいモンスターという訳では無い。良く言えば、見たくない物を見ないフリで素通りするべからずの精神だと思っている。自信は無いが。
    問題定義の投げ掛けとしてのフィクションを自己満にはなりますが好んで追えるのです。

    その前提でこの作品を手に取り、彼女等の抱える負の背景とそれに繋がる母親の存在、その中ですれ違う友情と決定的な一撃を振り下ろした歪み。
    ...中々重たいお話で期待を持って読み進めたものの、残念ながら読了後に大きな変化は無かった。

    若者ならではの直進的な思考回路に、今でいう「毒親」のブレンド。混ぜるな危険信号が鳴り響いている。解説のお言葉を借りて、「母親殺し」が最終的なテーマとなる確実に手に取るべきではない重たいお話でしたが、一概に「なんて悪趣味な話を書くもんだ」と言えない、確実に現実に起こっているであろう闇に、額の皺がドンドン深くなっていった。

    だが、この読了後の何も無い感は何だろう。救いようがない...なんか悲しい気持ちになった..というものではなく、纏まりきるまえにシャットアウトされた着地点と浮遊したままの伏線が気持ち悪い。数々の疑問が残る終わりを迎え、居心地が悪い。
    なにより悲しいのは血が通ったキャラクター達から途端に失われる「らしさ」だ。

    心理的描写が細かかった分、読了後に「彼女達」、そして現実に起こっているであろうこの現状について果たして自分はどう感じるのか。と心の底から楽しみ...と言うと語弊がありますが、この短い読書の先に産まれる自身の感情の未来に期待していた。
    しかし途端に彼女達は「物語の中の人」となり愛着は薄れ、日をまたげは彼女達が過ごしたあの日々はフィクションの世界となり、私の記憶から話の全容以外の全てが抜け落ちていった。

    心を持ち人間らしさを築き上げた「ピノキオ」の魂を抜き取り、心の通わない人形を破壊して楽しむ様を見せつけられただけのようで、とても残念。

  • 女子高生二人の視点で物語が展開していた
    その他何人かの女子高生が登場して
    母親との関係がみなそれぞれだがそこに
    いろいろ問題が・・・
    最初に新聞記事があり
    物語はそこへ向かうんだろうなとはわかりました
    精神科医の解説も興味深かった

  • 最近ハマりつつある櫛木理宇さん。これは初期の作品で、小説すばる新人賞受賞作品。この装丁とタイトルの対比が読欲をそそる。

    舞台は著者の出身地、豪雪地帯の新潟が舞台。そこで暮らす女子高生、小柚子と弥子とその仲間たちの物語。冒頭の停電と火事の記事が全て。そこに行きつくまでの過程が雪と共に積もっていき視界不良になる。なんともいえない田舎の家庭の閉塞感や女子高生らしいスクールカーストにリアリティを感じる。雪国の天候、曇天で灰白色の空が気持ちをも陰鬱にさせるのか。最期もなかなかの不穏な読後感。

    とても好きな作品だった。

  • まさに毒親という言葉がぴったり。
    女子同士のドロドロした心の闇も、田舎特有の閉鎖感もあるあるだな~。

  • 読後感、なんだろう。
    小柚子と弥子と、苺実、京香と慎くん。
    それぞれのキャラクターをあまり好きになれないまま読了してしまった。

    最初のニュースで、どうなるかは知っていたけど、小柚子の家で亡くなった友人が誰か、とか、小柚子がどうしてそうなったか、とか、少し謎のまま終わってしまったのが残念。

    小柚子と弥子が今後どうなっていくのかが一番気になるところかな。

  • 雪国の雪は美しいものではない。そこに暮らす者を苦しめる白だった。
    小柚子と弥子は仲良しだった。二人の関係のバランスを崩したのはクラスで目立つAグループからあぶれて弥子達Bグループに拾われた苺実。そして、突然現れた二人の幼なじみ、京香だった。小柚子も弥子も母親との関係性で互いに明かせない秘密がありその負い目がすれ違いを加速させてゆく。
    母と娘の関係は逃れられない呪縛であり、それは憎しみの赤い炎となって焼き尽くす。
    新潟を舞台に女性の業が渦巻く暗い物語である。

  • 思ったよりテンポ良く読めた。

    4人の少女の心の闇(苺実は種類がちょっと違うが)。

    それにしても、小柚子はあまりにも救いが無くて辛い…。

    性暴力のトラウマから逃れるために
    衝動的とはいえ「母殺し」という手段を選んだのに
    結果、また性暴力の被害に遭うなんて。

    心を失った小柚子に、弥子はどう寄り添うのか。
    その後が気になります。

  • 地方都市の閉塞感はわかっているつもりだけれど、舞台が新潟となると、あたしが知っているそれとは随分印象が違う。
    一番の違いは雪だ。
    序盤に出てくる、道の脇にできた雪の壁に関する描写が最後まで効いていて、自分の抱える問題を誰にも打ち明けらない人々の前にそそり立って逃げ道を阻み、迫り、追い詰めていくかのようだ。

    もちろん、次々と生ゴミみたいな男を掴んではしな垂れかかる親や、不肖の身内をひた隠しにする親や、我が子を叱れずどんな要求にも応えてしまう親はどこにでもいるのだろうけど、そんな親と暮らす娘たちの目に逃げ道が映らないのは、小さい町で生きていることが大きいように思う。
    人の口に戸は立てられないことを、刷り込まれながら育つから。

    ひとつの逃げ道を塞いだ親は、もうひとつの逃げ道を教えなくちゃいけない。
    だからぜんぶ、それを教えなかった小柚子と弥子と苺実の親が悪い。(〆が雑)

  • 閉鎖的なコミュニティでの少女達の日常、葛藤、絶望…
    親によって支配を受け続ける少女達の心理描写
    、閉塞的な空間でのリアルが生々しい
    それぞれの抱える背景が胸くそ悪い
    突如現れた旧友の存在によってそれぞれの形で完遂する親殺し
    一番やべー奴に見えた苺実も、親によって成長と自立の機会を奪われ続けているというのがが面白い
    冒頭に繋がる最後の展開は急展開過ぎてちょっと笑ってしまった
    ほったらかしな辻井君が割と可哀想
    多分一番まともだから頑張ってほしいと思う

  • それぞれに事情を抱える少女たち。大人になるまであと少し、我慢できなかったかな?雪国の灰色の空の描写がどんよりと物語を暗くする。苺実がウザかったなー。

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著者プロフィール

1972年新潟県生まれ。2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞。同年、「赤と白」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、二冠を達成。著作には「ホーンテッド・キャンパス」シリーズ、『侵蝕 壊される家族の記録』、『瑕死物件 209号室のアオイ』(角川ホラー文庫)、『虎を追う』(光文社文庫)、『死刑にいたる病』(ハヤカワ文庫JA)、『鵜頭川村事件』(文春文庫)、『虜囚の犬』(KADOKAWA)、『灰いろの鴉 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎』(ハルキ文庫)など多数。

「2023年 『ホーンテッド・キャンパス 黒い影が揺れる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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