とるにたらないものもの (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.64
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本棚登録 : 4942
感想 : 318
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087460391

作品紹介・あらすじ

とるにたらないけれど、欠かせないもの。気になるもの。愛おしいもの。忘れられないもの-。輪ゴム、レモンしぼり器、お風呂、子守歌、フレンチトースト、大笑い…etc.。そんな有形無形の身のまわりのもの60について、やわらかく、簡潔な言葉でつづられている。行間にひそむ想い、記憶。漂うユーモア。著者の日常と深層がほのみえる、たのしく、味わい深いエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 文字どおり、とるにたらないものが並べられていて、他愛もないことが書かれているのに、読んでいるとなぜかほっとする。
    普段の生活で見過ごしてしまいがちなことがどんどん溢れてくる。
    江國さんはきっと、どんな些細なことでも物語にしてしまうのだろう。
    彼女の小説の中の言葉が、特別素敵なものに思える理由がわかるような気がする。

  • ★3.5
    文章がおしゃれだなと
    すらすら読めて、エッセイなんだけど、詩の雰囲気も感じました

    お風呂で本気で寝ちゃうのにはびっくり!!
    ぬるくなるよね?どういうこと?人魚なのかな

  •  たしか『すいかの匂い』の解説でどなたかが、江國さんの文章を読むともともとそう思っている人は尚更、そう思っていなかった人は急に、そうそうと共感してしまうということを言われていたと思います。例えば◯◯も、××や、ナントカなんかも。みたいな文章を読んでいて◯◯の時よりナントカにいたる頃には完璧に自分もそう思っていたよと思い込みそうなほどだという、その感じがよくわかります。

     本書では「とるにたらない」、一瞬強烈に自覚するのにその5分後さっぱりと忘れているようなふとしたものをごく短い文章でまとめられたものが沢山収録されています。江國香織共感マジックと、小説お得意の「その人の感性を齟齬なく覗き見られる」という愉しさが詰まっていました。

     私は単純なので、旅行先で塩を買い、ムーンライト・セレナーデを聞いて食前にジン・トニックで空腹を刺激し、窮屈でないヒールを履いて帰宅したらメイクを落とす解放感を味わい、そして将来は自室に箒とちりとりを置きたいとうっとりとしてしまいました。

  • 普段気にしていないような
    日常にあって当たり前のようなもの。
    改めて好きとか嫌いとか考えた事ないような
    とるにたらないものたちについて。
    優しく綺麗な文章で書かれている。

    周りのものがいきなり気になりはじめる。

  • いままで読んだ江國香織さんの小説に登場する女性たちには、作者本人の要素が散りばめられていたことがよくわかって楽しい。由起子さんは化粧を落としてつるつるの顔で夫を迎えるし、ことちゃんの好物はまめごはん。寒い日には必ず厚着をせよという宮坂家の家訓(しま子ちゃんだけはこれを守らない)。江國さんの感性と表現力にわくわくしながらぐんぐん読み進められてたのしい。「石けん」「バスタオルとバスローブ」が好き。

  • いつまでも本棚に置いておきたい。
    日常の、とるにたらない「ものごと」に関するエッセイがたくさんつまっていて。わかるーそれ!とか、そうなんだーとか、本との対話、時々開けたくなる。

  • タイトル通り、日常に溶け込んで普段はわざわざ取り上げない“とるにたらないもの”60個について書かれたエッセイ。

    普段それとなく使っている物や見ている物について、考えようと思えば考えられるけれど、意識しない限りは何とも思わないことの方が多い。
    例えば今これを書いている私の目の前には白いテーブルがあって、その上にリモコンとグラスがあり、読み終えた本が何冊か積まれているけれど、それらについて深く考えることはない。
    そういう日常にある“とるにたらないもの”が、江國さんの紡ぐ言葉を通すととてもいとおしいもののように思えてくる。

    輪ゴム、塩、化粧おとし、など、何気なく使うものについて。そして、書斎の匂い、日がながくなること、など、暮らしていて感じることについて。いろいろ。
    江國さんの小説を読んでいて感じる郷愁のようなものとか瑞々しさは、きっとこういう風に日常に感受性を向けるところから来ているのだな、と思った。

    私ならば今思いつくのは、栞、キャンドルホルダー、牛乳石鹸、リネンウォーター、真夜中、夏の夕方、水色、紺色のペン、あたりかな。そう考えはじめると楽しい。

    あまり意識しすぎたら生活に支障を来すけれど(笑)目に映るものについて考えてみるのもたまには良い。
    日常を支えているもののほとんどが、“とるにたらないものもの”なのだから。そんなことを思わされた一冊。

  • 江國さんの感性に酔いしれる。
    財布と家の鍵、そして口紅と文庫本があればどこへでも行かれるということ。旅に出れば自分にとって本当に必要なものがわかること。余計な情報を伝えてくるテレビが苦手で、望まない場所にいるときは推理小説に逃避していること。好むもの、好まざるもの──。自身の感覚を研ぎ澄まして言語化することを厭わなければ、言葉はこんな光り方をするのだなあ、とうっとりしてしまう。江國さんのようなひとになりたかった。

    美味しいお酒やちょっと高級なチョコレートを口に含みながら楽しみたい一冊。

  • 生活の1つ1つを自分という世界からじっくり見つめてみようと思えました

    • 大野弘紀さん
      フォローありがとうございます。
      そうですね。このような瑞々しい眼差しは、きっとこの世界を美しく愛しくしてくれますね。

      そして、この人...
      フォローありがとうございます。
      そうですね。このような瑞々しい眼差しは、きっとこの世界を美しく愛しくしてくれますね。

      そして、この人生も。過ごしていく、日々も。
      2020/03/29
  • なんとなく日常生活の中で埋もれていってしまいそうなことが丁寧に、ユニークな言葉で語られている。
    これは好き、だけどこれは違う、みたいな細かい著者の細かいこだわりも面白かった。
    鞄の中に常に入れておきたいような本。

    「推理小説」
    著者のイメージになかったので意外だったけど、自分も好きなので嬉しかった。逃避したいというのは確かにそう。
    「フレンチトースト」や「りぼん」もよかった。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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