春、戻る (集英社文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784087455410

作品紹介・あらすじ

結婚準備を進める私の前に、見ず知らずの「兄」と名乗る男の子が現れる。最初は戸惑うけれど、距離が縮まるうちに、私はその正体を思い出す。封印していた過去の挫折経験とともに。(解説/江南亜美子)

感想・レビュー・書評

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  • もし、出かけた先で『お兄様がお待ちですよ』と受付の人に言われたらどう思うでしょうか?

    実際に『お兄さん』がいる方なら、”どうしてここに兄がいるのかな?”とまずは思うでしょう。でも、『お兄さん』など自分にはいないという方にとっては、”詐欺かも?”と用心する感情が浮かぶはずです。『生まれてから今日までの出来事をすべて覚えておくのは不可能』です。しかし、誰だって『少なくとも、自分の家族構成はきちんと把握して』いるはずです。『お兄様がお待ちですよ』と急に言われて腑に落ちる人などいるはずがありません。

    しかし、いきなり、『うわ、さくら。久しぶりじゃん』と声をかけられ、『どちら様でしょうか?』と訊いても『お兄ちゃんだよ、お兄ちゃん』と一方的に捲し立てられると、思い当たる節がなくても『警戒心を忘れてしまいそうになる』かもしれません。もしかして、父親に、母親にまさかの隠された過去があって…と詮索もしだすと、目の前にいる『お兄さん』を否定する自身の気持ちも揺らぎ出すかもしれません。

    とはいえ、どこまでいっても相手は『お兄さん』を名乗る人物です。それが、『私、三十六歳なんですけど、あなた、年下ですよね?』という問いに『うん。僕、二十四歳』と答えられると、そこには怪しさしか残りません。

    さて、この作品は『一回りも年下』なのに、自分を『お兄さん』と名乗る男の子と出会った主人公の物語。そんな男の子の顔を『どこかで知っている気がする』と過去の記憶を辿るその先に、『忘れようと切り捨て』た過去の中に埋もれていた自分の姿を見る物語です。

    『望月さん、お兄様がお待ちですよ』と料理教室の帰りに受付で言われて戸惑うのは主人公の望月さくら。『私には兄などいない』と腑に落ちないまま教室を出ると、『うわ、さくら。久しぶりじゃん』と、『二十歳くらいの男の子が手を振りながら駆け寄ってき』ました。『生まれてから今日までの出来事をすべて覚えておくのは不可能だ』、『だけど、自分についての基本情報ぐらいは覚えている。少なくとも、自分の家族構成はきちんと把握している。つもりだ』と思う さくらは、『えっと、あの、どちら様でしょうか?』と後ずさりします。『またまた。やだなあ、さくら』と言う『男の子は不審がる私の横で、「本当に懐かしい」…だのと言いながら、勝手に喜んでい』ます。『あの、お名前をうかがってもいいですか?』と訊くも『まさかこんな歳になってから、自分のきょうだいの名前訊く?』と名前を答えてくれないその男の子は『立ち話もなんだからさ。お茶でも飲もう』とコーヒーショップに さくらを連れて行きます。『私には兄などいない。これは新手の詐欺かもしれない』と身構える さくらに『びっくりしたよ。結婚するんだな』と言う男の子に『どうして知ってるんですか?』と慌てる さくら。職場で聞いたと答える男の子を見てますます不信感が募る さくらは『私、三十六歳なんですけど、あなた、年下ですよね?』と『わかりやすいことから明らかにしていこう』と質問します。それに対して『うん。僕、二十四歳』と悪びれることなく答える男の子。おかしいと言うも『先に生まれたほうが兄っていうシステムを導入しているの?』と埒が空きません。やむなく思い切って『これは何かの詐欺でしょうか?』と訊くと、『オレオレとも言わないし、つぼも印鑑も売らないよ』といなす男の子は、そういった質問の繰り返しに『密かに僕、傷ついているんだけど』とため息をつきました。『このかすかに寂しさを帯びた顔。ものすごく遠いところで、ひっかかるものがある気もする』と思うも『記憶をひもといて過去にさかのぼろうとすると、あるところでどしりと重い扉が閉まってしまう』という さくらは、『この開かない扉の向こうに彼がいるのだろうか』とも思います。それでも『名前を教えてください』と詰め寄る さくらに『僕の妹の名前は望月さくら。三十六歳、誕生日は十二月二十七日…すごく音痴で、牛乳が飲めない…』とさくらの情報をスラスラと語る男の子に『私の情報は合っている』と思う さくらは、『これ以上考えても頭はこんがらがっていくだけだ』と思い『とにかく、用件は何ですか?』と諦めて訊きました。『結婚式の日取りとか教えて…結婚相手を紹介して』と言う男の子に『まさか結婚式に来るんですか?』と驚く さくら。出し物の練習が必要なのと、相手の男を見極める必要があると語り出したと思ったら『もうこんな時間じゃん…早く会社に戻らないと』と大慌てで立ち去ってしまいました。そしてその後で実家を訪れた さくらは『お母さん、私にお兄さんがいたりしない?』と経緯を説明するも『さくら、大丈夫?疲れてるんじゃないの?』と母親は相手にしてくれません。『今日、目の前に男の子が現れて兄だと言い放ったのは夢ではない』、でも『あまりにもおかしな話で…こんな妙なこと、考えるだけ無駄だ』と思い直した さくら。しかし、数日後『こんちわ』と男の子は さくらのアパートの前に再び現れました。そして、その男の子と関係を深めていくその先に、開けようとしても開かなかった さくらの過去の扉の先にあるまさかの真実が明らかになる物語が始まりました。

