幻夜 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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レビュー : 1359
  • Amazon.co.jp ・本 (792ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087461343

感想・レビュー・書評

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  • H29.12.8 読了。

    ・白夜行の続編。引き込まれるような世界観を一気読みした。いやあ、面白かった。
     こんなところで白夜行と繋がっていたんだとピースを見つけるたびに小躍りしてしまった。

  • 【感想】
    東野圭吾の数ある作品の中で、「悪女ランキング」がもしあるとすれば、ダントツで「新海美冬」を自分は推すと思う。
    もちろん「白夜行」の西原雪穂も同じレベルだが、、、桐原亮二が完全合意の元でのパートナーであった点を汲めば、やはりトップは新海美冬だろう。
    (もっとも、作中で明言はされていないが、西原雪穂と新海美冬は同一人物だと個人的には思った)
    それくらい色んな男を振り回す、抜群の悪女っぷりだった。絶対かかわりたくないわ・・・・

    入念な準備の元で周囲の人間を巻き込み、各々の弱みをしっかりと押さえ、己の目的のためには一切の手段を選ばず、そしてすべて自分の思い通りに操作してしまう。
    本作品は新海美冬に思いのままに翻弄された人間たちが鮮明に描かれていた。

    白夜行同様、新海美冬目線での物語の展開は作中で一切描かれておらず、そのあたりが彼女の冷酷さを更に際立たせていたなぁ。
    台詞や動きの描写は勿論沢山あったが、全部が全部彼女の本性じゃないんだろうなと思うと、本当に底知れない非道さを読んでいて感じた。

    非常に面白かったが、個人的にはやっぱり「白夜行」のほうが好きかな。


    【あらすじ】
    阪神淡路大震災の混乱のなかで、衝動的に殺人を犯してしまった男。それを目撃した女。
    二人は手を組み、東京へ出る。
    女を愛しているがゆえに、彼女の暗示のまま、悪事に手を染めてゆく男。
    やがて成功を極めた女の、思いもかけない真の姿が浮かびあがってくる。
    彼女はいったい何者なのか?!

    名作「白夜行」の興奮がよみがえる傑作長編。


    【引用】
    1.美冬の行動を見るたびに、雅也は得体の知れない不安を抱いてしまう。彼女が何のためにそこまでするのか、彼女がどこへ行き着こうとしているのか、それがまるで見えてこない。

    2.「ねえ、昼間の道を歩こうと思たらあかんよ」美冬がいった。深刻な口調だった。
    「あたしらは夜の道を行くしかない。たとえ周りは昼のように明るくても、それは偽りの昼。そのことはもう諦めるしかない」

    3.「ええ歳して、結婚に理想を求めてどうするの。結婚はね、人生を変える手段なんよ。世の中で苦労してる女を見てみ。みんな旦那選びをしくじってる」
    「あたしが本当に好きなのは雅也だけ。雅也もあたしのことを愛してくれてる。そうやろ?」
    頷く彼を見て続けた。
    「あたしらには結婚なんていう形式は必要ない。そんなものより、もっと強い絆で結ばれてる。あたしにとって雅也はこの世で信用できる唯一の同志。ただし二人の関係は誰にも知られないようにする」
    「美冬は二人の幸せについて考えたことはないんか?こんなふうにこそこそ隠れて会わんでもええ生活、贅沢はでけへんかもしれんけどいつでも一緒にいて穏やかに過ごして行く生活、というのに憧れることはないんか?」
    「残念やけど雅也、それは幻想やで」

    4.新海美冬はとんでもない女だ。自分の目的のためならば、誰であろうとも容赦しない。誰が不幸になろうとも一向に構わないという考えの持ち主だ。
    浜中と曽我、どちらも新海美冬の過去に触れようとした。そして結局、彼女の前からは姿を消すことになった。
    今度は俺がストーカーになるしかないかな。
    夜の闇に向かって加藤は笑いかけた。

    5.彼女は打ちひしがれた姿を見せながら、その内側で綿密な計画を立てていた。
    計画の一つは、震災を利用して完全なる別人になりすます、ということだ。

    あれが彼女の新海美冬としてのスタートだった。あの時からやり直しのきかない、命がけのストーリーが始まったのだ。
    しかし彼女はそのストーリーを一人だけで作り上げようとは思わなかった。彼女は自分の遠大なる野望を実現するためにはパートナーが必要だと考えた。
    計画の二番目、それは信用できるパートナー、彼女のために命を捨てられる人間を作ることだった。


    【メモ】
    p32
    なぜあんなことをしてしまったのか。俊郎のことを憎いとは思っていたが、殺すことなど考えたこともない。
    下敷きになっている俊郎を見て、死んでいると思った。上着からはみ出ている茶封筒を見て、これで借金の件は助かったと思った。

