海の見える理髪店 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458725

作品紹介・あらすじ

直木賞受賞作 待望の文庫化!
人生に訪れる喪失と、ささやかな希望の光── 心に染みる儚く愛おしい家族の小説集。

店主の腕に惚れて、有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪店。僕はある想いを胸に、予約をいれて海辺の店を訪れるが……「海の見える理髪店」。独自の美意識を押し付ける画家の母から逃れて十六年。弟に促され実家に戻った私が見た母は……「いつか来た道」。人生に訪れる喪失と向き合い、希望を見出す人々を描く全6編。父と息子、母と娘など、儚く愛おしい家族小説集。直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 過去の自分に忘れてきてしまったもの、置き去りにしてきたもの。それらを、取り戻したり、昇華したり。そこから、次に向かおうとする連作短編集。
    六編、それぞれに静かな不仕合わせがある。日常の描写の中から、少しづつ浮かばせてくる感じ。そして、それでも、これからも生活しなければならない彼らが、その糧とする何かを見つけだす。
    各作品、構成情景を変えても、趣きに統一感があり、充実な一冊でした。
    あー、ですが私は、荻原さんの妖しげな作品も好きなんですよ。あまりに、しっくりまとまっていて、あれ?普通に良いお話ですのね、と。作品のお幅がお広い。

    • aoi-soraさん
      「押し入れのチヨ」「噂」ね
      うん、読んでみたいです。
      マンガっぽい絵?
      「ちょいな人々」みたいな題名の本を、読みたい登録したまま読んでないの...
      「押し入れのチヨ」「噂」ね
      うん、読んでみたいです。
      マンガっぽい絵?
      「ちょいな人々」みたいな題名の本を、読みたい登録したまま読んでないのがあるんだけど、その表紙が子供みたいな絵なの。
      もしかして荻原さんの絵かな?

      サスペンスを書いてるなんて、知らなかったです
      教えてくれてありがとう✧⁠◝⁠(⁠⁰⁠▿⁠⁰⁠)⁠◜⁠✧
      2022/12/15
    • 土瓶さん
      |д゚)コッソリ
      「押入れのチヨ」
      ( ..)φメモメモ
      |д゚)コッソリ
      「押入れのチヨ」
      ( ..)φメモメモ
      2022/12/16
    • おびのりさん
      _φ(・_・ すごい!こんな絵文字あるんだわ。
      京極さん、格闘中。
      _φ(・_・ すごい!こんな絵文字あるんだわ。
      京極さん、格闘中。
      2022/12/16
  • 直木賞受賞作やったんや。
    何か、タイトルで選んだけど、はじめは、理髪店に来る色んなお客さんとの話から出来てくる短編集かと思ってたけど違いました(^_^;)

    それぞれ、家族に絡んだ話し…
    あまり楽しい感じではなく、切ない…
    今の辛さをかんじながらも、「さあ、これから!」って感じで、一歩まえに進む…
    ええ感じではある。

    何で、こんな遠くの理髪店まで、来たかの理由も分からなかったけど、徐々に…
    これから、どうなるんやろな…
    2人共…
    「海の見える理髪店」

    自分が、こんな状況になったら、そのまま沈んでいきそうな感じも受ける「成人式」。多分、そのまま、ずっと、生きていきそう…ええ夫婦ですね〜

    が私の2強!

    血ドバドバの合間に、こんなのも良い!
    また、そっちに戻るけど(⌒-⌒; )

    • 土瓶さん
      血ドバドバの合間(笑)
      血ドバドバの合間(笑)
      2022/09/20
    • ultraman719さん
      土瓶さん

      今読んでるのも、人がミンチになってます…^^;
      土瓶さん

      今読んでるのも、人がミンチになってます…^^;
      2022/09/20
  • ダントツで「空は今日もスカイ」が良い!続いて「成人式」。この二つには違った感動をもらった。
    とても良い短編集だった。
    ここでひとつ苦言。私の勝手な思いだが人を、最愛の人を安易に死なせないで欲しい。「成人式」を読んでいて、これはもしやと思ったら、やっぱりだった。
    たしかに感動もしたし、涙も出てきた。この小説ではこれが最適解だと思う。しかし昨今、人死が当たり前のようにニュースを賑わす時代。せめて小説では暖かい感動が欲しい。もし、小説家の皆さん(特に若い作家)が感動を作る手法として、最愛の人の死を使っているのだったら腕を磨けと言いたい。それを実現している作家もいるのだから。
    私の勝手な言い分でした。最後に、この小説にはそれは当てはまらないことは追記しておきます。

