無戸籍の日本人 (集英社文庫)

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  • 集英社
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レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087456929

作品紹介・あらすじ

1万人はいると言われる戸籍を持たない日本人。なぜ無戸籍になるのか? なぜこの状況は変わらないのか? 無戸籍者の厳しい現実を浮き彫りにし、大きな反響を集めた話題作。(巻末対談/是枝裕和)

感想・レビュー・書評

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  • 難しい内容ですが、整理されていて大変読みやすかったです。
    これは年齢、性別問わず多くの人に読んでもらいたい本だと思いました。

  • 久々のノンフィクション。

    とても重く深いテーマを、読みやすい文章で
    分かりやすく伝えてくれる一冊。
    様々な理由で「戸籍がない」まま生きてきた人々の、
    理不尽に苦労をせざるを得ない暮らしぶりに泣ける。

    役所も政治家も「世間様」も、基本は「親が悪い」と。
    だが、明治に制定された民法の規定が、
    百年以上経った今も変わらず「生きている」異常さに、
    気づかぬ(振りをしている)インサイダーの責任は重い。

    著者は、自身の子供が一時期「無戸籍」になった経験から、
    無戸籍者の「人生を取り戻す」手伝いを精力的に続ける。
    その視線はあくまで優しく、「誰も悪者にしたくない」と。
    一冊通してそのスタンスは変わらないので、
    かなり悲惨な話でも何とか読み進められる。

    いや、読みにくい文章だ、という話でもないし、
    テーマが重すぎて疲れるという訳でもない。
    不謹慎を承知で言えば、とても「興味深い」テーマ。
    「こんな、まるで昭和の小説のような」と、
    読中何度も思ってしまった。

    だが、これが現実に起こっていることである。
    諸般の事情により、無戸籍者は毎年何千人も
    生まれ続けているのだ。

    役所や政治家が、この問題に対して「後ろ向き」なのも
    ある一面では分からなくもない。
    「某国のスパイが、無戸籍者の振りをして申請し、
     日本人として登録されてしまったら一大事だ」
    という公安的な危惧もあるのだろう。

    が、その問題は、分けて考えるべきだ。

    日本人の子として日本で生まれ育ち、
    「DV夫から逃げてきたが、離婚してもらえない」
    などの理由で、出生届の出されない子供は増え続ける。

    義務教育も受けず、保険もなく、住民票も取れない。
    当然「真っ当な職」に就くわけにも行かず、
    常に貧困と隣り合わせの暮らしを強いられる。
    この状況は、容易に「犯罪」の魔の手に狙われる。
    弱者を食い物にする輩に狙われることもあれば、
    自身が「生きるため」に犯罪に手を染める者も。
    すると、「無戸籍者 = 犯罪予備軍」みたいな
    分かりやすいレッテルを貼られる悪循環。

    もはやどこから手を付けて良いのか分からないほど、
    問題はこんがらかっている。

    幸い、もの凄くゆっくりではあるが、動きはある。
    NHKが「クローズアップ現代」で取り上げ、
    大きな反響を呼んだことも後押しして、
    世間にも国会にも「無戸籍問題」は意識づけられた。
    まだまだ先は長いが...歩みを止めるわけにはいかない。
    著者と、そのお仲間の献身的な活動には
    頭が下がるばかりである。

    ...で、「読み物」として純粋に評価すると...
    正直な感想は「ちょっと長い」(^ ^;

    もの凄く興味深い内容で、作者の熱意も伝わるが、
    正直、後半ちょっとダレてくる...と言うか、飽きる(^ ^;
    さらに尻上がりに「作者の自画自賛」が目につく(^ ^;
    ような気がしてくる(^ ^;

    作者と、登場人物たちの熱量は充分評価するが、
    もうちょっと情報を取捨選択し、ブラッシュアップし、
    この問題に明るくない読者でも、最後まで
    緊張感をキープしながら読めるようになれば、
    より大きい反響を呼べるのでは...と思いました(^ ^;

    私は、「読書脳」の持久力が足らんかった(^ ^;

  • 自分の子どもが無戸籍になってしまったこと等をきっかけに、無戸籍の人が戸籍や住民票を取れるようにサポートしたり、法律や離婚届を変えようとした政治家の書いた本。作者はこの問題に”召命された”かのように、力強く活動している一方、どうやら無戸籍の問題を親の咎に矮小化して、むしろ現状に合わない民法772条をそのままにしたい一派の政治家も出てくることから、政治家にとっての課題や理想像が全然違うことが分かる。世の中の問題は多岐にわたっているので、それぞれに関心を持ってもらうために、政治家自体に多様性が必要だなと強く感じた。

