二十億光年の孤独 (集英社文庫)

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レビュー : 219
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087462685

作品紹介・あらすじ

ひとりの少年が1対1で宇宙と向き合い生まれた、言葉のひとつぶひとつぶ。青春の孤独と未来を見つめ、今なお愛され続ける詩人の原点を英訳付の二カ国語版で初文庫化。著者18歳の時の自筆ノートを(一部)特別収録。

感想・レビュー・書評

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  • これが今から半世紀以上前に、自分の祖父よりも年配の人が書いた詩だとは、とても思われない。この詩集から受ける作者の印象は、良くも悪くも世間に頓着しない、育ちの良い青年といったところだ。中性的というよりは無性的な、童話めいた世界観はどこかユーモラスで、時に可愛らしくすらある。まったく、世の中が朝鮮戦争特需やマルクス主義革命などで騒然としていた時に、火星人の生活に思いを馳せ、それを

    (或はネリリし キルルし ハララしているか)

    などと表現してしまう青年が、地球の男に飽きた女たちに愛されなかった筈がない。もっとも、社会の中心にいた男たちとの心の距離は、二十億光年程度では済まなかっただろう。20世紀の日本において、たぶん谷川氏は地球人より、むしろ火星人寄りであった。それは、次のようなフレーズからも明らかである。

     万有引力とは
     ひき合う孤独の力である

    こんなふうに、地球の科学体系を超越した宇宙的公理をサラリと書いてしまうのは、谷川氏が別の惑星からやって来た異星人だからに違いない。地球にひとりぼっちの異星人が故郷を偲んで書いたものだとすれば、この詩集の突然変異的な斬新さも、孤独という割には人間関係に全く拘泥していない感じも、いくらか納得いくのである。

     二十億光年の孤独に
     僕は思わずくしゃみをした

    世間知らずの青年のフリをした異星人は、今や世間知らずの老人のフリをした異星人として、現役で地球を侵略中である。最も効率的なやり方は子どもたちを洗脳することだと知っている彼は、絵本や教科書にたびたび登場し、その難解な宇宙語を通して、地球人の頭を柔らかくするプロジェクトを完遂しようとしている。……

  • 詩の中に入り込もうとしないで、絵を見るように少し離れたところから眺めてみた。
    近付こうとしてもなかなか近付けないからアプローチの方法を変えて。

    時々、しっくりと馴染む言葉があった。
    あ、分かるな、と。
    時々、私が使っている言葉と違うと感じる言葉があった。
    知っているはずなのに、知らない感触。

    詩を読むのはたぶん苦手。
    でもたぶん好きなんだと思う。
    読んでいる時の静寂とか、思わぬ言葉に会えた時の驚きが。

    手書きのノートが素敵。
    全部ノートが良かったな。

  • 家の本棚にあったので再読しました。

    まず、巻頭の三好達治さんの
    「はるかな国から」序にかへて
    がすばらしいです。
    ああ、すごい若者が現れたんだな。というのがよくわかります。
    「わたくしは」
    もなんかいいですね。
    「運命について」
    なんだか映像が、コマ送りでみえる気がします。
    「春」
    のどかな中にドキッとする描写もあります。
    「周囲」
    自分がちっぽけなんだけど、存在はしています。
    「はる」
    とても無垢です。
    「演奏」
    ピアノが鳴って空を飛んでいるのがみえるようです。

    あとがきのあとに載っている、「私はこのように詩をつくる」も面白かった。
    「ネロ」という犬の詩をどのようにつくったかが記されています。
    巻末は、W・I・エリオット氏による詩の英訳がついています。
    解説で、山田馨さんが『二十億光年の孤独』の少年像は絶対の孤独感という眼鏡をかけた、あの少年にしか書けなかった世界だと思うと結んでおられます。

  • 「二十億光年の孤独」は、1952年、谷川俊太郎、21歳の際のデビュー作である(初版は創元社刊)。
    この集英社文庫版は、元々の詩集に谷川の自註、詩論、自伝風エッセイが付き、山田馨の解説が付される。少年だった谷川が詩を書きとめていた自筆ノートの画像も収録され、さらにはW.I.エリオット/川村和夫による英訳版も収められるというなかなか盛りだくさんな1冊となっている。

