幻夜 (集英社文庫)

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  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (792ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087461343

感想・レビュー・書評

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  • H29.12.8 読了。

    ・白夜行の続編。引き込まれるような世界観を一気読みした。いやあ、面白かった。
     こんなところで白夜行と繋がっていたんだとピースを見つけるたびに小躍りしてしまった。

  • 【感想】
    東野圭吾の数ある作品の中で、「悪女ランキング」がもしあるとすれば、ダントツで「新海美冬」を自分は推すと思う。
    もちろん「白夜行」の西原雪穂も同じレベルだが、、、桐原亮二が完全合意の元でのパートナーであった点を汲めば、やはりトップは新海美冬だろう。
    (もっとも、作中で明言はされていないが、西原雪穂と新海美冬は同一人物だと個人的には思った)
    それくらい色んな男を振り回す、抜群の悪女っぷりだった。絶対かかわりたくないわ・・・・

    入念な準備の元で周囲の人間を巻き込み、各々の弱みをしっかりと押さえ、己の目的のためには一切の手段を選ばず、そしてすべて自分の思い通りに操作してしまう。
    本作品は新海美冬に思いのままに翻弄された人間たちが鮮明に描かれていた。

    白夜行同様、新海美冬目線での物語の展開は作中で一切描かれておらず、そのあたりが彼女の冷酷さを更に際立たせていたなぁ。
    台詞や動きの描写は勿論沢山あったが、全部が全部彼女の本性じゃないんだろうなと思うと、本当に底知れない非道さを読んでいて感じた。

    非常に面白かったが、個人的にはやっぱり「白夜行」のほうが好きかな。


    【あらすじ】
    阪神淡路大震災の混乱のなかで、衝動的に殺人を犯してしまった男。それを目撃した女。
    二人は手を組み、東京へ出る。
    女を愛しているがゆえに、彼女の暗示のまま、悪事に手を染めてゆく男。
    やがて成功を極めた女の、思いもかけない真の姿が浮かびあがってくる。
    彼女はいったい何者なのか?!

    名作「白夜行」の興奮がよみがえる傑作長編。


    【引用】
    1.美冬の行動を見るたびに、雅也は得体の知れない不安を抱いてしまう。彼女が何のためにそこまでするのか、彼女がどこへ行き着こうとしているのか、それがまるで見えてこない。

    2.「ねえ、昼間の道を歩こうと思たらあかんよ」美冬がいった。深刻な口調だった。
    「あたしらは夜の道を行くしかない。たとえ周りは昼のように明るくても、それは偽りの昼。そのことはもう諦めるしかない」

    3.「ええ歳して、結婚に理想を求めてどうするの。結婚はね、人生を変える手段なんよ。世の中で苦労してる女を見てみ。みんな旦那選びをしくじってる」
    「あたしが本当に好きなのは雅也だけ。雅也もあたしのことを愛してくれてる。そうやろ?」
    頷く彼を見て続けた。
    「あたしらには結婚なんていう形式は必要ない。そんなものより、もっと強い絆で結ばれてる。あたしにとって雅也はこの世で信用できる唯一の同志。ただし二人の関係は誰にも知られないようにする」
    「美冬は二人の幸せについて考えたことはないんか?こんなふうにこそこそ隠れて会わんでもええ生活、贅沢はでけへんかもしれんけどいつでも一緒にいて穏やかに過ごして行く生活、というのに憧れることはないんか?」
    「残念やけど雅也、それは幻想やで」

    4.新海美冬はとんでもない女だ。自分の目的のためならば、誰であろうとも容赦しない。誰が不幸になろうとも一向に構わないという考えの持ち主だ。
    浜中と曽我、どちらも新海美冬の過去に触れようとした。そして結局、彼女の前からは姿を消すことになった。
    今度は俺がストーカーになるしかないかな。
    夜の闇に向かって加藤は笑いかけた。

    5.彼女は打ちひしがれた姿を見せながら、その内側で綿密な計画を立てていた。
    計画の一つは、震災を利用して完全なる別人になりすます、ということだ。

    あれが彼女の新海美冬としてのスタートだった。あの時からやり直しのきかない、命がけのストーリーが始まったのだ。
    しかし彼女はそのストーリーを一人だけで作り上げようとは思わなかった。彼女は自分の遠大なる野望を実現するためにはパートナーが必要だと考えた。
    計画の二番目、それは信用できるパートナー、彼女のために命を捨てられる人間を作ることだった。