  • 制度の欠缺に苦しむ人たちの話。

  • 離婚後300日以内に生まれた子供は前夫の籍に入る。たとえ再婚後早産で生まれたとしても。
    それが受け入れられず、出生届を出さずに無戸籍となる子供がいる。それはテレビで見て知っていた。しかし無戸籍になるのは様々な理由があり人数もかなりいる、というのが衝撃的だった。
    戸籍がないから実態が把握できない。生きているのにいない者となってしまうというのはいたたまれない。しかしやはり親の責任は大きいのでは、と思ってしまう。

    著者のように早産で生まれた子供の場合でも裁判で現夫の戸籍に入れるのは大変というのは理不尽に思う。
    法改正がされたのは少しは良くなったのかもしれないが、DNA鑑定さえも考慮されないケースがあるいうのは問題があるようにも思える。

    DV夫から逃げて離婚できないまま新しい人と暮らす。そういったパターンは多いだろう。
    逃げられたのは良かったと思うし、いい人に巡り合えたのも良かったと思う。だがせめて子供を産んであげたい、と思う心情が理解できない。
    無知に対する代償は大きい。そしてその代償は全て子供がかぶるのだ。

    最初に役所に届けた時に言われたという「離婚のペナルティだ」との言葉には憤りを覚えた。
    何故そのペナルティを子供が背負わねばならないのか。というか、そもそも何故離婚にペナルティが必要なのか。
    離婚後に生まれた子供の存在も、女性が再婚できない期間があるのもDNA鑑定が容易にできる現在では無意味に思える。
    男性側にしても、自分の子ではないのに自分の籍に入ってしまうリスクがある。
    ましてやそれを否定するための調停も屈辱を受けるものだそうなので男性にもペナルティになるという。
    であれば余計に元夫には頼みずらいだろう。円満離婚だったとしても。
    離婚後母親の方が親権を取ることは多いが、生まれた時は父親の籍に入れられるのが前提としてある。
    子供は家のものであるが、育てるのは女性の役割であるという昔のままの法律なのだ。

    親を責めても現状が変わるわけではないので、無戸籍の人たちの助けになるようなことは必要だろうというのはわかる。
    成人してから戸籍を作るのも大変な手間がかかってしまうのも、悪用されるリスクを考えれば仕方のないことかもしれない。
    無事に戸籍ができればいいとは思う。しかし生活保護を受けている話を聞くと、今まで税金を納めていなかったのにずるいとも思ってしまう。本人のせいではないのは重々にわかってはいるのだが。

    少子化と言われるこの時代、こういった人たちはどれぐらいいるのだろう。
    このような人たちを放置するのは国力の低下の一因となるのかもしれない。
    何よりも、人として生まれたならば真っ当に生きる権利があるはずで、隠れるように生きてきた人々が普通に過ごせるようになればいいと思う。

    この本には様々な事情で無戸籍のまま成人した人たちの事例がいくつか載っている。
    しかし細切れでちりばめられているので途中で混乱してしまった。
    政治の動き方も興味深い。
    このような現状の一端を知るだけでも現状の改善につながるのかもしれない。

  • 無戸籍者の現状がよく分かる良書。

  • 社会ネタとしてのドキュメンタリーとしてでわなく、政治本としてカテゴライズされるだろう。かなり面白いテーマとリアリティある進め方なのに、政治の苦労話の部分だけやたらツマラナイ。

  • 自分の周りに無戸籍の人はいない。幼馴染みにも、学生時代の友人にも、職場にも。なぜ断言できるかと言うと、戸籍のない人は小学校にも通えないし、働くにしてもマイナンバーカードとかの提出を求めない、雇用契約がしっかりしていないような職場でしか働けないから。まあまあ普通の人生をドロップアウトせずに歩いてきた自分には関わることのない世界だ。無戸籍の子どもは小学校行けないって時点で、ほぼ世間との関係を閉ざしてしまっているのと同じ。  

     だからこの本の中に書かれているような、戸籍のない人がいるなんてことは、レアケースなんでしょ?と思ってた。それが全然違った。いとも簡単に無戸籍になってしまうのだ。 

     そもそも著者が無戸籍に関心を持ったのも、自分の生まれたばかりの子どもが、無戸籍になってしまいそうになったからだ。
     
     著者は再婚だ。前夫とは別居期間を経て調停が長引いたものの正式に離婚は成立する。その後、実際に生活をともにしている現夫と籍に入り、現夫との間の子を妊娠、出産した。離婚成立から265日後のことだった。

     役所に出生届を出しに行くと、この子は現夫との間の子と認められない、民法上は前夫との間の子どもになるから、前夫の名前に書き直してもらわないとこれは受理できない、と断られる。  

     はぁ?
     何それ?  

