青線 売春の記憶を刻む旅 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458008

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  • 例えば、北千住。例えば黄金町。仲間と「せんべろ」ツアーを楽しむ時、味や店だけでなく、その町が持っている雰囲気にも心惹かれたりしています。昔ながらの名店だけじゃなく、リノベーションしたバルや中国人が居ぬきで改装した中華であっても狭い一階、住居的な二階という基本的構造がその佇まいを作っている、と気づいた時、先輩が「それは昔、ここが青線地帯で、チョンの間だったからだよ」と教えてくれました。最近の街歩きブームの中で「せんべろ」や「町中華」が盛り上がっています。近代化していく日本の産業の近くに働く人のための飲食業が成立してきて、つまり「職のための食」、それが産業構造に変換と共に絶滅しそうになってロウソクに消える前の一瞬の輝きがこの盛り上がりと捉えています。しかし、「食欲」だけじゃなくて「性欲」という欲望もあるわけで、しかし、そのロウソクはほぼもう消えている、というレポートとして読みました。「食欲」はBSの番組のテーマになりますが、「性欲」は週刊誌のネタとしても絶滅している現状で、日本全国の「色街」を確認していく旅は極私的センチメンタルジャーニーです。石を一個一個ひっくり返すとそこは湿っていて、苔が生えていて、見知らぬ虫がいて、土になる寸前の落ち葉が張り付いている、そんな感じ。都市が再開発されて、どんどん乾かされている人間にとって実は必要な湿った部分は町から駆逐されて、部屋の中やSNSの中や、人の心の裏側にしか存在を許されていない状態が、最近の引きこもり関係の事件に繋がっていくのかな、と妄想しました。きっとそんな簡単なことじゃないと思うけど。湿った土地、ということでいうと「増補改訂アースダイバー」で取り上げられていた「海の民」が、娼婦たちの歴史に関わっていることも知りました。産業史以前の日本民族の伏流水の表出が青線地帯か。今、乾いた暗渠の表側しか見えませんが、きっとその中ではチョロチョロと性欲の川が流れているのでしょう。 

  • 八木澤高明『青線 売春の記憶を刻む旅』集英社文庫。

    非合法売春地帯『青線』を描いたアンダーグラウンド・ルポルタージュ。合法売春地帯『赤線』に対する非合法売春地帯『青線』。『青線』の今を描きつつ、埋もれゆく記憶を炙り出す。

    アンダーグラウンドなものには得たいの知れない魅力があり、興味を持って読み始めたが、内容的には普通の三文男性向け週刊誌レベル。下品にならない程度に性衝動の捌け口の場をを少し高尚な歴史を交えて描いてみせるが、結局は『青線』に関係した過去の犯罪に言及し、興味をそそっているだけのように感じた。

    同じ『青線』について書かれたルポルタージュでは井上理津子の『さいごの色街 飛田』の方が遥かに面白い。

  • 孤島のように今も残る遊郭の痕跡を、全国を巡り、まだ日本が水没する前の時代まで遡り、体験的に記録した本。
    欲を言えば、過去の記述が歴史と経済が主で、物語が少ないことが惜しい。

  • ふむ

  • 2019/08/06

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著者プロフィール

1972年神奈川県横浜市生まれ。ノンフィクションライター。写真週刊誌カメラマンを経てフリーランスに。『マオキッズ 毛沢東のこどもたちを巡る旅』で第19回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。著書に『黄金町マリア――横浜黄金町 路上の娼婦たち』(亜紀書房)『花電車芸人』『娼婦たちは見た』(KADOKAWA新書)『日本殺人巡礼』 『青線 売春の記憶を刻む旅』(集英社文庫)(亜紀書房)などがある。

「2022年 『裏横浜 グレーな世界とその痕跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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