    冒頭に三好達治が序として詩を寄せる。谷川の父・哲学者の谷川徹三の友人でもあったわけだが、好意からというよりは(もちろんそれもあったのだろうけれども)、本当に鮮烈な驚きが一文に込められているように思われる。

    詩は18歳から20歳のころに書き溜められていたもの。
    「若さ」を感じさせる。透明で、孤独で、でもどこか快活で。
    「個」として厳とそこにありながら、その手は遠く彼方へと差し延ばされる。
    小さな「我」は、しゅんと背筋を伸ばして立つ。
    三好は若き詩人を水仙花に譬えている、
    清冽にまっすぐに、細くもしなやかに、彼はそこにあるのである。

    1つ挙げるなら、やはり表題作だろうか。
    万有引力とは
    ひき合う孤独の力である

    宇宙はひずんでいる
    それ故みんなはもとめ合う

    宇宙はどんどん膨らんでゆく
    それ故みんなは不安である

    二十億光年の孤独に
    僕は思わずくしゃみをした

    二十億光年とは、谷川の自註によれば、当時の谷川少年が宇宙の直径と認識していた距離である。
    1950年、ビッグバン理論が捉えられており、宇宙は膨張していくとされていた。
    その広大無辺な空間のただ中に、少年は一人立ち、くしゃみをしたりなどするわけである。

    別の季節に触れる詩もあるのだが、全体から何となく思い浮かべるのは、清冽な冬の朝の空気である。静かで密やかですがすがしい。

    詩論の中で、詩人はこう述べる。
    バラについてのすべての言葉は、一輪の本当のバラの沈黙のためにあるのだ

    バラについて語る言葉はバラを超えることはない。詩人はそれを知りつつ、その渇きのゆえに詩を書く。
    その覚悟に胸を突かれる。


    *英訳の方では、「たちまち」とか「思わず」の場面でsuddenlyを使うのだなぁと思ったり、詩の中には朝鮮戦争の影があるものがある等、日本語版にはない解説もあり、なかなかおもしろかったです。「秘密とレントゲン氏」という作品ではレントゲン氏をMr. X-Rayと訳しているけど、これはちょっとレントゲン博士を重ねているんだと思うので、Mr. Roentgenのままの方がよかったんじゃないかと思ったり。まぁ、多分英語圏でレントゲンとは言わないからなんでしょうね。
    ともあれ、全般にちょっと難しかった(^^;)。自分の実力的にやはり英詩を原語で楽しむレベルまで行っていないんだと思います。

  • 谷川俊太郎さんは、1931年12月15日生まれなので、間もなく、89歳になります。

    「二十億光年の孤独」は、1952年に発表されたものなので、谷川さんが若かりし頃に書かれた作品集になります。

    私の現在の年齢が59歳であること、詩心とは無縁であること、などで、この作品を味わうことはできず。

    ツマミ読み程度。

  • 説明するまでもないあの谷川俊太郎氏の、デビュー当時(二十歳前後)の作品を集めた詩集。
    みずみずしく豊かな感性にあふれている。言葉のつかい方が素晴らしく、のびのびとした表現に満ちていて、読み手に宇宙の深淵すら感じさせる。

    中でも、表題作の『二十億光年の孤独』は本当に素晴らしい。
    「万有引力とは ひき合う孤独の力である
    宇宙はひずんでいる それ故みんなはもとめ合う」
    存在の根源的な孤独を、宇宙の広さで表現する。自分自身が満点の星空を見上げながら感じた気持ちを思い出して、胸が震えた。

    少年(あるいは青年)は、その透徹した目でもって、自己の内面と正面から向き合い、言葉でもって自身と自然とを結びつけているようにさえ感じる。
    だからこそ、解説にもあるように、ひとりを描いているのに暗さをまったく感じさせない。さびしさを感じるのに悲しくはならない。
    それは、言葉でもって自分と超自然的なものとが1対1で結ばれているような、そんな感覚になるからなのではないかと思う。

