明智小五郎事件簿 魔術師 (V) (集英社文庫)

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  • 集英社 (2016年9月16日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784087454987

作品紹介・あらすじ

湖畔のホテルで明智小五郎が出会ったのは、東京の大宝石商の令嬢・玉村妙子。この出会いをきっかけに怪事件へ巻き込まれる。悪魔に捕らえられた明智は……。探偵小説の一大金字塔!(解説/大槻ケンヂ)

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

探偵小説の金字塔である本作は、明智小五郎が怪事件に巻き込まれるスリリングな物語です。時代背景を感じさせる描写や、明智が単なる推理マシーンではなく人間として描かれている点が印象的で、読者を引き込む魅力を...

感想・レビュー・書評

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  • 明智小五郎の事件を事件発生順に並べたシリーズ。『魔術師』は1928年11月5日から1929年4月半ばの出来事です。
    明智小五郎30代後半で、住居は御茶ノ水のアパートにお引越ししました。

    ===
    明智小五郎は素人探偵といっても、探偵の看板を出して生活をしているわけではない。つまり、依頼を受けているわけではなく、好きで事件捜査をして解決が楽しいのであり、犯人逮捕は興味ない(今までも言ってたことではある)。
     …でもそれならどうやって生計立ててるの!?パトロンが数人いるのか!?(←それは金田一耕助)

    今度の事件は『蜘蛛男』事件から引き続く。この事件にさすがに疲れた明智小五郎は、湖畔のホテルで休養することにした。ここで知り合ったのが、宝石商の娘で女学校出たばかりの玉村妙子お嬢さん。
    その妙子さんが東京に帰ったあとに探偵の依頼がきた。妙子さんの叔父の福田氏の締め切った寝室に奇妙な書き置きが届くというのだ。そして明智小五郎と旧知の浪越警部も、実際に事件が起きていないのだからまずは明智くんに相談ということを推奨したのだ。
    しかし数日後、恐ろしくも不可解な事件が起きて…。

    あれ?依頼を受けた明智小五郎はどうした?なんと東京に帰った途端に犯人一味に誘拐されていたのだ!これには江戸川乱歩も「事件も起きる前のことで、明智小五郎に抜かりがあったわけではない」と読者に念押し・笑
    明智小五郎を捕まえたのは「魔術師」と呼ばれる玉村家に恨みを持つ男だ。数名の手下と、自分の娘の文代を使って、玉村家への恐ろしい復讐を企んでいるのだ。だが捉えられた明智小五郎を助けたのが、その犯人・魔術師の娘の文代さんだった。
    この後魔術師は、玉村家に対して世間に見せつけるような残虐な犯罪を繰り返す。彼が魔術師と呼ばれるのは、不気味な予告状を出してきて、密室へは出入り自在で、観客の前で残虐ショーをやってみせ、死体は衆人の前に見せつけて、そして明智小五郎に追い詰められても逃げ延びてみせる。
    ここでまた江戸川乱歩が明智小五郎を庇う記述を・笑。

    探偵小説作家って大変ですね。派手な事件を起こすためには犯人に活躍させなければいけないけれど、それだと探偵がお間抜けになってしまう。そこで江戸川乱歩はちょこちょこと「一般市民に大人気の素人探偵」「今回は彼の落ち度ではない」「明るく快活な性質」などとフォロー入れてきてます・笑
    そう、明智小五郎って健全な雰囲気なんですよ。すると江戸川乱歩の淫靡で装飾された残虐性、血みどろ、SM行為、怨念などはちょっと合わないところが(^_^;)
    しかも今回は、自称「40歳近い」明智小五郎に恋の予感があります、それも二人!? 
    一人は静養地で出会った玉村妙子さん。明智小五郎は一人で「相手はご令嬢だ。自分が手に届くはずがないだろう。しっかりしろよ、自分。」などと煩悶したりする・笑
    それが事件が始まってからは悪党一味の文代さんに恋心を感じちゃう。しかも恋心を自覚したのが惨殺死体の前なんです(^_^;)
    文代さんも、父なりの恨みがあるとは言えあまりの残酷な行為に耐えられなくなり、明智小五郎を頼りとする。明智小五郎、またしても「しっかりしろよ自分!相手は悪者の一人娘だぞ。」などと自戒する・笑

    ついに魔術師は玉村家への恨みの内容を知らせ全面攻撃を仕掛けてきて、文代さんは父・魔術師の元を飛び出してくる。
    魔術師対明智小五郎も最終局面を向かえ、さらなる意外な事実が判明するのだった。

    ===
    私はこれ読んだ記憶があります。あとがきで大槻ケンヂが書いているように、ポプラ社江戸川乱歩シリーズでは「大人向け小説を子供向けにリライトした」ものがあるようなのでそれで読んだのだろう。私の記憶ではここまで血みどろだはなかったんだけどなあ…むしろ子供はそういう描写気にならないのかも。

