ラメルノエリキサ (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.35
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本棚登録 : 511
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087457001

作品紹介・あらすじ

女子高校生・りなの信条は「やられたら、やり返す」。その彼女が夜道で何者かに背中を切りつけられる。りなは復讐を果たすため、犯人捜しをするが……。第28回小説すばる新人賞受賞作。(解説/池上冬樹)

感想・レビュー・書評

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  • ヒロインのキャラ設定が斬新で表紙のイラストがハマりすぎ。サスペンスものですがストーリーなんかどうでもいい、というか考えるほどのものではありません。とにかく、女子高生のヒロインが面白い。明るく優しいという性格じゃなく、明るいのは自分でチョイスした振る舞い方だし、自己中で心の中では母親や姉、周囲に毒を吐き続けます。でも、作品はライトでコミカルで疾走する文体が心地よい。周りは敵だらけに見える景色も思春期らしい景色なんでしょうね。

  • 星3.5

    主人公が個性的

    思春期の思い込みが激しい子と
    一言で片づけてよいかは、
    今回の物語後にどう変わるのか
    (または変わらないのか)によるので、
    想像するしかない。

    変わらない方が物語として
    面白いかもしれないけど、
    どこかで破滅しそうなので、
    個人的には目が覚めたと信じたい。

  • 完璧なママに育てられた、二人の姉妹の妹の方が主人公。

    復讐癖があり、小さい頃に飼い猫の手を2歳年上の女の子に折られると、その女の子を階段から突き落として腕を折り返した。

    この度、帰宅地中で右腰を後ろから斬られる。その時に「ラメルノエリキサのため…」という言葉を聞く。

    復讐に燃える主人公。2件目の犯行、三件目の反抗が発生。ラメルノエリキサが、「フラメルのエリクサ」を指すと導き出し、魔術研究の教授の講義を聞き、自分が処女だと知っている元カレの弟が犯人と辿り着く。
    ボコボコにしてる途中で、不治の病の母親のためだったと知り、殺すのをやめる。

  • 掴みがとても良くて思わず購入。主人公と姉のキャラクターが類を見ないもので、とても新鮮だった。復讐はすっきりするためと言い切るその強気な精神性は、辛いことを我慢しがちな現代人にも響くところがあるんじゃないかなと思った。

  • 16歳の女子高生・小峰りなのモットーは、どんな些細な出来事でも自分にとって不愉快であれば、絶対やり返すということ。
    付いたあだ名は『復讐の申し子』
    そう、彼女は復讐に取り憑かれているのだ。
    ある日、りなを襲う通り魔事件が発生。
    何者かが、夜道を歩く彼女を背後から切り付けたのだ。
    りなは犯人を追いかけるも
    激しい痛みと怒りで意識が混濁し、逃げられてしまう。
    犯人が残した唯一の手掛かりは
    『ラメルノエリキサ』という謎の言葉。
    怒りに燃えるりなは、退院後、自らの手で犯人を捕まえ復讐するため、独自の捜査を始める。
    そして、彼女がたどり着いた事件の真相とは…。
    第28回小説すばる新人賞受賞の、痛快青春ミステリー。


    いやぁ~、面白かった!
    一人称で語られる自らのルールに従い生きる主人公の物語といえばハードボイルド小説だが
    あとがきにもあるようにこの作品も
    まさに女子高生ハードボイルドと呼ぶべき痛快さで、
    主人公、小峰りなの魅力で溢れている。

    ユーモラスでリズミカルな文章、スピーディーに転がる物語展開、
    誰にでも必ず復讐するという
    過激で、不謹慎極まりないストーリー。
    主人公の小峰りなも攻撃的かつ身勝手で
    普通なら不快になっても仕方ないキャラなのだけれど、
    いやはや、コレが面白いし魅力的なんだから仕方ない(笑)
    (宮部みゆきが絶賛したのも確かに頷ける)

    彼女のモットーに共感できるかどうかはともかく、
    いつか復讐するその日に向かって
    わきめもふらず猪突猛進する彼女の姿にどんどん惹かれていく。


    完璧な母へのコンプレックスから
    完璧な母の作る完璧な家族をぶち壊したいという欲求を密かに抱くりな。

    完璧な母であるための装飾品としてしか娘を捉えられない、
    本気で娘を愛せない母親。

    そして、妹であるりなの復讐癖をなんとか止めさせようと奮闘する完璧な姉。

    この家族三人の関係がどうにも切なく、
    特に大好きな姉に本心を言えずに
    一人傷ついていくりなの葛藤は、
    思春期だからこそのアンビバレンツな感情がひしめき合い、
    はるか昔に思春期を経験した僕自身も激しく共感してしまった。

    そんなこんなで、いろんなことをぐるぐると思い悩む
    実はナイーヴなりななのだけど、
    ひとつ特筆すべきことがある。
    彼女は、どんな時も決して暗くはならないし、
    自己憐憫に陥ったりはしないのだ。

