- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087457339
作品紹介・あらすじ
日本全国を食べ歩き飲み歩いた著者が礼賛する「おいしい」が満載のエッセイ。京都・松本・浜松・神戸・盛岡・東京で出会った、話題の店、隠れた名店の美味絶品をカラー写真で紹介!(解説/井川直子)
感想・レビュー・書評
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太田和彦『おいしい旅 錦市場の木の葉丼とは何か』集英社文庫。
週刊誌の人気連載コラムからセレクトされたカラー文庫。全国各地の『おいしい』を小粋なエッセイと写真で紹介。丼から中華洋食、和食に麺類、酒の肴と何でもござれ。
味わい深いエッセイと美味そうな写真。ちょっと駆け足気味ではあるが、面白いというよりも興味深い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
何度か借りて、なんとか読み終わった。行きたいと思っていたところばかりがとりあげられていた。
京都、神戸、松本、東京、浜松、盛岡の順。
京都は中華はもちろん、次は木の葉丼だな。卵でとじたやつ。神戸の貝専門店、立ち飲み、餃子は行かなくちゃ。松本はそのうち間違いなく行くに違いない。浜松や盛岡は行く機会があるだろうか?
銀座はともかく、下北を楽しむにはプラスアルファが必要とみた。 -
冒頭から余談をひとつ。太田和彦といえば居酒屋探訪で
あるが、その同一線上にはハンチングを被った吉田類が
立ち尽くす。僕は「人払いの太田和彦」「酒場実況の
吉田類」と見立てている。
太田氏は番組では決まって開店前に収録を行なう。
カウンターの端に座り、地の肴に舌鼓を打ちながら
盃の形状にはじまり店の調度品至るまでを一通り愛で、
やおら店主と対峙する。方や吉田類は居合わせた
客の輪に入り、番組が進むにつれて酩酊度が増し、
お決まりのようにゴキゲンで大団円を迎える。
御両名とも居酒屋道の王・長島のような存在では
あるが、僕は映像もいいが、居酒屋の紹介を筆一本で
その佇まいや酒肴を眼前に立ち上らせる、
太田和彦の活写力に軍配を上げる。
さて本書。今回はいつもの居酒屋探訪ではなく、
京都では木の葉丼やきざみカレーそば、浜松では鰻を
求めてタクシーを飛ばし、神戸では中華屋なのに多くの
客が好んで食べるカレーを、盛岡ではサンマの塩たたき
をアテに地酒を傾ける…。
とはいえ、そんじゃそこらのグルメ紀行には非ず。
いずれの場所でも、料理を遠目で眺めつつ、建築意匠・
名画・美術・陶器…に関する造詣を発動し、薀蓄開陳に
至る。太田氏をして「薀蓄の多い吉田類」といわれる
所以で、この「脇攻め」こそ太田和彦の真骨頂なんですな。例えば蕎麦屋では、「床の間の塗り書院窓は竹林の
透かし木彫、巾着袋をデザインした釘隠しが立派」
といった具合に。
また箴言も横溢。「東京の玉子焼きは玉子を奥から手前に巻き寄せ、京都は逆」。「鰻は焼き鳥じゃないんだから、やっぱり婀娜(あだ)な年増の情けの濃い関東風がいい」。「天ぷらをやたらと塩で食べさせる店があるが、
天つゆにくぐらせて濡らすからうまいんだ」などなど。
齢を重ねると童心に還るというが、本書では居酒屋探訪に見せる、静の太田和彦のなりは潜め、好きに喰わせろ的な意見も吐露したり、居合わせた妙齢の女性にダンディぶりを見せたり、「太田和彦2.0」を垣間見る。
著者曰く「旅は日常を離れるがゆえに心がきれいに
なる」。旅はアウェイ、旅人はよそ者。
だから、急がず、計画を立てすぎず、余白を残す。
これまで経験がその境地を生み出してるんですな。
読み終えてしまう頃には、ああ、旅に出たい!
と強く思わせる肩の凝らない好著。 -
「サンデー毎日」誌上で人気の連載コラムから京都、松本、浜松、神戸、盛岡、東京の厳選30品を収録。太田和彦氏得意の酒肴だけではなく、丼、麺、中華に至るまで名店の絶品を紹介する。