ばけもの好む中将 八 恋する舞台 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087458817

感想・レビュー・書評

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  • 宗孝に恋文が多数舞い込むが、そのうちの一通が死者からの者だった!その顛末はちょっとホロっとするものだけれどもね。一方、専女衆は九の姉のもと、藤の舞と杜若の舞を披露する。五の姉のからくりも加わるが、勿論一波乱も二波乱もある。なかなか面白いよ。

  • 怪異大好き中将・宣能と地味で臆病な右兵衛佐・宗孝コンビのシリーズ第八作。

    前作で期せずして帝の前で舞を披露した宗孝は再び帝に請われ舞を披露。そのことで宮廷内の女房たちに注目され、たくさんの文が舞い込む。突然来たモテ期に戸惑う宗孝は宣能のアイデアで初草の君に文を見てもらい、送り主の気持ちが本気なのか冷やかしなのかを鑑定してもらうことにするが…。

    宣能の妹思いには微笑ましく感じることが多いが、今回はちょっと宗孝が可哀想な気もする。生まれながらにして東宮妃になることが決められている可哀想な妹・初草の、初恋の相手が急にモテだしたのだから面白くないだろうが。
    しかし恋の機微に疎い宗孝に初草の気持ちに気付けと言っても無理だろう。身分も違う、畏れ多くも未来の東宮妃、そしてまだ幼い彼女を恋の相手にというのは真面目で人の好い宗孝には酷な話。それでも宗孝に少し変化の兆しが現れたのは今後の伏線だろうか。
    それにしても右大臣…怖い、鋭い。

    これまで宣能の怪異巡りに付き合っても(幸いにも)ことごとく空振りだったが、ついに宗孝は老人の幽霊を見てしまう。その上、恋文の一つが死者の筆跡にそっくりで、宗孝はすっかり怯えきってしまう。逆に、本物の怪異に巡り会えたと喜ぶ宣能だがその顛末はさて。
    ネタバレになるので詳しくは明かせないが、何とも良い結末だった。宗孝がこのことで怪異をただただ恐ろしいもの、近寄ってはいけないものとするのではなく、別の視点で見られるようになったのが良かった。
    この怪異に対する新たな認識は宣能の認識とは少し違っていて、宣能が感心するように宗孝の人柄の好さを改めて印象付けることになった。

    前作で九の姉君を通じて親しくなった老巫女軍団の専女衆だが、右大臣の汚れ仕事を引き受ける多情丸に何故か嫌がらせを受けているようだ。この理由とその展開も気になるところ。多情丸と彼の手下・狗王の複雑そうな関係と、狗王と十郎太こと十の姉君の関係も気になる。
    宗孝は専女衆からモテモテ。老女たちにキャアキャア言われても嬉しくないだろうが、老人と子供に好かれるのも宗孝の人柄の好さか。

    春若こと東宮がいまだ十二の姉・真白にご執心なのも、読んでいる側は楽しいが、宗孝は気が気ではないだろう。初草同様、今は幼い可愛らしい恋で済んでいるが、やがて成長しても思いが変わらなければどうなるのか。春若が何とも憎めない少年だけに恋も上手く行って欲しいような、それはそれで心配なような。

    色々と気になるところを残したままだが、宗孝が怪異に対する意識が変わったことと、九の姉君が健全な生き甲斐を見つけたことが良かったことだろうか。
    右大臣の不穏な予言のように、宗孝が様々な駆け引きにうっかり引き込まれないよう祈るのみ。

  • 小ネタは出てきましたが、全体的には舞を中心とした風流さがあります。

    表紙の藤と宣能、宗孝はとてもいいですね。

    怪異は少ないし人間関係的な話が多いですが、最後は泣けました。短歌と一言だけで思いを伝え受け取るって、素敵だなぁと思います。
    現代人も見習うべきところだと思います。

  • いまさら言うのもなんですが、毎回表紙がかわいいしきれいなのでイラストレーターの方の画集がほしい。

    宗孝の苦労も不憫も相変わらずだし、ストレス溜まってるのか宣能さまの怪異への情熱がいや増している気がする。
    初草ちゃんたきつけてるお兄さまを意地悪だなぁと思いつつももっとやれと思ってしまうし、宗孝のためと言いつつちょっかい出しに行ってるところがいきいきしてる感じがする。
    宣能さま読めない。いや、やりたいことは透けて見えるんだけど。
    狗王がまたなんか意味深なこと言ってるし……!

    宗孝に届いた差出人不明の文は切ないし、そのひとのことを思って大事にしまう宗孝ほんっと優しい。
    どうか今後の展開で宗孝が傷つきませんように、と祈ってます。

  • 今回のお話は、宗孝がちょっと可哀想だと思ったのと同時に、彼の優しさがよく分かりました。めちゃくちゃビビりだけど、人のことを想える優しい人で、舞も上手い。魅力的だと思うんだけどなあ…
    舞の舞台もトラブルがありすぎましたが、みんなのそれに対する判断力と行動力がすごすぎて感心しました。私も実際に見られたらいいのになあと思いながら、必死に頭の中で想像していました。無理…私の頭じゃあ全然美しくできない…
    そして最後に真相が明かされた文は、たった一言だけれど、その背景を知ると本当に切なくて、儚さも感じられました。たった一瞬の場面だったけれど、とても綺麗で一番心に残りました。
    そして、もう本当に春若と小桜丸のコンビが好きすぎる…。この2人が本当に可愛いのでずっと見ていたいです。もちろん、春若の恋の行方も本当に気になります!

