短編伝説 めぐりあい (集英社文庫)

  • 集英社
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本棚登録 : 108
感想 : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087456271

作品紹介・あらすじ

「めぐりあい」をテーマに名作短・掌編を精選したアンソロジー。読書への入り口に。旅のお供に。日々のひとときに。人気作家、ベストセラー作家の贅沢な競演。いずれ劣らぬ名作揃い。(解説/吉田伸子)

感想・レビュー・書評

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  • 集英社文庫からは、夙に「短編」を冠したアンソロジーが2冊出ていました。「短編復活」「短編工場」がそれで、いずれも「小説すばる」創刊15周年を記念して集英社文庫編集部が編んだもの、前者は1988年から1996年にかけて、後者は2000年から2008年にかけて、いずれも「小説すばる」に掲載された作品だそうです。
    初刊から数年で品切れ重版予定なしに堕ちてゆくアンソロジーも多いなか、集英社文庫のこの2冊は豪華執筆陣のおかげか順調に版を重ねているようです。
    これに味を占めたのか、「短編伝説」を冠したアンソロジーがさらに4冊、発刊されました。それぞれ冠の後ろにサブタイトルが付されており、この本は「短編伝説 めぐりあい」。このサブタイトルの「めぐりあい」をテーマに、集英社の編集者であった山田祐樹さんが、ご自身が担当された作家とご自身が好きな作家の作品から編んだんだそうです。

    そんなことから、多くの直木賞作家を含むビッグネームが並ぶ一方で、やや古い作品が多く収録されています。
    特に、男女間の「めぐりあい」は男女の交際に関する価値観や倫理観が作品が書かれたころと大きく変わっているため、「昔はこうだった」を頭に置いて読み進めないと違和感が大きくなるように思えます。
    そう言えば「マッケンローのように」も通じにくいような…。逆に、初期の作品にもかかわらず、最近も話題になった「AID」を取り上げた宮部みゆきの先見性が光ります。
    まあ、古さを感じること自体は悪いことばかりではないと思いますが、「短編復活」が「現在すべての作品が集英社文庫でお読みいただけます。」と胸を張っていたのに比べて、こちらは収録作品が掲載されている本が入手困難になっているものがちょくちょくあるのは困りものです。アンソロジーって読書の幅を広げるのに向いている形式だと思うので、面白かった話は入手してもっと読んでみたいと思うのです。


    以下、収録作品別一言コメント。
    (ネタバレあります)

    「Wednesday」 大沢在昌
    11年間女性を待ち続けた男性の求愛を描きます。
    世界観が全く異なる他の作品に交じってこの1本を読まされると「クサい」感じが否めません…。同じようなハードボイルドの作品の中に置いてこその作品のように思えます。
    ちなみに、初出はアイドルのアルバムの付録だったようです。

    「伝説」 三島由紀夫
    「太宰」と並んで苗字だけで呼ばれる大作家「三島」。先日、没後50年ということで話題になっていました。
    男女の運命的な出会いを描きますが、ラストの『青年はいきなり少女の体を抱きしめて、鹿のような素直な背をやさしく撫でながら耳もとでささやいた。』の一文に「耽美派だ~」と思ってしまいました。

    「ホエン・ユー・アー・スマイリング」五木寛之
    かつての横暴な上司に受けた仕打ちを、その子供にやり返す話。男女の出会いを2本続けた後のこの1本、いいですね。不快感の根源にあるものに気付いた後の発作的な行動、その直前で描写を止める不穏なラストが好きです。

    「ものすごく見栄っぱり」 山本文緒
    あだ名が「アケボノ」(これも今となっては意味が分からない人が多いように思います)な女性の体育教師が、自分の容貌コンプレックスに気付く話。身長175cm、アケボノ似の女性が和服を着て緊張して座っている場面からのハッピーエンドで本当によかったなあ(小並感)と思いました。

    「この子誰の子」 宮部みゆき
    初期短編集「我らが隣人の犯罪」からの1本、初出は1989年です。
    たまたまかもしれませんが、AID(非配偶者間人工授精)や、AIDで生まれた子の出自を知る権利がつい先日も話題になっていたように思えます。
    宮部みゆき本人がスモーカーだからか、小さな子供のそばでお母さんがタバコを吸うシーンがあって、この辺りにぬぐい切れない時代感が出てしまっていますが、それを除けばつい最近書かれた作品と言っても通用するかも。あと、宮部みゆきの初期作品らしい人情味あふれるハッピーエンドが泣かせます。
    でも、どうして5月5日生まれなのに葉月ちゃんなんでしょう。

    「ピエロ」 連城三紀彦
    優しさも気づかいも、すべてお道化て覆い隠してしまう髪結いの亭主と、それに気付き、本心を聞かせてほしい寂しさを訴えようとして振舞った浮気のふりをひっこめることができず、夫を失ってしまった妻。
    悲しいお話でした。

