谷崎潤一郎犯罪小説集 (集英社文庫)

著者 :
制作 : くまおり 純 
  • 集英社
3.84
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本棚登録 : 1115
レビュー : 108
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462494

作品紹介・あらすじ

仏陀の死せる夜、デイアナの死する時、ネプチューンの北に一片の鱗あり…。偶然手にした不思議な暗号文を解読した園村。殺人事件が必ず起こると、彼は友人・高橋に断言する。そして、その現場に立ち会おうと誘うのだが…。懐かしき大正の東京を舞台に、禍々しき精神の歪みを描き出した「白昼鬼語」など、日本における犯罪小説の原点となる、知る人ぞ知る秀作4編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 犯罪小説が4作品。
    「柳湯の事件」
    「途上」
    「私」
    「白昼鬼語」収録。

    「柳湯の事件」は、上野の弁護士事務所に「人を殺してしまったかもしれない。」と、画家の青年がやってくる。
    いろいろと白状するのだけど、その青年の性癖に笑いが止まらなくなってしまった(笑)

    なんせ、友達から"ヌラヌラ派"という名称をつけられるぐらいヌラヌラしているものに執着している。
    私的に、"ヌラヌラ派"がツボってしまったようです(笑)
    読者で同じ感覚に襲われた人いるかなぁ。

    「白昼鬼語」は最高!
    "ヌラヌラ派"も打ち消してしまうくらい。
    真夜中、男二人が節穴から"殺人ショー"を覗き見るのだけど、女の妖艶さの描写が、さすがはタニジュン。

    結末は、物語のなかの男たちは担ぎに担がれるのだが、私もまんまと担がれました。

  • 谷崎の小説を読むのは、これが初めてだ。一般には、『細雪』『痴人の愛』『春琴抄』あたりから入り、氏独特の耽美的な、官能的な、あるいは変態的な世界を楽しむのだろう。そしてその世界は、谷崎をもってすれば、わざわざ「犯罪」という要素などなくとも、純文学の世界で十分描くことができる。
    この本を手にしたのは、したがって、読み手である自分が単に「ミステリーが好き」ということにのみ由来する。が、読んでみて損はなかった。
    解説で渡部直己も言及しているが、最初に感じたのは、いずれの物語も(本書には四編の話が収録されている)実にポー的であるということだった。筆名をE・A・ポーからとった江戸川乱歩に大きな影響を与えたというのも、むべなるかな。ミステリー小説の祖といわれる乱歩に先駆けて、谷崎がミステリー小説をものしていた、というのも新たな発見だった。
    これらの小説が書かれたのは、大正年間のことであり、舞台は東京ではあるが、当然今の東京とは風景そのものが異なる。犯罪現場を壁に開いた木のふし穴から覗くというのは、現代の常識では思いつかないが、「ふし穴」から「覗く」という行為そのものにも谷崎特有のマゾヒズム的変態性が見てとれるように思う。その意味で、たまさか出会った谷崎の犯罪文学集ではあったが、読んでみて、これほど「谷崎文学入門」に相応しい小説もないのではないかという気がした。
    なぜなら「犯罪」というテーマを前提としているがゆえに、そこにいくらかのフェチズムや耽美浪漫といった要素は多かれ少なかれ含まれるという共通認識は、これをテーマとする物語を読む者の共通認識としてあるだろう。この、共通認識のおかげで、読み手は谷崎のアクの強い世界に足をとられることなく、程よい谷崎の変態っぷりを楽しむことができるからである。

  • まさに犯罪小説。
    「私」での私の内省がただの叙述トリック小説にさせない。執拗な描写で露になる私…そういうところが谷崎潤一郎のうまさかと思った。
    「白昼鬼語」で感じるのが、女性美の描写の素晴らしさ。生々しくっていやらしい美人が行う殺人を〈覗き見〉する。覗きの場面ではやたらと胸がどきどきした。

  • 凄く面白かった。100年前、信じられない。
    尖った人間性というか性癖をがっつり出して魅力的な登場人物たちを描きつつ、後世のミステリに普及する幅広い視点も兼ねたよい作品でした。

  • 甘美な悪夢を観ているような、狐に、いや狸親爺に化かされているような『犯罪小説集』

    卓越した文章で触覚その他、人間のあらゆる感覚に訴えかけてくる『柳湯の事件』など全四編どれも圧巻。

    解説によれば、ある一編のある趣向はミステリ史的にみても世界に先駆けた試みをしているそうで、その事実に驚き。

    個人的には『柳湯の事件』と『白昼鬼語(はくちゅうきご)』がお気に入り。悪の魅力に取り憑かれそうである。

    坂口安吾をはじめ意外に文豪はミステリがお好きな様で、文豪が書いたミステリは他にもまだまだあるらしい。是非読んでみたい。

  • 短編4編。
    江戸川乱歩の猟奇系短編が好きな人にはツボだと思う。
    但し、表紙の「りんご飴少女」は内容に含まれません(笑)

  • 小説を書いていなければただの変態なおっさんだったんじゃなかろうか。
    そんな谷崎潤一郎の名とタイトル「犯罪小説集」の文字と並ぶのは、紅い林檎飴で口元を隠した、もの言いたげなツインテールの少女。絵面がなんともいかがわしい。
    ……すごくいい! 表紙カバーにこのイラストを選んだ編集者は良い仕事をした!