    【メモ】
    p32
    なぜあんなことをしてしまったのか。俊郎のことを憎いとは思っていたが、殺すことなど考えたこともない。
    下敷きになっている俊郎を見て、死んでいると思った。上着からはみ出ている茶封筒を見て、これで借金の件は助かったと思った。

    ところが俊郎が目を開けた。叔父は死んでいなかった。雅也の頭の中で混乱が起き、それは次にパニックとなった。何も考えずに瓦を手にし、振り下ろしていた。

    新海美冬は、あの瞬間を目撃したのだろうか?俺が俊郎を殺すところを、あの女は見たのか?


    p94
    例のビデオテープについて、雅也はまだ何も訊いていない。訊くのが怖いからだ。彼女は全てを知っている。知っていて、彼を助けてくれた。
    それはなぜなのか?
    暴行されそうになったのを助けたからか?それもあるかもしれない。ただそれだけとは思えなかった。
    いや、そもそもなぜ彼女は佐貴子たちよりも先にテープを入手できたのか?


    p257
    しかし美冬の行動を見るたびに、雅也は得体の知れない不安を抱いてしまう。彼女が何のためにそこまでするのか、彼女がどこへ行き着こうとしているのか、それがまるで見えてこない。

    美冬の項(うなじ)にある、二つ並んだ黒子のことを彼は考えた。フクタ工業の職人だった安浦は、おかしな女に引っかかって職を失った。唯一彼が覚えている特徴は、項に二つの黒子があることだという。
    まさか、と思う。しかし彼女ならやりかねない。


    p269
    「雅也」彼が黙っていると美冬が言った。「都合のええ方法なんかはないよ」
    「えっ・・・」
    「嫌なことを避けて、道を拓くのは無理や」


    「ねえ、昼間の道を歩こうと思たらあかんよ」美冬がいった。深刻な口調だった。
    「あたしらは夜の道を行くしかない。たとえ周りは昼のように明るくても、それは偽りの昼。そのことはもう諦めるしかない」


    p307
    久しぶりに店にやってきた水原雅也を見て、有子はぎょっとした。すぐに彼だと気づかなかったぐらいだ。それほど変わり果てていた。
    「たまにしか会えへん有子ちゃんのほうが、俺のこと心配してくれる。変なもんやな」


    p311
    「関西に帰ったりもしないの?昔の友達に会うとか」
    雅也はふっと笑った。
    「帰ろうにも家がない。友達とは・・・もう何年も連絡をとってへんな。みんなどうしてるのかなぁ」
    一瞬遠い目をした彼の顔を見て、この人は本当は帰りたいのではないかと有子は思った。しかし、何か事情があって帰れないのではないか?


    p357
    「ええ歳して、結婚に理想を求めてどうするの。結婚はね、人生を変える手段なんよ。世の中で苦労してる女を見てみ。みんな旦那選びをしくじってる」

    「あたしが本当に好きなのは雅也だけ。雅也もあたしのことを愛してくれてる。そうやろ?」
    頷く彼を見て続けた。
    「あたしらには結婚なんていう形式は必要ない。そんなものより、もっと強い絆で結ばれてる。あたしにとって雅也はこの世で信用できる唯一の同志。ただし二人の関係は誰にも知られないようにする」

    「美冬は二人の幸せについて考えたことはないんか?こんなふうにこそこそ隠れて会わんでもええ生活、贅沢はでけへんかもしれんけどいつでも一緒にいて穏やかに過ごして行く生活、というのに憧れることはないんか?」
    「残念やけど雅也、それは幻想やで」


    p453
    「ねえ浜中さん。あんた、もう手を引いたほうがいいよ」加藤が静かに言った。
    「あの女はおたくには手に負えないと言ってるんですよ。下手にいつまでも絡んでると、痛い目を見るのは多分おたくのほうですよ」
    「私はこのままじゃ引き下がれない。生活のすべてを奪われたのも、元はといえばあの女のせいなんだ。しかも指輪のデザインまで盗まれて・・・黙って引っ込むなんてできません。何としてでもあの女に仕返しをしないことには気が済まないんです」


    p460
    新海美冬はとんでもない女だ。自分の目的のためならば、誰であろうとも容赦しない。誰が不幸になろうとも一向に構わないという考えの持ち主だ。

    気になるのは、浜中が美冬の故郷を訪ねたという話だ。その時に彼女は怒ったという。そしてその後で事件が起きている。
    はたから見れば滑稽だが、浜中の行動は理解できなくもない。だがそれが美冬にとっては忌わしいことだったのではないか?

