あのこは貴族 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458756

作品紹介・あらすじ

地方生まれの美紀と東京生まれの華子。
アラサー女子たちの葛藤と成長を描く、山内マリコの傑作長編!

「苦労してないって、人としてダメですよね」――東京生まれの箱入り娘、華子。
「自分は、彼らの世界からあまりにも遠い、辺鄙な場所に生まれ、ただわけもわからず上京してきた、愚かでなにも持たない、まったくの部外者なのだ」――地方生まれ東京在住OL、美紀。

東京生まれの華子は、箱入り娘として何不自由なく育てられたが、20代後半で恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされてしまう。
名門女子校の同級生が次々に結婚するなか、焦ってお見合いを重ねた末に、ハンサムな弁護士「青木幸一郎」と出会う。
一方、東京で働く美紀は地方生まれの上京組。
猛勉強の末に慶應大学に入るも金欠で中退し、一時は夜の世界も経験した。
32歳で恋人ナシ、腐れ縁の「幸一郎」とのダラダラした関係に悩み中。
境遇が全く違って出会うはずのなかったふたりの女。
同じ男をきっかけに彼女たちが巡り合うとき、それぞれ思いもよらない世界が拓けて――。

結婚をめぐる女たちの葛藤と解放を描く、渾身の長編小説。

●解説/雨宮まみ

感想・レビュー・書評

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  • パークハイアットのアフタヌーンティーに行きたいなぁ…

    これは、面白い!

    ・昭和の芳しい香りが漂う。
    僕は10代半ばまで昭和に育ったわけだけど、この小説には当時憧れていた上流社会の残り香があり、懐かしくもあり胸がキュンとする。

    ・そして、女性の生きづらさの件。
    華子、美紀、相楽さんの3人の女性があいまみえるマンダリオンオリエンタル東京のラウンジ。ここがこの小説の一番の山場だと思うが、非常に痛快で好きだ。
    男は結局しょうもない。男は女性の生きづらさの最大でもしかしたら唯一の要因となっている。

    最近読んだ「82年生まれ、キム・ジヨン」よりも、そのことが、すーっと、そしてチクチクと心に染み入ってくる。

    そして、近松門左衛門の浄瑠璃「心中天網島」の女同士の義理!
    これが人として上級過ぎて敵わない。

    昨夏のしおりをもらえるキャンペーンの時は、なんとなく敬遠してしまった文庫本。
    映画館の予告編でもうすぐ映画化されることを知り、買って読んでみたのだけど、大当たりだった。

    映画も見たいな。

    • たけさん
      kuma0504さん、映画見たんですね。
      そうですか、良い作品でしたか!

      高良健吾の青木幸一郎、最後まで良い人みたいな表情なんですね。原作...
      kuma0504さん、映画見たんですね。
      そうですか、良い作品でしたか!

      高良健吾の青木幸一郎、最後まで良い人みたいな表情なんですね。原作のイメージに近いかも。ちょっと注目してみます。
      2021/03/02
    • こっとんさん
      たけさん、こんにちは。
      コメントでははじめまして。
      いつもいいね!をありがとうございます。
      たけさんの選ぶ本やレビュー、すごく好きでいつも楽...
      たけさん、こんにちは。
      コメントでははじめまして。
      いつもいいね!をありがとうございます。
      たけさんの選ぶ本やレビュー、すごく好きでいつも楽しみにしています。
      私もこの本を単行本で読みました。
      とっても面白くてたけさんと同じく映画が観たくなりました。
      ‥‥そして自分のレビューのコメント欄に勝手にたけさんのお名前を出させていただいてます。すみません汗
      これからもたけさんのレビュー楽しみに、そして参考にさせていただきます。
      よろしくお願いします。
      2021/06/01
    • たけさん
      こっとんさん、こちらこそはじめまして。

      名前出していただいて全然問題ないです。
      むしろ、そうやって繋がれてとても嬉しいです。ありがとうござ...
      こっとんさん、こちらこそはじめまして。

      名前出していただいて全然問題ないです。
      むしろ、そうやって繋がれてとても嬉しいです。ありがとうございます!