    結婚が決まって会社を辞め、料理教室と、結婚相手の実家である和菓子屋の手伝いを日課とする主人公の望月さくら。そんな さくらの前に、いきなり『うわ、さくら。久しぶりじゃん』と現れた一回りも年下の男の子。そんな男の子に突然妹扱いされることになった さくらが『おにいさん』と不思議な関係を続けていく中で、封印していた過去の記憶を清算し、新たな人生を踏み出していく様が描かれていきます。そんなこの作品は兎にも角にも一回りも年下の男の子に『お兄ちゃんだよ、お兄ちゃん』と言われて戸惑いを隠せず、新手の詐欺に違いないと警戒するも、次第に男の子の存在が日常の中に馴染んでいく展開が如何にも瀬尾まいこさんらしく描かれていきます。私たちは当然に自分の家族のことを認識しています。突然、自分の兄を名乗る人が現れれば、さくら同様に詐欺だと警戒するでしょう。もちろん、両親の過去に秘められていた何かがあってという可能性は考えられます。しかし、この作品では 『さくらが八歳の時に』父親は死んでおり、かつ男の子は一回りも年下で、さくらの兄であるはずがない、という点が早々に読者に示されます。となるとこれはファンタジーなのか?、それともミステリーなのか?そして、新手の詐欺師の話なのか?とモヤモヤとした感情を読者に抱かせながら物語はゆっくりと進んでいきます。

    そんな中で繰り返し暗示されるのが、さやかの過去の記憶の中に隠された物語の存在です。『社会人一年目、揚々と小学校で働きはじめた私も、仕事に慣れるどころか暗闇に落ち込んでいくだけだった』という過去の苦い記憶。『子どもの時から教師になりたかったはずなのに、小学校での仕事がまるでうまくいかなかった』という さやかは色んな場面でその時の辛い記憶の存在が頭をよぎります。そんな過去の記憶の中に『おにいさん』の顔が浮かび上がる さやか。しかし、『記憶を探っていく途中で、扉が閉まってしまう』という繰り返しの中で『時間はだいたいのことを洗い流していく。それをわざわざひもといていくなんて、いいことじゃない』と考える さやか。『生まれてから今日までの出来事をすべて覚えておくのは不可能だ』という通り、私たちは日々生きる中でたくさんの情報を瞬間瞬間に処理しながら生きています。当然にその全てを記憶し続けることなど不可能です。生きていると、楽しいことや嬉しいことがある一方で、悲しいことや苦しいこともたくさんあると思います。前者のようなプラスの出来事は思い出すだけで気持ちを明るく前向きにしてくれます。一方で後者のようなマイナスの出来事は思い出したくもないものであり、そんな記憶に触れること自体、気持ちにブレーキがかかり、意識して触れないようにすることもあると思います。さらには、『忘れようと切り捨ててから、思い出そうとはしなかった記憶』になってしまっているものもあるのだと思います。しかし、そんな記憶が、かつて自身が夢見た人生だとしたらどうでしょうか。自身の夢が叶った先にあったはずの人生が、自身の悪夢として封印すべきものとなってしまったとしたらどうでしょうか?それは、他のこと以上に自分の人生をいつまでも苦しめるものになってしまいます。そして、この作品ではこんな言葉が登場します。

