在日 (集英社文庫 か 48-1)

著者 :
  • 集英社
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本棚登録 : 646
感想 : 85
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462531

作品紹介・あらすじ

一九五〇年、朝鮮戦争が始まった年にわたしは生まれた。なぜ父母の国は分断されたのか。なぜ自分たちは「みすぼらしい」のか。「在日」と「祖国」、ふたつの問題を内奥に抱えながら青年期を迎えたわたしは、日本名「永野鉄男」を捨て「姜尚中」を名乗る決意をした。在日二世として生きてきた半生を振り返り、歴史が強いた苛酷な人生を歩んだ在日一世への想いを綴った初の自伝。文庫化にあたり大幅に加筆。

感想・レビュー・書評

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  • ジャンルで言えば個人史ということになるのでしょうがそう括りたくないものがあります。在日の歴史、南北朝鮮、中国、ロシア、アメリカとの日本の国交について知っていたこと、知っていたけれど認識や見解の違っていることなど歴史を振り返る上で大変重要なことが書かれていると思います。

    読後表紙の著者を再び見る時、何とも言えない痛ましいような感情を抱かずにいられません。個人的なアイデンティティについて書かれたものは数多くありますが、これ程哀惜に満ちた著作にもそう出会っていません。
    激しく共感を覚えながらもきっと、著者の孤独感や寂寥感を心から理解しうる他人はこの世にはいないのでしょうね。

    。「母(オモニ)」発刊時に講演を拝聴いたしましたが、その時の講演内容を思い出しました。姜先生のしっとりとした握手していただいた手のひらも。
    その時述べられた先生の思いはこの著作の中にある心の、ほんの一端でしかなかったのだと言うことを知りました。

    他にも気になる著作が多くあります。少しずつ読み進めていきたいと思います

  • 最初は在日1世たちの生き様及び著者の歩んできた在日として人生が垣間見れてよかったんだけど、途中(指紋押捺拒否の辺り)から義務感で読んでいくようになった。
    タイトルどおりもっと在日としての出来事とか考え方を入れてほしかったなあ。
    と、独り言をいってみた。

  • 戦争、分断、日韓のもつれた関係、その時代の真ん中を苦悩しながら生きた著者の、生の叫びが聞こえるようだった。今は3世も成人しているような時代だが、彼らもまた少し違った感情の中を歩んでいると思える。どのような背景の中にあろうと、私たちは否応なしに時代の中に放り込まれているのだ。誰もがその中で生きることが課せられている。

  • 最初は、日本人として日本で生まれ育った人間には理解できないほど深いジレンマと葛藤があるのだなぁと思いながら読んでいたが、途中から、彼自身が、在日であることで直接的に差別されたということがあまりないのでは?と思い始めた。
    指紋押印がそうかもしれないが、個人的になにかあったということが書かれていない。ただ、日本に生まれながら韓国人である自分の内面だけで続く葛藤が書かれているだけだ。
    その内面の苦しみに関しては、否定的なことを言うつもりはないが、きっと彼よりもっとずっと辛い苦しい思いをしながら底辺で這いつくばって生きた在日もいるはずだ。
    なんだかんだといいつつも、日本のなかで韓国人としてのアイデンティティーを保ったまま生き続けるという選択をしているのであれば、存在意義に悩みながら結局どうにもできずに、否応なしに与えられた最初の場所に戻ってきただけではないかと思った。

    後半はずっと、自分のことというより世界の動きを追って記述していただけだった。
    それに、世界の動きにたいして、毎回予感を感じていたと書いていたが、そう簡単に予測できるのであればこんな経済の停滞や減速など起きないでしょう。あとから考えて、予感があったと言うのは簡単だ。

    そんな感じでだんだん読むのがしんどくなってきた…


    【読了後の感想】
    前半(著者自身の個人的なこと)は面白かったし泣けたけど、後半の社会情勢の部分はイマイチ。そういう本を読もうと思って読んだわけではなかったし…

  • 日曜美術館での囁くような語り口が好きだったのに、司会者変わってしもうた・・・

    という心の隙間を埋めるべく、初の姜尚中本!
    北朝鮮籍の学生に言った言葉がすごくずしりと来ました。

    12.09.22

  • 著者を意識するようになったのは日曜美術館での司会から。それまでもニュースショーなどでコメンテイターとして出ていたのは知っていたが、日曜美術館での、とつとつとした語り口は非常に好ましい印象を与えられた。