    浜中と曽我、どちらも新海美冬の過去に触れようとした。そして結局、彼女の前からは姿を消すことになった。
    今度は俺がストーカーになるしかないかな。
    夜の闇に向かって加藤は笑いかけた。


    p646
    彼女は打ちひしがれた姿を見せながら、その内側で綿密な計画を立てていた。
    計画の一つは、震災を利用して完全なる別人になりすます、ということだ。
    (中略)
    あれが彼女の新海美冬としてのスタートだった。あの時からやり直しのきかない、命がけのストーリーが始まったのだ。
    しかし彼女はそのストーリーを一人だけで作り上げようとは思わなかった。彼女は自分の遠大なる野望を実現するためにはパートナーが必要だと考えた。
    計画の二番目、それは信用できるパートナー、彼女のために命を捨てられる人間を作ることだった。

  • なんて真っ白な空気なんだろう。

    この世界は冷え切っている。

    読書中はずっと背筋が凍ってしまうんじゃないか、と思える程、ぞくぞくしっぱなしだった。

    一枚の毛布も無く、
    一欠けらの優しさも無く、

    生きるとは、それほど過酷な事なのか?

    ハイヒールで他者を踏みつけ、
    柔らかな血肉の階段をのぼって行く美しい女に
    誰もかれもが、心を奪われ、身を捧げ。

    偶々、その対象が「美しい女」であったに過ぎない。
    又、女にとっては「美の追求」であった。に過ぎなかっただけの話なのだろうか?

    何者かに心奪われずには捧げずには
    生きては行けぬ、人の悲しすぎる本性が
    冷ややかな目線で物語った幻の夜。

    どんな夜だって幻かも知れない。
    でも、
    こんなにも胸に痛く、心に残ってしまった夜を一体どうすればいいんだろう?

    あとがきによると。

    実はすでに購入済みで、未だ未読の『白夜行』とは二部構成になっているらしい…。
    こちらの世界で埋まらぬ溝を
    そちらの世界とあわせてはひとつになると言うのなら…

    もちろん踏み込みはするが、
    読む前からすでに恐ろしい、って一体…^^;

  • 「幻夜」
    あの女のすべてを知りたい。過去も目的も、真実の顔も。


    「白夜行」の要素を強襲し、続編とされる「幻夜」。「白夜行」では確か、少年時代に主人公の男が女を助けたことから、一蓮托生の人生が始まったように記憶しています。それに比べると「幻夜」は一蓮托生という概念すら存在しない女による圧倒的支配しか描かれていないように感じました。「白夜行」でも女が男や周りの人間を支配する展開が濃厚でしたが、「幻夜」はその比ではないです。


    なんせ男である雅也の心情はさほど出てこず、出てきても悪魔のような女である美冬への疑念では無く信頼や愛が大半、その為二人の幸せという雅也の願いが非常に儚く、雅也には同情や「何故気づかない?」という怒り、そしてこれは美冬に操られる男全員に言えるが、「結局性欲が満たせれば良い馬鹿なのか?男はそんなもんか?」という呆れに近い悲しさも沸いてきます。一方、美冬から雅也への心情はほぼ自らの計画実行に関することのみで、ただの情報交換のようなものであり、どうしてもこいつを許すことは出来ないw


    さらに言ってしまうと、自分の過去を消し去り他人に成り代わりたかった理由と彼女が守ろうとしたものが何だったのか?が全く見えてこないというのが最も腹立たしく、だからこそ最後の結末には「え?」という感じでした。どうやら「風と共に去りぬ」を読んでいないと、美冬の行動原理が分からないということですが、この顛末も幻夜に掛けているんですかね。それに、美冬が周りを狂わす要因として魔力や魔性といった表現が結構出てきますが、それを出されるともうほぼ無敵になってしまい、結局は美冬を理解することなど無理ですw


    ちなみに、最後の顛末が不服な理由としては、私は雅也に復讐を成し遂げて欲しかったというのが挙げられます。言うまでも無くどちらも悪人ですが、震災後全うに生きようとしていた雅也に近づき、「私達は夜の道しか歩けない」とかわけの分からないことを抜かして彼を自分のテリトリー内に誘導し、利用しつくして最後には共犯にさえしなかった美冬に何とか一撃を食らわして欲しかったですね。