    ところが俊郎が目を開けた。叔父は死んでいなかった。雅也の頭の中で混乱が起き、それは次にパニックとなった。何も考えずに瓦を手にし、振り下ろしていた。

    新海美冬は、あの瞬間を目撃したのだろうか?俺が俊郎を殺すところを、あの女は見たのか?


    p94
    例のビデオテープについて、雅也はまだ何も訊いていない。訊くのが怖いからだ。彼女は全てを知っている。知っていて、彼を助けてくれた。
    それはなぜなのか?
    暴行されそうになったのを助けたからか?それもあるかもしれない。ただそれだけとは思えなかった。
    いや、そもそもなぜ彼女は佐貴子たちよりも先にテープを入手できたのか?


    p257
    しかし美冬の行動を見るたびに、雅也は得体の知れない不安を抱いてしまう。彼女が何のためにそこまでするのか、彼女がどこへ行き着こうとしているのか、それがまるで見えてこない。

    美冬の項(うなじ)にある、二つ並んだ黒子のことを彼は考えた。フクタ工業の職人だった安浦は、おかしな女に引っかかって職を失った。唯一彼が覚えている特徴は、項に二つの黒子があることだという。
    まさか、と思う。しかし彼女ならやりかねない。


    p269
    「雅也」彼が黙っていると美冬が言った。「都合のええ方法なんかはないよ」
    「えっ・・・」
    「嫌なことを避けて、道を拓くのは無理や」


    「ねえ、昼間の道を歩こうと思たらあかんよ」美冬がいった。深刻な口調だった。
    「あたしらは夜の道を行くしかない。たとえ周りは昼のように明るくても、それは偽りの昼。そのことはもう諦めるしかない」


    p307
    久しぶりに店にやってきた水原雅也を見て、有子はぎょっとした。すぐに彼だと気づかなかったぐらいだ。それほど変わり果てていた。
    「たまにしか会えへん有子ちゃんのほうが、俺のこと心配してくれる。変なもんやな」


    p311
    「関西に帰ったりもしないの?昔の友達に会うとか」
    雅也はふっと笑った。
    「帰ろうにも家がない。友達とは・・・もう何年も連絡をとってへんな。みんなどうしてるのかなぁ」
    一瞬遠い目をした彼の顔を見て、この人は本当は帰りたいのではないかと有子は思った。しかし、何か事情があって帰れないのではないか?


    p357
    「ええ歳して、結婚に理想を求めてどうするの。結婚はね、人生を変える手段なんよ。世の中で苦労してる女を見てみ。みんな旦那選びをしくじってる」

    「あたしが本当に好きなのは雅也だけ。雅也もあたしのことを愛してくれてる。そうやろ?」
    頷く彼を見て続けた。
    「あたしらには結婚なんていう形式は必要ない。そんなものより、もっと強い絆で結ばれてる。あたしにとって雅也はこの世で信用できる唯一の同志。ただし二人の関係は誰にも知られないようにする」

    「美冬は二人の幸せについて考えたことはないんか?こんなふうにこそこそ隠れて会わんでもええ生活、贅沢はでけへんかもしれんけどいつでも一緒にいて穏やかに過ごして行く生活、というのに憧れることはないんか?」
    「残念やけど雅也、それは幻想やで」


    p453
    「ねえ浜中さん。あんた、もう手を引いたほうがいいよ」加藤が静かに言った。
    「あの女はおたくには手に負えないと言ってるんですよ。下手にいつまでも絡んでると、痛い目を見るのは多分おたくのほうですよ」
    「私はこのままじゃ引き下がれない。生活のすべてを奪われたのも、元はといえばあの女のせいなんだ。しかも指輪のデザインまで盗まれて・・・黙って引っ込むなんてできません。何としてでもあの女に仕返しをしないことには気が済まないんです」


    p460
    新海美冬はとんでもない女だ。自分の目的のためならば、誰であろうとも容赦しない。誰が不幸になろうとも一向に構わないという考えの持ち主だ。

    気になるのは、浜中が美冬の故郷を訪ねたという話だ。その時に彼女は怒ったという。そしてその後で事件が起きている。
    はたから見れば滑稽だが、浜中の行動は理解できなくもない。だがそれが美冬にとっては忌わしいことだったのではないか?