  • この小説で直木賞を受賞したそうですが、サクサク読んできた時代小説の後で、この本は読みづらくて日数を要してしまった。
    最初の表題作は理髪店の店主が延々と独白する内容だが、元々自分自身が理髪店での会話を好まないし、独白の内容が暗すぎた。腕自慢で店を増やしたのに慢心して店を潰し、挙句の果てに人を殺すとか、最後はいい話に戻したが。
    「いつか来た道」は、母親と合わずに家を出た娘が、16年振りに母親と会う話し。母親は認知症になっていて・・
    「空は今日もスカイ」離婚しておば夫婦の家に寄生した親子。何でも英語に置き換える変な娘は、ある日家出をする。途中でDVに遭っている少年と出会い二人で居ると、助けてくれた浮浪者が警察に捕まるという不条理な展開。
    「成人式」一人娘が15才で交通事故に遭い死亡。娘を忘れられない夫婦が、成人式目当ての晴れ着のカタログ通販が舞い込んだことにより、二人で晴れ着を着て成人式に乱入。
    他の短編も同様に暗い話し。なかなか正月明けに読むには重い話が多く、気が滅入って来る。

  • 2023.7.18 読了 ☆8.2/10.0


    それぞれの、さまざまな過去を抱え、振り回され、それでも向き合い、前を向く決意をする希望に満ちた人々を描いた6篇の短編集です。

    父と息子、母と娘、親娘…いろんな家族のそれぞれの悩みと問題


    特に「いつか来た道」と「遠くから来た手紙」「成人式」はすごく良かったです。


    とりわけ「いつか来た道」はあまりに切ない。自分の知る「母親像」と認知症で何もかも変わってしまった「現実の母親」とのギャップがすごく苦しい。
    そして自分の母と重ねてしまって、将来の不安もあって涙が止まらなかった。。。


    「成人式」もすごく良い。

    15歳の娘を突然亡くした父親と母親。その死を受け入れられずに、回り道の毎日を送る中でふと「このままじゃダメだ」と、過去に向き合い、前を向く決意をする。
    それが、今年成人式を迎える娘の代わりに母親が若作りと着付けからヘアメイクをし、父親がこれまたヤンチャな袴とヘアスタイルに身を包んでエスコートする。
    きっと「何やってんのよ良い歳して」「ばかじゃないの二人して」って泣き笑いのぐしゃぐしゃの顔を浮かべて天国から見守る娘の姿があまりにも想像できてしまって涙が止まらなかった。。。



    "喪に服す"というのは必ずしも悲しみに浸って、厳かに執り行わなければいけないなんてことはない。
    亡くなったその人が一緒に笑って、俺の分まで/私の分まで前を向いて歩いて行ってくれと背中を押してくれるような、そんな決意に満ちた離別ならば。


    不思議な読後感。悲しいのに自分の生に感謝して、今日を大切に生きようと、そう思える一冊でした。

  • 海の見える理髪店

    【短編】
    ①理髪店店主
    ケンカ、殺害をおこし、家族離散。
    出所して、ひっそりと理髪店を再開。

    ②1人くらし女性
    喧嘩して家出。
    それから16年帰らず。
    弟から連絡あり、帰省。
    母は認知症に。

    ③時計店店主
    1人娘が生まれ、なくなった日時を記録するために、時計の針を止める。
    妻が家をでたあの日のあの時刻。
    同じように止める。
    なぜ、、、、

    ④夫婦
    15歳の子供が交通事故に、、、。
    5年後の成人式。
    子供への供養もと考え、夫婦で参列。

    【次への一歩】
    いずれの小説でも、登場人物が、過去と今に折り合いをつけています。
    けじめ。
    そう、次に踏み出すために、、、何かを決めているんです。

    【萩原さんの作品】
    何冊か読んできました。
    認知症になってしまった夫婦の物語もありました。

    この、海の見える理髪店も、人間が生きていくことは決して明るいことばかりではないと
    教えてくれているように思います。

    生きていくとは、自ら意思決定、選択していくということ。

    読み終えて、涙が自然と溢れていました。

    悲しいのか、切ないのか、それとも、主人公たちの勇気への敬意なのか?