    この凛とした、透明な、静かな命の煌き。これこそ、小説であれ詩であれ、私が「言葉」に求めることに他ならない。
    凄い詩集に出逢ってしまった。



    蛇足ではあるが、本書の私にとっての良さは、詩そのものはもちろんのこと、先に挙げた山田氏の解説や、谷川さん自身が自身と詩作について述べている部分も本当に素晴らしい(この気持ちを表現する語彙力がないのが悔やまれる・・・)ことだ。
    印象に残った部分として、一篇のバラの詩についてのエピソードがある。著者が「どんな詩の中のバラだって、本当のバラにははるかに及ばない」と言ったのに対し、より年長の詩人が「それでは詩を書く意味がないではないか」と言ったことで、詩観の相違に気づいた、という場面がある。
    言葉には限界があり、すべての言葉は「本当のバラの沈黙」のためにある。言い換えると、言葉は本物と私たちを結びつけ、時により深く本物を知らしめるためにある―この著者の詩観は、私が今まで感じていた言葉というものに対する疑いやもやもやを氷解させてくれたのである。

    レビュー全文
    http://preciousdays20xx.blog19.fc2.com/blog-entry-504.html

  • ナツイチの宇宙のブックカバーと合わせて読もう!と思って購入。
    詩は普段あまり読まないのですが・・・

    淡々と静かに書かれているように見えるけど、きれいだったり激しかったり、優しかったり、怖かったり、過去や未来、現実、地球、宇宙・・・いろんな温度と空間を感じられる詩集でした。

    やっぱり教科書に載っていた「二十億光年の孤独」が一番好きです。
    谷川俊太郎さんの字がとてもかわいらしかったです。

    • yamatamiさん
      nyancomaruさん、コメントと花丸をありがとうございます!

      言葉の力強さ…!本当にそう思います。いろいろと感じるものもありますが...
      nyancomaruさん、コメントと花丸をありがとうございます!

      言葉の力強さ…!本当にそう思います。いろいろと感じるものもありますが、一貫して言葉の力強さを感じられました。すごく腑に落ちました。
      ありがとうございます…!
      2014/04/02
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      谷川俊太郎の、気が遠くなるような詩も好きですが、長田弘の、とっても身近でありながら、見逃してしまっているような詩も好きです。
      谷川俊太郎の、気が遠くなるような詩も好きですが、長田弘の、とっても身近でありながら、見逃してしまっているような詩も好きです。
      2014/04/07
    • yamatamiさん
      nyancomaruさん、こんにちは!
      長田弘さん…読んだことがありませんでした。
      図書館でチェックしてみます!
      気になる作家さんが増...
      nyancomaruさん、こんにちは!
      長田弘さん…読んだことがありませんでした。
      図書館でチェックしてみます!
      気になる作家さんが増えて嬉しいです(^-^)
      2014/04/07
  • タイトルがもうひたすらに
    愛おしく、神秘的なまでに
    美しい一冊。

    ジャケ買いというか、
    もうタイトル買い。

    二十億光年の孤独

    ときどき
    ふらっと思いだして
    手に取る詩集。

    二十億光年の孤独

    きっといつまでも
    大切な詩集。

    お墓に持って入りたい一冊


    読むのにかかった時間:1時間

    こんな方にオススメ:孤独が辛い太陽系第三惑星にお住みの方

  • 全ての僕の質問に自ら答えるために
    限りなく自分を愛しながら

  • 書かずにはいられなかったのだろう。
    好きで好きでしかたなかったり、だれかに評価されたかったわけではなく。

    1輪の本当のバラは沈黙しているだがその沈黙は、バラについてのリルケのいかなる詩句にも増して、私を慰める。言葉とは本来そのような貧しさに住むものではないか。バラについてのすべての言葉は、1連の本当のバラの沈黙のためにあるのだ。言葉はバラを指し示し、呼び、我々にバラを思い出させる。それはまた時に我々により深くバラを知らしめ、より深く我々とバラを結ぶ。だが言葉自身は決してバラそのものになることができない。まして、それを超えることができない。言葉はむしろ常に我々をあの本当のバラの沈黙に帰すためにあるのではないだろうか。

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著者プロフィール

谷川俊太郎:訳  1931年東京生まれ。詩人。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を出版。以来多くの詩作やエッセイ、脚本、絵本などで幅広く活躍。1975年『マザー・グースのうた』(草思社)で日本翻訳文化賞受賞、ほか受賞多数。『ことばあそびうた』(福音館書店)、『もこ もこもこ』(文研出版)などの創作絵本のほか、スヌーピーの「ピーナッツ」シリーズ(角川書店)、『スイミー』(好学社)等、翻訳作品も数多く手がけている。

「2021年 『パイロットマイルズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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