  • 帝に舞を披露したことで注目され、突然「モテ期」が到来した宗孝。女房たちから何通もの恋文をもらうが、和歌が苦手で返事に悩む中、中将宣能は、筆跡から書き手の感情が読み解ける妹の初草に、文の鑑定をしてもらおうと言い出し……。一方、九の姉が振り付けた桜の舞で大成功をおさめた稲荷社の専女衆は、次の演目として「藤の舞」を計画していた。手伝いをすることになった宗孝だが……?
    (2019年)
    --- 目次 ---
    恋する季節
    恋する舞台~藤の花編~
    あやめ恋歌
    恋する舞台~杜若編~

  • 宗孝にモテ期到来!?結果的には裏がありましたが、宗孝は性格は悪くないし、よい家柄の子だし、普通にモテていいはずなのに、この本の中の女たちは見る目がない。恋の相関図はいよいよ複雑に、恋の糸がいい具合に絡まりあって、これからどう解けていくのか楽しみです。

  • 中将さま、今回も素敵♪
    死者からの恋文の一件、切なすぎる。
    その想いを大事にできる宗孝が好き。
    姉君たちにこき使われて舞台作りに奔走する姿もいい。
    暴走したお子様がいらしたような?(笑)
    あれは、爆笑だったわ♪
    いや、健気なのだけどね。
    初草のこともあるし、どうなっていくのだろう。
    お互いが好きだけでは結婚できないって切ない。

  • 安定の面白さ。
    裏ではいろいろあるのだろうが、まだ、いまは妖と怪異を求めていてほしいなぁ。

  • 「ばけもの好む」感がなくなってきて、宮中恋物語&
    右大臣家はたまた十の姉をも巻き込んだ
    悪者多情丸との諸々話に変わってきたかも??
    ・・・と言いながらも宗孝が当時の貴人(?)らしく
    憑き物へのさわりを気にして寝込んだり、
    巫女集団との舞台など、楽しい(!?)お話で、
    好きなんですけどね(笑)
    そして。。。いよいよ、宗孝と初草の今後が気になる所。
    腕白な春若と真白の今後は、どうなのかしらね。。。と
    続きを楽しみにしているのです。

  • シリーズ第八弾。

    本当に、宣能と初草の兄妹は宗孝のことが大好きなのですね。
    今回の舞台はハプニングだらけでしたが、力を合わせて良いものを創ろうという姿が良かったです。
    右大臣が何を考えているかわからないので不気味ですが、皆が幸せになってくれるといいですね。
    そして、春若君の空回りっぷりもお約束で楽しめます。

  • 宗孝のモテ期到来!とそれを阻止する中将達。
    ホント…出世はしないし、中将って実は何気に役に立ってない(笑)でも友人なんて役に立つ立たないって価値じゃ無いしな。

    思わせぶりな十の姉上と平和そうな実家と温度差が激しい。そして中将も大概宗孝に絆されてるよなぁと思う。ウン。

  • 買ったまま放置してて漸く読み始めたのだが、読むと楽しい。
    姉が多すぎて時々どの姉か忘れるけども、それぞれに個性的でよいな。
    今回はモテ期到来か、ということだったけど初期段階で潰されているのに笑った。そこまでするんかい。

  • 怪異に巡り合いそうで合わないいつもの終わり方で、春若君の話を挟むパターンも面白かった。このゆるさ加減が本当に良い。今回は宗孝のモテ期到来のお話。たまには主人公もこうでないとね。何か頼りなげだけど、ここぞとという時には力を発揮しそして優しい。ちゃんと感じている人がいて良かった。12人の姉もすっかりキャラが定着し、十の姉は謎が深まるばかり。いや少しは明らかになったかな?裏の繋がりがありそうなので最後まで活躍しそう。

  • 宗孝にモテ期到来?と思いきや、それどころじゃない大騒動に! 専女衆のパフォーマンスは、五の姉上夫妻と頭中将のからくり舞台で、平安時代とは思えないほど!
    闇の輩の邪魔立てを跳ね返しましたが、奴らは今後物語にじわじわ絡んでくるのだろうな、と思うと、ストーリーの流れ的にやむを得ないけれどすっごく不愉快!

  • 何もかも中将の思い通りにするのは癪なので父ちゃんに頑張ってほしい

  • 舞が面白い八冊目。
    2019/9/24

  • 宗孝に「モテ期」!なのに中将さまったら!(笑)

    藤にはじまり、藤に終わる。
    ちょっと切ない幼い記憶。

  • うーん、今回の中将さまはいたたけないなぁ。
    あんなやり方であの子の気持ちを明らかにしたり、こんなやり方であの子の恋路を邪魔したり…。
    目的のために手段を選ばないって感じでゾクッとしました。
    それでも最後は安心感。やっぱりふたりじゃないとね。

  • 東宮に幸あれ❗と、思わず拳を握ってしまう。そして謎めく十の姉上の動向が一番気になる。

  • 裏の人々が気になって…。丸く収まるといいなあ

  • 今回は、怪異ネタというよりは例の集団ネタが多かったですが、かなり自覚しつつある彼女の動向がわくわくだった。姉たちもがんがん関わってきて、いいっすね!

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著者プロフィール

1964年生まれ。91年『闇に歌えば』でデビュー。
「ばけもの好む中将」、「暗夜鬼譚」シリーズ(ともに集英社文庫)、『怪奇編集部「トワイライト」』(集英社オレンジ文庫)など著作多数。

「2019年 『百鬼一歌 菊と怨霊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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