  • 1928~1929年(昭和3~4年)の事件。1928年は「蜘蛛男」事件や「白コウモリ団」事件と結構時期が重なっていて、この頃の明智先生は大忙しですね。さて今回珍しく、最初から明智先生登場。蜘蛛男事件の疲れを癒すために湖畔のホテルで優雅に休暇を楽しんでいるところ、美しい令嬢・妙子さんと出逢い意気投合。湖畔にボートを浮かべてデートを楽しむなど、これまた珍しくロオマンスを匂わせる展開。しかし宝石商の娘である妙子さんの叔父さんに「魔術師」からの殺害予告が・・・。

    ご都合主義だった3作目「蜘蛛男」、いきあたりばったりがひどかった4作目「猟奇の果」に比べると、この「魔術師」は比較的丁寧に伏線が貼られていて、きちんと最後までプロットを練った上で書かれた印象。これまでの犯人がどちらかというと無差別殺人を好む変態にすぎなかったのに対し、魔術師は「復讐」を掲げており、動機と対象が明確なのもこれまでとちょっと違う。さらに妙齢(18歳くらい?)の二人の女性に急にモテはじめた明智先生の恋バナ、のちに明智先生の妻となる文代さんの登場などの彩りもあり、多少のアラはおいといて全体的にこれは娯楽作として十分満足のいく1作でした。

    で、毎度気になる明智先生の外見と年齢なのですが、今回外見についての言及はなし。これまでモジャモジャ頭にヨレヨレの浴衣、チャイナ服、ラムダスさん…もといインド人風など、謎のセンスでわれわれ(つうか私)を翻弄してきた明智先生ですが、今作ではお茶の水の「開化アパート」という小洒落た場所に引っ越し、安楽椅子に腰かけてフィガロという外国製巻煙草をふかしながら物思いに耽ったり、なかなか洗練されてきて、少年探偵団のダンディでスマートな明智先生のイメージに近づいてきました。しかも急にモテはじめるしね!(笑)

    年齢のほうは、相変わらず目から鱗の巻末付録:平山雄一の「明智小五郎年代記」で気になっていたことがすっかり解明されていてスッキリ!これまで1920年の事件「D坂の殺人事件」で「だいたい25歳までくらい」、1925年の事件「何者」では「27~28歳くらい」と語り手に推測されていた明智先生ですが、今回みずから「四十にも近い中年もの」と述懐。「何者」から4年程度しか経過していないことを考えるとせいぜい31~2歳のはずなのに40に近いということは、明智先生は実年齢よりだいぶん若く見えるタイプらしい。まあ四捨五入して40といえるのは35歳から、ということで、平山雄一は明智先生の年齢をこの事件の時点で35歳、つまり乱歩と同い年の1894年(明治27年)生まれと推測。なるほど。

    あと「魔術師」の復讐の理由になる父親を殺されたあたりの因縁話の内容に、実はちょっと引っ掛かり(え、これただのゲス不倫で殺されたほうも自業自得じゃないの)(ていうか被害者の息子って断言してるけど根拠は何?へたしたら加害者の息子の可能性ありそう)を感じていたんですが、これはやっぱり平山氏も引っ掛かりを感じられていたようで、良かった私の俄か校閲体質のせいじゃなかった、と安心(笑)校閲といえば一カ所日にち間違いも気になりました。拉致られた明智が目を覚まして文代に日にちを尋ねるくだりだったかな。

    「肉仮面」っていう言葉の響きとか、時計台を断頭台にしようとするくだりとか、見世物小屋で美女が解体されるくだりとか、いかにもおどろおどろしい乱歩らしさ満載なところはとても魅力的なのだけど、個人的には、復讐対象の一族でもない、ただ二郎さんの恋人だっただけで世にも無惨なやり方で殺された花園洋子嬢がとても気の毒でした。時代の違いというか娯楽作品としての作風の問題かもしれないけど、あんな酷い殺され方をした被害者に対して、恋人を目の前で殺されたのにわりと立ち直り早い二郎さんをはじめ、わりと登場人物がみな冷淡というか、まあ乱歩のほうでこういう劇場型の犯罪描写を楽しく書いたらそれで終了、本筋とは関係ないので次いきます、みたいな淡泊さがあるんでしょうけど、ちょっと引きました(苦笑)

    解説は満を持して大槻ケンヂ。文代さんと明智夫婦のその後など、独自の解釈が面白い。

  • 蜘蛛男の直ぐ後から始まる復讐鬼対名探偵のスリラー活劇。ちと時代がかっているが、却って味わい深い。犯人の娘とのロマンスとか明智小五郎を只の推理マシーンにしなかったのが実に良い。

  • 「魔術師」単独が収録されている。
    江戸川乱歩作品には珍しく明智小五郎の恋情が絡んでいるが本筋には大して関係なく、「書き慣れぬなら無理せねば良いのに」と少々脳裏をよぎったが、事実そこまで描写があるわけでもなく、気にかかるほどのものではない。

    さて内容であるが、特に前半の描写などは「あれ、これホラーだっけ?」と思うほど生々しく恐ろしい。終盤に至るまで読者をゾッとさせるような事件が立て続けに起きる。
    とはいえ、地下室に人を生き埋めにするシーンはエドガー・ア・ランポーの「黒猫」を参考にしたのかと思うほどのものである。

