水滸伝 3 輪舞の章 (集英社文庫)

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レビュー : 102
  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087461039

作品紹介・あらすじ

楊志は盗賊に襲われた村に遭遇する。人々は惨殺され金品は奪い尽くされていた。何も手を打とうとしない政府に衝撃を受けた楊志は、魯智深と共に盗賊の根城・二竜山に乗り込む。そして初めて吹毛剣を抜く。一方、国を裏から動かす影の組織・青蓮寺は、梁山泊の財源である「塩の道」を断とうと画策する。それに対抗するため、公孫勝率いる闇の部隊・致死軍が動き出す。荒ぶる北方水滸、灼熱の三巻。

感想・レビュー・書評

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  • まずは KiKi の北方水滸 Review のお約束、各章のサブタイトルとその星が表す豪傑の名前の列挙から今日も始めたいと思います。

    地稽の星: ??
    天慧の星: 拚命三郎・石秀
    天機の星: 智多星・呉用
    地俊の星: 鉄扇子・宋清
    地魁の星: 神機軍師・朱武
    地好の星: ??
    天満の星: 美髯公・朱仝

    おや?  おやや??  岩波少年文庫の下巻、59章の108人のリストでも、水滸伝百八星一覧というウィキ・サイトでも該当する星が見つけられない星が2つもありますよ??  これは何なんでしょう??  で、あれこれ調べてみたら、地稽の星は KiKi の手持ちの資料で言えば地羈星: 操刀鬼・曹正のこと、地好の星は同じく地猖星: 毛頭星・孔明のことらしい・・・・・。  結局、天罡星三十六星、地煞星七十二星に関するちゃんとした知識を持ち合わせていないからこうなっちゃうということみたい(?)です。  何が何だかさっぱりわからないけど、とりあえずは整理して一覧表を完成させておきましょう。

    地稽の星: 操刀鬼・曹正
    天慧の星: 拚命三郎・石秀
    天機の星: 智多星・呉用
    地俊の星: 鉄扇子・宋清
    地魁の星: 神機軍師・朱武
    地好の星: 毛頭星・孔明
    天満の星: 美髯公・朱仝

    やれやれ、とりあえずリスト化が歯抜けにならず一安心です(苦笑)
    さて、この第3巻ともなれば、同志の数もだんだん増えてきて、誰が誰だか記憶に定着させるのが難しくなり始める頃です。  1人1人のエピソードそのものは時に面白く、時に苦しく、ワクワク・ドキドキしながら読むことができるものの、その人物が暫く出て来なくて久々に登場したりすると「はて、これは誰だっけ??」となってしまい、巻頭の登場人物一覧を確認せずにはいられない・・・・・そんな頻度が少しずつ上がってきます。

    それでもまだこのあたりでは、その一覧に書かれた短い紹介文だけで「ああ、そうそう、そうだった。」と記憶を呼び覚ますのもさほど苦にならなかったものが、10巻を超える辺りからは「はて、それってどんな所でどんなエピソードが前にあったんだっけ??」となってしまったのも初読の際の懐かしい思い出です。  今回はせっかく2周目の読書に突入しているのですから、最低限でも「人物一覧」を見ればその8割がたの人に関して「ああ、そうそう、そうだった」となっているといいんですけど、どうなることやら??  何と言っても KiKi はあのアルツハイマーに罹患したばぁばの娘ですからねぇ・・・・・(苦笑)

    さて、この巻で印象的なのはやはりあれこれ悩み続ける楊志が、周囲の状況に押し流されるかのように魯智深と一緒に二竜山に乗り込むことになるエピソード、そして二竜山に立てこもったもののまだまだ梁山泊とはちょっと距離を置いているというエピソード。  そして、ひょんなことから(な~んて軽く言ってしまってはみもふたもありませんが)宋江が役人の地位を追われ武松を連れて旅立つことになるエピソードあたりじゃないでしょうか??

    特に楊志があれこれ逡巡するエピソードなどは「楊家将」、「血涙」と楊家の物語を読了したばかりの KiKi にはなかなか説得力があるものだったし、出自・血というものが良きにつけ悪しきにつけ、1人の人間をどんな風に縛り付けるものかということに関しても考えさせられた物語でした。  それは個人主義が蔓延る現代社会では忘れかけている、でも感性では理解できる、そんな人間の心もちなのかもしれません。

    上記とは別に個人的にかなり面白いなぁと感じたのは魯智深の北行の物語でした。  これは「楊家将」「血涙」「水滸伝」そして「楊令伝」をとりあえず一読した今だから あ~んど 今回「北方水滸」を再読し始める前に世界史の復習をした後だから気が付いた点とも言えるわけだけど、宋という国とそれを取り巻く「遼」、「西夏」といった周辺諸国の歴史的な流れと魯智深の「遼入り」の話は見事にマッチしているのみならず、物語の通奏低音みたいな役割(ちょっと広範囲の歴史的背景)を果たすエピソードになっていることを感じ、思わず「巧い!!」と唸ってしまいました。

    物語のうえのお話だし、あの時代から随分くだって多くの研究もなされた今だから書けるフィクションであることは百も承知だけど、実に見事に時代を先取りして梁山泊を、そして替天行道に書かれた理念を実現化するためにアクション・プランを企画し実行していく魯智深の姿には惚れ惚れします。  

    もちろん魯智深には「青蓮寺に面が割れた」「宋では最早動きにくい」というやむに已まれぬ事情があったわけだけど、でもそこで「じゃあ梁山泊に逃げ込もうか?」という誰もが考えられる道を選ばずに、未だ弱体と言わざるを得ない反乱の芽を潰さずに育て上げ、さらにはその反乱そのものを成功させるための次の一手。  大国宋の国力を弱める画策が必要と考え、たまたま起こっている遼での民族紛争を利用しようと考えるな~んていうのは並みの男にできる状況判断ではありません。  そして単身敵地に乗り込んでいく行動力、これだって並みの胆力では果たせません。

