- 集英社 (2019年6月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784087458848
感想・レビュー・書評
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「終わらざる夏」を読んで以来の、浅田さんによる戦争文学。6編の短編から成る。どの作品も、視点や趣向は異なるが、共通しているのは、戦争に人生を狂わされた人たちの悲しみや苦しみを描いていることだ。
戦争さえなければ、幸せな暮らしを営めたはずなのだ。亡くなった人も生き残った人も本来なら背負わずとも良い十字架を背負わされた。その苦しみや悲しみに言葉も無い。
戦争という事象や、戦争を引き起こした当時の政府や軍部に怒りが湧いた。犠牲になった人々に心からの哀悼の意を表する。このような悲劇は二度と繰り返されてはならないのだと、反戦への想いを新たにした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦争とその後を描いた一冊。
決してお涙ちょうだいではないのがいい。
戦後を主軸に男と女の人生を描いた六篇は伝えたい想いがギュッと濃縮されていた、そんな重みが苦しいけれどいい。
帰るべき場所を無くした帰還兵の語りの中に、夜の遊園地での親子の姿の中に、つきまとう戦争の影がさりげない描写と言葉で紛れ込んでいるのがたまらない。
それを見つけるたびにぐわんと心の底が波打つような感覚を味わった。
帰還=終わり、解放ではない。
戦争という重い背嚢を背負った人生が続くやるせなさを目の当たりにした。
また一つ思う。
好きだな、ジロー小説。 -
第43回大佛次郎賞受賞作品。戦争を背景に、その時代を生きた人たちの短編集。
直接のメッセージはないものの、筆者の戦争に対する思いが伝わる作品。
■帰郷
玉砕したと思われた復員兵の独白
妻と子供に会うために故郷に戻った復員兵が見たものとは?
■鉄の沈黙
ラバエルから高射砲の修理に来た修理工
そのまま、戦地にとどまって、アメリカを迎え撃つ
■夜の遊園地
戦後、夜の遊園地で客引きをする男
お化け屋敷から出てこない親子を探しにいって見たものとは?
■不寝番
自衛隊員と兵士の時代を超えた不思議な交流
このファンタジーは哀しくなる
■金鵄のもとに
ブーゲンビルを生き延びた兵士がそこで経験したこととは?
これも切ない
■無言歌
特殊潜水艇内の兵士二人の会話
残り少ない酸素の中での二人の会話が悲しい
それぞれの物語で、死にゆく者、生き残った者たちの話が戦争という悲惨さを物語っています。
哀しい物語でした -
兵士の視線で語られる6編。
リアルに戦中・戦後に生きた人が描写されています。戦争が当時を生きた人々にとって、日常だったということが自然に感じられる作品ばかりです。戦闘中の描写は怖さよりもまさに自分の目の前で起こっていて、初めて見る光景だからこそ説明ができない不完全さや"何が起こっているかわからない"という状況が伝わってきます。
映像で戦争を伝える場合、どうしても衝撃的な光景に目がいってしまいがちですが、小説だからこそ、非常事態を"普通"と捉えてしまう感覚麻痺が起こっている様子が随所で読みとれました。
戦争小説は説明が多かったり、主人公の痛烈な体験が深く描かれたものを読んだことがありましたが、全編を通して説明が少ないからこそ、当時を生きた人の話を語り聞いたような読後感がありました。 -
浅田次郎さんの短編6作
「母の待つ里」で落胆して以来手にしてこなかった浅田作品だけれど本作の中でも特に「帰郷」と「不寝番」を読んで私がかつて愛した浅田ワールドが蘇ったようで痺れた。
「帰郷」
戦場から故郷長野に戻った主人公はそこで戦場以上に辛い思いをして何かを求めて東京に出る。
そこで出会った娼婦のマリアに自分の居場所を求めた彼は、今まさに「一緒に死んで欲しい」という言葉を待っていたマリアに「一緒に生きてくれ」と頼む。
「不寝番」
まさに私が抱く浅田ワールド。
時を隔てた兵士が2人その時の壁を超えて顔を合わせる。
戦時と平時それぞれの時に立つ2人はそれぞれの日本に思いを馳せる。 -
戦争小説。短編集。
どの篇も悲しい。
「帰郷」については少し未来に希望が持てる。二人の先が幸せであることを祈らずにいられない。
「不寝番」ではファンタジー色が強い展開であったが、二人の交流が違和感なく汲み取れ、それでも元に戻った後を想像すると苦しくなる。
他の篇についても救われるものが少なく、諦め感も否めず、あっさり終わりを受け入れている場面がなんとも言えない。
自分も戦争を知らない世代であるが、人の生き死にについて改めて考えさせられる機会を与えてもらえた -
帰郷できた兵士もできなかった兵士も、ともに共通するのは、人生の始末に向き合って初めて戦争の残酷さを知るということ。正直どの作品も切ないし、史実であってほしくない。でもきっと実際にあったであろう名もなき兵士たちの物語。反戦という言葉を重く受け止め続けたい。