    「マッケンローのように」 川上健一
    ボーイミーツガール。
    「マッケンローのよう」なプレイスタイルなのか、悪童っぷりなのか、でも「マッケンロー」が通じる人、今となってはどれくらいいるんでしょうね。

    「ふたり」半村良
    酒場の女を書いた作品は好きじゃないのです。
    売れた作家が「文壇バー」に入り浸って、それを題材に男性目線のおとぎ話を垂れ流しているだけな気がして…。渡辺淳一の一連の作品とかを思い出しちゃいます。

    「二人ぽっち」森瑤子
    大事な一人息子が可愛い気持ちと、男に縋りたい気持ちの間で揺れる26歳のシングルマザーのお話。30年前の作品であることを考慮してあげないとアンフェアなのですが、でもここ最近報道で見かける「児童虐待」が何となく頭を過って、どうにもページを繰る手が進みません。あと、4歳の男の子の台詞がカタカナで表記されているのもどうにも受け入れられませんでした。太郎君に何事もなくて、まずは一安心。

    「七年のち」 志水辰夫
    あしながおじさん。
    おじさんが4人出てきますが、うち3人が「い」で始まる苗字なのは何か意味があるのかと悩んでしまいました。
    同期入社の仲良しだったはずなのに、出世競争を勝ち抜いた井上さんがちょっと嫌な奴になっちゃってるのが寂しい。
    お葬式の日に話したのが児玉だったことを思い出したのはともかく、あしながおじさんであることはどうしてわかったのかな…。

    「永遠のジャック&ベティ」 清水義範
    久しぶりに読んだ清水義範でしたが、声出して笑っちゃいました。ほぼすべての会話の英文が頭に浮かびます。畳みかけてくる感じがちょっと筒井康隆っぽいなあと思いながら読みました。
    ところで、清水義範って教育大学の教育学部国語学科卒なんですね。納得。

    「恋人」 佐藤正午
    一人称の主人公が世捨て人のような生活をしているふうが某有名作家の作品っぽく既視感があったり、登場人物が全く改行のないセリフを数ページにわたって垂れ流したりと某有名作家と同じ苗字の有名作家っぽくて既視感があったり、どこに着地するのか最後まで分かりませんでしたが、結局笑い話でオチが付きました。「ぼく」はしなこと「日常」に捕まっちゃったんでしょうね。ローソンみたいに。
    どこかで聞いたお名前だと思ったら「鳩の撃退法」の方でした。

    「ハープの影は黄昏に」 赤川次郎
    とっても多作(Wikiによると「2015年には580冊を突破」だとか)な方ですが、ほとんど読んだことがありません。軽いミステリを書かれる方だと思っていたのですが、こんな作品もあったのですね。
    いろいろと腑に落ちないところ(「あの女性」はどうしてあんなところであんなことをしてたのとか、叔母さんはどうして岐子さんと木戸さんを結婚させたかったのか、とか)が多いのですが、あまり深読みせずにさらっと読むのが正解、なんでしょうか。

    短編伝説 めぐりあい(集英社文庫)収録作品一覧
    「作品名」 (作者名『収録書名』)

    「Wednesday」(大沢在昌『鏡の顔 傑作ハードボイルド小説集』朝日文庫2012)
    「伝説」(三島由紀夫『女神』新潮文庫1978)
    「ホエン・ユー・アー・スマイリング」(五木寛之『奇妙な味の物語』角川文庫1996)
    「ものすごく見栄っぱり」(山本文緒『絶対泣かない』角川文庫1998)
    「この子誰の子」(宮部みゆき『我らが隣人の犯罪』文春文庫1993)
    「ピエロ」(連城三紀彦『恋文・私の叔父さん』新潮文庫2012)
    「マッケンローのように」(川上健一『跳べ、ジョー! B・Bの魂がみてるぞ』集英社文庫2002)
    「ふたり」(半村良『雨やどり』集英社文庫1990)
    「二人ぽっち」(森瑤子『ハンサムガールズ』集英社文庫1991)
    「七年のち」(志水辰夫『いまひとたびの』新潮文庫1997)
    「永遠のジャック&ベティ」(清水義範『永遠のジャック&ベティ』講談社文庫1991)
    「恋人」(佐藤正午『夏の情婦』集英社文庫1993)
    「ハープの影は黄昏に」(赤川次郎『哀愁変奏曲』集英社文庫1993)
    「「めぐりあい」の思い出について」 山田裕樹
    解説 吉田伸子

  • 読みながら、色んな出会いがあるなと感じた。今の時代には無い生活観。。

  •  昭和生まれの私ですが、昭和・平成を経て、令和を生きる今、昭和の小説を読むと私からしても古臭く感じます。
     とは言え当時から超売れっ子の作家達です。今初めて読んでもへええと感心(失礼!)する斬新な作品もありました。


    印象に残ったのは、以下の作品です。
    ・連城三城彦氏の「ピエロ」。沼田まほかる氏の「彼女がその名前をしらない鳥たち」に通ずるかのような男女関係が描かれています。連城氏のこの作品の方がミステリー風味が強くてぴりっとしていました。

