いのちの姿 完全版 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087456448

作品紹介・あらすじ

異父兄との邂逅を描く「兄」、シルクロードへの旅にまつわる回想「星雲」など、著者が白秋のときを迎え、自身の半生と命を想う随筆集。単行本の14篇に新たに5篇を加え収録した完全版。(解説/行定勲)

感想・レビュー・書評

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  • 宮本輝の小説の主人公や舞台の設定と重なるような、宮本さんの子供の頃の実体験。少しビックリしたような、でも、だからこそ、読者の心に響く、深い話になっているのかも、とも思いました。

  • 作者あとがきより
    「小説にしてしまうとあまりに小説になりすぎる」という思い出や経験を……「これ以上書くと創作の領域だというぎりぎりの分水嶺あたりをうろつきながら」書かれたそうだ。

    書かれたもの総て「いのち」にかかわること。
    「いのち」とは? 命でも生命でもなく。
    前のエッセイ集は「命の器」
    「どんな人と出会うかはその人の器次第」と書いてあった。
    これはグサッと刺さる。

    解説の行定勲監督は 
    「どの登場人物にも嘘がないのは、「どれだけの人生に触れ、そのどの急所に目を向けてきたか」にあると思う。」
    「真実は一つではない。その出来事のどんな側面に何を感じるかで違ってくるという宮本さんのものの見方」と。
    このエッセイ『いのちの姿』の解説なのですが…宮本輝さんを読むヒントでしょうか。

    今までに読めた小説に関わる背景やきっかけが興味深い。
    そういえば 私は『泥の河』を小説だと思っていなかったような気がする。創作は作り事でも「嘘がない」からかもしれない。

  • 先日単行本で読んだが未収録作品を読みたく早々に手に取る。うん、この未収録分は読まなければ。著者の子どもの頃の様々な体験の中でもまた特異な出来事が記されている(「トンネル長屋」)。またこの未収録分を読んで一層なぜ本作のタイトルに『いのち』とあるかがよりわかる。既読分も改めて堪能。知り合いの発行する無料配布誌に頁の制限もなく書いたとあって素の死の姿が出ていると思う。単行本に挿し挟まれていた加藤静允氏のイラストが履いてないのは残念。

  • 宮本輝さんのエッセイ集です。
    宮本さんがさまざまな経験をされている事がわかる小説でしたが、なぜか、とても静かな気持ちで読める小説でした。落ち着いて静かに読みたい時におすすめの一冊です。

  • ~2021.08.05
    最後の「櫁柑山からの海」が好き。
    子供のころの、今とは全く異なる、あの暑さを思い出した。

  •  エッセイでありながら小説的でもあり、それらの境目を不思議な感覚で味わえる一冊でした。19編それぞれに描かれた生と死が様々な表情を見せてくれます。ほほえましかったり悲しかったり、切なかったりやさしかったり、ときには恐ろしかったり不気味だったり。
     お気に入りは『パニック障害がもたらしたもの』です。私もパニック障害(と併発していたうつ病)に苦しんだ時期があり、共感したとともになにか救われたような気がしました。宮本輝さんが出会ったお医者さんがおっしゃっていたという「天才は、ほとんどこの病気を持っています」という言葉を鵜呑みにしようかなと思います。できる限りストレスを少なく、もっとシンプルに生きていきたいです。
     解説の行定勲さんとの対談番組(「SWITCHインタビュー 達人達(たち)」)も以前に拝見しました。むしろそこで初めて宮本輝さんを存じ上げ、そのときは「ゆるい雰囲気がなんとなくすてきな人だなあ」と感じただけなのですが、その後に短編集である『星々の悲しみ』を拝読して虜になりました。
     この『いのちの姿 完全版』は、宮本輝さんの他の小説やエッセイをもっと楽しみたいなと思わせてくれる作品です。この一冊に出会えてよかった。

  • 宮本輝の初期の小説にはいるも”死”の影があったのはこういう訳だったのかとちょっと納得した。
    なにせ幼い頃から事件の末の死、災害による死、トンネル長屋での死、著者の父が”お前には行くところ行く所で厄介ごとに遭遇するちゅう星まわりみたいなのがあるのかもしれん”と言わしめたように。
    でも、それは言い換えれば作家になるべく星まわりとも言えよう。
    さまざまな経験、体験(家庭環境、結核、パニック障害、阪神大震災、シルクロードの旅、)をその繊細な感受性でとらえ骨太の純文学へと昇華させていったんだなとこのエッセイを読んで改めて感じた。
    父親違いの兄がいてひと目顔だけでも見たいと思ってその家のまわりを何度も行き来した章と
    おでん屋の夫婦の章(元ヤクザの夫が殺されて生まれたばかりの男の子をお豆腐屋さんに養子に出す)がとりわけ印象に残った。

  • 御茶ノ水丸善、定価

  • 宮本輝さんをオススメされ、図書館で借りたものがエッセイ?的なものだった。ああしまったと思ったが、人となりがなんとなくわかるので、小説の方も読んでいきたいと興味が湧いた。

  • エッセイをあまり読んだことがなく、難しそうと敬遠していたのだが、とても読み進めやすい内容であった。
    本書の中で、見えない闇や本質に触れる描写があったが、自分が思っている以上に人には様々な事情があるし、背景がある。
    人の事情や背景に触れたときに、自分が初めて感じられることがあるのではないかと思った。

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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