    『思い描いたとおりに生きなくたっていい。つらいのなら他の道を進んだっていいんだ。自分が幸せだと感じられることが一番なんだから』

    この言葉を聞いてふっと肩の荷が降りる気がする方も多いと思います。人生はなかなかに自分が思った通りには展開してはくれません。自分が好きだと思う仕事と、自分に向いている仕事は違う、というのもよく言われることです。この作品では、主人公・さくらが封印した過去の辛い記憶と向き合う時間が描かれていました。私たちは悪戯に過去を封印し、その封印が解かれることに怯え苦しむようなところがあるようにも思います。この作品を読み終えて、ふと私自身が封印した過去のあの記憶、この記憶のことが頭に浮かびました。誰にだって何かしらあるそんな記憶たちと向き合う時、自身の中で、あの瞬間の先に今の自身が生きていることを感じるとともに、なんだか全てが懐かしく感じられる、そんな風にも感じました。

    「春、戻る」という瑞々しい響きが印象的な書名のこの作品。そこには、主人公・さくらが封印した過去の記憶の中に、次へと進むためのヒントが隠されていました。ある日いきなり現れた『おにいさん』の存在に振り回される さくら。結婚を前にして、過去の振り返りが求められる大切な日々の中に、そんな さくらを導くように関わり合いを持つ『おにいさん』の存在。ファンタジーなのか、現実なのかの中間点をふらふらと揺れ動く瀬尾さんらしい物語の展開に、すっかり魅了されたこの作品。清々しい余韻がいつまでも残る、そんな作品でした。

    • しかのなっちゃんさん
       さてさてさん、こんにちは。しかのなっちゃんと申します。この本を読み終えたばかりの者です。私は、お兄さんの怪しさがずっと頭から離れず、正体が...
       さてさてさん、こんにちは。しかのなっちゃんと申します。この本を読み終えたばかりの者です。私は、お兄さんの怪しさがずっと頭から離れず、正体がわかるまで、ずっと、モヤモヤしながら読んでいました。最後はみんな、おさまるところに落ち着いて(おさまりすぎ?)良かったなぁと思いました。同じ本を読んでも感じ方の違いを発見するのは、面白いことです。フォローさせてくださいね。よろしくお願いします。
      2023/06/04
    • さてさてさん
      しかのなっちゃんさん、こんにちは!
      コメントをいただきありがとうございました。
      瀬尾まいこさんの作品は独特な引っかかりの先に、まさしくお...
      しかのなっちゃんさん、こんにちは!
      コメントをいただきありがとうございました。
      瀬尾まいこさんの作品は独特な引っかかりの先に、まさしくおさまるところにおさまっていく優しい物語が特徴だと思います。この作品の『おにいさん』は、まさしくそうでしたね。
      私は2019年12月から読書&レビューの道に入りましたが、レビューを書く中にはみなさんがどのように感じられたかはとても参考にさせていただいています。おっしゃる通り、感じ方の違いというものは確かにあり、とても新鮮な発見をすることもあります。これがブクログを離れられない理由でしょうか?
      フォローありがとうございます。私もフォローさせていただきます。
      今後ともよろしくお願いいたします。
      2023/06/04
  •  瀬尾まいこ作品特有の温かな物語でした。登場人物が基本的にみんな人がいいのと、美味しい和菓子が出てきて、春の新たなスタートに相応しい内容になっています。