    収録されているのは、ある弁護士の事務所にとつぜん現れた青年が、もしかしたら自分は人を殺したのかもしれないと告白する「柳湯の事件」。湯河の目の前に現れた私立探偵を名乗る男が、馴れ馴れしくも彼の前妻の死について推理を語る「途上」。学生時代、寮で起きた窃盗事件を回想する「私」。殺人の日時を示した暗号のメモを手に入れたという友人に振り回され、深夜の人形町で目撃する殺人の顛末を描く「白昼鬼語」。いずれも日本における推理小説の原点となった4篇。

    谷崎にかかれば罪深い妄執や狂気すらも妖しい美しさを帯びてくる(気持ち悪さも大分ある)から不思議。

  • こういうお話を書かれているとは露知らず。

    ミステリー的な要素もありつつ、時代的な風景も描かれていて面白かったです。精神的に追い詰めてたり、ブラック的な要素があったりと、4編の短篇集ですが、内容は濃い!

  • 装丁に惚れた。

    りんご飴の艶やかな紅さが
    どうしても手に取らずにはいられなかった。

    楽しいはずの祭りの喧騒のなかで見せる
    りんご飴を持った少女のうつろな瞳と
    懐かしさすら感じる夜店の風景。
    何時間でも眺めていられる。

    柳湯の事件/途上/私/白昼鬼語
    の四編収録。

    犯罪小説と銘打っているが
    トリックをどうこうする類いのものではない。
    人の秘めたる欲望、狂気を表現した作品。

  • のっぺりと官能的なミステリーマゾ小説。さすがの谷崎作品は読ませますね。「悪魔は神様と同じように美しい」って言葉はなんか心に残ってます。

  • 「読む」という行為に仕掛けられたトリック(!)
    欺かれたのは、他ならぬ『僕』である。そうまざまざと実感させられた作品集です。

    犯罪というストーリーの構成もさることながら、視覚や触覚、嗅覚にも訴えかける著者の筆力も特筆すべき点です。
    あの江戸川乱歩をして、「谷崎氏が探偵小説家にならなくて良かった」と言わしめた質の高さは、誰もが納得することでしょう。

  • 谷崎潤一郎の作品はほとんど初めてだったが予想以上に良かった。個人的には柳湯が不気味で好きだった。解説にもあるように乱歩が大きく影響を受けたのがわかる。

  • 何故か機会あるごとに谷崎潤一郎を読んでいるなあ。

    「柳湯の事件」を読んで、背筋がぞわりとした。
    妻を愛で、殴り、懇願する夫。いつしか銭湯で妻の髪や体を足蹴にしている“感覚”に襲われる。

    その暴力性ではなく官能性が浮き上がってくるのが流石。

    「白昼鬼語」でもそうだが、現実感のある女ではないのに……生々しさや美しさを際立ち、魅了される。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      表紙イラスト(くまおり純)が、それっぽさ無しって言うのが面白いって言うか、凄いって言うか。若い人が読んじゃってハマるんだろうなぁ~
      表紙イラスト(くまおり純)が、それっぽさ無しって言うのが面白いって言うか、凄いって言うか。若い人が読んじゃってハマるんだろうなぁ~
      2012/07/18
  • 短編アンソロジーである。谷崎潤一郎の耽美性が満ち満ちている。『柳湯の事件』、『白昼鬼語』が特に好きだ。読者はもてあそばれて、魅せられる。読む前は実在の犯罪をもとに書かれた作品だと感じてたが、そうではなかった。潤一郎ワールドが甘美に展開されていた。纓子にくるおしい思いを遂げてしまった園村はさすが潤ちゃんである。『痴人の愛』のナオミを思い起こした。「犯罪小説」の話から脱線してしまった。

  • 期待以上の面白さ!谷崎文学らしい艶かしさもあるし、ミステリー要素もばっちり体験できる。うーん、好きだ。

    全作品魅力的だけど、しいて一番を選ぶなら『私』かな。
    一言で言ってしまえは、読者=私=…なところにトリック要素があるんだけどそのプロットがさらに狂気を醸し出してる。昭和の文学だけど、文章も読みやすいし。次は長編に再チャレンジしようかな。、

  • 谷崎潤一郎、おもしろい!
    一気に引き込まれてしまいました。
    短編4作品。秀作揃いに唸らされます。
    大正時代の風情が趣深い。
    オススメの一冊です。

  • 文学

  • ミステリー短編集。白昼鬼語が特に良かった。妖艶な女性の描写はさすがで、最後はまんまと担がれてしまった。

  • 『白昼鬼語』が好き。

  • 短編集。以前半分ほど読んで放置していたような気がする。

    女性の描写が破滅的ですごく良い。後半半分ほどを占める「白昼鬼語」がやはり最も読んでいて面白かった。理想の美女に殺されるのも悪くないと思ってしまった。

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著者プロフィール

明治十九年(一八八六)、東京日本橋に生まれる。旧制府立一中、第一高等学校を経て東京帝国大学国文科に入学するも、のち中退。明治四十三年、小山内薫らと第二次「新思潮」を創刊、「刺青」「麒麟」などを発表。「三田文学」誌上で永井荷風に激賞され、文壇的地位を確立した。『痴人の愛』『卍(まんじ)』『春琴抄』『細雪』『少将滋幹の母』『鍵』など、豊麗な官能美と陰翳ある古典美の世界を展開して常に文壇の最高峰を歩みつづけ、昭和四十年(一九六五)七月没。この間、『細雪』により毎日出版文化賞及び朝日文化賞を、『瘋癲老人日記』で毎日芸術大賞を、また昭和二十四年には、第八回文化勲章を受けた。昭和三十九年、日本人としてはじめて全米芸術院・米国文学芸術アカデミー名誉会員に選ばれた。

「2018年 『父より娘へ 谷崎潤一郎書簡集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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