    最終的に真犯人が捕まった後もページが残っていることに驚き、更にどんでん返しが待っているのかとも思ったが、最後は真犯人が捕まっても明らかになっていなかった過去の謎を明確にする最後の尻尾であり、なるほどと膝を打つことになった。

    江戸川乱歩作品は謎解きの要素もある広義のミステリー小説だと認識しているが、本作はその中でも一層、怪奇小説に描写を近づけたミステリーであるように思う。

  • 明智小五郎の恋がひとつの軸になっている。反面、魔術師のキャラクターと犯行動機が弱く、最後のどんでん返しも読めやすい。残酷描写も(特に奇術のシーンは)子供向けにしては行き過ぎで、明智の恋にしても殆ど内面は描かれず、対象読者層が少し中途半端な印象。ただ興味を引かせ続ける展開は上手いので一気に読める。

  • 明智小五郎クロニクルの第5巻、『魔術師』。
    子供の頃、家にあって、貪るように読みふけったことを覚えている。船中で壁にかけられたお面(と、思われていたもの)がムズムズと動き出すシーンが好きだった。今でも好きだがw

  • シリーズの5巻

    珍しく明智小五郎が物語の最初から登場
    また、今までの明智小五郎は個性の乏しい、単なる完全無欠のヒーローの代名詞のような非人間的な存在だったが、本書では明智小五郎が人間として描写されていて面白く読めた。

    子供向け番組のナレーションのような説明・読者への語りかけが多く、洗練されていないというか野暮ったさを感じるが、映画にもまだ音声がついていない時代だったことも思えば、このような説明が流行していたのかもしれないと思った。

    平山雄一さんの明智小五郎年代記だけでなく、大槻ケンヂの解説も、作品のリアルタイムと読者にとってのリアルタイムが対比になっていて、これも面白かった。

    正直、前巻でシリーズに期待外れを感じていたが、もう少し楽しめそうな気もしてきた。

  • ストーリーの面白さはもちろんだけど、明智小五郎と文代さんの恋が良い!!
    明智が生涯で初めて恋を感じた瞬間を描いているこの表紙が特に大好き!

  • 昔読んだけどすっかり忘れてたから新鮮な気持ちで読めた。明智と文代さん、年の差あったな。そしてなるほど伏線がちゃんと張ってある…明智、意外と惚れっぽいと思ったら違ったわ…完全に当て馬だったわ…。 実は取り違えられた子という設定、今ではほとんど見なくなったなぁ。

  • 読みやすさ・面白さ・乱歩らしさのバランスが良く、ここまで読んできた中でも上位に入るかもしれない。ミステリ要素もあるので、最後まで目が離せない。
    どこかで読んだことあるのかな?と思うくらい既視感(既読感?)がスゴくて思い返してみたけど、結局分からず。とにもかくにも楽しめたから良し。
    今後は文代の登場による明智の変化が気になるところ。解説にあった後のあれこれに関する考察も興味深い…

  • 今のところ明智小五郎シリーズ1-5の中では1番好き

  • MRCのミステリ・ジョッキーの課題本とのことで明智小五郎事件簿シリーズから魔術師を読んだ。
    やっぱり乱歩は面白いんだよなぁ。最高。芝居がかった地の文が面白い。巻末の平山さんの年代記はすごいわかりやすいし大槻ケンヂの解説は死ぬほど笑った。シリーズ読破しなきゃ!

  • 時計塔のくだりは背筋がゾクッとする面白さ。殺人鬼と明智小五郎の攻防が面白い。恋の展開もあり、「へえ、そうなんだ!」と嬉しくなる驚きも。

  • 明智小五郎の活躍を事件発生順に並べた興味深いコレクションの第5巻。

    後に登場する明智の宿敵・怪人二十面相の原型とも受け取れる魔術師と明智の手に汗握る闘いが巧みなプロットにより描かれており、非常に面白い。

    時折、作中で著者が名調子により読者に語り掛けるという一昔前のテレビドラマのような手法も使われており、明智が二人の妙齢の女性に心を奪われるというオトナの描写と併せて、まるで映画かテレビドラマのような仕立てになっている。

    この作品は大昔にポプラ社の『江戸川乱歩・少年探偵シリーズ』で読んだ記憶があり、内容を断片的には覚えていたが、こんなオトナ向けの作品であったかなと疑問に思った。しかし、大槻ケンジの解説で疑問は氷解。ポプラ社の『江戸川乱歩・少年探偵シリーズ』に収録されているのはオトナ向けの作品を子供向けにリライトした作品であったようだ。非常に納得する解説。

    一つ疑問だったのは、54ページの明智と文子の会話。会話に登場する日付の関係が前後しており、意味不明。誤植だろうか。

    今回も巻末に平山雄一の『明智小五郎年代記』が収録されており、作品の背景、登場の風俗や世相を知ることが出来る。

  • よく練られたストーリー。
    今はあまり見られなくなった最後の最後の種明かしで明かされる設定。
    ストーリー上、途中いないのが寂しいけど、
    明智さんが早くから登場してくれて嬉しい。笑

  • 読了 20230312

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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