ジャージの二人 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087461183

作品紹介・あらすじ

恒例の「一人避暑」に行く父親と犬のミロにくっついて、五年ぶりに北軽井沢の山荘で過ごす小説家志望の「僕」。東京に残った妻には、他に好きな男がいる。危ういのは父親の三度目の結婚も同じらしい。-かび臭い布団で眠り、炊事に疲れてコンビニを目指す、アンチスローな夏の終わりの山の日々。ゆるゆると流れ出す、「思い」を端正に描く傑作小説。翌年の山荘行きを綴る『ジャージの三人』収録。

感想・レビュー・書評

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  • 堺雅人主演『ジャージの二人』の原作。
    先に映画を見て、そのゆるゆる感に癒されたので、原作をかりてみた。
    映画ではとらえきれなかった感情のはしばしが読み取れてよかった。
    何も考えず、あるがままを受け入れるって、実は難しいけど、そういうことができるのってうらやましい。

  • 軽井沢の別荘(じめっとおんぼろ)で夏を過ごす父と僕。僕の妻は一世一代の恋愛中(僕にではない)で、うまくいっていない。東京の喧騒から、暑さから、無職中で減っていく貯金から、うまくいってない結婚生活から、妻からの逃避譚。
    父とお揃いで古着のジャージを着て過ごすことからの『ジャージの二人』なのだが、父と僕はよく似ている。父も僕と同じく逃避中なのだろう。
    『ジャージの三人』では、妻はわざわざ購入したブランド物のジャージをひっさげて彼らの逃避先に着いてくる。ジャージを購入してくるという点や、彼の腕をつかむ点、妻も「選択してしまった(p185)」のかもしれない。もし妻が彼らとお揃いのジャージを着ていたら違う結末があったのだろうか...いや、ないな。妻にはブランド物のジャージを購入する選択肢しかなかったのだろう。「分かれていると思った道は初めから一本だったのかもしれない。(p215)」というように、はじめから僕の中で結末は決まっていたのだと思う。きっと、僕はその結末を迎えることからも逃避していたのだろう。最後、(ゆるやかだが)逃避から戻ってくる様で良かったと思う。

  • 2度の結婚に失敗し、3度目の結婚もうまくいっていない父。
    妻から本気の婚外恋愛を告げられ、仕事も執筆も放棄しかけている息子。

    軽井沢の別荘(と言えば聞こえはいいが、実際は携帯はほぼ不通で虫や黴との共存生活)で過ごす不器用なジャージの二人。
    壊れてしまっているのになんとなく妻からの電話を待ちわびたり、相手の男とのあれこれを想像して落ち込んだり。

    「永久(とわ)の愛なんてあり得ないということは既に思い知っているけど、永久が八十年もあるからつまずくのであって、八十年じゃなく十年ぐらいの永久の愛なら、誓い合えるかもしれない」という言葉がまた、結婚生活に破れた男のしょっぱさを醸し出す。

    「ジャージの三人」になってからの展開もまた、もの悲しい。
    余計な邪魔が入って壊れてしまったら、その異物が消えたとしてももう戻れないんだなぁ。
    映画版は観ていないけど、堺雅人さんはイメージ通りだな。。

    好きな人の高校時代の部活は弓道部で、県大会などにも出場していたと聞き、あのかっこいい和服で弓を引いていたのかと思いきや、「いや、ジャージで」とはにかむ姿にキュンとし、その頃に知り合っていたかったとほぞをかんだ。ジャージ姿を見たいと思うのなんて後にも先にももうないだろう。

  • のろん、だるん、とした内容なのに、なかなか読み進まないという不思議。

  • 何も起こらなくて、なんとなく読んでいるうちに終わってしまう。「ジャージの二人」というタイトルからしても、他の長嶋作品と比べても「脱力しながら読んでください」と言ってもらえているようである。

    「父」が口癖として「死んじゃえ」って言うところがあって、なぜかそこが可笑しいというか印象に残る。

  • 特に周りの風景が強調されて書いてあるわけじゃないけれど 少し落ち着いた 気持ちになれる物語。

  • ねたあとに、と同じ山荘のお話で「ここ知ってる!」という感じが面白かったです。ストーリー的には何があるというわけではないのですが、何となく好き。読みやすいし。なんか好き。

  • 長嶋氏独特の距離感がたまらない。モノゴトに一方的な思い込み方をしない、モノゴトはモノゴトとして捉える(あるいは、そういうふうにしか捉えられない登場人物たち)姿勢、そんな感じを読んでいると、毎度のことだが、力が抜けていく。
    自分で騒いで、自分で疲れて、な方にオススメ。

  • いちばん好きな作家の作品の解説をいちばん(タイ)好きな作家が書く!!!!!!!贅沢!!!!!!!「メールの文章はみんな良い人になる」という発見。結論はとかテーマはとか考えずに、目の前の文章に没頭しよう。味わい尽くそう。

  • 登場人物がみんなそれぞれ魅力的でいい
    なんかあるようで何もなくて、わたしもよくわかんない学校のジャージ着たくなって、夜がこんなに暗いこと感じて説明したくなった

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著者プロフィール

小説家、俳人。「猛スピードで母は」で芥川賞(文春文庫)、『夕子ちゃんの近道』(講談社文庫)で大江健三郎賞、『三の隣は五号室』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『ルーティーンズ』(講談社)。句集に『新装版・ 春のお辞儀』(書肆侃侃房)。その他の著作に『俳句は入門できる』(朝日新書)、『フキンシンちゃん』(エデンコミックス)など。
自選一句「素麺や磔のウルトラセブン」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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