水滸伝 4 道蛇の章 (集英社文庫 き 3-47)

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  • 集英社
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  • / ISBN・EAN: 9784087461145

感想・レビュー・書評

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  • 今後の大活劇に向けて静かに時を重ねる第四の巻です
    こういった大長編では仕込みの回ともいえる落ち着いた巻が必ずあるんですが、そんなんも超面白い『北方水滸伝』でございますよ

    これまでも何度か書いてるんですが、面白いヒロイックファンタジーを産み出すには、いかに魅力的な敵を生み出せるかにかかっていると思うんです
    え?『水滸伝』てヒロイックファンタジーだったの?っていうのは今いいじゃない
    今いいじゃないそれは

    で、この『北方水滸伝』はめちゃくちゃ魅力的な李富という敵を生み出しています(もちろんアニキの創作キャラ)

    いやもうこの李富がさ、ちょっと油断すると好きになっちゃいそうなのよ
    もう悩みまくりで、そんで愛情深くてつか愛に溺れて、要するにめちゃくちゃ「人」なのよ
    そして彼なり志を持ってるの
    そんで梁山泊と対峙するわけ、もちろんかなり悪どいことしてくるんだけどさ、やっぱり官軍てこともあって自分たちこそ「正義」だと思ってるし、彼らなりに国や民のことも考えてるわけ
    つまり「正義」対「正義」の闘いなのよ
    どっちも「正義」であるがゆえに、そこからいろんな悲劇が生まれるのよね

    そして官軍側もこれからまだまだ魅力的な人物が出てきそうで楽しみ
    物語はさらに不穏な空気をまといつつ次巻へ!


    はい一〇八星ぜんぜん違うやん!のコーナー!
    今回は第八十八位の好漢、地弧星の金銭豹子(きんせんひょうし)湯隆です
    『北方水滸伝』では鍛冶屋一本ですが、オリジナルでは鍛冶屋兼軍人で武術に優れていて戦場でも活躍しています
    オリジナルでは博打にはまって落ちぶれていますが、『北方水滸伝』では愚直で手を抜くということを考えたこともない職人で全く正反対です

    また、梁山泊入のきっかけは李逵と義兄弟になったことですが、こちらではまだ出会ってもいない状態で、最初から梁山泊にいます
    今後二人は仲良くなるのかも見どころかもしれませんね

    それにしても北方謙三アニキは戦わない人たちの描き方が本当にうまい

    • kuma0504さん
      めろんさん、
      戦闘は武術の達人や戦術を駆使する将軍や戦略を駆使する軍師がいたならば、勝つというものではないという前提から、武器を作る人を創出...
      めろんさん、
      戦闘は武術の達人や戦術を駆使する将軍や戦略を駆使する軍師がいたならば、勝つというものではないという前提から、武器を作る人を創出した北方謙三はなかなかです。本当はそれだけでは戦争に勝てない。戦争に勝てても、それだけでは革命が成就しない。というようなことは到底19巻では描きれないのです。
      2023/09/08
    • ひまわりめろんさん
      クマさん
      おはようございます!

      そうなんですよね
      そこもオリジナルと違うところですよね
      オリジナルにも「国」というものを匂わせる部分もある...
      クマさん
      おはようございます!

      そうなんですよね
      そこもオリジナルと違うところですよね
      オリジナルにも「国」というものを匂わせる部分もあるにはあるんですがね
      オリジナル宋江は反乱、北方宋江は戦争をしようとしてるってところが、この小説の根っこにあって、目に見える物語部分の表現になったいるのかなと思います

      ちょっともう本当に別の物語だということが身にしみて来てるんですが、せっかくなのでオリジナルとの対比ということにこだわって見続けてみようかなと思っています
      いやもうぜんぜん違うんで別物!と切り捨てるのは簡単なんですが、じゃあなんで北方謙三アニキは『水滸伝』を作り変えようとしたの?っていう疑問を捨てちゃいけない気もするんですよね
      そこになんか凄いものが置かれてる気がするんですよ

      もしかしたら副読本に答えがあったりするのかもしれませんが、ちょっと自分で頑張ってみたいな〜と思います
      2023/09/08
  • 梁山泊VS青蓮寺の暗闘が面白くなってきた。魯智深が所在不明。宋江の旅に暗雲。楊志周辺にも魔の手…先がめちゃくちゃ気になる展開。即次巻へ。

