カテリーナの旅支度 イタリア 二十の追想 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087454437

作品紹介・あらすじ

ミラノ、ローマ、海辺の僻村、山間の寒村。イタリア在住30年の著者が出会った、人々の生きざまと思い。2011年、日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイ賞同時受賞の著者が綴る珠玉のエッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • イタリアが大好きなので一度は内田洋子さんの本を読みたいと前々から思っていた

    イタリアがギュッと詰まった20篇のエッセイ(後ほど訂正を入れますが、とりあえず)

    第一印象としては、とにかく友人の多さに驚く
    詳しいことがわからないのが残念であるが、仕事を通じて、人を介して、また住んでいるご近所さん…など本当に人の出会いが多い
    (恐らく人の懐にスルッと入る能力の高い方なのであろう)
    出会いの多さ、こういう部分は日本になかなかなく残念に思う
    知らない人と話すことがますます少なくなった
    昔はそこまででもなかったと思うのだが…(たま~に見知らぬおばちゃんとお話しするけど…)
    世の中が、キャッチセールスに警戒するようになり、スマートフォンの普及で街で道を聞く必要性もなくなった
    皆スマホに夢中で周りを見るゆとりもない
    誰もが自分の世界の中にいる
    (人見知りなので結局自分から率先して話しかけるようなことがないにしても)寂しい時代になったと感じるこの頃…

    さてこちらの本、彼女の素敵なところは、個性あふれる様々な境遇のイタリア人である友人をあるがまま受け入れているところだ
    好き嫌いだけでなく、その人の良いところ悪いところも批判せず丸ごと受け入れている
    人だけでなく、イタリアという国自体の良いところ悪いところも、そいういうものだから…という感じだ
    達観していらっしゃって、潔くてカッコいいし、素晴らしい
    自分が全くそのような境地に立てないのでうらやましいのである
    ついつい人間関係が面倒になり、別に無理してまで付き合わなくても…と思ってしまう
    あるがまま受け入れるって愛情深い方なんだなぁ(自分にはまだまだ愛が足りないのである)
    そのため、人や物事に対して結論を出すという書き方は一切なく、こちらの考え方や思いを逆に掻き立てる
    イタリアの空気感を味わいながらも、決してお気軽エッセイではない
    大げさに言えば、「人」や「人生」にフォーカスが当たっているため、考えさせられることが多かった
    先に、イタリアがギュッと詰まった…と書いたが、書いておきながら途中で違うと感じる
    彼女の周りの人たちのことを彼女の考えを添えて書いたものの舞台がイタリアなだけ…であった
    もちろんミラノを中心に街のふとした表情や、温度を感じる場面、イタリアらしさ、大好きなイタリアの食事風景などもあって、それはそれで楽しめたけど

    思っているエッセイとは違ったのだが、各友人たちの人生を通して、何か心を揺さぶられるものがあった

    通り過ぎそうな風景を一度立ち止まってみる…
    そんな風に人との関係を考えさせられるエッセイであった


    余談
    この本の中で、木造の古式帆船に住む描写がある
    この船は長年放置されており、お払い箱寸前のところを内田さんが中古車1台の値段にならない程で縁あって買い取ったらしい
    修繕に1年以上の月日が費やされる
    全長15メートル、幅4メートルを超える船で、羅針盤までをも含むすべての部品が木製とのこと
    元々売り物ではなく、船職人が最後の仕事として、自分のために自分が思う通りの船を最後の集大成として作った船である
    どれほど丁寧で精巧で素敵なのか…
    想像が膨らんでクラクラする
    ロマンがあり過ぎる!
    船に興味があるわけでもないのだが、この船のことが忘れられなくなってしまった(見てもいないくせに)

  • 光を閉じ込めた薄鈍色の絹織物をイメージさせる、うら寂しい印象が際立つ随筆集でした。素直に「灰色」と言わずに、気取ったように「薄鈍色(うすにびいろ:青みがかった灰色)」なんて古語を用いたくなるのは、何故だろう、と少し自問自答したのだけど。

    古来の喪服の色の一つではあるけれど、まるで、曇天の中にわずかばかりの光が指して次の晴れ間を連想させるようなその微かな青さのせいかもしれない。

    イタリアにて出会った人それぞれの人生を、そのままならなさに特に焦点を合わせていながらも、それでも光と影の双方を丹念に掬い上げて再構築し、静謐な言葉で綴って昇華させた内田さんの文章が、虚しさや侘しさを多分に含んでいながらも、不思議と哀切と優しさを滲ませているから。

    本作の中では、「ハイヒールでも届かない」と「掃除機と暮らす」が特に印象的でした。

    どのお話も、傍目には何の憂いもなく恵まれているように見える(物質的には間違いなく恵まれている)人生だけど…というお話。

    それぞれの作品に登場する女性たちの人生がその後満ち足りたものになっていることを願わずにはいられない。

    恵まれているようでままならない人生を描いている点では、イタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニの「甘い生活」に通じる部分もありますね。

    味わい深い作品集ですが、暗めのお話が多いので、内田さんの随筆を初めて読もう、という人は別の作品からのほうがいいかも。

  • 20編を収めた、短編エッセイ集。
    書名になっている、「カテリーナの旅支度」は、最後のあとがきとセットになっている。これ以上は、ネタバレになるので書けないが、最後の1編と、あとがきを読むだけでも、この本を買った甲斐がある。

    内田洋子さんの本を読むのは、4冊目になる。どれも、本当に、しみじみと良い本だと思う。
    イタリアに行きたくなる。
    そして、新型コロナウィルスで、大変な状況になったイタリアに、自然に想いを馳せることになる。

  • 私は須賀敦子がどうしても読めないのだが、なんとこれもだめだった。イタリアの空気を受け付けないのだろうか。図書館で借りてみてよかった、買おうかと思ってたから。

  • 全体的にダークなエッセイだったな。

    金持ちの道楽である船の購入金額をそっくりそのまま困っている人たちの支援に使っていたら、一体どれだけの人が助かるんだろうか。
    金持ちの道楽のせいで出た産業廃棄物がどれだけ地球を汚染しているんだろうか。
    お金は彼らのものかもしれないけど、地球は彼らだけのものじゃない。

  • どの話もおもしろくて小説みたいに読めるけどエッセイなのよね。

  • 今まで読んだ内田氏の作品で一番面白かったです。この本のカテゴリーが良くわからないのですが、エッセイだとすると盛りすぎ感が強く、短編小説として読むととても面白かったです。

  •  須賀敦子を思わせる、イタリアでの日々を綴ったエッセイ。イタリアの一癖ある友人たちとの日々がとても魅力的だ。日本とは違う、イタリアの生活が鮮やかに描かれる。それにしても何と友達の多いことか!うらやましい!

  • 三読目くらい?厳しさと暖かさが含まれたフラットな視線が好きだ。読めば読むほど素敵になっていく気がする。
    「赤い小鳥の絵」の話は好きだなあ。そして最後のあとがきは反則だろう…!文庫版買ってよかった。

  • イタリアにもこんな人たちがいるんだ。イタリア人像を勝手にイメージしていたので意外だった。様々な人生、その背景となっているイタリアの風景、繊細な描写がとても味わい深かった。

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

内田洋子の作品

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