      映画見たいですよね。
      と言いながら、ずっと見れていないことに気づきました!
      もう動画配信もされてるんですね。
      見なくては!
      2021/06/01
  • 登場人物の関係性だけに目を向けると、一人の男性と二人の女性の三角関係だが、この小説のいいところは女性二人がバチバチの対立関係にならないところ。
    それは、華子が本当に良いところのお嬢さんで、純粋無垢だから(家族はそうでもないけれど…)であり、美紀がドライな性格であるが故に成立するのかなと思った。
    この本に出会うまで、慶應の内部生/外部生の世界があることも、名家の事情についても知らなかったので、そこはただただ驚いた。

  • 山内マリコさん3冊目。
    『あのこは貴族』というタイトルの通り、東京の松濤で生まれ育った生粋の箱入り娘・華子が主人公。その華子とは対照的な、大学入学をきっかけに上京し、経済的困窮もありながら逞しく都会で生きる美紀という人物も登場する。その2人の間にいた青木幸一郎という人物も、こういう人格の人いるなぁと思わさせられる。やはり自分の軸を持ちながら生きることが何より大切なのだと実感した。東京の「上流階級」のような人々の付き合いの様子も垣間見つつ、人はどのような境遇でも、本質的に大事なことは結局何も変わらないのだなと感じた。

  • 東京生まれの東京育ち、県外に出たことのないお嬢様の華子と、大学進学をきっかけに地方の田舎から上京し、父親のリストラで仕送りを絶たれて夜の世界で働くことになった美紀。一見交わることのなさそうな対照的な二人が、青木幸一郎という生粋の慶応お坊ちゃまを介し、婚約者とセフレという立場で出会うことになる。

    あらすじを読むとどろどろの展開が広がりそうだが、本書は意外とあっさりした読み心地である。その理由はこの本のテーマにあるような気がする。
    本書からは二つのテーマが読み取れる。一つは東京育ちと地方出身者それぞれの抱える劣等感である。
    華子は箱入り娘として育てられ、自分の世界が狭いことを引け目に感じている。自信のない彼女は、(条件の)良い人と結婚することでしか自分は生きていけないと思い込んでおり、青木の周囲に気になる影があっても彼との結婚に突き進む。
    一方美紀は、大学時代にキャンパスで出会った青木を代表する幼稚舎からの慶応ボーイに憧れと引け目を感じており、都合のいい女として扱われていることを知りつつ彼から離れることができない。

    地方出身の私は美紀の立場に共感するが、以前に読んだジェーン・スーさんと本書の著者山内マリコさんとの対談で、東京出身のジェーン・スーさんが「上京」する経験のない自分に引け目を感じるというようなことを言っていて、結局どちらの立場でもすっきりしない思いを持ってしまうのだな、と感じたことを思い出した。

    本書のもう一つのテーマは「女性」の生きにくさである。
    友人の婚約者に女の影を感じた華子の親友逸子が美紀と対峙する場面で、美紀は逸子に「女」という呪縛について淡々と語る。
    猛勉強の末ようやく入った慶応大学なのに、家計の事情とはいえ「女に学はいらない」と学業継続を認めてくれなかった父親。年を重ねるごとに「女」としての価値を低く見積もられる実感。美紀の年を越えてきた女性なら共感すること必至ではないだろうか。
    一方の華子も、女性は良い人と結婚することが一番の幸せと小さいころから刷り込まれていて、それ以外の生き方を見いだせないでいる。本書では、これら「女性への呪縛」を彼女たちなりの方法で打開することが一つの醍醐味となっている。

    あらすじを読んで「どろどろの展開が広がりそう」と感じてしまうのは、「女の敵は女」と思い込まされている「呪縛」なのかもしれない。男も女も変な呪縛にとらわれず、自分の信じる道を堂々と生きればいい。本書は何よりもそれを言いたかったのではないかと感じた。