  • まず恒例の各章のサブタイトルとその星が表す豪傑の名前の列挙からです。

    天退の星: 挿翅虎・雷横
    地鎮の星: 小遮攔・穆春
    地孤の星: 金銭豹子・湯隆
    天寿の星: 混江龍・李俊
    天殺の星: 黒旋風・李逵
    天速の星: 神行太保・戴宗

    第3巻に至るまでは「志」とは関係なく何となく梁山泊に参加しちゃうことになった人物として、安道全(医者)、薛永(薬師)、白勝(養生所 & 薬方所の管理者)がいたけれど、この巻ではさらにそこに湯隆(鍛冶屋)、李逵(怪力男)が加わりました。  李逵はちょっと例外として、実際に武器をとって戦う男以外で梁山泊に入ってくる人はどちらかと言えば「志」には無頓着な人が多いようです。

    いわゆるスペシャリスト・個人プレイヤーには極論すれば「志」なんちゅうもんはさほど必要なく、自分のスペシャリティを活かせる機会・場所がまずは優先されるというのは現代社会においても同じです。

    逆に自分の命をかけて体制と剣を交えて戦う男(しかも指揮官になろうかというような人間)には「志」というようなある種の Vision が必要になるのは無理もありません。   実際、命令一下でひたすら戦う戦士たちの命を預かるうえで、「何のために戦うのか?」がないような指揮官では単なる無鉄砲、殺人鬼と同じと言っても過言ではありません。

    因みに宋江さんの志がどんなものなのかはこの物語の中ではほとんど明記されていないけれど、

    自分が駄目だと思っていない人間とは、ほんとうは話し合える余地はなにもない。
    自分が駄目だと思っている男の方が、駄目ではないと考えている者よりずっとましだ。  人には、どこか駄目なところがあるものなのだからな。
    志は、志なりにみんな正しい。  そして、志が志のままであれば、なんの意味もない。

    というような発言から察するに、今風の言葉で言えば「現状に問題意識を持ち」、「その問題を解決するために自分にできることは何かを考えそれを実行する覚悟を持ち」、「実際に動く時には可能な限り無駄なことはせず」、「自分一人がヒーローになろうとするのではなく」、「人と一緒に何かをする(自分にできること、人に任せることをちゃんとわきまえる)」というようなことなのかなぁ・・・・と。



    さて、この巻ではとうとう国軍から離脱して梁山泊に合流してくるものあり、現状に不満を持ちながらも結局は単なる暴れん坊と化している者たちの目覚めあり、戦をする上で武力・糧道と並んで重要な情報網に携わる者の活躍ありと少しずつ梁山泊という反乱軍が「一揆勢力」から「革命勢力」に発展していきます。

    国内の不満分子を統合化するオーガナイザーだった魯智深が遼に入ってしまったことにより、彼に代わって宋国内を歩き回るオーガナイザーが必要になったわけだけど、それをこともあろうに梁山泊のリーダーである宋江が始めちゃいます。  そして大方の読者には彼の魅力がどこにあるのかあまりよくわからない(でもこれは北方氏の責任ではなく、原典での宋江自体がそういう人物なわけだけど)にも関わらず、彼に(もしくは彼の「志」に)魅了されて多くの人が「梁山泊同志予備軍」となっていきます。

    その一方で、この時点で梁山泊内で実質的リーダーであるはずの晁蓋は鍛冶屋の湯隆に弟子入り(?)して、刀鍛冶の真似事なんぞをしています。  この「水滸伝」で楊志が佩いている楊家の家宝「吹毛剣」も楊業が自ら鍛えた剣ということになっていたけれど、この時代、ひとかどの武将というのは自分で自分の剣を鍛えていたんでしょうか??  まあこのての話は古代中国のみならず、KiKi の大好きなワーグナーのオペラ「ニーベルンゲンの指輪」の中でもあの英雄ジークフリートは自分の剣を自分で鍛えていたから、そういうものだったのかもしれません。

    さて、この巻で KiKi にとって印象的だった人物は?と言えば、飛脚屋の総元締め、戴宗です。  原典では不思議なお札の力で空を飛ぶように歩いた(2枚のお札を両脚にくくりつけると、一日に500里、4枚のお札をくくりつけると800里も歩くことができた)ということになっていたわけだけど、この「北方水滸」ではもちろん彼自身足が速いという設定は残されているものの、「飛脚屋」というビジネスを営み、彼の個人技ではなく集団の力で梁山泊を支える情報線を構築します。