    ・半村良氏「ふたり」は二人の女性を主人公にした小品ですが、昭和感が半端ない。バカを莫迦と書くあたりなぞは、やはり感覚違うなあと思います(いい意味で)。性描写も昭和な感じです。その淫靡さも魅力的。

    ・アクが強いのは清水義範氏の「永遠のジャック&ベティ」。中学一年の英語教科書から出てきたようなジャックとベティ(私の教科書ではMikeとLucyでした)が30数年後に再会する設定。しかも当時の直訳よろしくぎこちなさ満点の会話をするものの、不幸カミングアウト大会になりどうにも滑る。
     日本の英語教育レベルの低さがモチーフになっているのですが、国際化が進んでいくとこの面白さもわからなくなるかもしれませんね。

     その他計13名の作家の短編が収録されています。家から出れないとか、今の自分の本棚がワンパターンだなと思う方にはいいかもしれません。多少古臭く感じることもありますが、新たな発見があるのではないかと思います。

  • めぐりあいがキーワードの短編アンソロジー。
    2017年初版だけれど、収録されている話はかなり以前に書かれた物ばかりでした。
    過去に読んだり観たりしためぐりあいパターンばかりで意外性も感じず、数編でも最近の物が入っていればもっとメリハリが出ただろうに、古臭い印象ばかりが残りました。

  • 心温まるストーリーばかり、最後の作品はハラハラしたりと意外と楽しめる

  • 昨年読んだ本だが、レビューを追記。

    この本は書店で衝動買いした短編集。表紙にずらりと作家の名前が並んでおり、知っている人もおれば全く読んだことのない人もいる。なんだか短編バトルのようで面白そうだなと思って買ったのを記憶している。

    なんとなくジャズのセッションでそれぞれのプレイヤーのアドリブを楽しむように、文章のアドリブ合戦を楽しんでみようみたいな感覚で読んだ。

    なんでも、ここに並ぶ作家は、集英社でこの企画をした編集者の山田さんのセレクトで、「めぐりあい」の要素を含んでいるものを集めたアンソロジーと解説にあった。

    古今の作家が、どんなふうに「めぐりあい」のドラマを展開するのか?それぞれの作家のキレを自分で勝手に感じながら自分なりの評価をしながら読んだのでした。
    短編なので、比較的早めに決着がつくし、作家個々の個性を楽しめるので、改めて短編小説もいいなぁと感じましたね。

    個人的な勝手な好みの順位。作家のファン度でなく、この中で作品が面白いと感じた順です。まぁそのときの気分で変わるでしょうから、次読むとまた違ってくると思います。
    第一位 森 瑤子
    第二位 赤川 次郎
    第三位 宮部 みゆき

  • アンソロジーとして刊行されたのは最近だが、集められた短編はかなり古いものも多く、例えば三島由紀夫などすでに鬼籍に入って久しい作家の名前もある。
    男女のめぐりあいをテーマにした一冊なんだけれど、昔の短編を読んでいると、なんとも作品の底を流れる雰囲気に時代を感じる。
    だって登場人物の考えや行動がいまいち理解できない。
    これは自分の感覚が当時とは違っている、という時代のずれの問題なのか、それとも登場人物への読者の共感、というものを昔は意識していない作品が多かったのか。

    こういうきっかけがなければ読まなかっただろう作家の作品も多く、普段の自分の読書体験とは違う味わいがあった。

  • サクサク読めたけどもう1回読もうという気にならない不思議な短編集 ひとつ挙げるなら「ピエロ」がおもしろかった

  • 1948年1月〜1995年5月発表の13の短編を2017年8月に集英社文庫から刊行。大御所達が描く、男女の出会いをテーマにしたお話で、苦味のものが多く、重かったです。

  • 【収録作品】「Wednesday」大沢在昌/「伝説」三島由紀夫/「ホエン・ユー・アー・スマイリング」五木寛之/「ものすごく見栄っぱり」山本文緒/「この子誰の子」宮部みゆき/「ピエロ」連城三紀彦/「マッケンローのように」川上健一/「ふたり」半村良/「二人ぼっち」森瑤子/「七年のち」志水辰夫/「永遠のジャック&ベティ」清水義範/「恋人」佐藤正午/「ハープの影は黄昏に」赤川次郎/「めぐりあい」の思い出について 山田裕樹

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著者プロフィール

1956年愛知県生まれ。慶應義塾大学中退。79年『感傷の街角』で第1回小説推理新人賞を受賞しデビュー。91年『新宿鮫』で第12回吉川英治文学新人賞および第44回日本推理作家協会賞、94年『無間人形』で第110回直木賞、2004年『パンドラ・アイランド』で第17回柴田錬三郎賞、10年第14回日本ミステリー文学大賞、14年『海と月の迷路』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

「2021年 『爆身』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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