  • 映画『あのこは貴族』公式サイト
    https://anokohakizoku-movie.com

    あのこは貴族|山内マリコ|cakes(ケイクス)
    https://cakes.mu/series/3754

    あのこは貴族 | 書評 | 小説すばる - 集英社
    http://syousetsu-subaru.shueisha.co.jp/review/あのこは貴族/

    あのこは貴族 山内マリコ|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー
    https://www.bungei.shueisha.co.jp/contents/anoko/index.html

    あのこは貴族/山内 マリコ | 集英社 ― SHUEISHA ―
    https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents_amp.html?isbn=978-4-08-745875-6

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      “日本の貴族的な階級の世界と日本の田舎の社会がすごく似ているという、その納得感” トロント日本映画祭『あのこは貴族』岨手由貴子監督 インタビ...
      “日本の貴族的な階級の世界と日本の田舎の社会がすごく似ているという、その納得感” トロント日本映画祭『あのこは貴族』岨手由貴子監督 インタビュー Web拡大版 | TORJA
      https://torja.ca/yukiko-sode-interview/
      2022/06/05
  • 映画の予告で本作の存在を知り、まずは原作から挑戦しようと購入。なかなかパンチのきいた作品!予想以上にのめり込み、夢中になると同時に結構心抉られました。
    第一章・東京の主役は、箱入り娘のお嬢様、華子。地方の田舎出身の自分から見ると、華子を取り巻く世界があまりにハイソすぎて、かえって興味深く読めた。結婚に拘泥する華子があまりに危うくて、その世間知らずっぷりにハラハラさせられる。
    第二章・外部の主役は、地方から上京して慶應に入学した美紀。共感するのは断然彼女の人生だが、閉塞感たっぷりの田舎の価値観がわかりすぎるほどわかるから、そのどうにもならなさに息苦しさを感じる。
    接点のないはずの二人の人生が、ある男性をきっかけに交わることとなる。怒涛の展開に、ただただ度肝抜かれるばかり。いい大人の自分でも、こんなにも目から鱗が落ちるのかと思うほど知らない世界があるということに、驚かされた。世の政治家達の敷かれたレールの仕組みを知ることが出来て、色々と腑に落ちましたよ…。
    登場する男達がことごとくがっかりキャラばかりだが、一方で女達の逞しさが小気味良い。
    本作に寄せた雨宮まみさんの作品紹介も、ぐっとくる文章だった。「自分が持っているもので、自力で自己肯定感を得るために」動くことは、容易いことではない。それでも…悔いなく生きるために、羽ばたこうとする女性達の軽やかさがたまらなくかっこよかった。
    これは是非映画も観てみたいなぁ。

  • なるほどねえ~。
    様々な視点があって実に面白い物語だった。
    ストーリーそのものより、東京生まれ地方生まれ、上流中流、そうでもない出自。
    固定された身分が厳然と在りながら無いものと見えないものとされている。
    その中で生きて行く女性って大変だけど楽しそうだな。
    頑張って欲しい。

    作品紹介・あらすじ
    地方生まれの美紀と東京生まれの華子。
    アラサー女子たちの葛藤と成長を描く、山内マリコの傑作長編!

    「苦労してないって、人としてダメですよね」――東京生まれの箱入り娘、華子。
    「自分は、彼らの世界からあまりにも遠い、辺鄙な場所に生まれ、ただわけもわからず上京してきた、愚かでなにも持たない、まったくの部外者なのだ」――地方生まれ東京在住OL、美紀。

    東京生まれの華子は、箱入り娘として何不自由なく育てられたが、20代後半で恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされてしまう。
    名門女子校の同級生が次々に結婚するなか、焦ってお見合いを重ねた末に、ハンサムな弁護士「青木幸一郎」と出会う。
    一方、東京で働く美紀は地方生まれの上京組。
    猛勉強の末に慶應大学に入るも金欠で中退し、一時は夜の世界も経験した。
    32歳で恋人ナシ、腐れ縁の「幸一郎」とのダラダラした関係に悩み中。
    境遇が全く違って出会うはずのなかったふたりの女。
    同じ男をきっかけに彼女たちが巡り合うとき、それぞれ思いもよらない世界が拓けて――。

