それは経費で落とそう (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 167
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087455540

作品紹介・あらすじ

ニセ領収証、人事異動、出世競争、単身赴任、上司達──。会社生活の日常に潜む思いがけない恐怖をリアルに描く。“会社員"の本質を抉り、笑いと戦慄が交互に襲う5編の会社ミステリー。(解説/山前譲)

感想・レビュー・書評

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  • ビジネス書かと思ったら、相当ブラックな小説。サラリーマンを主人公にした5編を収載しています。各タイトルは、「ま、いいじゃないですか一杯くらい」、「あなた、浮気したでしょ」、「それは経費で落とそう」、「どうだ、メシでも食わんか」、「専務、おはようございます」。さもありなんなフレーズばかり。

    先輩を差し置いて昇任が決まる。祝う会を企画されて飲みに行くと、先輩はべろんべろんに酔っぱらう。それでも自分の車で帰るという先輩と運転を代わったら、通行人を轢いてしまう。上手く先輩を犯人に仕立て上げたつもり。

    単身赴任中に行きつけの店のウェイトレスを連れ込んでいたら、妻から突然の来訪を告げる連絡。慌てて部屋を片づけてウェイトレスを追い出す。適当に綺麗に適当に乱雑に、完璧に片づけたつもり。

    学生時代の後輩に気前よくおごりつつ、きっちり会社の経費で落としていたが、ある日、経理係の女から不正を知っていると脅される。黙っていてほしいなら一度抱いてほしいという、あり得ない脅迫の仕方。その女を始末して行くすえ安泰のつもり。

    テレビ局にやり手のディレクターとして勤めていたのに、上司から食事のお誘いが。降格や左遷の話をするときに高級店へ連れて行こうとすることで有名な上司。大きく出て、ディレクターとして生涯を全うするつもり。

    大手の会社でなぜか毎回トイレで隣り合う専務。小便をしながらどう挨拶しろというのか。適当に済ませていたら、直属の課長から専務が怒っていると叱られる。別のフロアのトイレへ行くようにして避けたつもり。

    こんな「つもり」だらけの男たち。どれもこれも、知らぬは本人ばかりなり。第4編だけはブラックというよりも悲哀が漂う結末で、第5編もちょっと気の毒な展開ですが、ほかは考えが甘いというのか浅いというのか。200頁でテンポよし、2時間ほどで読めるかと。さして心には残らないけれど、イヤミスというほど嫌でもない、苦くは笑える話です。

  • 昔の作品をまとめた短編集ですが、やはりちょっと違和感ありますねー。

  • 短編集です。
    サラリーマンの日常と隣り合わせにあるミステリー。といってもミステリー感がでてくる前に読み終わる感じで少し軽め?
    でも、こわー。って思う部分もあるし、あっさり読み切れるしで良かったです。
    95年刊行なんですね、そんな古さは全然感じず読めました。

  • サラリーマンの悲哀を描いた短編集。
    この作品が発表されたのは90年代初頭だったけれど、リーマンの苦悩は平成の今も変わらず。いつの時代も同じなんだなぁと感じた。
    何気ない日常が一歩間違えれば地獄に変わる。運命に飲み込まれてしまわないようにしっかり地に足つけて生きて行きたいものだ。

  • 吉村達也著「それは経費で落とそう」

    この著者の作品は初めてでした。
    サラリーマン経験のある方には身近に起こり得る恐怖を共感できると思います。
    軽すぎず重すぎないこういった作品はちょっと出かけるときにバッグに入れておくと何処でも手に取って読める。丁度良い。

  • 2018.08読了

  • タイトルに親近感を覚え購入。
    サラリーマンであれば誰しもがあるあると思うことが題材となっている。文章が非常に読みやすくサッと読めた。

  • サラリーマンの日常をベースにしたミステリー短編集。
    もっとこうすればいいのに!とか、今どきこんな会社あるんだみたいな印象を持ったが、1991年の作品と知って納得。
    人が死なない話がもっとあれば、さらにリアルに感じたかもしれない。でも、登場人物の行動や考え方は今もそんなに変わらないのかも。
    組織に縛られるってことを妙に意識させられた。

  • あっさり、軽く読めて、通勤にちょうどいい。
    昔のサラリーマンはだらしないなー
    今、ああいう奴らが偉そうにしてるんだな。

  • 飲酒運転や電話ボックスや家電、レコード会社、タクシーチケット、時代を感じてしまう。
    巻末によると初出が1991年との事。
    そりゃそうだ。
    今よりずっと景気が良かった時代、サラリーマン達のお話。

    サスペンス的な要素のお話が並ぶなか「どうだ、メシでも食わんか」は白眉。
    どういうオチなんだろうと読み進めた後の、なんとも言えない読後感。

    一日で読める一冊。
    通勤のお供にどうぞ。

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著者プロフィール

東京生まれ。一橋大学卒業後、ニッポン放送ディレクター、編成プロデューサー、 扶桑社書籍編集長を経て1990年より専業作家。
1986年扶桑社在籍中に執筆した『Kの悲劇』でデビュー。2009年10月発売の『蛍坂』が200冊目の著作。
2011年9月ライフワークの『魔界百物語』がスタート。100本の書き下ろしミステリーに挑む。

「2012年 『幻影城の奇術師』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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