- Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087458060
感想・レビュー・書評
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親子3代にわたり学習塾を舞台に、教育に携わる家族の在り方と奮闘する姿が描かれた物語。
約600ページの大作に躊躇しつつも、前読のカラフルが良作だったことが、有無を言わさず私の背中を押した連休中日。
塾という立場から教育の変遷を、小説という形で読めるのがとても新鮮だった。
そして教育に携わりながら家族として、人としての成長や繋がりが描かれていて、またもや、あっという間に私の感情は作中へと連れ去られ揺さぶられてしまう始末。
先ほど読了したところだが、率直に良い本を読んだ充実感と余韻に浸っている。
自分が子どもの頃はどうだっただろうか。
親は私に何を望んでいただろうか。
そして私も親となり。
私は子どもに何を望んでいるだろうか。
改めて過去を振り返り、今を見つめ考える機会を貰った一冊だった。
ズバリ
私は優秀な子ではなかった。
親は私を見放さなかった。
私が我が子に願うこと。
優秀でなくて良いから、常に考えることを怠らない人であってほしい。
以上。
最後に、本作に綴られていた言葉が私のハアトにぶら下がって離れないので、ここに記しておく。
「常に何かが欠けている三日月。欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない」 -
昭和36年、家庭の経済事情で進学できず、学校の用務員となっていた吾郎さん。放課後、彼を慕う子供達に勉強を教えていた。その彼を見込んだ、シングルマザーの蕗子の母、千明に懇願されて二人で学習塾を立ち上げることになる。そこから、日本経済の発展と共に、学習塾経営を成功させていく。ライバル塾、文部省との対立、少子化、不況と幾多の困難に苦悶しながら。
そして、二人に留まらず、理想の教育、義務教育を根付かせる役割を千明の家族三世代に渡り模索していく物語。
昭和31年経済白書にもはや戦後ではないと、明記され、経済的に安定した親は、子供の教育を求めはじめた。昭和36年は、そんな学習塾の創成期なのでしょう。国民学校への反発から、戦後の復興、偏差値教育、内申評価、そしてゆとり教育。それを作中では、学校を太陽、塾を月と表現しているが、その月側から描いて教育問題を落とし込む。
共同経営の二人は夫婦となり子供もできる。理想的な教育を求める夫と現実的な運営をしたい妻。学校教育を疎む母と公共の場から教育を目指す娘。時折、家族に亀裂が入る。それでも、子供の教育に携わっていく家族。教育に家族の在り方も絡めた昭和から平成へのなかなかの大河小説でした。
欠けているものを満たそうとするものとして、みかづき。何かを始める時、朔の日から始めると良いと言われています。こういう意味だったのかな。 -
教育について深く考えさせられる作品でした。
教育というテーマかつ、長編小説なので、ある種の覚悟をもって読み始めたのですが、登場人物たちが織り成す群像劇がとても魅力的で、あれよあれよという間にのめり込み、気付けば作品を読み終えていました。
600ページ超を一息に読み終えられたのは、人生で初めての経験でした。
――賢さとは、良い点数をとることなのか?
――生きる力とは、具体的にどんな力なのか?
かつて要領よく宿題をこなしながらも、テストで高得点をとる私に対して、私の保護者は「点数よりも、粘り強く頑張る力が大切なのよ」と教えてくれました。
粘り強く努力を重ねた先にこそ、大きな成功がある。
その人は、昼も夜も働きながら、まさにド根性の背中で、私にそのことの大切さを教えてくれました。
それこそが、私が受けてきた「学び」の根幹。
本作を読むことで、より一層「生きる力」への理解が深まったように思います。
人は何かが欠けている自覚があるからこそ、満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない――。
本作で語られたこの言葉が、特に胸に刺さりました。
まだまだ欠けている部分の多い私ですが、
小説を通して学んだこと、感じたことを言語化して、誰かに伝えることもまた「満ちへの一歩」なのだと思います。
私にとって小説は、教科書よりも教科書です。
本作は本当に素晴らしい作品でした。
読み終えた後に「私も常に、粘り強く努力を重ねられる人でありたい」と思える本はなかなかないと思います。
間違いなく最高の1冊でした。 -
昭和36年から物語が始まり、約50年間にわたる戦後からの日本の学校教育と塾の現状と、時代を先取り個人塾を創設した大島家三代のお話。
フィクションではあっても、現在は当たり前に存在する塾がこのような軌跡を辿りながら今に至るのかと初めて知りました。
塾の運営と共に描かれる大島家の移り変わり。
吾郎さんの憎めない人柄と千明さんの熱意。頼子さんがいて、個性的な子どもたちのそれぞれの人生や物語がとても魅力的に描かれており、本当に朝ドラを一年かけて観ているような壮大さがありました。
厚い一冊で読むのに時間がかかりましたが、読み終わった時の達成感と読み終わってしまった寂しさがとても大きい本でした。-
ドラマ化された後に、本書を読みました。塾の成り立ちと歴史、吾郎さんと千明さんの関係、娘、家族と塾事業、学校教育など、様々なことに想いを...ドラマ化された後に、本書を読みました。塾の成り立ちと歴史、吾郎さんと千明さんの関係、娘、家族と塾事業、学校教育など、様々なことに想いを馳せることができ、読みごたえがありました。2021/06/05
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workmaさん
コメントありがとうございます!