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久し振りの浅田次郎さん、戦争に翻弄される弱者を描いた短篇六編。
なる様にしかならなかった時代、その中で若者は自我をどう持っていたのか。
考えさせられます。 -
自分の道や大切な人を戦争に踏み躙られて、理不尽を抱えて、それでも生きていく人たち。
「誰も恨みはしない。憎いのは戦争だけだった」そう思えた人は果たしてどれだけいるだろうか。 -
戦争を題材にしているゆえか、文庫帯に「反戦小説集」との謳い文句がある。
しかし、その思いはその文言ほどには、心に響かなかった。短編であるがゆえの限界だろうか(著者には、『天国までの百マイル』のような、忽ち涙腺を刺激する傑作短編集もあるが)。
反戦ということであれば、先ごろ読んだ乃南アサ著『水曜日の凱歌』の方がより、その感が強い。 -
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浅田次郎の紡ぐ言葉は、相変わらず美しい。そして、心のひだに分け入ってくる。こういう作家は他にはいない。さすが大御所。
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戦争は、人々の人生をどのように変えてしまったのか。戦争に巻き込まれた市井の人々により語られる戦中、そして戦後。戦争文学を次の世代へつなぐ記念碑的小説集。
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R2年10月24日読了。
反戦を殊更言葉にしなくとも、戦争や戦後を描くことで、悲惨さは否応なく伝わってくる。
戦争なんて、どう描いても気持ちのいいものじゃぁないんだから。
戦争で死んだか、生きて帰って来たか。どっちが幸せだったのか。誰が判断できる? -
戦争によって、翻弄されていった人たちを描いた作品。全6章で、一つの章が程よい量になっていました。
テレビドラマは何回も拝見していて、それで読んだ気になっていました。会社の方からおススメということで、今回が初の浅田作品でした。
難しい言葉が多く、なかなか想像しにくい部分もありましたが、戦争の悲惨さは伝わりました。
フィクションではあるものの、こういう人たちが戦争の時代に生きていたと考えると、何ともやりきれない気持ちでもありました。戦死者一人一人に人生があって、ちゃんと生きていたということを表すためにも過去の戦争を忘れていけないなと思いました。戦争文学ですが、想像するような衝撃的な映像が飛び交うのではなく、どちらかというと当時のリアルな日常が描かれていました。だからこそ、より残酷さ・冷酷さがありました。
時折、情景描写が文章にすると美しく、何回も読みたくなる部分がありました。別の作品にもこのような描写があるのかわかりませんが、ちょっと他の作品にも挑戦したいと思いました。 -
2019/1/2 読了
このような戦争の話を読むと、知識としての歴史とは差があり、迫ってくるものがある。既に亡くなったおじいちゃん、おばあちゃんから聞いておきたかったなと思う。ただ戦争に関する小説はあまり読まないため、理解ができない単語があったり前提条件が分からなかった。 -
戦争物は苦手だけど、浅田次郎が近代史を学ぶべきだと言うてたので、読んでて気持ちが落ち込んでいった。
ただ、浅田が好き過ぎて、最近のはどうもあまりオススメしたいほどにならない… -
夏頃に買って積読にいたのをようやく読了。どの作品も戦争の理不尽さを感じずにはいられませんでしたが、お腹に収めて日本に連れ帰ってくれ・・・言う方も言われた方も一線を超えていて、でもそれを道徳に反するとは言えない。やっぱり戦争は起こしてはいけないのだと感じます。
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浅田次郎さんは好きだから、期待値が高かった分ちょっと残念。戦争の悲惨な状況は伝わる。
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先の大戦に素材を求めた短編集であるが、浅田の場合、何を伝えるか、読者に何を届けるか、は、わかりやすすぎるほどわかりやすいテーマであって、浅田の真骨頂はそれをいかにわかりやすく伝えるか、響かせるか、という、いわばプレゼン能力にあるということだろうな。
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真摯な思いはなんとなく伝わってくるかな。もっと苛烈な内容のもあったけど、個人的には最後の無言歌だっけか?が染みたなあ。
著者プロフィール
浅田次郎の作品