     本作は2014年刊行ですが、2019年の『傑作はまだ』に相通じる点があるようです。物語の最初に、突然「え、誰?」という人物が現れるのです。
     本書では、結婚を控えるさくらの前に、いるはずのない自称「(さくらの)おにいさん」が現れます。
     このお兄さん、華奢で軟弱そうですが、軽妙な強引さがあり、不思議と怖さがなく、人にあっさり近づきます。終盤まで正体不明のまま話が進みますが、怪しい雰囲気はなく、さくら自身が最後に気づく展開です。

     瀬尾さんの物語から、大きく2つメッセージを受け取ったような気がします。
     一つは、自分で思い描いた未来を歩もうと決め、足掻きもがき苦しんで、その道を歩くのが困難だったら、その描いていた道を降りてもいいのだということ。
     もう一つは、過去に蓋をしたくなる経験があって、無理に乗り越えようとしなくても、ふとしたきっかけで前向きに捉えられる時が来るということ。

     いろんなことで悩み苦しんでいる多くの人の季節が、ゆっくりと暖かな春に戻りますように‥。瀬尾まいこさんの救いの物語でした。

  • 結婚前のさくらの前に、ある日、兄だという12歳年下の男の子が現れ、名前も名乗らないまま、あれこれ世話を焼き始める。結婚相手の山田さんとその両親が営む団子屋にもやって来て、和菓子を買い込んで帰ったり、料理を教えに来たり、そのうち、さくらと山田さんのデートにまでついてきて、山田さんとも馴染んでしまう。
    一体、お兄さんは誰なのか、頭の中にクエスチョンマークを浮かべつつ、読み進めると、さくらの封印していた過去が明かされる。

    13年前に1年だけ赴任した小学校での経験が辛すぎて、記憶に蓋をしてしまっていたさくら。
    お兄さんが作ってくれた懐かしい"きんぴら"の味で、当時のこと、お兄さんの名前を思い出す。
    その時にお世話になった校長先生が、ずっとさくらのことを気にしてくれていたこと、お兄さん自身もさくらのお陰で外に出られたことなど、人との出会いの不思議と、人の温かさを感じるストーリー。

  • 結婚を間近に控えた望月さくらの元に、兄と名乗る男の子が突然現れる。
    明らかにさくらよりひと回りは年下なのに、どういう設定なのか。
    お兄さんの正体が早く知りたい。
    お兄さんは、さくらのアパートに押しかけてきて料理を教えたり、婚約者の山田さんの実家の和菓子屋さんに顔を出したり、人懐っこくて憎めない。

    固く閉ざされていたさくらの記憶がしだいによみがえってきて、読み終わったら、優しさがふわぁっと込み上げてきた。
    瀬尾さんの描く家族はふんわりと温かく、形にとらわれず、何とも言えない優しさに包まれている。
    出てくる人がみんないい人で、またこの空気を味わいたくなる。

  • "思い描いたとおりに生きなくたっていい。つらいのなら他の道を進んだっていいんだ。自分が幸せだと感じられることが一番なんだから"

    「おにいさん」の正体と、主人公のさくらの周りの温かい人々に胸を打たれます。

    血は繋がっていないのに兄のような、自分を気にかけてくれて大切に思ってくれる人がいるということは、とてつもなく幸せなことなんだろうなと感じました

  • 道に迷っている方に、是非読んで頂きたい一冊。

     兄と名乗る青年の正体がまったく掴めず、迷路に入ったように混乱しながら、読み進めた。後半から徐々に青年の温かさが分かるようになり、ラスト30ページあたりからは、感動の嵐だった。

     チェーン店ではなく、個人で和菓子を作っているお店で和菓子を買って、食べたくなった。大福、おはぎ、柏餅・・・。物語に出てくるお菓子は、どれもおいしそうで、人の温かさが伝わってきた。