本当に、すごく読みごたえのある作品でした。本と一緒に50年を過ごした気持ちになり、読み終わ...workmaさん
コメントありがとうございます!
本当に、すごく読みごたえのある作品でした。本と一緒に50年を過ごした気持ちになり、読み終わった後は何やら達成感が凄かったです!
ドラマ化もしているんですよね。やはりNHKという感じですね。私も機会があればドラマも観てみたいと思いました!2021/06/05
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かなり「分厚い」文庫本だなぁ、と。
森絵都さんの作品は初めて読むし、最後まで読めるのかなぁ、しかも、「教育」という、あまり面白くもなさそうなテーマだし。
2017年本屋大賞で、あの「蜜蜂と遠雷」に次いで第2位ということでなければ、おそらく手に取ることのなかったであろう小説。
読み始めると結構ぐいぐいと行けました。
「走馬灯のような小説」といった印象。
戦後教育を、塾の経営者の視点から描く。
僕は第2次ベビーブーマーの世代なので、受験戦争がドンピシャだったりする。今はどうかわからないけど、当時の塾って学校に比べると、怪しい部分もあったよな。人気講師も癖がある人が多かった気がするし。
塾は教育を陰から支える、学校が太陽とすれば、まさしく月のような存在。しかも、決して満つることができない「みかづき」。
理念があっても、経営してかなくてはならず、なかなか到達できない歯痒さ。
なるほど、深いタイトルだ。
さらに最後の最後で、主人公・吾郎の孫の一郎が生活困窮世帯のための「学習支援」の団体を主宰する。鮮やかな、そもそもへの原点回帰で、それにも唸らされた。 -
世代を超えた家族の物語。
壮大、壮絶、波乱万丈、でしょうか。
バブルのころ、そうだったかもしれません。
勉強して、いい大学に行って、いい会社に就職して。
頑張れば自分にもチャンスがあるかもしれない。
そんな時代と、塾の勢いと。
ああ、そうだった。。。
私もその恩恵というか、塾の先生をしました。
丸暗記をさせて、その時だけ点をあげる、という方針が私とは合わなかったかもしれません。数学の公式は考えて覚えた方が面白いし、持続するのですけどね。
いい大学に入るために、と勉強した内容が、嘘だったら。
最近はそちらの方が気になります。
経済学も、歴史も、科学も嘘にまみれているかもしれません(ちょっと間違いがある、というような軽い意味では言っていません。悪意のある間違った内容が含まれる、と言っています)。
そうなら、時間とお金をかけた自分の時間は何だったのだろう、と。 -
教育に人生を捧げた人たちの物語。
三世代に渡る家族の物語でもある。
全600頁超の長編小説だが始終おもしろかった。
戦後に立ち上げた学習塾。当時の教育事情も窺える。
とにかく教育にかける情熱が半端ない。
それぞれの立場や考え方の違いから衝突する場面も多いが、教育への熱い思いは同じ。
強い思いが行動となって現実を変えるんだと思った。
『みかづき』という本の題名の由来もまたよかった。 -
学習塾発展に心血を注いだ三世代に渡る一族の話。その時代、時代の背景が有り、学校教育も、変わってきた。これからも変わっていくのだろう。教育問題は、いつの時代にもついて回るものかもしれない。戦後、国民が、中流意識を持っていた時代は過去の事、これからはどんどん格差社会になっていくように思う。そしてそれは教育問題にも大きく影響してくるのではないだろうか。未来を担う子供達を育てる教師と言う仕事は生やさしいものではないなあ。
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秋桜さん、はじめまして。
5年くらい前に読みました。
学習塾の昔と今では役割が異なってきましたが、その背景が理解できました。学習塾の役割...秋桜さん、はじめまして。
5年くらい前に読みました。
学習塾の昔と今では役割が異なってきましたが、その背景が理解できました。学習塾の役割は学力の下の子ども拾い上げること、上の学力の子どもを伸ばすこと、二極化しますが、この葛藤が本に示されていたと思います。
自分も素の恩恵にあずかりました!2022/11/27
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面白かった
