M8 (集英社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462005

感想・レビュー・書評

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  • 地震大国日本に暮らすものとしては、小説の中の話とは言え、とてもリアルで恐ろしく、大変興味深く読ませてもらった。
    若い研究者瀬戸口は地震予知システムを作り上げ、かつての地震学の権威遠山とともに、その事実を世間に伝え被害を最小限に食い止めようと奮闘する。自分たちの考えに固執し、新しいものを知ろうともしない偉い先生方。その堅い頭にイライラしながらも『まあ、現実はこうなるよなぁ』と変に納得。逆に瀬戸口たちの意見を聞き入れた都知事に対しては、『こんな簡単に信じちゃって大丈夫??』と心配してしまった。
    まあ、そこがフィクションならではなんだろうけど。

    そしてマグニチュード8の東京直下地震が起こる。ビルの倒壊、交通のマヒ、多発する火災、インフラの停止……自然の猛威の前に都会の人間はなすすべなく翻弄される。倒壊した建物の下敷きになり亡くなった人、高速道路で多重事故に遭い亡くなった人、たくさんの帰宅困難者、自宅を失い集まった避難民たち…全てが現実にも起こりうることで、不安と焦りを感じた。

    しかも現実には瀬戸口はいない。地震予知のシステムもできてはいない。建物の耐震化も完全ではないし、ハザードマップもどれほどの人が真剣に読んでいるか…きっと被害はこの小説の中より大きくなる。
    地震対策は票にはならない…と政治家が諦め、いつ起こるか本当に起こるかもわからないものにお金を使うことはもったいない…と国民が思っているうちは、この国はまた何度でも大震災で大きな損害を繰り返すのだろうなぁ。

  • 巨大地震を扱ったヒューマンドラマ。
    救出にむかったヘリが墜落するシーンが圧巻で今でも鮮明に覚えている。
     自然からの警告を聴ける人でありたい。情報は隠蔽するものではないはずだ。
     人は相手を切り裂く鉤爪も持たず、相手を噛みちぎる鋭い牙も持たぬ。
     では何が強かったのか?
    ①集団の力。②創造力。
    人は集団の中で類まれなる個としての力を発揮し社会を支える生き物だと思う。飛行機、自動車、携帯電話などは、最初は頭の中の産物で、それを形にしてきた。
     間違っていれば文明は滅ぶ。幾度となく繰り返されてきたのは歴史を見ても明らかだろう。どんな世界を自分が亡き後も残すのか?改めて問いたい。
     

  • 東京都は防災マニュアルと一緒にこの小説を配ったほうが良いのでは。
    色々な場所やタイミングで被災する人々を描いており、自分ごととしていつか来る首都圏の地震をシュミレーションすることが出来る小説です。
    東京都民なら読んでおくことをオススメします

  • 中盤で不要なキャラ登場やその背景の描写などあり、ちょっと冗長、中弛み感ありでしたが、自然災害への心構えをリマインドしてくれる良書でした。

  • この作品の後に東北の震災が起きた  実際の災害は何の斟酌も手心も加えてくれなかった  地球と共存なんてオコガマシイ  でも俺も17回忌のクチだから・・・・

  • 興味のある分野なのでどんどん読めた。直下型地震により都市の機能が麻痺。次々と起こる災害。起こる頻度は低くとも一度起きると被害は甚大。

  • "違う、と瀬戸口は思った。しかし声に出しては言えなかった。人間は本来自然の一部なんだ。自然とともに生きてきた存在なんだ。それがいつの間にか、人間だけが特別であるかのように考えるようになった。自然を支配するとか、共存するとかおこがましいような気がする。"

    科学は凄まじく進歩しているけども、地震の予知は未だ為せていない。
    けれども、今の私たちが予知されてどれだけ本気で準備しようとできるか。
    この本ではそんな私たちの怠慢を指摘しながらも
    いつ来るかわからない地震に対して"そのための準備さえしておけば、地震なんてけっして恐ろしいものじゃない"と言い切っている
    被害は免れなくても、それを最小限にする事はできる、と

    あと、学者の縦社会の弊害を浮き彫りにしている
    今回は判定会を信じるか無名の学者を信じるか、という場面もあるが
    少し緩くなったとはいえまだまだ上に物申せない場所が多い
    全てを許すわけではないが、間違いを素直に認め、正しいことを正しくやろうとすることができたら。それが理想なのだろうな。と思った。

  • 豪雨やウイルスと違って、一瞬で起こるのが地震。そのうちホントに来ると言われ続けるも、その直前までが日常と変わらないので対策の意識を継続するのは難しい。地震対策は票に繋がらない(だから政治家が本腰入れない)のも納得。

  • 日本は地震国である。
    阪神大震災、そして記憶に新しい東日本大震災。
    繰り返しテレビで流された映像・・・流されていくたくさんの家屋、跡形もなく消え去った街、そして失われた多くの命。
    決断を迫られる人々。
    どう行動すべきか、自分や家族を守るために何をすべきか。
    そして政治家もまた決断を迫られる。
    リスクを恐れ瞬時に決断できない総理大臣、被害を最小に食い止めるために積極的に動く都知事。
    何のために政治家になったのか、思いっきり問い詰めたい気持ちになった。
    首都圏だけの問題ではない。
    東海・東南海・南海地震の危険が言われるようになってかなりの時間が経った。
    はたして防災対策は進んでいるのだろうか。
    海沿いの高速道路。橋脚ばかりが続く高速道路。
    津波を防ぐことができるのか?と疑問を抱くような防波堤。
    そして、海沿いには停止中とはいえ原発がある。
    物語は現実ではない。
    けれど、書かれている内容はとても現実感にあふれたものだった。
    いま出来ることは何か。
    そして、いざ地震が来たときにどう行動出来るか。
    普段の心構えがあるかないかで大きく違ってくるだろう。
    東日本大震災の映像をけっして忘れない。
    リアルな怖さとともに、大きな教訓が込められた物語だった。

  • 2004年に書かれた小説なのに東日本大震災の東京をシミュレートする内容で怖かったです。
    これから来ると言われている首都圏直下型地震の怖さを思い知りました。
    阪神淡路大震災を経験した主人公の3人もとても良いです。
    3人はそれぞれ震災から11年経って地震予知研究のポストドクター、議員秘書、自衛官になっていて今回の首都圏直下型地震で活躍する青春ストーリーでもあります。

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著者プロフィール

一九四九年、岡山県玉野市生まれ。九四年「メルト・ダウン」で第1回小説現代推理新人賞、九九年「イントゥルーダー」で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞を受賞。他に『ダーティー・ユー』『ミッドナイトイーグル』『M8』『TSUNAMI津波』『東京大洪水』『風をつかまえて』『乱神』『衆愚の果て』『首都感染』『首都崩壊』『富士山噴火』『日本核武装』『神童』『ハリケーン』『官邸襲撃』『紅い砂』『決戦は日曜日』など著書多数

「2022年 『落葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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