I'm sorry, mama. (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
3.21
  • (59)
  • (144)
  • (347)
  • (81)
  • (23)
本棚登録 : 1929
感想 : 209
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462302

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • やはり面白かった。まるで毒を飲まされたような読書体験。

    星の子学園関係者の視点から物語は始まる。かつて関わりのあった、アイ子という女が自分を焼き殺しに来る。末恐ろしい物語のスタート。

    それから物語の軸はアイ子に移っていく。「経営巫女」の世界を挟みつつ、「ヌカルミハウス」に物語は収斂していく。

    アイ子の過去が次第にクリアになっていき、最後には母親の正体が明かされる。まさしく I'm sorry, mama. という終わり方。

    さながらアイ子の人生を追体験するようだった。彼女は孤独なのだけど、そもそもにして愛を知らないので悲壮感はない。深く考えることはなく、ただただ殺し、奪い、ゆらゆらと生きる。孤独の放埒と言った感じ。

    だけど、芯の部分で母親の正体を知りたいという、強く共感できる部分がある。その1点にどこか惹きつけられた。

    たった250ページなのに非常に色濃く、没入させる手腕は見事。

    自分の知らない世界。社会標準から逸脱した人々。それらをエンタメ小説として、匂い立つようなリアルさで描いてみせる。桐野夏生らしさが光った1冊。

    (書評ブログの方も宜しくお願いします)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E6%B3%A5%E8%87%AD%E3%81%84%E5%AD%A4%E7%8B%AC%E6%94%BE%E5%9F%92%E5%B0%8F%E8%AA%AC_Im_sorry_mama_%E6%A1%90%E9%87%8E%E5%A4%8F%E7%94%9F

  • 桐野夏生の描こうとした悪をどのような型で捉えるかで物議を醸すだけでは、この作品の価値を味わうには足らないと思われる。この作品にはある種の究極的な技巧さがあると感じる。要は上手い、という話だ。人物にせよ、情景にせよ、文字を頭に入れると立ち所に映画のワンシーンのような映像が思い浮かぶ。アイ子のような空恐ろしい人間に会ったことがあるわけでもないのに想像ができる。そのような文章を書ける作家が一体どれくらいいることか。各シーンごとのグロテスクさが文学作品的なリアリティを醸し出していて、味わい深い。

  • 桐野夏生さんの小説のなかの女性の怨念や復讐には感心するほどの表現力があるといつも思っていたが、この作品もそうであった。
    生きていく上で恨みつらみはあるとと思うが、ここに出てくる児童養護施設育ちの子たちや娼婦など境遇が苦しい人たちの積年の思いは計り知れないだろう。
    言葉にしづらい人間の汚いこころを表現してくれたこと。
    最後に辻褄があったこと。
    非常におもしろかった。

  • シリアルキラーとしての主人公の行動がワクワクさせるものがあった。
    かなり心の琴線に触れた。

  • テンポが良くてページを捲る手が止まらず。
    途中から極悪非道女のアイ子を応援している私がいました。
    読了後、アイムソーリーママというタイトルを見て何とも言えない気持ちに。
    やっぱ桐野夏生って最高だわ…

  • 人間の醜さや恐ろしさ、虚しさといった心の闇を全ての登場人物が持っている。正直みんな性格悪くて不気味でひくけど、そこがゾクゾクさせる。

  • アイ子、超コeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeee!!

  • 桐野夏生独特の毒にまみれた作品です。
    読み始めると目をそらしたくなるようなぞっとする描写だらけなのにページをめくる手がとまりません。
    アイコがいきなり灯油をぶっかけて火をつけるシーンはびびりました。(しかも無言)
    作中に出てくる女社長はモデルはあの人かなあ?とだれもが思ったと思います。
    アイコがどうしてこのようになってしまったのか
    もっと細かい描写で読みたかったです。短いのが非常に残念でした。

  • 文句なしにおもしろい

  • 村上龍も言っていたが深夜に文章書くと恥ずかしい文になるな・・・。改文改文。

    肉と脂と女と男と汗って副題が作品の印象にあってて秀逸だと思った。全編から臭気の立ち込める話。
    モラルや正義とは完全に、1ミリたりとも交わらずに生きた女を見事に書き上げてくれた。にも拘らずアイ子に対する感情は怒りよりも寧ろ同情、寛容に近い。これは精神的盲目からの脱却という意味で面白い。

    それにしても何がここまでのリアリティを生み出すのか。凄惨、鮮烈な内容に対する興奮か。登場人物に寄り添って固定された視点のせいか。リアリティの差がこんなにはっきり生まれる理由が分からん。何にしろ本作はリアルさで言えば今までで五指に入るレベル。非常に面白いが、暗い話が苦手な人にはお勧めできない。

  • 「沙耶の唄」を思い出した。島田雅彦の解説がちょっと面白く、的を射てる。全体から饐えた臭いが立ち上る作品だった。展開がちょっとマンガみたいだなーと思ったけど。リアリティの面でね。リアリティなんて「リアリティ(笑)」って感じですけど。

  • 娼婦の館で勝手に産み落とされ、母が誰かも分からず、誰にも愛されることもなく、生まれたこと自体否定され ぎりぎりの状態で生き延びてきた女 アイ子。
    彼女のなかで 人としてしてはいけないこととゆうものは一切なく 盗み・殺人を繰り返しては ヤバくなったら逃げるとゆう繰り返しの半生。出てくる女 全部 嫌悪感を抱く奴らばっかり。生々しくて グロくて 汚い。でも読んでしまう。アイ子の悪事が知りたい。アイ子の心の悪魔が見たい。常識・理性の一切通じないアイ子。守るべきものがない人間の悪意はとてつもなく恐ろしい。同情はしないけど アイ子とゆう人間は私は嫌いではないです。自分の本能のままに生きるアイ子をかっこよくも感じます。
    桐野先生の書く女の、妬み・僻み・悪意は心の中を見透かされた気がするんですよね・・・・・

  • これ、すごい好き。笑

  • 盗み・殺し・火をつける「アイ子」。彼女の目的は何なのか。繰り返される悪行の数々・・・。その彼女の過去が明らかになっていく。(あらすじより)                          物語の展開に思わずページがどんどん進み、あっと言う間に読めちゃう本です。育った環境の大事さを考えさせられますね。

  • ホラー。

著者プロフィール

1951年金沢市生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で「江戸川乱歩賞」、98年『OUT』で「日本推理作家協会賞」、99年『柔らかな頬』で「直木賞」、03年『グロテスク』で「泉鏡花文学賞」、04年『残虐記』で「柴田錬三郎賞」、05年『魂萌え!』で「婦人公論文芸賞」、08年『東京島』で「谷崎潤一郎賞」、09年『女神記』で「紫式部文学賞」、10年・11年『ナニカアル』で、「島清恋愛文学賞」「読売文学賞」をW受賞する。15年「紫綬褒章」を受章、21年「早稲田大学坪内逍遥大賞」を受賞。23年『燕は戻ってこない』で、「毎日芸術賞」「吉川英治文学賞」の2賞を受賞する。日本ペンクラブ会長を務める。

桐野夏生の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
湊 かなえ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×