    そんな顛末で終わった「幻夜」ですが、一番納得出来ないのは美冬の動機の謎と彼女を捕まえられなかったこと。


    「風と共に去りぬ」はどんな話だったろうか。思い出せない。

  • 再読。
    やはり嫌な女だった。読者は正体を知っているだけに。
    裏の相棒と刑事が、拳銃の暴発でともに死んだ。
    「素敵な夜」とほくそ笑む女が怖かった。
    ろくな死に方をしないと思いたい。

  • 予想していた以上に楽しめた。少しずつ手掛かり、背景が明らかにされて行く度合が絶妙。巻末の解説を読んで知ったが、この本の主人公の美冬が、白夜行のあの人という説があるらしい。

  • うーん、すごかった。でも何だろう、前作では雪穂にも同情の余地があったというか、白夜を這いつくばって生きる2人の必死さと哀しさが表されていたけど、今作では美冬の冷酷さの方が強調されていたように感じるなあ…
    東野圭吾の作品には、どこにもぶつけようのない哀しみを抱えて、それでも這いつくばって前を向いて生きようとする人間を見るんだけど、それはきっと僕がそう読みたいという欲望を抱えているからなんだろうなあ。どこかに「人間の生なんて哀しいもんだ」っていう諦念があるようのかもしれない。

  • ずっと暗いけど、あっという間に読めてしまった。白夜行と同じような感じだけど、美冬の方が怖い気がする。

  • このお正月は、(父親がハマったので家に置いていた)東野圭吾をひたすら読んでいました。
    おもしろかったです。長いけどスラスラ読めました。

  • 『白夜行』に続いて読了。
    この2作はどうしても比べてしまうが『白夜行』のほうが惹きつけられるものがあった。
    今作は物語になかなか入り込めなくて読むのに苦労したが、ラスト200pは一気読みできた。

    雅也が不憫過ぎる。
    どんな状況であれ、殺人は良くないが他に人生の選択肢はなかったのかと思う。
    もし、雅也が有子と一緒になれたら・・・と思わずにいられない。
    でも、雅也が美冬と出会っていなければ
    雅也は有子とも出会っていなかったと思うとどうしようもなかったのかもしれないとも思う。

    美冬(雪穂)は整形したことでただただ気持ち悪い存在となった。
    忌まわしい過去を持つ雪穂を捨てて、身も心も別人(美冬)になりたかったのだろうか?
    読了後には人生において受身の雅也と、どんな手を使ってでも自分の思い通りにする美冬との対比が面白いと思った。

    『白夜行』も含めて最後まで美冬(雪穂)の心理描写を描かなかった東野氏に感服する。
    今作は『白夜行』の続編ではないと東野氏は仰ってるそうだ。
    作中に雪穂に繋がる伏線をちりばめておいて
    そんなはずはないだろうと不満に思っていたが、今は納得できる。
    そうすることで、美冬(雪穂)の得体の知れなさを浮かび上がらせて、
    物語を際立たせているからだ。
    想像力も掻き立てられるので、たくさんの検証サイトがあるのも納得できる。

    表紙は神戸三宮周辺かな。

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著者プロフィール

東野圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪市生野区生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。大学在学中はアーチェリー部主将を務める。1981年に日本電装株式会社(現デンソー)にエンジニアとして入社し、勤務の傍ら推理小説を執筆する。1985年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、小説家としてのキャリアをスタート。2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞を受賞。2013年『夢幻花』では第26回柴田錬三郎賞を受賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞受賞。現在、直木三十五賞選考委員を務めている。代表作としてガリレオ・新参者シリーズに加え、映画化された『手紙』『ラプラスの魔女』。ほかにもテレビドラマ・映画化された作品が多い。2018-19年の作品では、『人魚の眠る家』、『マスカレード・ホテル』、『ダイイング・アイ』、そして今後の映画化作として玉森裕太、吉岡里帆、染谷将太らの共演作『パラレルワールド・ラブストーリー』(2019年5月31日映画公開)がある。なお、中国で『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』が舞台化・映画化され、映画はジャッキー・チェンが西田敏行と同じ雑貨店店主役で出演する。2019年7月5日、「令和」初の最新書き下ろし長編ミステリー『希望の糸』を刊行。

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