    浜中と曽我、どちらも新海美冬の過去に触れようとした。そして結局、彼女の前からは姿を消すことになった。
    今度は俺がストーカーになるしかないかな。
    夜の闇に向かって加藤は笑いかけた。


    p646
    彼女は打ちひしがれた姿を見せながら、その内側で綿密な計画を立てていた。
    計画の一つは、震災を利用して完全なる別人になりすます、ということだ。
    (中略)
    あれが彼女の新海美冬としてのスタートだった。あの時からやり直しのきかない、命がけのストーリーが始まったのだ。
    しかし彼女はそのストーリーを一人だけで作り上げようとは思わなかった。彼女は自分の遠大なる野望を実現するためにはパートナーが必要だと考えた。
    計画の二番目、それは信用できるパートナー、彼女のために命を捨てられる人間を作ることだった。

  • 長編力作!!!
    約800ページの一気読み。
    「白夜行」続編ということで、友だちからの贈り物でした。

    ドキドキ興奮する作品でした。
    最後は悔やむなー。個人的には切ないなー。
    女という生き物恐るべし。
    さらに、東野圭吾さん恐るべし。

  • 何度目か分からない。
    必ず白夜行とセットで読んでしまう。
    最後はやりきれない。

  • 美冬と雪穂が同一人物である可能性を示唆する表現は白夜行好きからするとたまらない。
    ただ、白夜行は男と女の直接的接触が一切なかった点で繊細に作り込まれた良作だったが、今回は美冬に雅也が溺れる様を中心に描いたより生々しい物語であった気がする。

  • なんて真っ白な空気なんだろう。

    この世界は冷え切っている。

    読書中はずっと背筋が凍ってしまうんじゃないか、と思える程、ぞくぞくしっぱなしだった。

    一枚の毛布も無く、
    一欠けらの優しさも無く、

    生きるとは、それほど過酷な事なのか?

    ハイヒールで他者を踏みつけ、
    柔らかな血肉の階段をのぼって行く美しい女に
    誰もかれもが、心を奪われ、身を捧げ。

    偶々、その対象が「美しい女」であったに過ぎない。
    又、女にとっては「美の追求」であった。に過ぎなかっただけの話なのだろうか?

    何者かに心奪われずには捧げずには
    生きては行けぬ、人の悲しすぎる本性が
    冷ややかな目線で物語った幻の夜。

    どんな夜だって幻かも知れない。
    でも、
    こんなにも胸に痛く、心に残ってしまった夜を一体どうすればいいんだろう?

    あとがきによると。

    実はすでに購入済みで、未だ未読の『白夜行』とは二部構成になっているらしい…。
    こちらの世界で埋まらぬ溝を
    そちらの世界とあわせてはひとつになると言うのなら…

    もちろん踏み込みはするが、
    読む前からすでに恐ろしい、って一体…^^;

  • やるせない終わり方。雅也には何の救いもなかった。最後、美冬は何を思っていたのか。本心はやはり分からず終い。

  • 阪神大震災で生き残ったふたり、
    しかしどこからが仕組まれていたのか
    裏で何かが常に動き、ラストは幻のように終わる

    白夜行とのつながりがあると聞いて
    楽しみにしていましたが
    やはり白夜行に思い入れが強いのでそれを超えませんでした

  • 前情報知らずに読んでいて、白夜行に雰囲気似てるなと思った。
    解説読むと白夜行の続編だったのか。
    女ってほんと怖い。ここまでの人はそんな居ないと思うけど。結局女性って男からすると見た目が一番なのかなって思っちゃう。

    夕子と良い感じになってきたところで雅也には幸せになって欲しいと思ったけど、読み進めるうちに白夜行と一緒でハッピーエンドにはならないんだろうなと思った。

    そして美冬の正体を知る2人が死亡というラスト。
    上手く行きすぎて美冬が何か仕掛けたのかなとも思ったけど、こんなに素晴らしい夜は初めてって言ってる雰囲気からして、運良く邪魔な2人が消えてラッキーと思ったのか。でも、その前に加藤があなたの命が狙われてると言われて特に何も対策しなかったところから考えると、あの銃じゃ自分は殺せないと分かっていたからなのか。
    うーん、奥が深い。。

    残った疑問
    曽我の妻を殺さなかったのはなぜか。ここから情報が漏れたので。昔の写真も見てたし、美冬と曽我が会う約束をしてたことも知ってた。
    2人も行方不明にすると目立つから?
    華屋に就職させて恩を売ることで、変なことを言わないようにさせることで済ませたのかな。

    あと曽我は美冬に2回会ったって言ってたけど、美冬はなんで2回あったんだろう。覚えてなかったのかな。

  • 白夜行同様、鳥肌が立ったラストだった。

    好きな女性のために全てを尽くし、気づいた時にはその女性に操られてしまっていることは、現実ではなかなかないことだと思う。

    しかし、彼らはそんな時に幸福を感じ、必死になれる。

    宗教や薬物など、何かに依存している人間は、側から見たらかわいそうな人、損をしている人だと思われるが本人からしたらそれは最大の幸福を感じられる瞬間だ。

    この著書を読み、人間は単純な生き物だと思った。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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