    結婚をめぐる女たちの葛藤と解放を描く、渾身の長編小説。

  • 華子と美紀、真逆な境遇で育ったからこそ分かり合える「女同士の義理」が素敵だなと思った。
    幸一郎を巡って戦うのかなって思って読み始めたからこそ、この結末は予想外だけど良かった。

    東京ってそんなに地方と違うのかな。

  • 貴族なんてタイトルに出てくるから昔のお話かと思ったら、割と現代的なお話

    東京には、ほんと貴族のような人たちがいるんだと知らされた。
    ドラマで出てくるようなお店には、東京出身の人は行かないとか
    あーなるほどって思った。

    一人の男性を巡る三角関係の話しだけど
    全然、泥沼じゃないし読んでて不快感は無し

    お嬢様が自立していくお話

  • 初の山内マリコさん作品。

    今までの人生で、感じてはいたけれど、
    確実に存在する階層の格差。

    「田舎」の話をされ、全くピンと来ない人も、いるらしい。

    主人公「華子」は生まれも育ちも東京の中心。実家は、松濤に有るお屋敷。
    エスカレーター式の、名門女子大出身。

    お正月は一族が集い、帝国ホテルのお店でお年賀の食事会。

    三姉妹の末っ子

    いつもニコニコ愛想良く、行儀良くしているけれど、ハッキリものを言わないタイプ。
    25歳から、お付き合いしていた人は、慶應幼稚舎出身、大手証券勤務、親は、都内にビル、マンションを持つ。

    華子は、交際スタート時から、結婚前提で、甲斐甲斐しく世話を焼く。
    しかし、彼の方は、だんだん華子の用意周到さが、重く、うざったくなり、振られる。

    合コンでは、その容姿と経歴でもてる
    ものの、付き合ってみると、まったく面白味なく、男性の前では、うまく自分を出せないから、3ヶ月もするとすぐ振られる。

    その後、父の紹介、結婚相談所、いろいろ見合いするが、決まらない。

    しかし、義兄の紹介で、弁護士、慶應幼稚舎出身、非常に洗練された人物と見合い。
    華子は、頼もしい、と思う。
    トントン拍子で結婚が決まる。
    その相手、青木幸一郎は、江戸時代の海運王をルーツにもち、歴代当主が衆議院議員。
    だから、結婚相手は、同じ階層の、自分を主張しないタイプが希望。
    人柄は問題では無いらしい。

    一方、慶應大学に高卒後受験で入学した
    美紀。(外部生)
    その時、青木幸一郎は(内部生)として学内で、おしゃれでスマートで物怖じしない都会的なグループに属している。
    幼稚舎からの内部生が、一番のエリートでポジションが上。
    政治家や本物の金持ちの子供たち。
    実は、社会にでてから、美紀と、幸一郎は付き合っている。
    美紀は出来れば結婚したいが、無理だろうと諦めている。
    幸一郎は結婚する気は、さらさらない。

    このクラスの人々は、やはり何の躊躇も無く同じクラス同士で結婚して、その血脈を続けてゆくのか。

    現実では、皇室のお姫様と結婚して、大騒ぎの一般人が国中から、総バッシングされていたな。理由はいろいろあるだろうけど。
    タレント事務所、所属のグループの一人も幼稚舎から慶應で、美しい女優さんとお付き合いしていたけど、振り切って、結局同窓の女性と結婚していたなぁ!

    この本読んで、目から鱗!
    なんだ、初めからそういう事か、納得。

    日本は格差社会では無く.昔からずっと変わらず、「階級社会」だった。
    つまり、歴史の教科書に出てくるような
    日本を動かした人物の子孫は、今も同じ場所で我が物顔で国を牛耳っている。

    結局、結婚した後まったく自分に興味を示さず、ほって置かれた華子は、離婚して目覚め、変わってゆく。

    いわゆる「上流階級」というものが、こういう事だったのか、
    と、私は納得したのである。

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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