教育をテーマに高度経済成長の時代から、現代まで親子三代の家族の物語
教育関係の方々には必読の書でしょう
本書の中で、学校教育を「太陽」、塾を「月」にたとえ、学校教育で落ちこぼれた子供たちを陰ながら支えていく形で塾経営をスタート。
しかし、激動の時代の中、塾間の生存競争に生き残るため、補習型塾から進学型塾への変遷、教育方針か経営かといった難しい問題も浮き彫りにしています。
物語としては昭和30年代から
小学校の用務員の吾郎は先生にはなれなかったものの、子供達から慕われ、子供たちに勉強を教えてあげることに。その教え子の一人が蕗子。
その母親でシングルマザーの千明は、当時の学校教育に反感を持っており、教え方がうまい吾郎をスカウトして、学習塾を開くことに。
そして、二人は結婚し、蘭、菜々美と二人の娘を授かります。
家族4人のほっこりした物語と思いきや、ここから塾経営、教育界という流れの中で、波乱万丈の物語といった展開です。
当時の塾の位置づけ
たびかさなる文部省の方針変化
学校週休二日やゆとり教育
生き残りをかけた塾の経営の難しさ
教員の引き抜き、中傷ビラなどなど
さらには、この家族の関係
熟の経営方針の違いから別々の道を歩むことになった千明と吾郎
前半は千明と吾郎の物語
学校教育に反感をもつ千明に対して、学校の先生になった蕗子
がり勉からキャリアウーマンになった蘭
両親の学習塾とは別に個別指導塾を立ち上げます。
落ちこぼれて海外にいった菜々美
物語は、3姉妹の人生も語られていきます。
そして後半は蕗子の息子の一郎の物語
教育には携わらないとしていた一郎は、ひょんなことから貧困改定の子供たちのための無料の勉強会を立ち上げます。
そして、再び、学習塾の思想の根幹に戻ります。
それに触れた時、ちょっと心がしびれました。
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教育は子どもをコントロールするためにあるんじゃない。浮上入りに抗う力、たやすくコントロールされないための力を授けるためにあるんだ
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これはお勧め!! -
「教育」と「家族」の物語です。
月が少しずつ満ちて満月に近づいていくように、どこまでも教育の真髄を追いかけていった人たちの生涯が描かれています。
昭和36年。学習塾の設立を企てていた千明が、小学校の用務員だった大島吾郎をスカウトしたことから全てが始まりました。
当初は世間から白い目で見られていた塾というものが、戦後のベビーブームや高度経済成長を背景とした受験競争の過熱化によって、その存在感を高め、揺籃期を迎えます。
そんな最中、吾郎・千明夫婦と3人の娘たちの間にも様々な問題が勃発。。。
激化する塾の生き残り合戦と、家族の危機…
章を読み進めるごとに新しい展開がどんどん繰り広げられていき、ページ数は多いですが一気に読めてしまいます。
特に、千明の視点で話が進む後半は、同じ女性として感情移入しまくってしまいました。
時代の移り変わりとともに、「どのような教育が良いのか?」という問いに対する答えも変化していくものだと思います。
完璧な答えはきっと見つからないのかもしれませんが、それでも考えて悩んで、この難しい問題に真正面からぶつかっていった人たちの存在に、胸が熱くなりました。
著者プロフィール
森絵都の作品






昨日夜散歩で三日月ではなかったのですが、奇麗だなと思っていました。
塾はとても想...
昨日夜散歩で三日月ではなかったのですが、奇麗だなと思っていました。
塾はとても想い出深い場所だったので教育の変遷も読めるのは興味深いです。素敵な本のご紹介ありがとうございます。
おはようございます。こちらこそ、いつも『いいね』とコメントまでありがとうございます。
お月さま、見ちゃいますよね。
私も...
おはようございます。こちらこそ、いつも『いいね』とコメントまでありがとうございます。
お月さま、見ちゃいますよね。
私も仕事からの帰宅中、ついつい探してしまいます。
本作品は教育がテーマの柱にあるのですが、親も子も、指導者も追随者も、満ち欠けしながら生きてるのだと改めて感じさせてくれる作品でした。
今後ともよろしくお願いします^ ^