     民法772条に「離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する」という、いわゆる「300日ルール」があることを著者は知る。この法律、明治にできて百数十年間変わってない。
     
     この場合、生まれた子どもの戸籍を作るには、前夫が「嫡出否認」の訴えを起こすか、母子や実父が前夫に対して「親子関係不存在確認」の訴えを起こすしかない(2002年時)
     どちらにしろ前夫の協力が不可欠である。  

     ちゃんと協力してくれる人も多いと思うが、例えば、DVが原因で離婚した人などは、居場所を知られることを恐れて、連絡をしない。そもそもDVから逃げたなら離婚が成立していない場合も多い。しかし、そんなことは考慮されず、出生届は上に上げた条件をクリアしないと受けてもらえない。
     
     こうしていとも簡単に、無戸籍児が生まれてしまうのだ。

     著者の経験によると役所の窓口の人も不勉強で、面倒臭いのか窓口をたらい回しにする。著者は政治家を目指しており、同じ政治塾出身の現職議員なども動かして、役所に圧力をかけるなどして、子どもが無戸籍になる事態を避けることはできたが、役所の冷たい対応に心身疲れて諦めてしまう人は多いだろう。  
     
     支援してくれる団体がないと、難しいと思う。 
     著者は念願かなって民主党の国会議員になり、さあやっとこれで無戸籍問題の解決に議員として取り組めるぞ、と勇んでいたら、時の民主党政権で小沢一郎が、一年生議員が地域の陳情をあっさり受けないようにとの配慮?で、そういった陳情を小沢一郎直轄にしてしまったため(無戸籍問題なんか取り組んだって票になんかならないため)取り上げてもらえないまま、政権交代してしまった。その後の改選で彼女も落選した。

     じゃ、いまの政権に働きかけてみればいいとも思うが、同じような理由で取り上げないのか、はたまたNPOとかで動いたほうがやりやすいのか。  

     その後の活動を見てみると、後者のような気がする。
     巻末に支援団体の連絡先が書いてあるので、こな問題で困っている人と接点を持つことがあってら、この本の存在を教えてあげたい。

  • 無戸籍の日本人が存在する。様々なケースがあるけれど、最も多いと思われ、かつ本書でも中心的に取り上げているのが、民放772条が妨げになるもの。DNA鑑定で親子関係が判明するこの時代にあってなお、離婚後300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定するという「嫡出の推定」なんてことがまかり通っていて、そのために義務教育も受けられず、まともに世のなかで暮らしていけない人がいる。
    著者も772条のせいで子どもが一時的に無戸籍の状態に陥った。その後、裁判を経てわが子は戸籍ができたけど、そのとき夫が自分たちのことが片づいたから手を引いてしまうのは「ずるい気がする」と言い、以来NPOを立ち上げるなどして無戸籍者の支援活動や政策提言を行っている。
    著者は相手の立場に思いを寄せる気遣いと想像力があればと述べていて、そこに深くうなずけた。今の時代、四角四面で想像力をはたらかせず、その先を見ていない所業の何と多いことか。
    この問題の解決法って、772条が改められることだろうか。いや、暫時的にはそうでもよりよい解決って戸籍がなくなることだろう。一人ひとりが生きている、存在する証が認められればいい。戸籍なんてものがあるから それこそ旧弊な体制でのうのうと生きていられる人たちの気遣いや想像力の欠如のために、この国では人扱いされない人たちがいる。

  • ノンフィクションに対して浅はか過ぎる感想になってしまうが悲しいところを悲しく読んでしまって箱ティッシュが空になった…。
    様々な事情で出生届が出されないまま成人した人たちのエピソードと、作者自身の体験や無戸籍含め人権問題に取り組む政治家としての話がまとめられてる。

    夫婦別姓が可能になれば、こういう子どもを発生させないことに繋がるとは思ってもなかった。
    能力のないものを引き上げる力は法律には絶対にない。ただ育とうとするものの邪魔するものを取りのけるだけ。取り除かれたうえで平等になるには人々が大きな努力をするしかない。
    というような内容が我妻榮さん(民法の大家らしい。凄い人なのに知らなかった)の論として引用されてて、これまで深く考えたことがなかったんだけど法律って人が決めてるんだと初めて感じた。
    自分に余裕がある時は自分の周り以上のものに目を向けないといけないなぁと思う。

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著者プロフィール

井戸 まさえ(イド マサエ)
政治家、元民主党議員
1965年、仙台市生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。松下政経塾9期生。5児の母。
東洋経済新報社勤務を経て、経済ジャーナリストとして独立。2005年より兵庫県議会議員を2期務め、2009年、衆議院議員に初当選。無戸籍問題をはじめ「法の狭間」で苦しむ人々の支援を行う。民主党東京第4区総支部総支部長。
「戸籍のない日本人」で第13回開高健ノンフィクション賞最終候補作品に残る(『無戸籍の日本人』と改題して2016年1月刊行予定)。「『クローズアップ現代』“戸籍のない子どもたち”など無戸籍者に関する一連の報道」で2015年貧困ジャーナリズム賞受賞。
佐藤優氏との共著に『子どもの教養の育て方』がある。

「2015年 『小学校社会科の教科書で、政治の基礎知識をいっきに身につける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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