     大きな職場より、小さく温かいお店。大きな社会的地位より、地に足の着いた地道な仕事。うちより美味しい和菓子はない、とこの仕事を継ぐことに決めた山田さんが大好きになった。

    「思い描いた通りに生きなくたっていい。辛いのなら他の道を選んだっていい。自分が幸せだと感じられることが一番なんだから」
    このフレーズに感激した。一生忘れないだろう。

    • うしさん
      私も同じフレーズに感動しました!
      理想通りにいかなくても、幸せにならそれでいいなって思いました。
      私も同じフレーズに感動しました!
      理想通りにいかなくても、幸せにならそれでいいなって思いました。
      2023/11/15
    • あすかさん
      そうですよね。その通りだと思います。
      そうですよね。その通りだと思います。
      2023/11/15
  • 本についている帯に、泣ける!!とかいてあり、買ってみたけど思ったより泣ける話ではなかった。
    でも、凄くいい本だった。
    でも、最終的に何がどうなったのかわかりづらかった。(まだ一回しか読んでないからかも・・・)

  • 不思議な感じでちょっと納得出来ないような話で進んでいくのに物語の終盤はそれがひっくり返される。
    誰もが生きていれば起こり得る挫折について、淡々と書かれている。
    もし思い描いたような人生にならなくても、またこの本を読めば迷う事はないのかもしれない。
    みんな幸せになってほしい。

  • 36歳で結婚を控えたさくらの前に突然、「お兄ちゃん」と名乗る24歳の男の子が現れる。
    年下のお兄ちゃんなんてありえない。だけどお兄ちゃんは、さくらのことを何でも知っている。母親に聞いても、心当たりはないらしい。
    「おにいさん」はさくらが手伝っている婚約者の山田さんのお店の和菓子屋までやってくる。
    と、思ったら今度はさくらのアパートに上がり込み、さくらに料理を教え始める。その次は「おにいさん」はさくらと山田さんのデートについてきて一緒に遊園地へ。
    「おにいさん」のおかげでさくらは、山田さんとのぎこちなさが埋まって、二人の距離が縮まっていきます。
    そして「おにいさん」とさくらの本当のつながりも判明します。

    なんかこの「おにいさん」という男の子のキャラクターが天然っぽくて、さくらのことを思う気持ちが優しくて、大好きになってしまいました。
    小説の中の登場人物を好きになるなんて、大人になってからは、ないことでしたが、「おにいさん」はとても愛すべき男の子でした。

  •  結婚を3ヶ月後に控えた、主人公さくらさんの目の前に突然、「お兄さん」と名乗る人物が現れます。さくらさんより一回り下の24歳。いったい、この「お兄さん」とさくらさんの関係は?、というところから物語が始まります。
     読み進めていくと、この「お兄さん」は、さくらさんの大学を卒業して、働きはじめた頃の、つらく、傷ついた過去の中に、存在していました。忘れようとして、心の奥底にふたをして、閉じ込めていた過去。しかし、「お兄さん」と会ったことで、この嫌な思い出と、きちんと向き合い、自分の中で消化することができ、無理に忘れようとするよりも、明るい気持ちで再出発できるようになります。
     途中まで「お兄さん」の正体が分からず、モヤモヤした気持ちで読んでいましたが、正体が分かった所から、気持ちが動かされ、いい話だなぁ、と思いました。何しろ、そこまで「お兄さん」=怪しい人、という印象が拭いきれなかったので。ちょっと残念でした。

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著者プロフィール

1974年大阪府生まれ。大谷女子大学文学部国文学科卒業。2001年『卵の緒』で「坊っちゃん文学賞大賞」を受賞。翌年、単行本『卵の緒』で作家デビューする。05年『幸福な食卓』で「吉川英治文学新人賞」、08年『戸村飯店 青春100連発』で「坪田譲治文学賞」、19年『そして、バトンは渡された』で「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『あと少し、もう少し』『春、戻る』『傑作はまだ』『夜明けのすべて』『その扉をたたく音』『夏の体温』等がある。

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