    この設定が例の「闇の塩の道」(≒ 糧道)と同じぐらいにこの物語にリアリティを与えていると思うんですよね~。  そしてこの「飛脚屋」の存在があって初めて、宋江はのんびりと(・・・・・でもないけれど)旅をすることができているわけだし、青蓮寺との読みつ読まれつという情報戦の緊張感も存分に伝わってきます。

    そしてこの敵方がなかなかいいんですよ。  特にこの巻では青蓮寺の切れ者、李富の魅力が光っています。  この時点での李富は単に賢いだけではなく、どこか青臭さみたいなものを残していて何とも人間的で「得体の知れない老獪な青蓮寺の長老・袁明」との対比が際立っています。  この袁明がいなかったら彼の良さはここまで印象的にはならなかったと思うけれど、この後の成長が楽しみな人物です。

    さて、宋江が南方の江州に入り、そこには戴宗がいて、さらには青蓮寺から派遣された先乗り要員・黄文炳がいます。  黄文炳は男の第六感(?)で戴宗に目を付けました。  同時に李富に手なずけられた梁山泊と青蓮寺の二重スパイ馬桂が楊志の妻子に近づき、それを見張りに李富本人が本拠地を離れ南方入りしました。  2つの不穏な空気を漂わせ、第5巻に進みます。

  • 晁蓋……あまりにも魅力的すぎませんか???
    誰にでも分け隔てなくニコニコ接してくれる部長ポジやん?こんなんみんな好きになるやん??
    ・楊志の自虐に顔を上にむけて笑った晁蓋
    ・湯隆と刀を打つ晁蓋
    ・宋江に自分が打った刀をあげたい晁蓋

    林冲×楊志のシーンもよかった。
    強すぎるもの同士でしか築けない絆があるはず。
    私も宋江に思いを馳せながら月を眺めたい。

    寅年に虎やたら殺されてるけど大丈夫かな。笑

    解説も、水滸伝を今!読みました!みたいなリアリティのある文章でとても良かった。

    じわじわと各地で広がって行く叛乱。
    5巻は激動と聞く。耐え切れるのか、私。

  • おっと盛り上がってまいりました感のある4巻。
    と言っても男と女のラブゲーム的な、伝聞で聞いた話を信じて裏切られたと思い込む、という、実に古風な展開。まぁ1000年くらい前だろうし、古風も何も、だけんど。
    最後は、続きは次週!みたいな終わり方なんでもう気になって夜も眠れないよ!

  • 宋江の贖罪の旅がはじまり、若き野生児と出会う

  • 相変わらずの一気読み。
    止まらない。
    止まらない!!!!!!

    そして、あとがきでの一言、、、待ってまって、楊志が拾ったみなしごの楊令があとあと、、、、

    なに!?あとあと!え!!!!

    そこがあとで、なに!?まじ!?

    ちょっと待って、え!

    あぁーーー!!ー


    楽しみだぁーーー!へぇーこの子が、えぇあとで?なに?活躍するの?へぇ!あのモノも喋れなかったあの子がねぇ。

    と、近所のおばさんになった気持ちになっちゃう今日この頃です。
    そんなふうにまで、水滸伝の世界にどっぷり浸かってます。

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    4巻は宋江と青蓮寺がメインに話が進んでいる。
    宋江は前巻の終わりに起きた出来事のせいで放浪の旅に出たが新たな出会いや民衆の様子を観察する事を楽しんでいるようだ。
    青蓮寺の方は宋江の事件をきっかけに梁山泊を探るための謀略を進め、地道に進んでいる感じがある。
    他には梁山泊が具体的な行動を起こした事、戴宗や李逵が登場したことが印象に残っている。

  • 主人公って
    何なんだろう、誰なんだろう
    これだけキャラクタがいるのに
    いろんなのが積み重なってきます
    好きなキャラクタ
    立場が違うだけで
    それぞれの思いを重ねていく
    伝説の物語
    伝説が繋がっていく物語
    良いなぁ

  • 官軍の諜報活動が活発化。叛乱軍のリーダーたちは次の展開を模索しつつそれぞれの活動に乗り出していく。ますます引き込まれる第4巻。

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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