    その気持ちはそのままにして、ページを閉じました。

  • 萩原浩さんの作品は初めてです。(この1ヶ月ほど最寄りの本屋さんの戦略なのかもしれませんが、気がついてみると某出版社の「ナツイチ」という「この夏のイチオシ」のシリーズがその本屋さんで戦略的に並べられていました。古今東西様々な名作が平積みになっています。私はそのトラップに、まんまとひっかかっているのかも知れません?この萩原さんの作品もその一つ。ありがたいことです。)

    この作品は短編集なのですが、どの作品も心情描写、状況描写、風景描写を、決して表面を波立たせることなくストーリーが静かに展開されていく不思議な雰囲気でした。私は最初は少しだけ戸惑いを覚えました。

    主人公の心情風景を中心にストーリーが展開していきます。会話はほとんどありません。少しの会話があったとしても、それらは語り手そのものの言葉ではなく、大半が聞き手の印象として語られているので「・・・」がほとんど無い。あっても回想の場面が多いので、「・・・」が少ないのです。

    この作品の中に納められている短編6作品は全てそういった心情描写を中心に紡がれたもの。

    大きな事件やハッとする出来事がある分けではなく、主人公の過去や現在の心象風景をどちらかと言うと「穏やかに」描き切っている。ワクワクドキドキと言う感じてはなく、しんみりと読み手に訴えかけてくる感じです。

    しかし、ワクワクドキドキする様な展開ではないので、読み進めるのに少しだけ気合が必要でした。本編を先読みしているという自惚のような飛ばし読みも全く不可能。

    台風一過少し暑さが和らいだので、何とか落ち着いて?読むことが出来ました。6作の短編は全て異なる味わいで、フッと心が揺すぶられました。静かな余韻を残していく。

    しかし、最後の作品はダメでした。最初の書き出しの設定から「これはアカンヤロ!」という雰囲気を醸し出していました。まるで涙腺を攻撃するようなストーリー。読み進めると、これでもか!これでもか!どうだ!!!と、責められまくって、

    私は降参しました。

    まだまだ暑い初秋の候。少し涼しくなったのかもしれません。

  • まるで自分がその場で直接話を聞いているような錯覚を起こしそうにだった。ついつい、つこみたくなる。
    あの時、言わなきゃ良かった的な後悔の念やわだかまり、怒り、自分にも身に覚えがある。読み進む度、もやもやして、突然物語が終わる。
    人の人生の縮図だ。人生の長さは、誰も調整できない。
    聖人にはなれないから、後悔しない人生はない、それでいいんじゃないかと、思わせてくれる。
    そして最後の成人式はよかった。
    人生、辛いことも多いけど、悪くないかもとおもえるから

  • コールドゲームに続き2作品目。最後の「成人式」という作品が全ての作品を圧倒した。5年前、15歳で交通事故死した娘の死から立ち直れない夫婦。塞ぎ込み、娘の死を受け入れられず、娘のビデオすら見ることに罪悪感を持つ。夫婦が考えたのは、娘の成人式に夫婦で出席すること。しかも20歳の若者に扮して。式場で若者からは、夫はヤクザ、妻はビョーキのオバサン。そこで娘の友人と遭遇し、式に出席できることになる。この夫婦の突飛な行動が娘への供養とともに自身への区切りとなった。夫婦の健気な姿に「頑張れ~」と素直にエールを送った。

  • 2005年に「神様からひと言」を読んだ時に、直木賞候補作家として周りに公言していた。まさか、それから10数年かかるとは思わなかった。まあ、考えるとそういう作家は多い(北村薫とか)。やっと文庫化したので読ませてもらった。

    表題作は、文脈から計算すると85歳という老齢の理髪店主の、殆どが独り語りで構成される短編である。店主はコミュケーションも仕事のうちだと云う。休みの日は一日中落語を聞きに行っていたという床屋店主の父親の背中を見て、昭和30年代にやっと独り立ちした。落語よろしく、こういう構成ならばまさかあのオチじゃないよね、と思って読んでいくと正にそのオチだった。でも、落語を聞いたように満足感がある。正に職人技である。随所に置いている小道具が素晴らしい。

    解説は斎藤美奈子女史だった。彼女は荻原浩と同じ大学で同学年だったらしい。荻原が広告研究会、斎藤女史は新聞会、2つの会は一見似ているようで実は水と油の性格、お互い見識は無かった。でも同じ時代の空気(バブルの中で仕事を邁進して、はじけた後に現在の職業に就く)を吸っていたので、荻原浩の職人技的な短編料理をよく理解し見事に解説していた。因みに、彼らから3年遅れて私も大学に入学した。入ったのは新聞会である。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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