    さて、もう1人、かなり印象的だったのは王進先生の指導を受け、メチャクチャ強くなってしまった史進の物語でした。  彼が魯智深により少華山入りせざるをえなかったエピソードもそこで結果的に頭目に押し上げられてしまうに至ったエピソードも原典にもあるだけに面白いけれど、あまりにも若くして叛徒の頭目にまつりあげられてしまった青年の陥る落とし穴みたいなものにスッポリ嵌っている姿は「さもありなん」だったし、そんな史進を心配しつつも見つめるだけしかできない副頭目たちの苦悩も「さもありなん」で、そのまま梁山泊入りしないというのはなかなか練られたシナリオだと感じます。

    そしてそんな史進の姿に危惧を感じて、王進の元で再教育しようとアレンジする魯智深が又々、かっこいい (^^)v  この第3巻で KiKi は林冲に続いて魯智深のファンになりました。  そうであるだけに、岩波少年文庫の「水滸伝」での魯智深の描写にはビックリ仰天・目がテン・・・・だったんですけどね(苦笑)

    さらにさらに、もう1人。  梁山泊ができるまでは単なる田舎の塾の先生だった呉用が梁山泊の第3位に登りつめ、そこで苦悩する姿も実に説得力があると感じました。  思い起こせば KiKi も会社の中で1スタッフというポジションからマネージャーというポジションに上がったばかりの頃、あれやこれやと逡巡したものでした。  忙しさの中で自分のやるべきことを必死でこなしている時間(要するに昼間)はいいんだけど、それから解放され家で食事をした後ぐらいに「これは現実なんだろうか?」「自分みたいな人間が人の上に立っていいんだろうか?」「自分にはそんな資格があるんだろうか?」と思い悩んだものでした。

    その時代を経、さらにはそこからさらに上のポジションも経験した今だからわかることがあります。  それは人の上に立つ人間は本人の資質というものももちろん必要だけど、それ以上に「ポジションが人を作る」という経験をしてはじめて「それなりの人」になるということです。  弱音をどこで吐けばいいのかさえわからない時代あり、それを吐くことを恥とさえ考える時期もある。  でも、そんなことでウジウジしている余裕はなくて何等かの職務上の結果は出さなければなりません。  

    結果を出すためには1人ではできないことも多々あり、「人を動かすためにはどうすればいいか?」を考える時間が必要で、同時に人から陰口をきかれたり悪く思われたりすることに悩むことだって少なくありません。  それでも、彼らと一緒に何かを成し遂げる。  それが2度3度と繰り返される。  そうこうしているうちに人はそのポジションに見合う人間にようやく成長していく・・・・・。  そういう意味では呉用の陥った孤独、悩みは文官には、しかもスタッフレベルではないマネージメント側の人間には必要な悩みのプロセスと言ってもいいかもしれません。  「頑張れ、呉用。  苦しいだろうけど、この時間はあなたにとって必要な時間なんだよ。」と心の中で声をかけます。  もっとも人に拷問をした苦悩というヤツは KiKi には想像することはできてもよくはわからないけど・・・・・・ ^^;    

    さて、梁山泊という点で始まった反乱軍。  この第3巻までで、その梁山泊と清風山、二竜山、少華山という黄河沿いの線がうっすらと見え隠れし始めました。  そしてこれに絡む、盧俊義の「塩の道」で大きな役割を果たしている北京大名府。  巻頭にある「関係地図」を眺めると少しずつその線がぼんやりとした面にも広がりつつあります。  更には魯智深が足がかりをつけようとし始めた燕雲十六州から遼に至る面。  狭い島国・日本では想像もできないような広大さの中で物語は第4巻に進みます。  う~ん、楽しみ♪(2周目だから、かなりの程度はどうなるか知ってるけどさ)

  • 北方水滸伝の大発明、青蓮寺が実態を現す3巻目。

  • 死ななくてもいい人たちが死んでしまう悲しみ。

  • 司馬遼太郎賞
    著者:北方謙三(1947-、唐津市、小説家)

  • 水滸伝三

    190607読了。
    今年56冊目今月3冊目。
    #読了
    #北方謙三
    #水滸伝三

    官軍にも、梁山泊にも、それぞれの正義があり、それぞれの戦うべき敵がいる。

    足りれば驕る、満ちれば腐る。

    足らぬものがあるから、志という旗を掲げて戦えるのだ。

    戦いに身を投じながら、人間としての幸せを考える。立ち止まりながら、苦闘を続ける。

    カッコいい。



  • 楊志 二竜山
    宗江 出立

  • 原作は英雄列伝のようなところがありましたが、ここに来て北方版らしい人物造型の深みを敵方にも描いています。様々な伏線が梁山泊結集時や果ては結集後に活かされるようで、ワクワクします。それにしても、閻婆惜の扱いは酷い。北方は、特に、女性を駒としてしか描けていませんね。

  • 衝撃の展開で宋江が城郭を追われることに。

    3巻は登場する人が少なく、一人の物語が長く深かった。

  • ★2009年2月18日 19冊目読了『水滸伝 三 輪舞の章』北方謙三著 評価B+
    日本で帰国したとき買ってきて久しぶりの水滸伝。登場人物が多いので、巻頭の解説を読んで記憶を呼び起こしてから読み始める。
    楊志、魯智深、公孫勝らが、政府の影の組織、青蓮寺との対決に突き進んでいく。もう止められない梁山泊と官軍の対決。

  • 楊令 ←孤児

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全51巻)で菊池寛賞を受賞した。

「2019年 『魂の沃野(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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