    大好きな姉に嫌われたと感じ、心の動揺が隠せない時も、
    私は私が好きだから自分を大事にするんだと、
    あくまでも、自分を真っ直ぐに肯定していこうとする。
    この心根に僕は激しく惹かれたし、
    スゴい女の子だなと感動すら覚えた。


    自らのルールに従い、一直線に進む
    りなだが、
    作者の渡辺 優は思春期の少女らしい弱さや脆さや寂しさや
    心の揺らぎをすっ飛ばすことなく繊細に描いているので
    ミステリーというより、青春ストーリーとして秀逸だし、

    とんでもないストーリーの中に
    一本筋が通っているりながいて、
    傍若無人な彼女が
    ときおり見せる『弱さ』にこそ、
    読む者はどんどん惹かれていくのだろう。


    懐かしの北欧バンド、Pineforest Crunchの『Barbie』をBGMに描かれるクライマックスは
    実にエモーショナルで、
    青春の残像、恋の残り香が胸を刺し、
    何度も読み返したいほど、切なく僕の胸を撃ち抜いた。

    周りになんと言われようとも
    好きなことを好きと言えたり、
    自分自身を肯定できるということは
    何よりカッコいいってことを
    小峰りなは僕に改めて教えてくれた。

    『悲しみよこんにちは』
    彼女がそう言える日が来ることを、
    いい女になった彼女にまたいつか会える日を、
    僕は心待ちにしている。

  • すごく読みやすかった。
    ミステリーというより主人公の家族の話などいろんな要素があって面白い、お母さんから愛されてないとかそういうのはやっぱり子供が1番わかるものなんだなと思う、主人公が少し捻くれて攻撃的なのもそれが原因の一つなのかなとも思ったり。復讐心の強いりなには全然共感できなかった、
    犯人については前半には予想がつかなかった。

  • 自分に害をなしたものにはきっちり復讐しないと気がすまない「復讐の申し子」(姉の言葉)・小峰りな。そんな彼女がある日、夜道で何者かに刺され…。ラメルノエリキサとはなにか? 犯人は? 物語の勢いにぐいぐい引き込まれた。
    主人公の復讐癖にドキドキしつつ、ラストはどうなるかと思ったけど意外に後味は悪くなく、すっきりした読後感だった。

  • 読みやすく、サクッと読めた。
    登場人物たちの思春期特有の厨二病臭がぷんぷん

  • 渡辺優さんの小説。
    「小説すばる新人賞」受賞作品です。

    やられたらやり返す系JK、りなが飛び込む復讐劇。
    とはいえ、全体的にポップで激しめのJ-POPが背景でガンガン鳴り響いている感じの軽快さで物語は進んでいきます。
    主人公りなは思春期真っただ中で、しかも母親に対するコンプレックスに満ちあふれた、キャラの立った(?)JK。
    姉は大人しい美少女という見た目に騙されてはいけない、一癖も二癖もある女性。本編ではあまり述べられていませんが、母親もきっと何か強烈な個性を持った人なんだろうなー、と思わせられます。
    選考委員である宮部みゆきさんが主人公を気に入って惚れ込んだ、という話ですが、私はそれほどでした。どちらかというと、「なんだこの性格悪い美少女」って感じでした……。
    青春小説だから、周囲が放っておかないほどの美少女ともなれば、と考えてみるのですが、明らかにキャラクターが小説というよりはラノベ・アニメ寄りなんですよね。そこが少し、個人的には引っかかるところでした。

    お話の内容は復讐劇のつもりが追い詰められる場面があったり、最終的には主人公の新しい観点が開かれるところなど、面白かったです。
    読了まではそれほど時間もかからず、さらっと読み終えることができました。
    手加減抜きの毒強めJKがお好みの方は読んでみても良いかもしれません。

  • 復讐することを心にきめている女の子のお話。いろいろと屈折しているし、社会的な正義や道徳とはずれているのだろうけれど、主人公の女の子含め皆憎めないところがある。読み終えた後、なぜか爽快な気持ちになる。
    2019/3/14

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著者プロフィール

1981年静岡県生まれ。天理大学人間学部宗教学科講師。東京大学文学部卒業,東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了,博士(文学)。2011-2013年,フランス政府給費留学生としてパリ・イエズス会神学部(Centre Sèvres),社会科学高等研究院(EHESS)に留学。2014年4月より現職。専門は宗教学,とくに近世西欧神秘主義研究,現代神学・教学研究。訳書に,『キリスト教の歴史 ―― 現代をよりよく理解するために』(共訳,藤原書店,2010年),論文に「もうひとつのエクスタシー ―― 「神秘主義」再考のために」(『ロザリウム・ミュスティクム:女性神秘思想研究』第1号,2013年),「教祖の身体 ―― 中山みき考」(『共生学』第10号,2015年)など。

「2016年 『ジャン=ジョゼフ・スュラン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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