明智小五郎事件簿 3 「蜘蛛男」 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 63
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087454741

作品紹介・あらすじ

美人だけを狙い凄惨なやり方で殺害する「青ひげ」。事件解決の糸口が見えない中、素人探偵・明智が登場。「青ひげ」=蜘蛛男事件は解決するのか!?(解説/万城目学 年代記(クロニクル)/平山雄一)

感想・レビュー・書評

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  • 息抜き終了、明智先生シリーズに戻ります。今回の事件は1928年(昭和3年)6月から11月にかけて半年の長きにわたる猟奇連続殺人犯「蜘蛛男」との戦いですが、なんと、明智先生、いつまで待っても出てきません(笑)300頁ちょっとの本ですが、200頁過ぎてやっと登場です。待たせすぎ。まあいつものことか。明智小五郎事件簿だと知らなければそのまま気にせず読んでしまうところですが、解決するのは明智先生だと知っていて読むとこれ、実は真犯人がわかりやすいのがネック(苦笑)つまり中盤まで、別の探偵役がいるんですよね。でもこれが明智シリーズである以上、この探偵役はつまり
    (1)犯人に殺されて退場、探偵役は明智にバトンタッチ
    (2)探偵役自身が真犯人である。
    の二択しかないわけです。というわけで、明智先生の登場を待たずして賢明な読者は真犯人とそのトリックにわりと早い段階で気づいてしまい、その後はえんえん、この自己顕示欲&承認欲求強めの犯人が「自作自演」を「自画自賛」してる様子を読み続けなければならず、正直これ、結構苦痛でした(苦笑)

    さてそんなわけでやっとこさ登場した明智先生、一寸法師事件ではシナ帰りでシナ服でしたが、その後また海外へお出かけなさってたそうで今回はインド帰り(笑)〝詰襟の麻の白服に白靴、まっ白なヘルメット帽、見慣れぬ型のステッキ、帽子の下からは鼻の高い日にやけた顔、指には一寸も幅のある大きな異国風の指輪”〝アフリカか印度の植民地で見る英国紳士のようでもあるし、また欧州に住みなれた印度紳士といった感じもする”・・・想像しようとしたけれどなぜかインドというワードが頭に残りすぎたせいか、アニメ「小公女セーラ」に出てくる親切なインド人のラムダスさんの姿が脳裏に浮かんでしまい、その後ずっと私の脳内で明智先生のビジュアルはラムダスさんでした(苦笑)だってラムダスさんも白い詰襟みたいな服着てるんだよ・・・(笑)しかし明智先生、髪型はあいかわらず「モジャモジャ」というか、頭をモジャモジャやる癖は健在。もしかして天パなのかな。

    序盤の展開は、犯人のやりくちがスピーディで結構面白いんだけど、標的が女優さんになってからは同じようなパターンの駆け引きの繰り返しで、しかも読者はたいがい犯人に気づいているので警察がマヌケに見えてイライラしてしまう。明智先生が出てきてやっと犯人の目星はつくものの、そこからまだ何度も、逮捕できるはずの場面で取り逃がしてしまうことの繰り返し。つまり明智先生も結構なポカを数回やらかすわけです。解説で万城目学も書いていたけれど、たとえ縛ってあるにしても凶悪犯人とその標的を一緒に置き去りにするとか、ありえなさすぎて呆然。明智先生のせいで死ななくてもよい人が死ぬことに。というかまあこの場面での女優さんの行動もちょっとご都合主義すぎておかしいですけどね。

    たぶん乱歩先生はラストの、蜘蛛男の壮大な夢であるところの、パノラマ館に49体の美女裸体パノラマ人形、なんと中身は本物の女性!(のはず)という場面を書きたくて、何度も蜘蛛男を見逃し、明智くんに失策をやらかさせ、美人女優を殺してきたんでしょうが、そういうご都合主義が見えすぎて読者をしらけさせてしまうのがこの長編の最大の難点かと。講談調で作者ナレーション挿んでくるのも、序盤は微笑ましいけど終盤になると「いいから早く終わらせて!」とイライラしてくる(笑)明智がわざわざ犯人を麻酔で眠らせてる間に美女たちを逃がして人形に戻しておくのも、もちろんそのほうが目覚めたときの犯人のダメージは大きいでしょうが、また逃げられるリスクもあるわけで、麻酔かがせる余裕があるならサクッと逮捕すればいいのにと思ってしまう。まあそういうツッコミどころ満載なところもご愛嬌といえばご愛嬌。そのへんふまえて、万城目学の解説は爆笑ものでした。

  • 事件解決に向けた論理的な推論を楽しむ要素がほとんどなく、ジャンル分けすると異常性格者による犯罪の経緯とその終結までを楽しむホラー小説に近い範疇に含まれると思う。

    残酷で猟奇的な雰囲気は漂うが、スプラッターな描写はなく、ナレーション的な説明が多いのは若年層の読者を意識しているからか?

    ツッコミどころも多いが、テンポよく展開を楽しめる。

    巻末の年代記が一番面白い。

  • 明智小五郎の活躍を事件発生順に並べた画期的なコレクションの第3巻。

    この作品を境に、これまでのミステリー寄りの作品から一転し、大衆寄りの作品に変貌したようだ。昔、ポプラ社の『少年探偵江戸川乱歩全集』に収録された同作を読んだ記憶があるが、読み返してみると少年でも理解出来るものの、少年向けの作品というよりも、大人向けの作品であったことが解る。

    残虐で凄惨な連続殺人を繰り返す蜘蛛男。冒頭から、この奇っ怪な事件で探偵役を務めるのは畔柳博士と助手の野崎、波越警部であり、明智小五郎は登場しないのかと少しやきもきする。残りページが3分の1になり、明智小五郎がようやく登場する。そこからの二転三転、怒濤の展開の面白さ。そして、意外な犯人の正体とは…

    巻末には平山雄一の『明智小五郎年代記 3』が収録させており、本作が上梓された時代の背景などが紹介されている。万城目学の解説も面白い。

  • 第3巻。収録作は長編『蜘蛛男』。
    最初に読んだのは何歳だったか……懐かしい。確かに解説でも言及されている通り、ミステリとして瑕疵があることは事実だが、それよりも何よりも、ついのめり込んで夢中で読んでしまう。そうやって何度も読み返したなぁ……。

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著者プロフィール

1894‐1965。明治27年10月21日三重県に生まれる。早稲田大学で経済学を学びながらポーやドイルを読む。様々な職業を経験した後、大正12年、雑誌「新青年」に「二銭銅貨」でデビュー。昭和22年、探偵作家クラブ結成、初代会長に就任。昭和29年、乱歩賞を制定。昭和32年から雑誌「宝石」の編集に携わる。昭和38年、日本推理作家協会が認可され理事長に就任。昭和40年7月28日死去

「2018年 『人間豹』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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