    本屋でこの本をみつけ、思わず姜氏の内面を知ってみたくなった。

    とつとつとした語り口の印象にたがわず、在日としての自分の立ち位置に悩み、しかし前向きに青春を謳歌した若き日、そして奥さんとの仲も、なにかとても大事にしている、そしてされている好ましい関係が伝わってきた。

    しかし、氏の心棒にあるのは「オモニ」母、なのだろう。そうか、そんなにオモニは深く氏の根っこにあるのか。。 しかし、もし夫がそうであったら、少々妻としては重いかもしれない。 しかし姜さん、TVでしかお目にかかれませんが、ずっと応援します。。 というようになにか保護本能を刺激される男性である。

  • 幼少期から大学生までの部分は面白かった。李良枝とは違う視点からの在日の話だったけど、強いられているものにはやはり似通ったところがあるように思う。孫正義も参考になるかなあ

  • 在日とは、在日朝鮮人、在日韓国人のことだ。
    在日であることが、どういう歴史的,社会的意味があるのだろう。
    奨学金や選挙権など、日本国籍がないことによる不利益をいろいろ被っていることと、差別や民族間の軋轢など。
    ただし、朝鮮半島と日本では、「母屋」というような母を大切にする文化や、儒教などの共通する部分もある。

    どうして日本は、在日外国人に対する扱いが弱いのだろう。
    それだけでなく、海外にいる日本人に対する扱いも弱いと言われている。
    日本の国際化の第1歩が、在日朝鮮人、在日韓国人の権利の確保だろうことが想定される。
    地域では、サッカーなどで、国際的な交流が広がっているのは、当時との違いかもしれない。

  • 生々しく迫力があった。強く立派に生きてきたセンセイには学ぶところも多い。
    一方、表題の在日については、悲劇的に描きすぎてる嫌いがある。
    自分の意思で来日して帰らなかったのに「在日だけが歴史の狭間の荒波にもまれた」みたいのは違うんじゃないかなあ。人は皆、社会に歴史に翻弄されながら生きていくものだと思う。
    まして日本社会での成功者であるセンセイには、もっとポジティブに現社会を捉えて欲しかった。
    その面では反面教師になった。

  • 在日二世で東大教授の姜さんの自伝。ストイックで学究的な半生を追体験した。

    人々の偏見の目に晒されても自らは怒りや嫉妬に目を曇らせず、クリアで公平な生き方をされてきたことが文体にも表れているように思う。

    断片的で無味乾燥な情報としてしか知らなかった戦後の日本・韓国・北朝鮮の歴史の流れを、それぞれの事件が姜さんに与えた衝撃や動揺を感じることで、より身近に鮮明に理解することができた。

    (国家成立当時は韓国よりも北朝鮮の方が日本国内での評価が高かったということ。また、韓国には16年続く朴正ひ大統領による軍事独裁政権がつい30年ほど前までは存在しており、大統領が暗殺され発生したクーデターの際には光州市民が多数無残に殺されたこと。こうしたことは叙述の形式によってしかその重みは伝えられないのだろう)

    国策としての北朝鮮への在日朝鮮人送還を、国内メディアは美化し礼賛したが、その実態は、生活保護を必要とし犯罪に走りかねないと警戒する貧しい者たちの「厄介払い」であった、と姜さんはその偽善を看破する。

    そして、本の全体にわたって記述されている「在日とはなんなのか」という自己への分析と独白は、我々日本人の過去の行いを直接的に糾弾するものではないが、それゆえにむしろ我々の心を打つ訴えとなっているように思う。

    「在日は本国への送還か帰化を選択するべき」という乱暴な意見を持つ人にこそ、読まれるべき本だと思う。

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著者プロフィール

1950年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。東京大学大学院教授、聖学院大学学長などを歴任。東京大学名誉教授。専攻は、政治学・政治思想史。主な著書に、『マックス・ウェーバーと近代』、『オリエンタリズムの彼方へ』、『母 -オモニ-』、『漱石のことば』ほか。

「2018年 『ナショナリズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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